大好きな日本で働くために看護師から介護士に!【介護リレーインタビューvol.56/介護福祉士 ヌヌン・クステイアンテイさん】#1
介護業界に携わる皆さまのインタビューを通して、業界の魅力、多様な働き方をご紹介する本連載。
お話を伺ったのは…
介護老人福祉施設 横浜よさこいホーム
介護福祉士のヌヌン・クステイアンテイさん
2010年に経済連携協定(EPA)によってインドネシアから来日。介護施設で働きながら介護福祉士の資格を取得。帰国後に結婚し、子どもを授かる。2023年に単身で再来日し、現在の介護老人施設に就職。2024年にパートナーと2人の子どもを呼び寄せ、横浜市内に家族4人で暮らしている。
前編では、ヌヌンさんがインドネシアから介護福祉士を目指したきっかけ、まだ外国人就労者が少ない15年前に感じた寂しさをどう紛らわせたのか、将来の伴侶となるパートナーと出会ったきっかけについてお話いただきます。
看護師を辞めて、習慣も宗教も違う日本へ

2010年に来日したときは同郷の人が少なく、とても寂しい想いをしたとか。
――ヌヌンさんはとても日本語が上手ですね。どこで勉強しましたか?
EPA(経済連携協定)の制度を利用して、2010年に日本で働くことが決まったときに、インドネシアの日本語コース(JIAEC)で3か月、来日してから日本語クラス(AOTS)で4か月間、勉強しました。
――15年前にも日本にいらしていたんですね。インドネシアでは何をしていましたか?
看護師として病院に勤めていました。看護師の友だちから「日本で働きたい人を探している」という話を聞いて、「行きたい!」と思いました。ずっと日本のことが好きで、いつか日本で働きたいと思っていたんです。
――そうだったんですね。来日してからはどんな生活を?
半年の間、日本語や介護のことを学んできた仲間と一緒だったのでとても楽しかったのですが、勉強が終わると、みんな離ればなれになってしまったんです。私は都内の介護施設に派遣されましたが、山梨とか大阪、沖縄に行った人もいました。
――15年前だと施設で働く外国人は少なかったでしょう?
私が働いていた施設では、ひとりだけでした。周りが日本人ばかりで緊張しましたし、分からないことばかりで寂しかったですね。
――ヌヌンさんはイスラム教徒ですよね。お祈りの時間とか、どうしましたか?
施設長にお願いしました。お祈りの時間になったら、5分だけ仕事を中断したいって。その当時はまだ日本語が今ほど上手に話せませんでしたが、何となく理解してくださって、許可をもらいました。
―― 言葉のあまりよく分からない、宗教も習慣も違う。ストレスが溜まりますよね。
ウインドーショッピングしていました(笑)。日本人のスタッフはみなさん優しいんですが、言いたいことがあっても言葉にするのが難しくて、会話が続かないんですよね。日本人同士で楽しそうに会話していても、私は言葉がよく分からないし。分からない専門用語も多かったので、日本人スタッフも大変だったと思います。
――ひとりぼっちは寂しすぎます。
EPAで先に来日していた看護師の先輩が、イスラム教の信者を中心にしたグループを教えてくれたんです。そこから友だちが少しずつ増えていきました。
日本で働いている間にSNSでつながった男性と帰国後に結婚!

敬虔なイスラム教徒のヌヌンさん。1日5回の礼拝を欠かしません。
――最初に日本に来たときは何年ほど働いたんですか?
6年です。3年間働いて介護福祉士の資格を取ってさらに3年、施設で働きました。
――いったん帰国したのはどうしてですか?
SNSを通じて、友だちが今の夫を紹介してくれて、半年ほど遠距離恋愛をしていました。彼はインドネシア、私は日本に住んでいたので会うことはできません。話が合うし、とても良い人だだったので「彼と結婚したい」と思って、帰国を決めました。
――ドラマチックですね。何度か会ったんですか?
SNSと電話で話をするだけで、一度も会っていません。2016年に帰国したとき、初めてて対面しました(笑)。思っていた通りの人だったので、すぐに結婚しました。
――結婚後は?
結婚後もずっと日本で働きたいと思っていたのですが、妊娠してしまって。子育てもあるから「しばらく日本へは行けないな」と諦めていました。
夫は縫製工場で働いていて、私は専業主婦として家事と育児を担当していました。「働きたい」という気持ちもありましたが、看護師として働くにはブランクがあって自信がなかったんです。介護士の仕事はインドネシアにはないので、特技を活かすことができませんでした。
――帰国してからは、ずっと家事と育児をしていたんですね。
そうです。でも、せっかく日本で介護福祉士の資格を取ったし、日本語も話せるようになったので、日本で働きたい気持ちが強くなっていきました。
――そうですよね。もったいないですよね。
日本で働きたいことを夫に相談したら賛成してくれたので、日本での勤め先を探し始めました。すぐ勤め先も決まったのですが、妊娠してしまって。
――喜ばしいことですけど、タイミングが悪かったですね。
そうなんです。しかも、流産してしまったんです。
決まっていた日本の勤め先にはお断りの連絡をして、しばらく身体を休めることにしました。
そうこうしているうちに、また妊娠したんです。2人目の子どもがほしかったので、とても嬉しかったです。
――それは良かった!
2人目を出産して1歳になったとき、日本で働く準備を始めました。
――ヌヌンさんのように、介護福祉士の資格があって日本語も話せると、オファーがたくさんあったでしょう?
いったん働きはじめたら勤め先を変えるのは面倒なので、長く働ける施設を探していました。「よさこいホーム」はインドネシア人が多く働いていて、雰囲気も良さそうだったので、この施設にしよう!と決めました。
インドネシアから来日して介護福祉士の資格を取得したヌヌンさん。帰国して結婚、出産を経て再来日するまでのお話を伺いました。
後編では単身で来日して家族と離れて寂しい想いをしたこと、働きながら家事と育児をこなす大変さについて、日本で働く外国人へのアドバイスをご紹介します。
撮影/森 浩司
撮影協力/みどり国際交流ラウンジ