SNS総フォロワー数200万人超えの人々へ「ズボラストレッチ」を広めていく【もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事Vol.82 ストレッチトレーナー/SNSマーケター 深井裕樹さん】#2
ヘルスケア業界のさまざまな職業にフォーカスして、その道で働くプロにお仕事の魅力や経験談を語っていただく連載『もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事』。
今回は、「ズボラストレッチ」をアラフィフ・アラフォー世代に向けて広めたストレッチトレーナーの深井さんにインタビュー。
本格的にYouTube活動を始め、1年あまりで約126万人を記録。バズったきっかけの動画や動画を制作する上でのこだわりとコツをお聞きします。
お話を伺ったのは…
ストレッチトレーナー/SNSマーケター 深井裕樹さん
ストレッチ専門店で働き、入社1年ほどで個人で歴代最高売上を達成。その後、マーケターとしても実力をつけ、分社化。YouTubeで「ズボラストレッチ」を配信するために完全独立し、マーケターやトレーナーとして動画配信などを中心に活動。1年9ヶ月で126万人を突破し、現在も多くの「ズボラー」に向けたストレッチを配信中。現在はSNSでの発信のほか、女性誌LDK連載、元・体操選手 田中理恵さんのストレッチ動画の監修を務めるなど活動は多岐にわたる。
チャンネル登録者数138万人! 「ズボラストレッチ」チャンネル
「親近感」を全面に出し、年代を問わない親しみやすさを意識
――どんな方をターゲットにしていますか?
バリバリとジムに通って減量を目指す!という方よりも、運動が苦手で普段から積極的に行わない人や経験が少ない人をターゲットとしています。これは、僕がストレッチ専門店で勤務していた時に気づいたのですが、運動が嫌いな人ってジムに行かない傾向がある。そうした方たちでも無理なく運動が習慣化し、続けられるようにと思って焦点を当てました。
――では、年代は問わず…なんでしょうか?
最初は明確に決めていませんでしたが、今は若い世代よりも年配やご高齢の方をターゲットにしています。というのも、トレーナー時代からなぜか50〜60代の年齢層の方から可愛がっていただくことが多くて。自然にこちらが合わせにいった感じになりました(笑)。
――想定しているターゲット層の方から支持を得るために意識していることを教えてください。
自宅で動画撮影をしているんですが、部屋はあえて汚いまま撮影しています。もちろん僕自身もTシャツ姿で。親近感を持ってもらえるような「ありのまま」の姿を映すように意識しています。
周りのトレーナー系ユーチューバーって綺麗な部屋で完璧にユニフォームを着こなして…という構図が多いじゃないですか。僕はその反対を狙っているんです。どうしたら親近感を持ってもらえるかと考えた結果のブランディング方法ですね。
――その親近感が人気の理由だとお見受けしました。では、登録者数が増えるきっかけとなった動画の特徴を教えてください。
足痩せに効果的なストレッチを紹介した動画。わかりやすくふっくらしているフリー素材の足の写真にしたんです。一番サムネイルのクリック率がよかったですね。これまでアップしていた動画の約1.7倍くらい反応がよかったです。
その動画を見た視聴者様からは、「タイトル通り私の足だと思いました!」というコメントが多く寄せられました。「ストレッチでこのくらい細くなりますよ」って細い足の写真を選ぶよりも、ストレッチ前のリアルな太さの足の写真を選ぶ。そうすることで自分の足と比較され、動画を見るきっかけにつながったと感じますね。
さまざまな人が視聴することを考えた動画づくりをする
――サムネイルもさることながら、どの動画のタイトルもインパクトがあると感じます。どんなところから着想を得ていますか?
これは自分で閃いてつけていく…というよりは、マーケティング業界では有名な「A/Bテスト」を通して反応がいいワードをひたすら検証しています。具体的には、Web上にある数多くのサイトや広告などを最適化するためのテスト。Aパターン、Bパターンを作成してそれぞれのワードの反応を見るんです。その反応が良かったワードを動画でも使用して、より多くの人に見てもらえるように考えています。明確なリアクションを数字で表した方が結果を出すには最適ですからね。
――細かいところまで考え抜かれているのですね。他にも動画を撮影する際にこだわっているところを教えてください。
基本的には寝転んだ状態で、スマホを見ながらストレッチすることを前提にしたフォームを意識していますね。そもそも携帯で動画を見ているときって、寝ながら見ていることが多いと思うんです。だからこそ、その場で寝転がったままでも座ったままでもできるようにと、考えました。
あと、必ず字幕を入れるようにしています。加えて、テロップは必ず大きい字で。ほとんどのストレッチ動画は立って運動したり両手を動かすことが多いイメージ。寝ながらでもできる!と言いながら両手が塞がる種目ばっかり…。携帯画面を見ないとフォームとか動き方とかわからなくなるし、何よりもお子さんがいらっしゃるお母さんがみるときってだいたい子どもが寝静まったあとが多いと思うんですね。なので、いろんな過程で見る人を想定して撮影をしています。それはお母さんでなくても、老眼の方やお子さんなども対象。立場や世代を問わず、どの世代にも需要が高く支持される点だと思います。
携帯も持てないうえにわからないまま続けるということは難しいですし、途中で動画を見ることもやめてしまったりしてしまう可能性があります。少しでも持続できる要素を盛り込むように意識しています。
視聴数を増やしたいなら、母数の多い方に的を絞った投稿を
――視聴者に寄り添う姿勢が感じられます。あまり反応がよくなかった動画はなんですか?
「肩こり・腰痛」ですね。僕のチャンネルにはダイエット目的の方が多いのですが、大体は「足(ふくらはぎ・太もも)」とか「お腹周り」がダントツに人気。その母数に比べたら圧倒的に肩こり・腰痛は少ない。視聴数や登録者数を上げたいなら、母数が多い方に的を絞って発信することが大事だと改めて感じましたね。
同業者などとのコラボ動画もよくやっていましたが、あれもあまり反応が良くなかったですね(笑)。というのも、僕たちダイエットトレーナーの動画を視聴してくれている方たちって「僕」ではなくて、「ストレッチ」を目的に見てくれているんです。有名人のように周りからは声をかけられないけど、「ストレッチ動画はみたことある」みたいな。
――では、今後はどのような内容を発信する予定ですか?
これからも寝ながら簡単にできるストレッチを中心に発信したいと考えています。僕はもともと運動やストレッチが得意ではありません。だからこれからも、あえて得意にならない方がいいと思っています。そもそも僕はこのチャンネルで最も親近感を大事にしていますからね。
――今のストレッチ方法も変えず…でしょうか?
そうですね。僕が紹介しているストレッチって、誰もがやったことがあってできる体育の授業レベルのストレッチだと思っています。今のストレッチからアップデートしてしまうと携帯を見ながら、ということもできなくなってしまう。そうするとチャンネルの本質からそれてしまいますからね。
多くの視聴者に動画をみてもらうためにおこなった3つのポイント
1.感覚ではなく、数字で結果が出たワードを使用したタイトル作りをする
2.周りと比較して自分に合うブランディングをする
3.いろんな人が見ることを想定した動画づくりを意識する
取材・文/東菜々(レ・キャトル)
撮影/喜多二三雄
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