知識と技術を常にアップデート。どんな悩みにも対応できるトレーナーに!【もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事Vol.72 /Comfortablebody 江上仁志さん】#1
「ヘルスケア業界」のさまざまな職業にフォーカスし、その道で働くプロに、お仕事の魅力や経験談を語っていただく連載企画「もっと知りたい! ヘルスケアのお仕事」。
今回お話を伺ったのは、パーソナルトレーニング×PNFストレッチを行うパーソナルジム「Comfortablebody」の代表・江上仁志さん。
一般の方のパーソナルトレーニングだけでなく、子どもや産前産後のお母さん、アスリート、障害を持った方にも対応。養成スクールの講師も務めているトレーナーから直々に指導してもらえこともあり、人気が集まっています。
前編では、パーソナルトレーナーになったきっかけや、独立時の思い、資格取得のメリットについてお話を伺いました。
「トレーナーになるのもいいんじゃない?」
アルバイト先の店長の一言からパーソナルトレーナーに!
――パーソナルトレーナーになったきっかけは?
もともと運動が好きで、高校生の時は部活でサッカーをやっていました。3年間、部活中心の生活をしていて、当時は漠然と「将来は運動に関わる仕事がしたい」と思っていたのですが、引退したとたん燃え尽きてしまって。親には「とりあえず大学に行け」って言われたのですが、なんだかそれも嫌で。1年間フリーターをすることにしたんです。
とはいえ、将来のことをちゃんと考えないと、という気持ちもあって、アルバイト先の店長とか、一緒に働いていたパートのおばちゃんに進路相談にのってもらっていました。その時、「スポーツトレーナーとか、いいんじゃない?」と言ってくれたのが当時の店長。その店自体はお弁当屋さんだったんですが、プライベートで通っている整体院の先生がトレーナーもやっている人だったらしく、僕が「運動関係の仕事がしたい」と言っていたので、ピンときたそうです。
それがきっかけで、トレーナーの養成スクールに通うようになりました。最終的にはNSCAっていうトレーナー協会の資格を取り、同スクールの卒業生に紹介してもらったジムで働くようになったんです。
――どこにきっかけがあるか、わからないものですね! ちなみに、初めて働いたジムは、どんなジムだったんですか?
パーソナルトレーニングと骨盤矯正を専門にしているところでした。そこの企業理念は「やってみたいことを形にしよう」で、社長はもちろん、スタッフそれぞれアイディアを出し合って、いろいろチャレンジしていましたね。僕も当時、子どもを対象にしたトレーニングに興味があったので、子ども向けのパーソナルトレーニングのメニューを作らせてもらいました。
――素敵な企業理念ですね。
そうですね。その社長の考え方が、今の僕にも引き継がれています。
そこで、いろいろなことにチャレンジしていたら、自分で開業してみたいと思うようになりました。いちスタッフとしてではなく、独立して、経営者になって、広い視野を手に入れたいなと。会社が用意してくれた場所だと、どうしても甘えがある気がしたんですよね。当時まだ若かったですし、もし失敗しても取り返しがつくなと思い、思い切って開業しました。
順調だった経営に、コロナの大打撃!
今思えば、働き方を見つめ直す、いいきっかけになった
――独立当初、経営面はどうでしたか?
前職で集客の担当をしていたこともあって、予想以上に経営はうまく行っていました。ただその頃、パーソナルジムがすごく増え始めたんです。当時、僕も一般のお客さまを対象にした、いわゆる「パーソナルトレーニング」を掲げていたのですが、危機感を感じて……。何か特徴が必要だと考えた結果、産前産後のお母さんを対象にしたレーニングを専門にしたんです。
その時僕が調べた限りでは、産前産後を対象にしたジムがあまりなかったのと、前職のジムで骨盤矯正や、子どものパーソナルトレーニングをやっていたのでちょうどいいなと。地域に密着したジムを目指しました。
――どの後、どうでしたか?
順調でした。集客のために、区民センターに場所を借りてグループレッスンをしたり、親子料理イベントを開催したり。まずお母さん同士の交流を目的に来てもらって、その中で「産前産後のパーソナルトレーニング」を認知してもらうようにしたんです。おかげで順調に会員の方も増えていったのですが、問題は……、コロナですよね。
正直、パーソナルジム自体は、一般のジムに比べてコロナの影響を受けていないと思うんです。個人指導なので、たくさんの人と接触しませんし。ただ、僕が対象にしていたのは妊婦さんだったり、小さなお子さんがいるお母さんだったりするので、みなさん気になりますよね。予約が軒並みキャンセルになり、集客イベントももちろんできなくなり、大打撃でした。
当時、僕以外のスタッフも数名いたのですが、相談した結果、一時解散。今は僕一人でやっています。
――なにか解決策は?
産前産後のお母さんだけを専門にせず、改めて一般の方も対象にして、間口を広げました。あと、それまでは地域密着を狙って、ファミリー層が多い住宅街のやっていたのですが、渋谷区に移転。ここなら、仕事帰りの人でもアクセスしやすいかなと思ったんです。
あと、今年からトレーナーの養成講座も始めました。もともと日本PNFテクニック協会というところで講師をしていたのですが、自身でもやってみようと。いい人材を見つけられたらスカウトして、またスタッフを雇いたいと思っています。
資格や肩書きはフリーランスで活動する上で
重要なブランディング。
自身の知識や技術もアップデートできる!
――養成講座は、一般の方のトレーニングとはまた違う難しさがありそうですね。
そうですね。ただ、これからトレーナーの資格を初めて取ろうっていう人の指導は、そんなに難しくはないです。強いていうなら、専門用語をできるだけわかりやすく伝えることでしょうか。どんな資格もそうですが、教本って文字だらけだし、堅苦しく書かれたものが多いし、出鼻をくじかれちゃいますよね。なので僕は、イラストがたくさん入った参考書も使うようにしています。
大変なのは、すでに資格を持っていて、ステップアップとして新しい資格を勉強しようとしている人の指導。そういった人は現場経験があるので、結構鋭い質問をすることもあり、たまにドキッとします。でも先生が「わからない」ではまずいので……、身が引き締まりますね。
――ご自身も資格をたくさん取ってらっしゃいますもんね。
知識と技術を向上させるために、気になった資格を片っ端から勉強しています。おかげで一般の方だけでなく、妊婦さんやお子さん、アスリート、障害を持った方などにもトレーニングやストレッチの技術を提供できるようになりました。
――ちなみに江上さんの肩書きに「adidas認定のパーソナルトレーナー」とありますが、資格を取った経緯や、こういった認定トレーナーになるメリットは?
一番は、フリーランスで活動する上でのブランディングでしょうか。いろんなパーソナルトレーナーがいるなかで、どう差別化できるかを考えてチャレンジしました。
僕が持っているNSCAの資格も、トレーナーをやっている人からすれば超メジャーな資格ですが、一般の人にはわかりづらい。そもそもパーソナルトレーナーは、どうしても資格が必要なわけじゃないので、資格を持っていなくても名乗れちゃうんですよ。そんななかで、信頼感を持ってもらうためにどうしようかと考えている時に見つけたのがadidasの認定トレーナー。純粋に、adidasが伝えているトレーニングってどんなんだろう、っていう興味もありましたが、認定されることで肩書きに加えられるので、メリットになりますよね。
――試験は難しかったですか?
ブランド名を名乗る以上、一定の知識や技術は求められますが、すごく大変、というわけではなかったです。フリーランスで活動しようとしている人は、取っておいて損はないと思いますよ。
思いがけないことがきっかけでパーソナルトレーナーの道に進まれたという江上さん。コロナの打撃を受けても、視点を変えて動き出す柔軟さとパワーこそ、人気の秘訣かもしれません。
後編では、現在の働き方やこの仕事のやりがい、今後の目標などを伺います。
取材・文/児玉知子
撮影/喜多二三雄