アーユルヴェーダの考え方を軸に、共感してくれる人々と共にMOTHERをスタートさせた【もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事Vol.111 アーユルヴェーダ・ラージャヨガ講師・管理栄養士 岡清華さん】#1
ヘルスケア業界のさまざまな職業にフォーカスして、その道で働くプロにお仕事の魅力や経験談を語っていただく連載『もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事』。
今回は、5000年以上も前からインドやスリランカで伝わり、世界最古の医学と言われているアーユルヴェーダを広める活動をしている、岡清華さんにインタビュー。岡さんが提唱するのは、現代の人に合わせた「「Japanese modern Ayurveda(読み:ジャパニーズモダンアーユルヴェーダ)(日本式アーユルヴェーダ)」」。現代の不規則な生活習慣により、心や気の乱れ、さらには体の不調に悩まされる人々に向けて発信をしています。
前編では、岡さんがアーユルヴェーダに関心を持ったきっかけや、Mother(マザー)株式会社を立ち上げるまでの道のりについて、お話をお聞きします。
お話を伺ったのは…
アーユルヴェーダ・ラージャヨガ講師・管理栄養士 岡清華さん
高校卒業後は、地元にある大学にて食物栄養学を学び、管理栄養士の資格を習得。大学卒業後は、東洋医学に興味を持ち、カウアイ島にて本質的なアーユルヴェーダを学ぶ。その後、数々の飲食店にアーユルヴェーダの知識を活かしながら、アルバイトやヨガ講師として勤め、2019年にMOTHERを創設。2020年にはMother株式会社を設立し、アーユルヴェーダの教えを現代の日本にフィットさせる方法として「Japanese modern Ayurveda(日本式アーユルヴェーダ)」を提唱。現在は、Mother株式会社の代表取締役を務めながら、「Japanese modern Ayurveda(日本式アーユルヴェーダ)」を広めるために活動中。
栄養学を学び、アーユルヴェーダに興味を持った
――「Japanese modern Ayurveda(日本式アーユルヴェーダ)」とは?
アーユルヴェーダを現代の日本の生活に合わせて活用しようという発想で考えたのが「Japanese modern Ayurveda(日本式アーユルヴェーダ)」です。
アーユルヴェーダを学ぶとなると一般的に、自然の中で修行するイメージがあり、ネイルや化粧などの美容を諦めなければいけない、など…現代の生活とだいぶかけ離れているように思われがち。生活をしながら、気軽に始めてみようと思われないことが多いんです。でも、私は忙しくて疲れている現代人にこそ、アーユルヴェーダのような教えは必要だと思っています。何も本来のアーユルヴェーダの型に無理やり当てはめなくても、日常を豊かに過ごせるヒントとして取り入れられたら良いのではないかと考えたものです。
――では、岡さんとアーユルヴェーダが出会った経緯をお聞かせください。
はじめに栄養学を学んでいたのですが、学ぶうちに西洋医学に対して疑問が浮かび、行き着いたのがアーユルヴェーダだったんです。
――入口は栄養学だったのですね。
そうなんです。高校生の頃にダイエットに目覚めたのがきっかけで、まずは栄養学に興味が湧きました。
当時、ネットでダイエット方法を調べると過度な方法が多く、それによって体調を崩す人も少なくありませんでした。本来、「食」という字は、「人が良くなる」と書いて「食」と書くのに、「食」によって健康が脅かされる人がいる。その事実を知り、栄養学が学べる大学へ進学を決めました。食と体のメカニズムなどを学び、卒業後に管理栄養士の資格を習得。学ぶうちに、西洋医学的な部分になんとなく違和感を覚えるようになったんです。その違和感から興味を持ったのが、東洋医学由来のアーユルヴェーダでした。
大学を卒業したあとは、アーユルヴェーダを学びに海外へ。学ぶ中でアーユルヴェーダと関係性が深いヨガを学び、「全米ヨガアライアンス」も習得しました。
――その後の経歴は?
実は、大学在学中からモデルの仕事をしていました。当時は、芸能活動を軸に食や健康の大切さを伝えていけたら良いなと思い、大学卒業後は地元の関西から上京。事務所に所属しながら、飲食店のアルバイトを掛け持ちしていました。朝はコールドプレスジュースの仕事、夜はおでんのお店など。コールドプレスジュースのお店では、アーユルヴェーダの知恵を使い、スパイスを使用したカレーの提供もさせていただき、良い経験になりました。
24歳になった頃、そろそろ今後の進路を考えなければと思い始め、経験がなかった会社員を経験しようとヨガスタジオに就職。ゆくゆくは自分自身が本当に良いと思うものだけを自分にしかできない形でお届けしていきたいとの考えがあり、私には社会に出て働く経験が必要だと感じたための進路でした。
ただ、それまでの働き方とのギャップを強く感じ、コミュニケーションもうまくとれず、精神的に参ってしまって。もともとポジティブ思考の私でしたが、落ち込む日々が続きました。このままでは心も体も病気になってしまうと感じ、2年勤めて退職しました。
この会社員として働いた経験が、MOTHERができるきっかけになりました。
――どんなきっかけだったのですか?
当時よく言われていて心に残っているのが、「あなたは普通のことができない、普通以下の人間だ」と言われたこと。今でも思い出すと、グサッと刺さる言葉です。世の中にはポジティブに捉えられずに落ち込んでしまう人がほとんどな気がして。みんなが同じ仕事をするにしても、人によって向き不向きがある。それは、個性によるものだと思うんです。私はその経験から「普通のことができない」=「普通じゃないことができる」と変換し、現在のMOTHERの活動のきっかけに繋げられたんです。
Mother株式会社の前身がスタート! 考えに共感してくれる人たちが活動の原点に
――具体的にどんな人をイメージして活動を始めたのですか?
第一に、アーユルヴェーダの考えに共感していただけること。加えて、自分の個性を見極め、そして受け入れて、自分も周りも認められて「何をしているのか(DO)」ではなく、「どんな取り組みをしているのか(BE)」といった本質に共感していただける方です。
――どんな取り組みから着手したのでしょう?
まずは、どんなサービスを展開したらアーユルヴェーダを身近に感じてもらえ、生活に取り入れたいと思っていただけるのか考えることから。コミュニティとして様々なライフスタイル、ライフステージの方々に集まってきていただいたタイミングで、どんなサービスがあったら嬉しいか、どんな商品があったら生活が豊かになるのか、意見を交換し合うところから始めました。
話がまとまり、アーユルヴェーダを取り入れたカフェをプロデュースする話など、飲食を通して発信する活動をスタートさせてから1年に満たないくらいで、コロナ禍に入ってしまったんです。
――コロナ禍の中、どのようにして事業を安定させたのですか?
アーユルヴェーダを取り入れたカフェをプロデュースする話や飲食を通して人と対面で関わる企画はコロナ渦でほぼ継続が難しくなってしまいましたが…スタート当初から、アーユルヴェーダについて興味がある人に向けてオンライン講座を開いていて。コロナ禍前から、全国各地から学びたいと言っていただくお声が多く、コロナ禍の前からオンラインで行っていたんです。おかげで、オンラインが必須になった時代にスムーズに対応できましたし、安定した結果、事業を安定させることができました。
さらに、グッズ販売が一つの突破口になったと感じます。やはり、アーユルヴェーダはまだまだ世間の認知度や共感が浅いため、「得体」の知れないイメージを抱かれやすいです。そこで、カタチ(物)で表現すれば伝わるのでは?と思い、アーユルヴェーダに関係のあるオイルやハーブティーなどのグッズ販売を始めました。「得体」を具現化したことで、アーユルヴェーダが身近に感じられたんだと思いますね。
だんだん、オンライン講座やグッズ販売などで結果を出し始め、大手百貨店やイベントへの参加を持ちかけられるまでになったのですが、会社ではなく個人で活動していたことが原因で多くの取引ができないことを知り、今後の事業展開も見据えて、会社としてやっていくことを決意し、Mother株式会社を立ち上げることにしたんです。
自身の経験をきっかけに多くの人々の生活を豊かにするべく、日本式アーユルヴェーダを広めるために奮闘する岡さん。小さなコミュニティをとうとう一つの会社にまで成長させました。後編では、Mother株式会社のコンセプトや活動、アーユルヴェーダの展開方法についてお聞きします。
取材・文/東 菜々(レ・キャトル)
撮影/生駒由美