理学療法士が公務員になる方法はある?試験や給与、公務員として働くメリットとデメリットをまとめて紹介
理学療法士の多くは、民間の医療機関や福祉施設などで働いていますが、公務員としても働くことが可能です。
この記事では、理学療法士が公務員になる方法とあわせて、試験や給与、公務員として働くメリットとデメリットを紹介します。
理学療法士が公務員になる方法|募集人数は少ない
理学療法士は公務員を目指すことができます。ただし、民間の医療機関や福祉施設に比べて募集人数が少ないため、求人情報のこまめなチェックと試験対策が必要です。
理学療法士が公務員試験になる方法について詳しく紹介します。
就職希望先による公務員試験に合格する|一般的な公務員試験とは異なる
地方自治体が運営する病院などが設定した試験に合格することで、公務員理学療法士になることができます。
働ける場所についてはのちほど詳しく紹介しますが、東京都内を例にあげると、職員が公務員のあつかいとなる公立病院は15施設ほど。民間の医療機関に比べて母体が少なく、募集人数も限られています。
一般的な公務員試験とは違い、同じ地域内であっても希望先によって試験日程や採用日、試験内容が異なるのが特徴です。
受験資格と試験内容
公務員理学療法士の受験資格と試験内容について紹介します。
受験資格は30歳未満・60歳未満などさまざま
受験資格は、理学療法士の資格を取得していること以外は、30歳未満・60歳未満などさまざまです。募集要項に必ず記載されているので、確認しましょう。
試験内容
試験内容も、受験資格と同様に施設によって違います。一般的には一次試験・二次試験があり、一般教養や理学療法士の専門知識、面接や小論文などを設定しているようです。
ほかにも、一次試験で面接と適性検査の両方をおこなう施設や、書類選考のみ、論文試験のみという施設もあります。
一般教養は養成校で習う内容ではないため、教材を買って勉強したり、予備校や通信講座などを受講したりしながら、試験対策をすることが大切です。
民間の病院や福祉施設で働くこととの違い
はじめにも紹介したように、理学療法士の多くは個人や法人が経営する医療機関や、高齢者や障がい者のための福祉施設で働いています。
そういった民間の医療機関や福祉施設で働く場合は会社員の扱いとなりますが、地方自治体の職員として公務員で働く場合とどのような違いがあるのでしょうか。
給与の大きな変動や廃業のリスクが少ない
会社員と公務員との違いは、給与の変動や廃業のリスクの差です。
地方自治体の病院の目的は、地域に必要な医療を提供することです。公務員として働く場合、病院の経営が厳しくなったとしても、基本的には税金でまかなわれるため廃業するリスクは少なく、給与も安定しています。
民間の医療機関や福祉施設は、経営不振に陥ってしまうと給与が下がったり、最悪の場合廃業してしまったりするというリスクがあります。
公務員として働ける場所
公務員として働ける場所は、県立・市立といった公立病院と地方自治体の2つです。
公務員ではありませんが、公務員と同じように公益性や公共性の高い職務を担い、同等の給与や待遇で、守秘義務や刑法が適用される「みなし公務員」と呼ばれるものもあります。たとえば、厚生労働省所轄の独立行政法人が運営する国立病院の職員は、みなし公務員です。
ここでは、公務員として働ける公立病院と地方自治体での仕事内容や特徴を紹介します。
公立病院|国立・県立・市立
公務員として扱われる公立病院は、主に県立病院や市立病院です。仕事内容は民間の病院とそれほど違いはありません。
しかし、ほとんどが総合病院で、それぞれ疾患の異なる多くの患者の対応をしなくてはならないため、たくさんの知識が必要とされるでしょう。
厚生労働省が直轄している国立病院は「国家公務員」の扱いとなり、それ以外の厚生労働省所管の国立病院は「みなし公務員」として扱われています。
ほかにも、国や地方自治体が設立や運営に関わっている国立・県立の大学病院では「みなし公務員」として扱われますが、私立大学病院では公務員とみなし公務員のどちらにも該当しません。
地方自治体|県庁・市役所
県庁や市役所での仕事は、臨床現場とは大きく違います。患者の対応をすることはほとんどなく、介護や医療に関する保険の利用を希望する住民の書類を作成したり、照会したりする事務的な仕事がメインです。
ほかにも、地域に必要な医療・介護・リハビリなどのサービスに関する事業企画や制度を作成したり、住民の健康増進を図るためのイベントの企画や運営に携わることもあります。
公務員として働いた場合の給与や待遇
ここからは、公務員として働いた場合の給与や待遇について紹介します。初任給は民間よりも低い傾向にありますが、昇給しやすいのが特徴です。
なお、公務員の給与は、総務省のホームページでも公表されています。
総務省:令和3年 地方公務員給与の実態
医療職の平均基本給は30万円程度、年収はおよそ510万円|勤続年数によって昇給
公務員理学療法士の給与は、総務省による区分では「薬剤師・医療技術職」に該当します。令和3年の平均基本給は諸手当を含まず30万円程度で、賞与にあたる期末・勤勉手当の合計が約150万円程度。これは基本給の約5カ月分に相当することから、年収(給与×12カ月分+賞与5カ月分)はおよそ510万円です。
公務員は、年に一度勤続年数に応じて基本給が上がるため、初年度は平均月収よりも低くなっています。また、短大卒か大卒かでも初任給が変わり、地方によっても差があるため、住んでいる地域の給与額を確認してみてくださいね。
引用元
総務省:令和3年 地方公務員給与の実態 第5表 職種別職員の平均給与額
待遇は各種手当のほかに定期健康診断など|育休や産休の申請がしやすいところも
公務員の手当や福利厚生などの待遇は、とても充実しているのが特徴です。
住居手当・通勤手当・扶養手当・期末勤勉手当などの諸手当に加えて、各種祝金、有給休暇や特別休暇、退職金や年金などの福利厚生もあります。さらに、行政機関だけでなく公立病院も、基本的には暦通りの休日です。
また、定期健康診断を受けることができたり、人間ドックの助成制度などもあります。育休や産休の相談や申請もしやすいところが多いようです。
退職金や賞与額などは勤務先によって違いがあるため、事前に確認しておくとよいでしょう。
公務員として働くメリット
民間で働く理学療法士が多いなか、公務員として働くメリットはどのようなものがあるのかを紹介します。
雇用や収入、休日が安定している
これまで紹介したように、民間の医療機関や福祉施設で働くよりも雇用や収入、休日が安定していることは大きなメリットです。
経営が厳しくなったとしても廃業するリスクは少なく、経営不振で職を失ってしまう心配がほとんどありません。給与が著しく下がることもないため、安心して長く働くことができます。
また、シフト制で土日や祝日も勤務があるところが多い民間に比べて、公立病院は土日祝日だけでなく、お盆やお正月なども休診日としているところが多く、行政機関も暦通りの休日です。しっかりと休める分、プライベートを充実させることができるでしょう。
福利厚生や待遇が充実している
こちらもすでに紹介しましたが、年に一度の昇給が決まっているほかにも、住居手当や通勤手当、退職金や年金、特別休暇、育休や産休など、福利厚生や待遇が充実しているところも魅力的です。
賞与や退職金が、民間に比べて高く設定されているだけでなく、年に一度昇給するため長く働くほど収入が高くなることもメリットと言えます。
公務員として働くデメリット
つぎに、公務員として働くデメリットについても紹介します。
副業が禁止されている
民間の医療機関や福祉施設によっては、副業やダブルワークが認められているところもありますが、公務員は基本的に副業が禁止されています。
たとえば、休日や勤務時間外に非常勤としてほかの病院や施設で働いて報酬を得たり、自営業者として収入を得たりすることは認められていません。アルバイトも同様にNGです。
副業収入を得たいという人や、自営業と両立した働き方がしたいという人にとってはデメリットになるといえます。
現場の意見が上層部に届きにくい
公立病院や行政機関の意思決定は、運営する自治体がおこないます。そのため、現場からの改善を望む声や意見などが上層部に届きにくく、承認を得て反映されるまでにも長い時間がかかってしまうというデメリットがあります。
民間の医療機関や福祉施設のなかには、院長へ直接相談をしたり、現場の声が届いたりしやすく、反映されるのが早い組織もあります。一方公務員の場合は、昔ながらの体質が残っていることが多く、風通しが悪いと感じてしまう人もいるようです。
理学療法士でも公務員になれる。募集人数が少ないためこまめにチェックし、試験に備えよう
理学療法士は、公務員試験に合格すれば公務員として働くことができます。給与や福利厚生も充実していて雇用も安定しているため、ひとつの場所で長く働きたい人や、休日をしっかり取りたい人におすすめです。
ただし、公立病院は施設数も募集人数も少ないため、求人情報をこまめにチェックし、チャンスを逃さないようにしましょう。
一般的な公務員試験とは違った独自の試験がおこなわれる施設もあるので、試験内容を確認し、しっかりと試験対策をおこないましょう。
引用元
総務省:令和3年 地方公務員給与の実態 第5表 職種別職員の平均給与額