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介護・看護・リハビリ 2019-10-21

利用者の本音を引き出す!介護現場で気持ちを引き出すコミュニケーション術

介護の現場で介護士が相手にするのは、当然のことながら機械やモノではなく、「利用者」です。利用者の中には、「自分の感情を表に出すことが苦手」とか、「介護士や家族に迷惑をかけたくないから」と自分の本音を隠そうとする人もいます。

けれども、利用者の健康状態を知り、心身ともに安心・満足してもらえるケアをするためには、利用者の気持ちを理解することが不可欠です。今回は、利用者の気持ちを引き出すために必要なコミュニケーションのポイントをお伝えします。

「この人には本音を話しても大丈夫」と信頼を得るための方法

「自分は本音を伝えることが得意だ」と思っている人は、なかなかいません。ましてや、近い関係になればなるほど、「揉めたくない」とか「嫌われたくない」と感じて、本心を隠そうとしがちです。介護士と利用者の付き合いが長くなり、親しい関係になりやすい介護現場も、その例外ではないでしょう。

しかし、本音を言うことが「苦手」だとしても、「本音を話すことができない」わけではありません。利用者が介護士に本音を言えないときは、「この人になら本音を話せる」といった関係にまで至っていない可能性があります。

誰でも自分の本音を人に話すことは勇気がいります。本音を話すことで相手に受け入れてもらえるか心配です。その不安からか自分の身を守るため、信頼していない人には本音を言わないのです。そこで介護士は、利用者から信頼される話の聞き方を身につける必要があります。

相手に信頼される聞き方を身につけよう

信頼されるためには、まず相手の話を「そのまま受け取る」ことです。利用者の中には、加齢による身体の弱まりや不自由による悩みや不安を持っている人も少なくはありません。けれども、話し手がそれらの感情を聞き手のイメージしやすいように語れるとは限りません。そこで、聞き手が話し手に歩み寄ることが重要です。

相手の話をそのまま受け取ることは、想像以上に難しいことです。なぜなら、「1つの言葉」に対するイメージが、人それぞれに違うからです。例えば、70歳の利用者が「普通の食事を食べたい」と言ったとき、介護士は「70歳でも食べられるような食べ物をイメージするでしょう。それはソフト食かもしれません。しかし、発言した利用者は、歯ごたえのある食事をイメージしていたら、お互いに違うイメージを想像していることになります。

このように、「普通」とか「良い」といった単語に持つイメージは、人それぞれ違います。相手が何を伝えたいかまで知るには、その言葉を使って伝えようとしている「体験談」まで話を聞いてみることです。

また、相手の話をしっかり聞こうと思っても、時間に余裕がない場合など実際には、頭の中で別のことを考えていることがあります。話を聞きながら、次の仕事の流れを考えていたり、「今日は○○さんの顔色がいい」と話の内容とは別のことを考えたりします。しかし、それでは相手が本当に伝えたいことを聞き逃してしまうかもしれません。

まるで自分がテープレコーダーになったかのように、相手の話に集中してみましょう。余計な考えを挟まずに聞くことで、相手の本音を想像しやすくなります。

非言語コミュニケーションから感情を読み取る

 

相手の本心は、「言葉」だけに現れるものではありません。表情や態度などの「非言語コミュニケーション」にも、顕著に現れることがあります。非言語コミュニケーションの研究者であるレイ・L・バードウィステルは、研究のなかで、「言葉によって伝えられるメッセージが35%、残りの65%はジェスチャーや表情、会話の間などの言葉以外の手段によって伝えられる」と言いました。

利用者が表情や態度で、何を伝えようとしているか、まで気を配りましょう。例えば、「手伝ってくれて助かる」と発言した利用者が、今ひとつ嬉しくなさそう顔をするのは、何か不満があるからかもしれません。目を合わせてくれないときは、何か隠している可能性があります。そのように言葉ではなく、態度まで意識を向けることで、より深く利用者の気持ちを理解していきます。

謙虚な姿勢で話を聞く

相手の本音を理解しようとするとき、「相手の気持ちが自分には何でもわかる」と思い込んでしまうことに注意しましょう。話し手は、「きっと○○だろう」と聞き手に決めつけられると心を閉ざしてしまい、本音を言わなくなる可能性があるからです。

例えば、いつも怒っている利用者を「頑固な人だから」と決めつけた態度で接すれば、きっと利用者の心にも伝わってしまい関係が悪化してしまうでしょう。ほんとうは利用者の大事な物を、介護士が邪険に扱っているせいかもしれません。

介護の現場では、利用者と介護士が「対等な関係である」ことが理想的です。「相手の本音がわからないからこそ理解したい」と素直に思うことで、相手が心を開いてくれることでしょう。

ライター:流石香織

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