介護職員処遇改善加算の算定要件とは? 5つの加算区分を詳しく解説 2019年10月からはどうなる?
介護職員の仕事は精神的・肉体的負担が大きいにもかかわらず、それに見合った賃金水準に達していないことが問題視されていました。この問題の改善策として2017年に介護報酬改定された際に「介護職員処遇改善加算」が導入されます。
この「介護職員処遇改善加算」は2019年10月に改定されることが決まっています。今回はこの制度の詳細と刷新後の適用条件などをご紹介します。
介護職員処遇改善加算とは?
介護職員の処遇に関する問題は、近年とくに大きく取り上げられるようになりましたが、介護職員処遇改善加算に関しては以前から実施されていた制度でもあります。ここでは、まずこの制度の基本的な仕組みや成り立ちをみていきましょう。
介護職員の賃金改善のため実施|給付は事業所へ
介護職員処遇改善加算の導入前は、「介護職員処遇改善交付金」によって介護職員の労働条件の改善が図られていました。介護職員処遇改善交付金制度では、一定の条件を満たした事業所へ加算金を給付しました。
しかし、介護職員処遇改善交付金制度は2011年度で廃止され、その代わりとして介護職員処遇改善加算が導入されたのです。
5区分の算定要件を詳しく解説!
介護職員処遇改善加算には5区分の算定要件が定められており、それらのいずれかに該当することが給付を受けるための絶対条件となっています。また、該当する区分の種類によって給付金額が変動します。まずは算定要件を詳しく見てみましょう。
まずは3つのキャリアパス要件を抑えよう
もっともベースとなる処遇改善加算Ⅰの算定条件には、3つのキャリアパス要件が定められています。最初に、これら3つのキャリアパス要件の詳細をひとつずつみていきましょう。
キャリアパス要件Ⅰ
介護職員処遇改善加算のキャリアパス要件Ⅰでは、厚生労働省が定めた規定を満たすために給与・職務内容・役職などを整備し、明文化することを定めています。
キャリアパス要件Ⅱ
介護職員処遇改善加算のキャリアパス要件Ⅱは、研修などを通して介護サービスの質の向上に努めていることを定めています。
キャリアパス要件Ⅲ
介護職員処遇改善加算のキャリアパス要件Ⅲは、勤続年数や資格取得による昇給の仕組みを設けていることを定めています。
処遇改善加算Ⅰの算定要件とは?
キャリアパスのⅠ~Ⅲと併せて以下の3点をすべて満たすと、処遇改善加算Ⅰに区分されます。
- ・処遇改善計画を提出しているか現在処遇改善中であること。また、指定の行政機関あるいは算定を行なう事業所へ適切に報告していること
- ・労働基準法などの違反や労働保険未納がないこと
- ・新たな定量的要件(職場環境等要件)を満たしていること
これは、2015年4月から処遇改善計画提出月の前月までに実施された処遇改善の内容(賃金は除く)や、かかった費用を職員に周知している必要があるとしています。
処遇改善加算Ⅱの算定要件とは?
介護職員処遇改善加算Ⅱでも、処遇改善計画の立案・実行および適切な報告、労働基準法などの違反・労働保険の未納がない、新たな定量的要件(職場環境等要件)を満たしている、という3点が絶対条件です。さらにキャリアパスのⅠとⅡを満たしている必要があります。
処遇改善加算Ⅲの算定要件とは?
介護職員の処遇改善加算Ⅲの条件は、基本的な部分では処遇改善加算Ⅱと同様です。
しかし、「新たな定量的要件(職場環境等要件)を満たしていること」ではなく「既存の定量的要件を満たしていること」となっており、2008年4月から処遇改善計画提出月の前月までに実施された処遇改善の内容(賃金は除く)や、かかった費用を職員に周知している必要があるとしています。
キャリアパスはⅠとⅡのどちらかを満たしていればよいという点で違いがあります。
処遇改善加算Ⅳの算定要件とは?
介護職員の処遇改善加算Ⅳでは、処遇改善計画の立案・実行および適切な報告と労働基準法などの違反・労働保険の未納がないことが絶対条件となります。さらにキャリアパスのⅠとⅡのどちらかを満たすか、既存の定量的要件を満たしている必要があります。
処遇改善加算Ⅴの算定要件とは?
介護職員の処遇改善加算Vでは、処遇改善計画の立案もしくは実行とそれを適切に報告していることだけが条件となり、キャリアパスは関係しません。処遇改善加算のなかではもっとも条件が緩く、この要件を満たせない事業所はないといっても過言ではないでしょう。
【注意】処遇改善加算Ⅳ・Ⅴは廃止
介護職員処遇改善加算のⅣ・Ⅴはすでに廃止が決定しています。廃止の理由は、介護業界全体のサービスの質の向上や法律に違反している事業所への加算をなくすためです。サービスの質の向上や法令順守を心掛けていれば対象から外れることはないでしょう。また、経過措置期間の終了日は現時点で明示されていません。
5区分でどれくらい違う? 区分別加算率を解説
介護職員処遇改善加算における加算率はサービス区分によって変化する仕組みになっています。区分ごとの詳細な加算率は以下のとおりです。
サービス区分 | 加算I | 加算II | 加算III | 加算IV | 加算V |
---|---|---|---|---|---|
(介護予防)訪問介護 、夜間対応型訪問介護 、定期巡回・随時対応型訪問介護看護 | 13.70% | 10.00% | 5.50% | Ⅲにより 算出した単位×0.9 | Ⅲにより 算出した単位×0.8 |
(介護予防)訪問入浴介護 | 5.80% | 4.20% | 2.30% |
||
(介護予防)通所介護 、地域密着型通所介護 | 5.90% | 4.30% | 2.30% | ||
(介護予防)通所リハビリテーション | 4.70% | 3.40% | 1.90% | ||
(介護予防)特定施設入居者生活介護、地域密着型特定施設入居者生活介護 | 8.20% | 6.00% | 3.30% | ||
(介護予防)認知症対応型通所介護 | 10.40% | 7.60% | 4.20% | ||
(介護予防)小規模多機能型居宅介護 | 10.20% | 7.40% | 4.10% | ||
(介護予防)認知症対応型共同生活介護 | 11.10% | 8.10% | 4.50% | ||
介護老人福祉施設、地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護、(介護予防)短期入所生活介護 | 8.30% | 6.00% | 3.30% | ||
介護老人保健施設、(介護予防)短期入所療養介護(老健) | 3.90% | 2.90% | 1.60% | ||
介護療養型医療施設、(介護予防)短期入所療養介護(病院等) | 2.60% | 1.90% | 1.00% |
2019年10月からはどうなる? 情報をチェック!
介護職員処遇改善加算は2019年10月に刷新されることが決まっています。これに伴って新たに施行される制度を「介護職員等特定処遇改善加算」と称し、この制度が導入されることでこれまで適用されていた加算率などにも変更が生じます。続いては、この新たな制度について解説します。
介護職員等特定処遇改善加算が創設
介護業界における離職率の高さや賃金の低さは長らく問題になっていました。さらに2019年10月には消費税の増税が予定されていることから介護業界の負担増が懸念されるため、それを軽減するために介護職員等特定処遇改善加算の導入が早急に進められたのです。
介護職員処遇改善加算からどこが変わる?
介護職員等特定処遇改善加算では、上述したI~Vの5つからⅣとⅤを除いた3つの処遇改善加算のすべてに該当していることが加算対象になるための絶対条件となります。
介護職員処遇改善加算Ⅰ~Ⅲに加えて、3つの概要が算定に含まれます。
- ・職場環境において、定められた取り組みのうち、1つ以上を実施していること
- ・介護職員処遇改善加算への取り組みは、ホームページに掲載するなどして見える化すること
- ・業務内容や給与体系などの就業規則について根拠を明示し、職員に周知すること
上記の概要をどれだけ満たしているかによって、介護職員等特定処遇改善加算ⅠとⅡのいずれかに区分され、それをもとに加算率が決定されます。この加算率は、サービス区分ごとに異なります。
介護職員待遇改善加算は介護職員の賃金改善のために創設されたもの
介護職員待遇改善加算は仕事として介護に携わる人を金銭面でサポートする制度といえます。また、2019年10月に介護職員待遇改善加算が刷新され、新たに介護職員等特定処遇改善加算が導入されると、各々の事業所におけるリーダー級の人材は賃金が増加することから、業界全体での定着率も上がることが見込めるでしょう。
出典元
・厚生労働省「介護職員処遇改善加算」
https://www.mhlw.go.jp/
・厚生労働省「介護職員等特定処遇改善加算」
https://www.mhlw.go.jp/