確かな技術と横並びの関係を大切に。独立から23年「アピア身体均整院」松岡博子さん
身体均整法をベースにした、身体均整師として23年活動してきた松岡博子さん。スクールを卒業後すぐに仲間とともに独立し、代表を任されることになった松岡さんは、「アピア均整院」を順調に拡大し、現在では2店舗を経営しています。前編ではなぜそのようなことが可能になったのかをお聞きしました。「運がよかった」という松岡さんですが、身体均整法をベースにした確かな技術と、お客さまと横並びの関係を大切に、現在の地位を確立されたそうです。
今回、お話を伺ったのは…
松岡博子さん
「アピア均整院」代表/身体均整師会副会長・代表理事/身体均整師
身体均整法学園で身体均整法を学び、卒業と同時に仲間ととともに独立。その後、高田馬場に「アピア均整院」を開業。不調を抱える人や悩みを抱える人を改善に導くことで人気を集め、現在では祖師ヶ谷大蔵に「アピア均整院ドゥ」と2店舗を構える。また、著書は「背骨の『ゆがみ』直し体操」、「ゆがみをリセット!骨盤ほぐし体操」など40冊を超えるほか、雑誌掲載やテレビ出演も多数。
体に触れればその人の不調が分かる、身体均整師に可能性を感じて
――松岡さんが身体均整法学園に入ったのは、どのようなきっかけだったのでしょうか。
元々はアートセラピーの仕事をしていて、自分の視野を広げようと思ったのがきっかけです。アートセラピーというのは精神科の病院のデイケアと老人福祉施設のご高齢の方や、痴呆を患っている方に、絵を描いてもらって心を癒す療法なのですが、ただ絵を描いてもらうだけではなくて、声掛けもすごく大切で。お話していくなかでその方の体調や精神状態などを見極めるのですが、体に直接触れるセラピストの仕事をすれば、声掛けしなくても、本人に聞かなくても、どんな状況かが分かると思ったんです。
なので最初からセラピストとして独立しようと思ったわけではなくて、アートセラピーの仕事をより深めるためのインプットのつもりでした。学園には隔週土日コースに入学して2年間通いました。
――そこからどのように独立されたのですか?
卒業したタイミングである方から、「いい物件があるから、卒業生数名で身体均整院をやらないか」とお声掛けいただいたんです。私自身はアートセラピーの仕事も続けるつもりでしたし、1人で独立しても最初はお客さまをいっぱいにすることはできないと思っていたので、とてもいい話だと思って。オーナーはそのお声がけしてくださった方が務めるということだったので、一緒に卒業したクラスの5人とともに個人事業主として店舗を立ち上げました。
卒業と同時の独立にはなりましたが、身体均整師は国家資格が必要な仕事ではありませんので、卒業前から学園の研修センターでお客さまへの施術をしていたことと、みんなが一緒だったこともあり、そこまで大きな不安はありませんでしたね。
その後2年ほどしてからオーナーもやってくれないかと打診を受けまして、引き受けたところでアピア均整院が生まれました。最初はアートセラピーと並行していましたが、6年ほど経ったときに身体均整師に仕事をしぼりました。移転を経て院内も広くなり、おかげさまでアピア均整院は20年を超えています。
6センチの結果に電話が鳴り止まない日々
――集客はどのようにされてきたのでしょうか?
当時はタウン誌が最盛期のころで、ある企画に掲載された反響が大きかったです。それが「腕のいい施術所を訪ねる」というような企画で、複数の整体師が施術を行いウェストを何センチ細くしたかが掲載されたんですね。私が施術を行ったところ6センチという結果が出て。その記事が出てからはひっきりなしに電話がかかってくるような状態になったんです。あとは独立直後に出版もして、その本がなかなか好評でメディアにも出るようになったので、おかげさまで集客に困ったことはありませんでした。
――6センチも。具体的にはどのような施術を行うことで、そのような結果が出せるのですか?
身体均整法で、腹部調整やむくみをとる施術を行った結果でした。ただ状況にもよるので、どなたでもかならず6センチの結果が出せるとは限りませんが。その方は痩せている方で、私も結果にとても驚きました。
――身体均整法というのはどのような特徴があるのでしょうか?
カイロプラクティックや整体、オステオパシー、スポンデロテラピー、経絡理論などの技術を体系化したものです。大きな特徴は、体のゆがみはあって当たり前だという考え方です。人間にはそれぞれのゆがみにあったほどよい姿形(しけい)があります。これを12種類に分けて把握することから、身体均整法の学びはスタートするんです。ただ激しくゆがんでいたり、逆に一切ゆがみがない状態だと、痛みや不調につながる可能性があります。そこでほどよい姿形に向けて調整をしていくのが身体均整法です。
――ではその12種類に分けられた姿形によって施術も変わるわけですね。
はい。たとえば肩こりという同じ症状があっても、改善するための「ほどよい姿形」はそれぞれ違うんです。その方の体の特質に沿って調整をしていきます。なかには鍼灸師の資格を持っていらして、鍼灸を使われる先生もいらっしゃいますが、私どもは手技だけで調整します。それによって充分な効果を出すのも身体均整法の特徴です。
言葉に注意を払いながら、ときには一歩進む勇気を持って
――身体均整師として心がけてきたことはどんなことでしょうか?
この仕事はお客さまと1対1で対峙する仕事ですから、人と人とのご縁を大切にしたいと思ってやってきました。ここにいらっしゃる方の多くは体に不調があります。体が弱っているときというのは、心も弱っていることが多いので、何気なく言った言葉がその方を深く傷つけてしまうことがあります。ですから言葉には細心の注意を払って、その方の心情を分かりたいと思ってここまできました。
一方で一歩先に進むためには、その方の現状を伝えたり、耳の痛いことを伝えたり、多少痛みの伴う言葉を伝えないといけないこともあると思うんです。施術でもそうなんですよ。状況を変えるために行う施術が、多少の痛みを誘発することがある。人生でも行動するときや、だれかとの関係性を変えて一歩先に進むとき、何か痛みを伴うこともあるはずです。でも痛みを伴っても先に進まないといけないと思うんですね。だからこそなるべく反応が少なくてすむような言葉を選びたいし、それがうまく伝わるような言い方をしていきたいなと思っています。
――それは難しそうですね。
関係性作りがとても大事ですよね。私は医者ではありませんので、お客さまに指示をするような上下の関係性ではありません。お友達というと失礼かもしれませんが、横並びというんでしょうか。そういう関係性を大事にしてきました。その方が少しでも早く悩みや不快感から解放されることを目指して、意見は伝えることが大事なのかなと思います。
――身体均整師として20年以上活動されているそうですが、長く活躍するために必要なことはどんなことでしょうか?
毎日すべてのことを新鮮に受け止めて、感性を鈍らせないということですね。たとえば何十年も付き合ってきたお客さまでも、この人はこんな人だと決めつけずに、その方を見るのが大切ではないかと。そうすることで毎回会う度に新しい発見をすることができると思います。
後編では著書は40冊以上、雑誌掲載やテレビ出演も多数の松岡さんに、なぜそのようなことが実現できたのかを伺いました。松岡さんが何より大切にしてきたのは制作者の意図をくみとる姿勢。そのうえで、読者や視聴者が分かりやすい言葉遣いを心がけてきたそうです。後編もお楽しみに!