介護職員のキャリアパス制度とは? キャリアパスモデルを紹介 キャリアパス要件は何に必要?
近い将来、介護を必要とする高齢者が増えていくことが見込まれています。そのための介護人材の不足に対応するため、厚生労働省が取り組んでいるのが、介護職員のキャリアパス制度です。具体的には、どのようなものなのでしょうか。ここでは、キャリアモデルを紹介するとともにキャリアパス要件がなにに必要なのかを、詳しく解説していきます。
介護職員のキャリアパス制度とは? ナゼ必要なの?
厚生労働省は、介護を必要とする高齢者が急激に増えることが予想される事態に対して、介護人材が不足していることに対応するため、キャリアパス制度を導入しました。この制度は、なぜ必要だったのでしょうか。ここでは、その理由について詳しく解説していきます。
目的は介護士の処遇改善
介護人材が不足する理由のひとつに、介護職員の賃金水準がほかの業種に比べて低いことが挙げられます。しかも重労働なので、割に合わないと感じ離職する人が多いことでも知られていました。さらに、もともと低い水準の賃金ですが、ほかの業種に比べて賃金上昇率も低くなっています。厚生労働省は、それらに対する介護士の処遇改善のため、キャリアパス制度を導入したのです。
事業所の人材の確保と定着を図るため
多くの介護施設では、慢性的な介護人材の不足に悩まされています。そこで、事務所の人材の確保と定着を図るために、キャリアパス制度ができました。能力や資格、経験などによって、適切にキャリアアップしていくことで賃金が上がり、将来的に明るい展望を持てることから、職場環境も改善されることが期待できるでしょう。
キャリアアップを可能にするため
介護職という仕事に対してはやりがいを感じていても、キャリアアップへつながらないと、仕事に対するモチベーションが保てなくなってしまう人もいるでしょう。キャリアパス制度は、給与体系や人事制度、職員のキャリア形成支援などを改善して、介護職員のキャリアアップを可能にするためにあります。
介護職員のキャリアパスモデルとは何?
現在のキャリアパス制度における介護職員のキャリアパスモデルについて、詳しく解説していきます。
介護職のキャリアパスモデルとは?
介護に関する資格は、いくつかのものがありますが、介護職を希望する方のスタート地点として、介護職員初任者研修があります。それから、介護福祉士実務者研修を経て、国家資格である介護福祉士の試験資格を取得することができます。そのうえで、ケアプラン作成などの形で要介護者やその家族を支えたい方は、実務経験を積んでケアマネージャーの試験を受けるとよいでしょう。また、介護職のリーダーとして現場や地域の介護力向上に尽力したいという方であれば、実務経験を積み研修を受講したうえで、介護福祉士の上位資格にあたる認定介護福祉士を目指すというキャリアパスもあります。
介護職員初任者研修
介護職員としてのスタート地点にあたり、まだ資格がなく、経験もない方が介護についての知識を得るために取得するのが、介護職員初任者研修です。カリキュラムは130時間で、最短1ヶ月で取得することできるので、比較的気軽に挑戦することができるでしょう。キャリアパスモデルの最初の段階としてある資格です。
介護福祉士実務者研修
介護福祉士実務者研修は、介護福祉士国家試験の受験資格となっています。介護職員初任者研修よりさらに仕事の幅も広がります。カリキュラムは最長で450時間ですが、現在は廃止されているホームヘルパー2級や、介護職員初任者研修などの資格を持っていると、保持している資格によって授業数が免除されます。
医療的ケアの授業もあり、サービス提供責任者にもなれるので、介護の現場でさらなる活躍を期待できるでしょう。
介護福祉士
介護福祉士は国家資格であり、定められた学びや経験を習得し、さらに試験に合格しなければ取得することはできません。こうした条件や試験をクリアした人材だからこそ、事業所に介護福祉士を配置することは、介護報酬の規定でも高く評価されるのです。このため、介護施設や事務所では、できるだけ多くの介護福祉士を採用しようとする傾向があります。試験の難易度は高いですが、介護者の生活相談を受けることができ、チームリーダーとして活躍できます。
介護職員として働くのならば、将来的に目指したい資格といえるでしょう。介護福祉士になるためには、以下の4つのルートがあります。
・養成施設ルート
以前は、国家試験を受けなくても、専門学校を卒業すれば介護福祉士になることができましたが、法改正により、2022年度卒業生からは国家試験を受験しなければ、介護福祉士にはなれません。2021年度以前の卒業生は、卒業後5年連続で介護の仕事をして、介護福祉士として登録していれば、受験しなくても介護福祉士になることができます。
・実務経験ルート
養成施設に通わずに、介護福祉士になれるルートで、3年以上の実務経験と、介護福祉士実務者研修を修了することで、国家試験の受験資格を得られます。
・福祉系高校ルート
指定された福祉系の高校を卒業後、9カ月以上の実務経験があると、国家試験の受験資格を得ることができます。
・経済連携協定(EPA)ルート
国籍や性別、学歴や年齢などの制約なしに、実務経験が3年以上あって、介護福祉士実務者研修を修了していると、受験資格を得られます。
ケアマネージャー|介護支援専門員
正式名称は介護支援専門員で、国家資格ではありませんが、介護保険制度に基づき、障害のある方が自立して生活できるように支援することのできる資格です。5年以上の実務経験が必要で、年1回実施される試験に合格しなければなりません。
認定介護福祉士
キャリアパスの最上位にあるのが、認定介護福祉士であり、介護福祉士のリーダー的存在として位置する民間資格です。介護福祉士の資格を持ち、実務経験が5年以上ある方が、指定の養成研修を修了すると得ることのできる資格です。
公表されたキャリアパスモデルをチェックしてみよう!
厚生労働省の求めに応じて、日本在宅介護協会や全国社会福祉施設経営者協議会、全国老人福祉施設協議会などの関係機関が提出して、公表されたキャリアパスモデルがあります。詳しく知りたい方は、厚生労働省のページをご覧ください。
キャリアパス要件とは何?
ここでは、キャリアパス要件とともに、介護職員処遇改善加算や10月に創設される介護職員等特定処遇改善加算について解説します。
介護職員処遇改善加算の条件
キャリアパス要件とは、介護職員処遇改善加算の条件のことです。
2019年10月からは「介護職員等特定処遇改善加算」へ
すべての産業を対象におこなった賃金調査で、介護職員の賃金が低いことを受けて、2019年10月から、介護職員特定処遇改善加算の取り組みがおこなわれました。今後必要となる介護職員の賃金を、特に現場のリーダー的存在となる職員に対して、全産業の平均年収の440万円に引き上げることを目指します。
長く勤めてキャリアアップしていくと、それに見合った給与を得ることができるようになり、介護職員の給与が少ないことに対する不安を取り除くことを目的としています。
キャリアパス要件は3つある!
処遇改善加算を算定するためのキャリアパス要件は、以下の3つがあります。
キャリアパス要件Ⅰ
職場で求められる役割や能力、職務内容に応じて、採用や昇任などをおこなったり、賃金を定めたりする規定が整備され、それを周知させていること。
キャリアパス要件Ⅱ
職員のスキルをあげるために、計画的に研修を実施して、研修を受ける機会を設けていることと、それを周知させていること。
キャリアパス要件Ⅲ
経験や資格などに応じて昇給したり、一定の基準によって定期的に昇給したりする仕組みを設けていることと、それを周知させていること。
キャリアパス制度は介護職員を働きやすくするためのもの
これまで述べてきたとおり、厚生労働省が取り組んでいるキャリアパス制度は、介護職員がよりよく働けるようにするためのものです。やりがいがあるもののキャリアアップが難しくて、ずっと続けていける仕事ではないといわれていた介護業界の職場環境や賃金などを改善し、少しでも働きやすくするための取り組みは続いています。
今後、介護を必要とする高齢者は増え続けていくので、介護職員の需要は高まり、人材確保のために、さまざまな改善がおこなわれていくでしょう。
出典元
・日本在宅介護協会(キャリアパス)
http://www.zaitaku-kyo.gr.jp/formtext/career_up.html
・全国社会福祉施設経営者協議会(キャリアパス)
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/12/dl/s1211-13l.pdf
・公益社団法人 全国老人福祉施設協議会(キャリアパス)
https://www.mhlw.go.jp/topics/2009/10/dl/tp1023-1f.pdf
・厚生労働省(キャリアパス)
https://www.mhlw.go.jp/topics/2009/10/tp1023-1.html