信頼関係を築き、「ありがとう」をいただく喜び/介護リレーインタビュー Vol.22【サービス提供責任者/田中智恵子さん】#2
介護業界に携わる皆様のインタビューを通して、介護業界の魅力、多様な働き方を紹介する本連載。前回に続き、東京都北区にある正光寺運営の訪問介護事業所「月の光」にて管理者/サービス提供責任者を務める田中智恵子さんにインタビュー。
前編では、田中さんのお仕事内容やサービス提供責任者のやりがいなどを伺いました。後編となる今回は、介護のお仕事に感じる魅力や大変だと思うこと、今後の目標を教えていただきます。
「ありがとう」と言われて嬉しいと感じることが一番のやりがい
──田中さんが介護のお仕事に感じるやりがいや魅力を教えてください。
介護業界全体そうだと思うんですが、「ありがとう」と言われるときが一番やりがいを感じる瞬間だと思います。「来てくれて嬉しい」と言っていただけたり、サービス提供時に利用者さんが笑顔になってくださると、だから私はこの仕事をしているんだろうなと感じますね。
正直楽な仕事ではないので、やりがいというか「こういうことがあるから頑張れるんだよね」というものがないと、きつくなるんじゃないかなと思うんです。それが私にとっては利用者さんからの「ありがとう」。人に感謝されるのが嬉しいという気持ちは、仕事を続けるうえですごく大切だなと思います。
──田中さんはさまざまな介護事業を経験されていますが、高齢者の訪問介護ならではの面白さは何だと思いますか?
私の場合、第三者というよりも少しでも寄り添った立場でいたいという気持ちがあるので、サービスの時は「私が家族だったらどう考えるかな」という視点で利用者さんと接しています。だから高齢者の訪問介護の場合は、自分の祖父母と接する感覚に近いんです。介護職につきたいと思った原点でもあるので、すごくサービスしやすいなと感じます。
もちろん、お仕事なので割り切って、いい意味で壁を作る必要もあります。でも割り切り過ぎてしまうと、その方のご家族の気持ちがわからなくなると思うんです。そうならないように、できるだけ身近な存在として寄り添うことを大切にしていきたいと思っています。
必要なサービスを提供するには信頼関係を築くこと
──お仕事のなかで大変だなと感じることは何ですか?
訪問介護が利用者さんのご自宅にいられる時間はすごく短いので、そういった介護保険のルールを守りながらサービスを行うのはすごく難しいと思います。日頃から見守りが必要な方でも、サービス時間外の様子は知ることができませんから。
あとは利用者さんごとのおうちのルールと価値観を理解するのも難しいですね。プロとして利用者さんのために良かれと思うこと、勧めなきゃいけないことが、受け入れてもらえないと悩ましいです。
例えば布団やシーツの交換も、ご本人がかたくなに「やらなくていい」と言えば、衛生的に心配でもできません。糖尿病で食事制限が必要な方に、避けたほうがいい食品の買い出しを頼まれることもあります。
そこをどうやったら受け入れてもらえるか、プロとして利用者さんのためになるサービスが提供できるかというのは、すごく頑張って取り組んでいる部分です。
──それはどうやって受け入れてもらうんですか?
一番は信頼関係を築くこと。そのためには、「人としてあなたのことを心配しているんだよ」ということを伝え続けることだと思います。その方のことを、どれだけ理解しようとしているのかというのは、いろんな場面で伝えていますね。介護業界では当然のことですが、「利用者さんを尊重する」という姿勢が、一番大切なんじゃないかと思います。
誰かと話す時間、リフレッシュできる時間を大切に
──介護業界で働き続けるコツを教えてください。
ひとりで悩んでしまうと周りが見えなくなると思うので、いろんな人に相談することが大事だと思います。という私も、相談するのが苦手なんですが(笑)。でも相談までいかなくても、話せばちょっとすっきりすることもありますから。解決しなかったとしても、誰かに話すということはすごく大切だと思います。
あとは、自分が無になれるような趣味を持つことでしょうか。
──田中さんが無になれる趣味とは?
おいしいものを食べることと、今はあまり行けていませんがゴルフですね。前の職場では打ちっぱなしが近かったので、週3日は仕事帰りに寄っていました。そういう発散できる時間があるといいですよね。
──最後に今後の課題や目標を教えてください。
コロナ禍になり、なかなか新しいことができていないので、いろんな意味で改革をしていかなきゃいけないなと思っています。ヘルパーさんやケアマネさんに会うことも控えてきたので、もっとコミュニケーションを取れる方法を考えていきたいです。
あとは「月の光」が、利用者さんたちに「月の光にお願いすれば大丈夫」と思われる事業所になること。まずはそこが一つの目標と思って、これからもサービスに取り組んでいきたいと思います。
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プロとして利用者さんの安全安心な生活を支える訪問介護のお仕事。田中さんのベースにあるのは「第三者ではなく家族に近い視点」というお話から、田中さんのマインドが「月の光」の利用者さんに寄りそう姿勢を作り上げているんだと実感。事業所全体の土台を作り上げる管理者/サービス提供責任者は、とてもやりがいのあるお仕事だと感じました!
取材・文/山本二季
撮影/米玉利朋子