理学療法士のセカンドキャリアとは?|セカンドキャリアの考え方とキャリアアップ例
「人生100年計画」といわれる現代で、長い人生のなか、この先のキャリアプランを立てることや異なる職への転身を選択する、「セカンドキャリア」が注目されています。
今回は、理学療法士の人を対象に、セカンドキャリアの目的や考え方を解説し、キャリアアップ例を紹介します。
セカンドキャリアとは?
まずはじめに、「セカンドキャリア」とはどういうものなのかについて見ていきましょう。
セカンドキャリアという言葉は、もともとは引退をしたプロスポーツ選手や定年退職した人、出産・育児を終えた人などが、「第二の人生の職業」として就く仕事のことを意味していました。
現在では、元の意味も持ちながらやや変化し、新たな職業・働き方を選択したり、キャリアアップしたり、中高年層がこれまでの経験やスキルを生かして新たなキャリアを築いたりすることも含むようになっています。
また、企業側も、定年後のシニア世代や、子育てが一段落ついた女性などを積極的に雇用する姿勢を見せていることから、節目でキャリアを終わらせず、長く続く人生をより充実させるため、セカンドキャリアを意識して働くという認識が広がるようになりました。
セカンドキャリアの目的とは
セカンドキャリアの目的は、年代によって異なります。年代別のセカンドキャリアの代表的な考え方にはどんなものがあるのか、見ていきましょう。
20~30代|スキルの獲得、転身
セカンドキャリア、というと定年前後のシニア世代になってからや、出産・子育てが一段落したころの印象が強いかもしれませんが、20〜30代の若い世代でもセカンドキャリアについて考える必要があります。
就職してから仕事になれてきたころに今後の人生や生き方、キャリアを意識してみましょう。今までの経験や得たスキルを洗い出して自分の強みを客観視し、新たな実績を積むことでキャリアアップの可能性が高まります。
40代|さらなるスキルアップ
40代でのセカンドキャリアの主な考え方と目的は、さらなるスキルアップ計画を立てることです。
セカンドキャリアに対し、新卒で積んだキャリアをファーストキャリアと呼びますが、ファーストキャリアで積んだキャリアにおける知識や、スキルを広げることを考える必要があります。
今あるスキルや知識をさらに深めたり、新たなスキルを獲得したりして、自分のライフプランと合わせ、キャリアを長期的に築くことを意識してみましょう。
50代以降|新しい働き方
50代以降は、定年後も見据えてキャリアプランやライフプランを今一度見直してみる時期です。老後も視野に入れ、これまで培ったスキルを活かして今後どのように働き続けるかを考えてみましょう。
しかし一方で、知識や技術を積んできたがゆえに、新たな一歩を踏み出しにくい、ということも多い時期です。定年が近づいているとはいえ、「人生100年計画」の現代のなかではまだまだ現役。新しいステージへ動き出すフットワークや、日々更新されていく技術や環境、情報への適応力が求められます。
理学療法士のキャリアアップ例
セカンドキャリアは世代の違いなどによって、さまざまな目的や考え方があります。そのなかから、長く働き続けるためのスキルの獲得やスキルアップをピックアップし、理学療法士のキャリアアップ例に焦点をあてて見ていきましょう。
1.専門性を高める
理学療法士のキャリアアップの一例としてまず挙げられるのは、専門性を高めることです。理学療法士の業務のなかで、特定の分野の専門性を高め、スペシャリストになることを目指してみましょう。
たとえば、公益法人 日本理学療法士協会には登録理学療法士制度というものがあります。これは、卒業後の5年間を義務教育的な位置づけとし、前期・後期の研修を通して、多様な障害像に対応できる能力を育成する制度です。
研修を修了した理学療法士を「登録理学療法士」とし、さらに5年ごとの更新を必要とすることで、一定水準の知識と技術を維持して理学療法士の質を保つことを目的としています。
また、より専門性の高い臨床技能の取得を目的として、認定・専門理学療法士制度というものが用意されています。これは登録理学療法士を対象とし、臨床実践分野において秀でている理学療法士や、学問的指向性の高い理学療法士として認定し、理学療法士の資格を持っていることに対して価値を上げることを目的としています。
2.職場で役職を得る・管理職に就く
職場内での役職を得たり、管理職に就いたりすることも、理学療法士のキャリアアップです。ひとつの職場に長く勤め、主任やチームリーダーなどの役職を経てマネージャーや科長、施設長などといった管理職を目指します。
これらの役職の名称は職場によって異なるため一例ですが、いずれの立場も、施設や病院に所属する理学療法士やほかのスタッフをまとめる役割を求められます。
3.関連資格を取得する
キャリアアップといわれると、資格の取得を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。理学療法士も資格を取得することで、キャリアアップすることができます。
業務に関連する資格を取得することで、スキルの専門性を高めたり業務の幅を広げたりすることができるようになります。理学療法士の業務に関する資格の一例を紹介します。
心臓リハビリテーション指導士
心臓リハビリテーション指導士は、心臓リハビリに関する共通認識と知識や用語の共有化と円滑なカンファレンスやミーティングのために発足した、心臓リハビリテーション指導士認定制度によって取得できる資格です。2部制の講習会を受講したのち、試験に合格する必要があります。
呼吸療法認定士
呼吸療法認定士は、日本胸部外科学会・日本呼吸器学会・日本麻酔科学会の3学会が合同で理学療法士をはじめ看護師や作業療法士など5種類の資格所持者を対象に認定している資格です。
呼吸器疾患や合併症をわずらう患者に対し、呼吸療法や呼吸管理をおこなう医療チームのレベルを向上させることを目的としています。
認知症ケア専門士
日本認知症ケア学会が認定する認知症ケア専門士は、認知症ケアに対する高いスキルと知識、さらに倫理観を持つ専門技術士を育成し、認知症ケアの向上と保健・福祉への貢献を目的として設立された資格です。1次試験と2次試験に合格したのち、研修を修了して登録申請をすることで資格を取得できます。
義肢装具士
義肢装具士は、義肢装具士法で「医師の指示の下に、義肢及び装具の装着部位の採型並びに義肢及び装具の製作及び身体への適合を行うことを業とする者」とされている資格です。医師の診断にもとづき、患者の体に合わせた義肢や装具の製作、装着などをおこないます。
義肢装具士は国家資格で、養成校で必要な単位を取得して卒業したのち、試験に合格することで資格を取得することができます。
健康運動指導士
健康運動指導士は、保健医療関係者と連携して効果的で安全な運動プログラムの作成や指導をおこなうための資格です。
講習会を受講するか、養成校を卒業したのち、認定試験に合格して健康運動指導士台帳に登録されると、資格の取得となります。講習会の開催や養成校の認定、試験の実施、台帳の登録など、すべて公益財団法人 健康・体力づくり事業財団がおこなっています。
4.独立・起業する
リハビリや整体、美容関連事業など、理学療法士の知識と今までつちかってきたスキルを活用できる仕事で独立や起業をするのも、キャリアアップのひとつです。
ただし、理学療法士は、原則医師の指示のもとで理学療法をおこなうものとされています。理学療法士の資格だけでは医療行為はできず、整骨院やマッサージ院の開業をすることはできないため注意しましょう。
たとえば、整骨院なら柔道整復師、マッサージ院ならあん摩マッサージ指圧師などの資格が必要になるため、あわせての取得も検討してみてください。
キャリアプランを明確にしてセカンドキャリアを考えよう
「人生100年計画」ともいわれる現在では、長く働きつづけ豊かな人生をおくるために、新たな職業の選択やキャリアアップなど、セカンドキャリアの考え方が重要になっています。
セカンドキャリアは年代によっても考え方が変わりますが、なにを目的とするのかキャリアプランやライフプランを明確にして考える必要があります。理学療法士という資格を取得して働いてきた知識や経験をもとに、セカンドキャリアを考えてこの先の働き方に活かしてみてください。
引用元
公益社団法人 日本理学療法士協会:認定・専門理学療法士制度について
公益社団法人 日本理学療法士協会:登録理学療法士制度について
特定非営利活動法人 日本心臓リハビリテーション学会:指導士・認定医
公益財団法人 医療機器センター:「3学会合同呼吸療法認定士」認定制度
一般社団法人日本認知症ケア学会:日本認知症ケア専門士
厚生労働省:義肢装具士国家試験の施行
e-Gov法令検索:義肢装具士法
公益財団法人 健康・体力づくり事業財団:健康運動指導士 健康運動実践指導者