心も体も整えてQOLを上げる独自メソッドで、町医者のように愛されるスタジオに!【もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事Vol.74 /ヨガ・ピラティスインストラクター 西畑亜美さん】#1
「ヘルスケア業界」のさまざまな職業にフォーカスし、その道で働くプロに、お仕事の魅力や経験談を語っていただく連載企画「もっと知りたい! ヘルスケアのお仕事」。
今回お話を伺ったのは、ヨガ・ピラティスインストラクター 西畑亜美さん。
ヨガとピラティスを組み合わせた独自のメソッドで、インストラクターとして活躍する西畑さん。ご主人と一緒に、武蔵小杉と北参道でスタジオも経営されていて、今回は北参道のスタジオで取材をさせていただきました。
前編では、インストラクターになったきっかけや、独自メソッドの特徴、そこに込めた思いについてお話を伺います。
心も体もボロボロだったOL時代。
そんな私を救ってくれたのが「ヨガ」だった!
――インストラクターになったきっかけは?
もともとはOLとして働いていたんですが、仕事がすごくハードで……。朝出社して終電で帰る生活が毎日続いていたんです。すると体に不調が出始めて、今思えばちょっと鬱になっていたのかもしれません。うまく呼吸ができなくなったり、何もないのに急に涙が出てきたり、夜もあまり眠れなかったり。夜中に母を起こして、病院に連れて行ってもらったこともありました。
そんな時に出会ったのがヨガ。当時心も疲れていましたが、腰が痛いとか、肩こりが取れないとか、体にも違和感が出ていたので、少しでも体を動かして運動不足を解消しようと思って始めたんです。もともと何か運動をしていたわけではなかったし、体も硬い方だったので、最初から上手にできたわけではないんですが、何より気持ちがスッキリしてリフレッシュできたんですよ。
なかでも印象的だったのは、インストラクターの方達がすごく生き生きしていたこと。ヨガ初心者ではありましたが、「いつか私もインストラクターになれたらいいな」と思うほど、みなさん素敵で。それがきっかけの一つですね。
――たしかに、インストラクターの方達って、みなさん明るくてポジティブで素敵ですよね。ちなみにその後、お仕事は?
3年半経ったタイミングで退職しました。もっと早く退職する選択肢もあったんですが、なぜか「3年以上は続けなきゃ」っていう思いがあったので。やりたいことが明確に決まってないのに辞める勇気もなかったですし。
でもヨガに出会って、インストラクターになりたいっていう夢も見つかって、前へ進む勇気が持てたんです。今思うと、その選択は間違ってなかったし、そのおかげで今がある。ヨガに救われたと思っています。
――退職後は?
ヨガスタジオに就職しました。当時はまだ資格とか何も持っていなかったので、まずは受付から。並行してスクールに通い、最終的にはそこのスタジオでインストラクターデビューをしました。
しばらくそこで働いていたのですが、プライベートで色々あって……。実は父が亡くなったんです。辛かったし、心にぽっかり穴が空いたようでした。それをきっかけに、自分の今後についてもいろいろ考えるようになり、スタジオを退職。フリーで活動し始めました。
――フリーになってどうでしたか?
父を失った寂しさを埋めるかのように、さらにヨガにのめり込み、ヨガ哲学をスポンジのように吸収していきました。当初は持っているレッスン数も少なかったんですが、インストラクターとしてのレッスンの他に、いろんな先生方のレッスンに参加していたら、それを見ていたスタジオの方から声をかけてもらうようになったんです。最終的には月100本ぐらいのレッスンを持っていましたね。忙しかったですが、すごく充実していました。その頃、ピラティスに出会ったんです。
ヨガで「心の調整」、ピラティスで「体の調整」。
心と体、両方のバランスを整えて「一番好きな自分」に!
――ピラティスに出会ったきっかけはなんだったんですか?
ヨガのインストラクターをやっていて、気になることがあって。まず、毎日ヨガをしているのに、なかなか理想のボディラインにならないんです。それに、ヨガをしていて肉離れをおこしたり、怪我をしたりすることもあって、「こんなに一生懸命やっているのになんで?」って不思議でした。
そこでいろいろ調べたら、体は動かすだけじゃなくてほぐしたり緩めたりしてあげることも大事なんだ、と。ただがむしゃらに体を動かすだけじゃなく、骨や筋肉を正しい位置に整えるよう意識しないと、オーバーワークになって怪我の原因になってしまうってわかったんです。それに気づいた時、「あぁ、なんて私の知識は浅はかだったんだ」とショックでしたね。
そもそも、ヨガって「心の調整」をゴールにしています。もちろんいろんな流派があるので一概には言えませんが、基本的には筋肉の使い方とか、正しい骨の位置とか、そういうのを突き詰めたレッスンすることはあまりないんですね。そう考えると、ヨガの知識や技術だけでは補えないものがあるなと。そこで勉強し始めたのがピラティスでした。
ピラティスは、ヨガに比べて「体の調整」を重視しているんです。もちろんこれにもいろんな流派がありますが、私が学んだ「PHIピラティス」はリハビリテーションやコンディショニングをベースにした考え方なので、骨格や筋肉の構造など意識したトレーニングになります。これをヨガと組み合わせれば、ベストなトレーニングができるのでは、と。
――それが今のメソッドに繋がるんですね!
はい。もちろんヨガにはヨガの良さがあります。ヨガのポーズを通して、自分自身と向き合ったり、いろんなポーズができるようになっていく過程で自信がついたり。何より私自身、ヨガに出会って前向きになれました。そんなヨガの「心の調整」に、ピラティスの「体の調整」が合わさると、外見的にも変化があったり、怪我をしなくなったり、心も体も均整が取れるようになるんです。それを続けることで、不調のないベストなコンディションをキープできれば、仕事だってプライベートだってQOLが上がって、毎日ハッピーでいられますよね。これが私たちのメソッドであり、「一番好きな自分になる」っていうコンセプトですね。
一人一人のお客様に寄り添う、
「町医者」のようなスタジオになりたい!
――お客様に満足していただくために、大切にしていることはなんですか?
みなさんそれぞれ目的が違うし、求めているゴールも違うので、まずはそれをしっかりヒアリングして、そのゴールに向かって一緒に頑張ること。正直、こういうレッスンに通うには、費用もそれなりにかかります。それ以上の何かを返せるように、生徒さんの目標は自分の目標でもあると思って、ベストを尽くすようにしています。
――具体的には?
一番は「寄り添う」こと。大手のスタジオだったら、お客様の数も多いので、なかなか一人一人のお客様と向き合うことができないと思うんです。でも、私達のような個人スタジオなら、一人一人のリクエストに応えることができます。
あと、ここのスタッフは整体師だったり、理学療法士だったり。夫も鍼灸師の資格を持っています。ヨガやピラティスだけでなく、いろいろな専門的知識や技術を持って悩みを解決してあげることができるんです。
例えば「腰が痛いからしばらく運動ができない」っていう生徒さんも、マッサージや鍼など、別のアプローチで力になってあげることができますよね。「産後でまだ動きたくないけど、歪んだ骨盤をどうにかしたい」っていう方だったら、運動以外の方法でケアしてあげられる。悩みって人それぞれ違うけど、一人一人に寄り添う町医者のようなスタジオを目指しています。
ハッピーなオーラに包まれている西畑さんですが、ヨガに出会う前は体に不調をきたすほど辛い思いをされていたとは驚きでした。ヨガに出会い、ピラティスに出会い、心と体が変わっていくお話は、今悩みを抱えている方達にぜひ読んでいただきたいエピソードです。
ちなみにご主人との出会いも、ピラティスがきっかけだったそう! ヨガで前向きになった心は、幸せを引き寄せる力も高まっていたのかもしれませんね。
後編では、現在の働き方やこの仕事のやりがい、未来のセラピストに向けたアドバイスを伺います。
取材・文/児玉知子
撮影/喜多二三雄