上を目指すには覚悟と勇気が必要です【もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事 Vol.46 ヨガ講師/パーソナルトレーナー木村 匠さん #2】
ヘルスケア業界のさまざまな職業にフォーカスして、その道で働くプロにお仕事の魅力や経験談を語っていただく連載『もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事』。
前回に続き、ヨガ講師/パーソナルトレーナーの木村 匠さんにインタビュー。ヨガ講師になるにあたり追求した知識と、働き方の改革により、ヘルスケアのお仕事を生業にすることができたという木村さん。
中編では、このお仕事に就く魅力と必要な覚悟、続けていくためのアドバイスをお聞きします。
お話を伺ったのは…
ヨガ講師/パーソナルトレーナー 木村 匠さん
全米ヨガアライアンスE-RYT200、YACEP認定講師。NESTA認定パーソナルフィットネストレーナーやタイ古式マッサージセラピストなど、さまざまな資格を持つ。解剖学や運動力学など幅広い知識を元にしたレッスンと講義で、初心者から現役インストラクターまで幅広く指導を行う。
Instagram:@takumichris
稼げない資格を発行する罪悪感から、稼ぐ方法を伝えることに
——前編で、インストラクターだけで生計を立てるのは難しいというお話をお聞きしました。では、インストラクターやセラピストになることのメリットは何だと思いますか?
やりがいはとてもあります。目の前の人の健康のために何かに取り組むというのは、とても素晴らしいことだし尊重したいです。また収入面についても、限られた時間を有効活用して収入を得たい人や、副業としてやりたい人ならすごくいい仕事だと思います。
だから目標をどこに設定するか、ということですよね。空いた時間で効率よく収入を得たいということであれば、セラピストやパーソナルトレーナーはすごく強いです。
——どんな人におすすめですか?
現実的に月どのくらい収入が必要なのかを明確にして、その設定額によって勧めるべきかどうかを僕は考えます。パートタイムでも本業でも、他に収入源がある人には問題なくすすめられます。
もちろん月収100万円を目指したいというのであれば、その方法を伝えることもできます。でも本当にそれを叶えるには、覚悟と勇気が必要になる。そして覚悟と勇気あったとしても、全員が成功できるかというと業界のレベルがまだ上がっていないのも事実です。
ヨガインストラクターもセラピストも養成講座を担当していますが、資格を発行する立場でありながら、稼げない資格を取らせることに罪悪感を持つこともあります。インストラクターが生業になっていない人は多い。それが本当に嫌だったので、実体験として「こうしたらよくなったよ」ということを提供する場も作りました。
——「サクセスオンラインヨガ塾」ですね。
はい。内田薫先生と一緒に、インストラクターを生業にしていくための情報を伝えています。薫先生がヨガを仕事にしていくための学びを伝え、僕はヨガを教えるための知識を担当。「仕事にするための知識」と「指導するための知識」は別で勉強する必要があると以前から思っていたんですが、「サクセスオンラインヨガ塾」を始めて改めて正しかったと実感しました。
ヨガインストラクターはヨガの勉強をいっぱいして、自分が上手くなったら仕事がもらえる。そう思っている人は多いけど、実際は違う。こんなことをする必要があるんだよ、ということを、座学とデモレッスンを通して伝えています。
始めて4カ月、受講している方には月収が3倍になったという人や、レッスンを持てなかったのに急に週4本担当することになった人もいます。そうしてインストラクターを生業にできる人が増えたらと思っています。
プラスαを提供できる知識と、自分の体が仕事を支えてくれる
——ヘルスケア業界を目指す方にアドバイスをお願いします。
まずは体の機能をきちんと勉強すること。セラピストとしてマッサージで僕より優れている人はいっぱいいます。でもその人たちにできない運動指導が、僕にはできる。最後の5分で家でできる運動指導を伝える、それが強みになっています。
運動指導も要は体の使い方の話ですから、体の機能の知識が役立ちます。この筋肉が弱いから痛むとわかっていれば、そこのトレーニングを教えてあげれば、施術の効果も変わってくるんです。
ヘルスケアを教えてくれるセラピストはいても、運動を教えてくれるところはあまりないんです。毎回お客さんに宿題を与えることができるスキルは、きっと役立ちます。自分の仕事の幅を広げるためにも、ぜひ学んで欲しいです。
あと絶対大事なのは、ヨガでもトレーナーでもセラピストでも、自分自身がしっかり体、とくに体幹を作ることですね。自分の体力不足が施術や技術の限界になり得る仕事ですから。
——たしかに、体を痛めているセラピストさん、けっこう多いですね。
とくにタイ古式マッサージをする人は、指だけで施術したら必ず傷めます。完全に相手の体に乗る手技もあるので、自分の体幹がしっかりしていないと相手が痛いだけになる場合もあるんです。気を抜いて施術していると、自分の腰を持っていかれることもある。
そうならないように、普段から腰が反りすぎないように体幹を強化したり、壁でいいから指で腕立て伏せをしたりというトレーニングが必要です。
そうやってトレーニングしたことは、そのままセルフケアとしてお客さんに伝えることができます。運動することと、運動しているから運動指導ができるということはセット。みなさん見逃している部分なので、セラピストならそこまで頭にいれておくといいのかなと思います。
学んだことを実践し、フィードバックしてまた学ぶ。その繰り返し
——このお仕事の魅力はなんですか?
僕の場合、この仕事のメインは「学び」にあります。生活の中心を何時間勉強するかというところに置いていて、空いた時間に仕事を入れる感じ。そして学びの答えを教えてくれるのが、お客さんなんです。
勉強はすごくいいことだけど、結局のところ机上の理論でしかありません。インプットばかりして何も使えていないのでは、知識にはなっても知恵になっていない。だからレッスンやセッションは、僕にとってアウトプットの場です。
現場に出ることで、本当に勉強した通りだった!とか、逆にわからなくなって深く学ぶきっかけになったりします。学んだことに対して、リアルで答え合わせをしている感じ。そして勉強したことが正しければ、結果的にとても喜ばれるんですよね。そこが本当に楽しいです。
——木村さんにとっては「学び」がとても大切なんですね。
そうですね。学ぶのが好きというのもありますが、稼いでいくためにも必要なことだと思います。この仕事を生業にしていくには、講座を主催して自分で講義を作り出すことが大切ですから。高い収入目標を設定するうえで、勉強は必須です。
僕はこの仕事で、①勉強 ②実践 ③フィードバック を繰り返しているだけ。フィードバックから得たことを元に、また新しい勉強をしていく。そのサイクルを続けていくことが、ヘルスケア業界で続けていくためには必要だと思います。
ヘルスケア業界で続けていくための3か条
1:勉強(インプット)
2:実践(アウトプット)
3:精査(フィードバック)
学び、実践して精査するというサイクルが続いていくという木村さんのお仕事スタイル。どんな知識も体験も、木村さんを通すことで誰かの学びになっていきます。講師として働く中でも、知識をアップデートし続ける木村さんの姿勢は、人に健康を伝えるお仕事にとってとても大切なことなのではないでしょうか。
次回後編では、木村さんがレッスンやセッションで大切にしていること、ヘルスケアに携わる人に知って欲しい「オリエンタルアジャストメント」について教えていただきます。
取材・文/山本二季
撮影/米玉利朋子(G.P.FLAG)