お客様の悩みを「多角的」に捉えてベストを尽くすべく、幅広い知識を身につける【もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事Vol.118パーソナルトレーナー 倉田勇樹さん】#2
ヘルスケア業界のさまざまな職業にフォーカスして、その道で働くプロにお仕事の魅力や経験談を語っていただく連載『もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事』。
今回は、サラリーマンからパーソナルトレーナーに転身し、東京恵比寿駅にあるボディメイクジム「KEYFIT恵比寿」で鍛錬を重ねる倉田勇樹さんにインタビュー。7年間勤めた会社を退職し、念願のパーソナルトレーナーデビューした倉田さんは、デビュー後の集客に悩みます。
前編では、パーソナルトレーナーを目指したきっかけや、安定した職業から転身する際の家族との向き合い方などを伺いました。後編となる今回は、デビュー後の挫折から克服方法まで、目指したいトレーナー像についてお聞きします。
お話を伺ったのは…
パーソナルトレーナー 倉田勇樹さん
大学卒業後、金属加工会社の営業職を7年勤務。退職後はパーソナルトレーナーを目指し、「KEYFIT恵比寿」で4ヶ月研修をしたのちにパーソナルトレーナーとしてデビュー。現在は、デビューして5年目。ボディビルやダイエットなどの筋力トレーニング以外にも、体の不調に対するアドバイスなど、幅広い客層に支持されている。
集客のためにオンラインジムを導入し、アルバイトを辞めても収入が得られる仕組みを考案
――デビュー後、挫折しそうになった経験はありますか?
集客のためにSNSの発信を行っていましたが、思うようにはいかず。唯一の収入源である、アルバイトをしていたフィットネスクラブも続けていたのですが、コロナ禍で休業となってしまったんです。
――それからどのような対策を?
オンラインジムの提案をしました。
うちのジムはSNSに積極的で、1人あたりのSNSフォロワー数が1万人超えと発信力がある。加えて「オンライン」は「SNS」とも親和性が非常に高く、集客がしやすいと考えて提案をしたところ、僕がリーダーとなってオンラインジムを導入することになったんです。
――結果はいかがでしたか?
SNSの発信力に加えてトレーナーは個性派揃い。それがお客様にウケたのか、思ったより反響をいただきました。
もともとジム通いをしていた方はもちろん、普段ジムに通う時間がとれないママ層にも響いたようで、僕の収入も捻出できるようになりました。
――倉田さんが提案していたオンラインメニューの内容を教えてください。
体を激しく動かして追い込む「HIIT(ヒート)」というトレーニングです。バービージャンプやマウンテンクライマーなどの種目を20秒間全力で続けて10秒間休む…これを繰り返していきます。特別なメニューではないのですが、「自宅でできるとてもキツイトレーニング」として好評いただいたようです。
SNSで注目を集めるためには、「チームワーク」がカギ!
――集客のために使用していたSNSではどんな投稿をしていたのですか?
トレーニング方法はもちろん、もともと学生の頃に先輩のサポートをしていた経験を活かして、ダイエット中の方におすすめの食事レシピの投稿もしていました。もともと料理は苦手ではなかったですし、ダイエットを含め体づくりには必要な項目だと思ったんです。
さすがにレシピの投稿を見てジムまでお越しいただくお客様はいないと思いましたが、レシピを見たことで僕のアカウントに飛び、トレーニングにたどり着く流れに持っていければ良いなと思って投稿をしていました。
――投稿が注目されやすいように意識していることは?
当たり前ではありますが、不快感を与えない投稿を意識しています。バズらせようとしてわざと炎上ギリギリの投稿もよく見かけますが、そのような投稿は避けて確実で信頼できる情報を発信することを意識しています。
あとは、仲間との普段の会話や投稿からヒントを得たり、仲間の投稿がバズっていれば「何に気をつけたのか」「どんな状況だったのか」と、裏側の細かいアドバイスをもらって参考にしています。これもチームワークならではの強みだと思いますね。チームの1人がバズれば、RTやフォロワーからたどってそれぞれのチームの人も拡散されやすいメリットもありますし。みんなで協力してジムの魅力を発信することにもつながると思っています。
各地域にひと施設。ヘルスケアに特化したサービスを普及させたい
――では、実際にお客様と接するときはどんなことに気をつけていますか?
その人の症状をしっかりヒアリングし、「一つの側面」だけではなく「多角的」に見るように気をつけています。一つの側面だけを見てメニューを提案することはとても危険です。ケガだと思っていたことが、俯瞰して多角的に見ると自律神経の乱れやホルモンバランスが関係していることもあって。そうしたとき、一つの側面から間違ったメニューを提案すると、悪化させてしまう恐れもあるので多方面から見て原因を考える必要があるんです。
一般的に受け入れられている方法でも、人によって合う、合わないがあります。一人ひとりの人のライフスタイルから伺い、改善点を一緒に考えて日常生活でも無理のない範囲でその方にとってベストを模索するようにしています。
――お客様ごとの生活習慣を考慮して提案いただけるのは安心できると感じます。さまざまな方に提案するにあたって必要なことは?
僕は守備範囲の広さをアピールポイントにしているため、いろいろな可能性に対応できるように幅広い分野について学ぶように意識しています。
実は、体の動きが悪いとき体以外の機能が影響していることもあって。例えば、歯並びや歯の噛み合わせが悪いとか、眼球の動き、女性の場合は産後の影響があるかなど。そういった症状に直接的な施術はできませんが、幅広く知識を学んでおくことで、アドバイスやその人に適したメニューの提案とその分野の専門家との連携が可能になるんです。
――ずばり、トレーナー職の魅力は何でしょう?
パーソナルトレーナーって、お客様のパーソナルに合わせることは大前提ですが、トレーナー自身のパーソナリティを活かせることも強みだと感じます。僕自身、これからも自分の強みを増やしてさまざまなお悩みに寄り添えるようになることが目標です。
――今後の目標もお聞かせください。
僕は現在、逗子に住んでいますが、逗子にも健康をサポートする施設があったら良いなと考えています。
都内には優秀なトレーナーがたくさん増えています。各地域にも優秀なトレーナーはいますが、圧倒的に母数が違うんですね。さらにトレーナーを始めて分かったのですが、ダイエットや体を鍛える目的以外にも慢性的な体の不調に悩むお客様が多いんです。そうした状況で、東京に来ないと優秀なサポートが受けられないというのはあまり健全ではないと思っていて。僕が思っていたよりトレーナーが与える影響力は大きいと感じたことから、各地域に優秀なトレーナーが必要だと思いました。「地産地消」といった言葉があるように、各地域のヘルスケアを充実させることが、それぞれの地元の活性化にもつながると思うので実現できたら良いなと思っています。
異業種から転身し、成功できた秘訣
1.自分が将来どうなりたいのか考え、ロールモデルを決める
2.自己分析をして挑戦し、すぐに結果が出なくても焦らない気持ちを保つ
3.いろいろな悩みに寄り添えるように知識の幅を広げておく
取材・文/東 菜々(レ・キャトル)
撮影/SHOHEI