目の前の人に愛を配り、いつでもヨガを楽しんで!【もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事 Vol.45 ヨガ講師 佐藤ゴウさん】#2
ヘルスケア業界のさまざまな職業にフォーカスして、その道で働くプロにお仕事の魅力や経験談を語っていただく連載『もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事』。
前回に続き、人気ヨガ講師「radhika yoga」の佐藤ゴウさんにインタビュー。前編では人気講師となった経緯、現在の指導のベースとなっているバクティ・ヨーガとの出会い、現在の働き方についてお聞きしました。
中編となる今回は、佐藤さんが授かったスピリチュアルネームにフォーカス。多くのヨガ講師のなかでも持っている人はめずらしい「スピリチュアルネーム」と、佐藤さんが授かった経緯をお聞きしました。またヨガ講師の仕事に感じる魅力と大変さ、ヨガ講師を目指す人へのアドバイスもチェック!
お話を伺ったのは…
ヨガインストラクター講師 佐藤ゴウさん
「radhika yoga Hayama」代表。IHTA国際ホリスティックセラピー協会顧問。日本各地で行われるヨガイベントやレッスンに登壇し、メディアへの出演実績も多数。ヨガ指導者養成にも長年携わり、1500名以上のヨガインストラクターを育成。現在は葉山を拠点に、日本各地でヨガクラスを担当し、「本当に大切なことを思い出す」「ボディとマインドのリリース」をテーマに指導を行っている。
Instagram:gosatoo_gaura_govinda_dasa
入門して授かったスピリチュアルネーム
──佐藤さんはスピリチュアルネームをお持ちです。授かった経緯は?
僕の場合は、最初は邪な気持ちで…インドの名前があったカッコイイなと思ったんです(笑)。だから師匠に「どうしたらもらえるんですか?僕も欲しいんです!」と聞いたら、入門したらもらえるよと教えてもらって、すぐに「入門します!」と押し切った感じで。
──入門すればもらえるんですか!?
そう。入門の条件は、今はほとんどありません。昔はベジタリアンじゃないとダメとか、マントラを108回唱えるのを16週しないとダメとか、一応いろいろ基準があったみたいです。
でも今は「ハッピーになりたい人は全員おいで」って感じですね。お金もかからないし、宗教ではないので信者を増やせとかも言われないし(笑)。
──入門した後はどんなことをするんですか?
入門した後は、日々実践です。どうやったら自分が浄化されていくのか、愛の実践を妨げる「自分だけよければいい」というエゴをどれだけ取り払っていくか。
そのために、毎日同じことをします。するのは、聴くこと、唱えること、思い出すことの3つ。
毎日グルデーヴァ(師)の口から経典を聴き、数珠を1つ1つ触りながらマントラを唱える。そして、いつも愛の方向に向かっているかという、大事なことを思い出す。これを毎日続けるんです。
──毎日継続するのは、沁みつくように?
そう。考え方というのはクセですから、その思考のクセを修正するイメージです。
愛の実践は1日では絶対にできません。週1回でも難しい。24時間365日。そう聞くと大変そうだけど、でもすごく簡単で誰でもできることなんですよ。まずは目の前の人が幸せだったらいいなと「祈る」こと。自分の幸せだけを祈るんじゃなく、大切な人や目の前の人の幸せを祈る。それを継続していくんです。
──入門してよかったですか?
その時は僕も入門の意味がわかっていなかったんですが、結果的によかったですね。入門しないと、今のこの知識や悟りは得られませんでした。
名前をいただくというのは、要するに弟子入りすることです。これは今の時代にはまったく合わないと思うんですけど(笑)。でも弟子入りしないとある程度までしかヨガは深まらないですね。伝統的な師弟継承のラインのなかにいる人に弟子入りしなければ、悟れないと思います。
ヨガって、途中までは1人で歩めるんですよ。でも途中からすごく複雑になるからナビゲーターが必要になります。それができるのは伝統的なヨガを学んだ師。本当の意味で幸せになっている人でないと、幸せを教えることはできません。1人でできる範囲内でヨガをしていると、心と生き方とアーサナがいまいち結びつきづらいんですよね。
まぁ、かっこいいことを言っているだけで、僕ができているかというと今もまだわかりません(笑)。ただその愛の理論に気づけたことは、すごくよかったなと思います。
先生になればヨガがより深まり、幸せに近づける
──ヨガ講師のお仕事の魅力を教えてください。
全部魅力ですね。ヨガを好きなら先生になったほうが良いと思いますよ。
先生と生徒の違いは、成長の度合いです。ヨガの先生になると、生徒のときよりもヨガが深まります。より成長できるし、深まるスピードも速いです。
ヨガが深まるということは、自分にも人にも優しくなるということ。そういう人は、どこに行っても幸せですよね。自分の人生が豊かになるし、喜びや愛が増えるんです。
──なぜ先生になると成長スピードが上がるんでしょう?
その人の流派にもよりますけど、一番は意識をフィックスしないといけないからです。ヨガの先生に求める愛の方向って、やっぱり先生だからちゃんとしないといけない。ウソがないようにしていかなきゃダメなので、日々意識して修練する必要がある。教える人なりの責任を自分に課さなきゃいけなくなるので、それがひとつの成長のきっかけになるんですよね。
実際、ヨガを教え続けていれば、ヨガは上達します。
──逆に、お仕事の大変なところは何ですか?
ヨガの教えどおりに自分ができないときは苦労しますよね。自分はそこまで至っていないのに、これを教えなきゃいけない…というシチュエーションはあります。とくに先生になりたてのころはそんな感じ。「人と比べない」とか言っているけど、自分自身ができていない。「自分ができていないことを人に言ってるな」と思うと苦しいですよね。
あとは生徒さんが「1人いくら」っていう風に見えちゃうと、しんどいんです。全然ワクワクしなくなっちゃう。心をお金じゃなく目の前の人に持っていくことは、「いつでもヨガのスタンスでいる」という意味ですごく成長するんですけど、そこが上手くいかないと葛藤が生まれるんです。
──それはどうしたら解決できるんでしょう?
その時は一度自分を捨てて、師匠になり切ってやったりしますね。それも修練です。
究極を言えば、結果はすでに用意されているんです。「頑張って宣伝したから1人生徒が増えた」と思うけど、関係ない。結果は流れてくるもので、それを得ようとしてもしなくても一緒。だから頑張らなくていいんです。
「1人いくら」というところに意識が向いた瞬間に、愛から離れます。すると生徒さんも居心地が悪くなってしまう。リラックスしたい、自分を認めに来たいのに、先生がそうじゃなければもう来ませんよね。
ヨガの先生はそこを知っておくと、すごく楽になると思います。もっとリラックスできて、いいクラスが作れるんじゃないでしょうか。
目の前にいる生徒や仲間に愛を配り、ヨガを楽しんで
──ヨガ講師を目指す方にアドバイスをお願いします。
ヨガを好きでい続けてください。ヨガが嫌いになっちゃったらしんどいから、いつでもワクワクしてヨガをしていて欲しいです。
ワクワクするための大きなポイントは、生徒を大事にすることです。どこかに所属しているなら、スタッフや経営者を大事にする。この「愛」がなくなると、楽しくなくなっちゃう。
いつでもヨガが好きでワクワク楽しくいるためには、目の前の人に愛を配る。その意識でヨガを伝えていくべきだと思います。そうでないと競争に取り込まれて、続かなくなってしまう。それでは自分も生徒も幸せになれませんから。
──今後の展望は?
このヨガセンターが大きくなったらいいなと思います。僕らがやろうとしてるミッションは、すごく大事なことだと思うんです。体を健康に保つヨガもいいけれど、そこを飛び越して、より楽に、より喜びがあふれる人生の入り口がヨガにはあります。
センターが大きくなって、同じマインドでやってくれる先生が増えて、より多くの人の入り口になれたら、すごくいいですよね。
師匠からいただいた知識を、僕で止めておくのはもったいないんです。僕がパイプになってわかりやすくしたかたちで、長年受け継がれてきた伝統的な教えを、たくさんの人に伝えていけたらいいなと思います。
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ヨガ講師のお仕事でも、愛を忘れないことの大切さを教えてくれた佐藤さん。佐藤さんのお話は、ヨガに限らずヘルスケアのお仕事に関わる人にとって、とても大切なマインドなのではないでしょうか。次回後編では、佐藤さんが行っているクラスについて、さらに深掘りしていきます。
取材・文/山本二季
撮影/本名由果(fort)