理学療法士・言語聴覚士・作業療法士とは?3つの資格の違いを紹介
理学療法士・言語聴覚士・作業療法士などは、リハビリに携わる介護のサービスの専門職です。事故や病気で身体的に障害を負った方や障害の発生が予測される方に対して、専門的な知識・技術を用いながら、動作・言語能力の回復や維持、悪化を予防する役割を果たします。
それぞれの専門職は対応できる領域が異なり、働き方や就職先も異なります。
本記事では、理学療法士・言語聴覚士・作業療法士の業務内容や資格取得までのルート、業務内容や就職先、試験内容、給与面で見る違いについてくわしく紹介します。
リハビリに携わる専門職への就職・転職を考えている方は参考にしてみてください。
理学療法士(PT)とは?

理学療法士は、病気やケガ、加齢などが原因で運動能力が低下している人や、今後低下が予想される人に対して、医師の指示のもとで運動の指導をしたり、電気刺激マッサージ・温熱・水・光線などを用いた物理療法を用いたりして、基本的な運動機能の回復・維持をサポートする専門職です。
主に寝返りを打つ・座る・起き上がる・歩くなど、身体の基本動作がおこなえるようにサポートしていきます。
理学療法士のより具体的な業務内容に関しては、以下の記事も参考にしてください。
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理学療法士の仕事内容とは?3つのやりがいや活躍の場所、資格取得ルートを紹介
引用元
職業情報提供サイト jobtag:理学療法士(PT)
公益社団法人 日本理学療法士協会:理学療法士を知る
理学療法士の資格を取得するには?
理学療法士になるためには国家資格が必要で、国家試験を受けて合格しなければなりません。受験資格を得るためには、専門学校や大学または3年制の短大などの養成学校にて、3年以上学ぶ必要があります。
養成学校では、まず医療・医学に対する基礎科目の解剖学・生理学・運動学を学ぶという流れです。その後、運動分析学や神経学などの専門科目を学び、臨床実習にて実際に現場で経験をし、すべてのカリキュラムが終了すると、受験資格を取得できます。
作業療法士の資格をすでに持っている人は、養成学校にて2年以上学べば受験資格を取得することが可能です。
また、海外で養成学校を卒業して、海外の理学療法士の資格を持っている人は、厚生労働大臣の認定を受ければ不足している単位のみを所得することで、受験資格を取得できます。
理学療法士の受験ルートや学校に関しては、以下の記事も参考にしてください
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理学療法士になるには資格が必須!試験の概要や勉強方法、やりがいを感じる瞬間を紹介
理学療法士の学校って?種類やカリキュラム、おすすめの学校について紹介
引用元
厚生労働省:理学療法士国家試験の施行
公益社団法人 日本理学療法士協会:理学療法士になるには
言語聴覚士(ST)とは?

言語聴覚士は、発話コミュニケーションのサポートや、摂食・嚥下(えんげ)障害にも対応する専門職です。主な内容は、聞く・話す・理解する・読む・書くなどの機能の障害や、食べる・飲み込むといった嚥下障害がある患者に対して、訓練やサポートをおこないます。
言語コミュニケーションの障害は、子どもから高齢者まで幅広い年齢層に見られるため、病院や福祉施設の口腔外科・神経内科のほかに、小児分野での需要も増えている状況です。
言語聴覚士は問題の原因を突き止め、解決法を見出すために評価・検査を実施し、そのほかの医療職・介護職と協力しながら、必要な訓練・指導・助言を、おこないます。
言語聴覚士のくわしい業務内容や将来性については、以下の記事を参考にしてください。
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言語聴覚士とは? 仕事内容や需要・将来性について紹介|言語聴覚士になるには
引用元
職業情報提供サイト jobtag:言語聴覚士
一般社団法人 日本言語聴覚士協会:言語聴覚士とは
言語聴覚士の資格を取得するには?
言語聴覚士の資格を取得するためには、国家試験に合格する必要があります。受験するためには、理学療法士や作業療法士の資格と同じように、文部科学大臣もしくは厚生労働大臣が指定する大学・短大・専門学校などの養成学校にて3年以上学び、卒業することが条件です。
一般の4年制大学を卒業した人は、国が指定している大学や大学院・専門学校(2年制)を卒業すると受験することが可能になります。このほかには、言語聴覚士養成のためのカリキュラムの単位をすでに取得している人を対象とした、1年制の専門学校もあります。
理学療法士と同じように海外で言語聴覚士の資格を取得している場合は、厚生労働大臣の認定を得ると国家試験を受験することが可能です。
言語聴覚士の受験ルートや働き方の具体像に関しては、以下の記事を参考にしてください。
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言語聴覚士になるには国家資格が必要!受験ルートや働き方、適性についてご紹介
作業療法士(OT)とは?

作業療法士はOT(Occupational Therapist)とも呼ばれ、患者が自立した日常生活を送ることができるように、心と身体の両方に訓練や指導をサポートする仕事です。
患者との面談やカルテ確認、ヒアリングを通して、訓練プログラムを立案・実施します。
日常生活を送るために必要な「着替え」「顔を洗う」「トイレ」「お風呂」「家事炊事」などの日常動作の支援・芸術活動やスポーツなどのレクリエーションを取り入れながら、患者が日常生活をより快適に送れるようにサポートしていきます。
作業療法士の仕事内容や将来性については、以下の記事も参考にしてください。
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作業療法士(OT)の仕事内容は?将来性や試験内容について解説
引用元
職業情報提供サイト jobtag:作業療法士(OT)
一般社団法人 日本作業療法士協会:作業療法士ってどんな仕事?
作業療法士の資格を取得するには?
作業療法士になるためには、作業療法士国家試験を受験し、合格しなければなりません。受験するためには、文部科学大臣もしくは厚生労働大臣が指定した養成学校で3年以上学ぶ必要があります。
養成施設の対象となるのは、4年制大学や3年制短大、3年または4年制の専門学校などです。
前述した2つの資格と同様に、海外で作業療法士の資格を取得している場合は、厚生労働大臣の認定を得ることで国家試験を受験できます。
作業療法士の養成学校では、運動学や解剖学で体の仕組みや患者への負担を最小限に抑えながら訓練をする方法や、患者の心に寄り添う治療ができるように、精神医学などの専門的な知識を学ぶことになります。そして、作業療法の理解を深めるための目的として、臨床実習を体験して、実際の現場の様子を勉強するのです。
作業療法士の国家試験については、以下の記事も参考にしてください。
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作業療法士の国家試験とは?概要や試験難易度、キャリアプランについて紹介
理学療法士・言語聴覚士・作業療法士の違いとは?

リハビリを専門とした理学療法士・言語聴覚士・作業療法士の違いには、専門領域が異なることで生じる、業務内容や就職先・試験の合格率・平均年収などが挙げられます。
それぞれの職種の違いについて知って、自分が目指すべき職業探しの参考にしましょう。
仕事内容
3つの職種の仕事内容の違いは、以下のようにまとめられます。
| 職種 | リハビリの対象 | リハビリの分野 |
| 理学療法士 | 病気や怪我・加齢などで
運動機能が低下した方 |
歩く・食べる・座るなどの日常の基本動作のリハビリ |
| 言語聴覚士 | 言語・聴覚機能や嚥下・咀しゃく機能に問題がある方 | 発声の仕方や飲食物の飲み込み方・補聴器の調整方法 |
| 作業療法士 | 理学療法で回復し、社会復帰に向けた応用動作の獲得を目指している方 | 日常動作の獲得を目的とした行動訓練と心のリハビリ |
活躍できる場所
3つの職種は、その専門性ごとに活躍できる場所が微妙に異なります。
| 職種 | 主な就職先 |
| 理学療法士 | 病院・訪問リハビリテーションセンター・老人福祉施設、児童福祉施設・訪問看護ステーション・地域支援包括センター・スポーツ関連施設・専門学校・大学 |
| 言語聴覚士 | 病院・介護施設・放課後デイサービスセンター・児童発達支援施設・医療機器メーカー・高齢者施設 |
| 作業療法士 | 病院・メンタルクリニック・特別養護老人ホーム・児童福祉施設・作業療法士養成校・発達障がい者支援センター |
共通する就職先は多いですが、たとえば作業療法士は作業をとおして患者の自信を取り戻したり、対人関係能力を改善したりする心のリハビリの専門家でもあるため、メンタルクリニックでも働ける点がポイントです。
国家試験合格率
3つの資格の国家試験の合格率の推移は、以下のようになっています。
| 職種 | 2024年 | 2023年 | 2022年 |
| 理学療法士 | 89.2% | 87.4% | 79.6% |
| 言語聴覚士 | 72.4% | 67.4% | 75.0% |
| 作業療法士 | 84.1% | 83.8% | 80.5% |
理学療法士と作業療法士は例年の合格率が同水準であるのに対して、言語聴覚士の合格率はやや低い水準にあるのが特徴です。
引用元
厚生労働省:第59回理学療法士国家試験及び第59回作業療法士国家試験の合格発表について
厚生労働省:第58回理学療法士国家試験及び第58回作業療法士国家試験の合格発表について
厚生労働省:第57回理学療法士国家試験及び第57回作業療法士国家試験の合格発表について
厚生労働省:第26回言語聴覚士国家試験の合格発表について
厚生労働省:第25回言語聴覚士国家試験の合格発表について
厚生労働省:第24回言語聴覚士国家試験の合格発表について
給料
令和6年賃金構造基本統計調査によれば、3つの職種の賃金は以下のとおりとなっています。同調査では3つとも同じ職種として集計されているため、職種別の給料の違いは不明です。
| 企業規模 | 決まって支給する
現金給与額(月間) |
年間賞与
その他特別給与額(年間) |
| 10〜99人 | 32万3,900円 | 60万8,300円 |
| 100〜999人 | 30万2,800円 | 68万9,800円 |
| 1,000人以上 | 32万3,100円 | 81万9,500円 |
年間賞与その他特別給与額を加味した手取り総額で見てみると、規模が大きければ大きい企業であるほど、職員として受け取れる給与の総額は大きくなる傾向にあるようです。
引用元
e-Stat 政府統計の総合窓口:令和6年賃金構造基本統計調査
理学療法士・言語聴覚士・作業療法士はリハビリのスペシャリスト!

この記事では、理学療法士・言語聴覚士・作業療法士のそれぞれの仕事内容や資格取得のルート、3つの職種の仕事面・就職先・合格率・給与面の違いについて紹介しました。
理学療法士は運動機能が低下している方に基本動作のリハビリをおこない、作業療法士はその後の社会復帰を想定した日常生活の応用動作や心のサポートをおこなう仕事です。
言語聴覚士は発声・発話方法に加え、飲食物を食べたり飲み込んだりするのをサポートする仕事で、理学療法士や作業療法士とは専門領域が異なる仕事だといえます。
それぞれに必要な資格は異なるため、自分の目標に沿った職業を選択しましょう。












