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特集・コラム 2021-11-04

精神保健福祉士とは? 求められる役割を紹介|精神保健福祉士の仕事内容を解説

精神保健福祉士は、介護福祉士、社会保健福祉士と並び福祉系の三大国家資格のひとつとして知られています。「精神保健」という言葉が意味するように、精神保健福祉士は精神に障がいを持つ方やその家族と深く関わる職種です。

今回の記事では、精神保健福祉士の仕事や役割、また精神保健福祉士が活躍する職場について解説していきます。

精神保健福祉士とは?

そもそも精神保健福祉士は、どんな仕事をするのでしょうか。また、どのような場所で活躍するのかなど、その概要をご紹介します。

精神に障がいのある方の相談にのり、生活支援をおこなう

精神保健福祉士は、精神に障がいのある方、またはその家族から相談を受け、適切な助言や指導をおこない、精神に障がいのある方が日常生活を問題なく送れるようにサポートするのが仕事です。

患者ひとりひとりが抱える問題を的確に把握し、どのような助言・指導をすれば問題が改善し、日々の生活を正常に送れるかを考えて支援していきます。

支援の内容は、会話の練習、メンタルのケア、社会復帰のための指導や訓練、仕事復帰のための就労支援、医療費や生活費の支援制度の紹介などです。

国家資格のソーシャルワーカー

精神保健福祉士は、社会福祉士、介護福祉士とともに福祉系国家資格のひとつです。精神保健福祉士は別名「精神科ソーシャルワーカー」とも呼ばれます。

精神保健福祉士になるためには、社会福祉振興・試験センターが毎年実施している国家試験に合格しなければなりません。

どんなところで活躍するの?|精神科・生活訓練施設・保健所など

精神保健福祉士は、おもにどんなところで活躍するのでしょうか。ここでは、具体的な仕事場について解説していきます。

・病院
もっとも一般的な仕事場は、精神科病院(メンタルクリニック)や総合病院の精神科・心療内科などです。通院または入院患者に対してケアやサポートをおこないます。

・介護施設
特別養護老人ホーム、ケアハウス、グループホームなど、高齢者を対象にした介護施設全般も活躍の場のひとつです。これらの施設では、精神面で日常生活に支障をきたしている入居者も多いので、メンタルケアも含めて生活全般をサポートします。

・生活支援サービス事業所
訪問介護や通所介護などの福祉施設も仕事場となります。たとえば地域活動支援センター、就労支援事業所、相談支援事業所、生活訓練施設などです。こちらでは障がい者からの相談を受け、指導やサポートを実施します。

・行政機関
行政機関の仕事場は、精神保健福祉センター、保健所、福祉事業所などです。行政機関では、精神保健福祉士のほか、医師、作業療法士、保健師など各分野の専門職の人々が配属されており、ともに協力しながらさまざまな援助活動をおこなっていきます。

・そのほか
そのほかの仕事場として、社会福祉協議会、ハローワーク、教育機関、保護観察所、特定の企業のソーシャルワーカーなどがあります。

精神保健福祉士に求められる役割とは?

精神保健福祉士に求められる役割には、どのようなものがあるのでしょうか。ここでは、おもな役割を解説します。

医療機関での役割|福祉的支援の立場から参加

精神保健福祉士の基本的な役割として、医療機関における以下のような福祉的支援が挙げられます。

・受診・受療時の相談
・入院・退院における相談支援
・外来患者・通院患者のフォロー
・患者およびその家族の支援と権利擁護
・デイケア・集団療法などの集団支援
・居住問題での支援
・家族問題での支援
・経済的または日常生活における問題の支援
・就労・就学全般の支援
・患者の社会参加・活動への支援
・家族教室・家族心理教育
・ほかの診療科・病院の受診・受療相談

患者の社会復帰に関する役割|地域移行・地域定着の仕組みを作る

精神保健福祉士は、患者の社会復帰に関する相談を受け、適切な指導・助言をおこないます。また、患者の地域移行促進のための活動にも参加しなければなりません。具体的には、以下のような役割があります。

・看護師などと協働した訪問支援
・地域移行推進チームのコーディネート
・ケア会議への出席
・地域自立支援協議会への参加
・関係機関・関係者との連携・協働による患者支援
・ボランティアの育成支援
・障害福祉計画策定などへの参画
・社会資源(制度・人・サービスなど)に関する情報提供
・医療観察法関連の会議への参加

メンタルヘルス対応に関する役割|新たなニーズに対応する

時代の変化とともに、精神保健福祉士には新しいニーズが生じています。以下が近年で増えてきた新しいニーズです。

・発達障害児(者)の対人関係複雑化などによる適応困難症状
・妊産婦の自殺、または児童虐待などを起こす周産期精神障害
・子どものいじめ、不登校、引きこもり、自殺など
・過重労働、リストラ、非正規雇用などによる労働者の精神障害
・認知症の増加、または認知症とその家族における社会的問題(虐待、介護うつ、介護難民など)
・災害および被災による避難生活の長期化による精神的ストレス
・薬物・ギャンブル依存などの嗜癖性障害

精神福祉士の仕事内容について紹介!

精神保健福祉士に求められる役割がわかったところで、つづいては精神保健福祉士の仕事内容を、分野ごとに確認しておきましょう。

医療機関|チーム医療の一員として活躍

精神科病院、メンタルクリニック、総合病院の精神科・心療内科に勤務し、医師・看護師・作業療法士などとともにチーム医療の一員としてさまざまな仕事をおこないます。

・受診・受療での相談支援
患者、またはその家族から相談を受け、どのような問題があるのかを聞き、整理します。

・入退院の支援
患者本人、またはその家族の要望に配慮しつつ入退院の計画を立て、実施します。入院においては、患者やその家族は少なからず不安を感じるものです。そのような気持ちの面で不安を解消できるようにていねいに説明することが求められます。

・治療計画・カンファレンスへの参加
治療計画、カンファレンスに参加します。なお、精神保健福祉士は、治療行為そのものはおこないません。

・社会復帰支援
通院患者または退院後の患者の社会復帰・移行のサポートをおこないます。

障害福祉分野|家事の訓練・就労サポートなど

障害福祉分野における職場は、自立訓練事業所、就労移行支援事業所、地域活動支援センター、相談支援事業所などがあります。

・日常生活訓練
患者が家事・食事など日常生活を問題なく送れるよう、基本動作の訓練を一緒におこなったり、適切な指導・アドバイスをおこなったりします。

・就労前訓練
患者の就労前のトレーニング、就職活動に関するアドバイス、職場定着のためのサポートなどを実施します。

・地域生活支援
電話・対面・訪問による相談やヒアリング、または日常生活におけるさまざまなサポートやサービスの提供をおこないます。

行政機関|支援事業に関する手続きなど

行政分野では、市町村役場、保健所、保健センター、精神保健福祉センターなどが職場となります。行政機関での主な仕事は、患者ひとりひとりに対する業務ではなく、各種支援事業の手続きや計画、コーディネートです。具体的には、以下のような仕事があります。

・就労支援事業や地域移行支援活動の手続き・計画の実施
・地域と地域を結ぶネットワークの構築・コーディネート
・関係機関のネットワークの構築・コーディネート
・精神保健福祉業界の発展のための現状分析と将来計画立案への参加
・地域住民への理解と普及啓発における活動

精神保健福祉士は精神に障がいのある方を援助するソーシャルワーカー

精神保健福祉士は、医療の現場で精神に障がいのある方やその家族をサポートすることだけが仕事ではありません。精神に障がいのある方の社会的な支援、関係施設との必要なネットワークの構築、地域への啓発活動など、その仕事の範囲は多岐におよびます。

精神保健福祉士は、ソーシャルワークの一角を担う重要な存在です。興味のある方は、資格を取得してみてはいかがでしょうか。

引用元サイト:
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/heart/yk-090.html
厚生労働省 精神保健福祉士について
厚生労働省 職業情報提供サイト 福祉ソーシャルワーカー
厚生労働省 精神保健福祉士に求められる役割について
厚生労働省 精神保健福祉士に求められる役割について
日本精神保健福祉協会 精神保健福祉士について

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