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ヘルスケア 2024-08-05

「やらない」選択は後悔する!という想いからスタート【もっと知りたい!「ヘルスケア」のお仕事Vol.152/ヨガセラピスト高橋千賀子さん】#1

ヘルス業界のさまざまな職業にフォーカスし、その道で働くプロにお仕事の魅力や経験談を語っていただく連載企画「もっと知りたい! ヘルスケアのお仕事」。

今回はヨガセラピストとして、運動と安心、休息を組み合わせた健康管理法を提案している高橋千賀子さんにお話しを伺います。

前編では、高橋さんがヨガと出合ったきっかけ、仕事や私生活のストレスから体調もメンタルもダウンしてしまったこと、どん底の高橋さんを救ったヨガセラピーのことについて語っていただきます。

お話しを伺ったのは…
一般社団法人 日本ヨガメディカル協会会員
ヨガセラピスト 高橋千賀子さん

呼吸瞑想を主とするヨガの認定トレーナーとして活動後、一般社団法人 日本ヨガメディカル協会に出合い、2023年にヨガセラピストの認定を受ける。現在はご自身の教室「ヨガセラピー そらのいろ」を立ち上げ、シニア層を対象にしたゆるり椅子ヨガ教室、女性を対象にしたヨガセラピー教室を主宰している。

エクササイズの1つとして始めたのがヨガとの出合い

高橋さんの初ヨガはアメリカ。激しい運動をする前に身体を整えることが目的だったとか。

――ヨガとの出合いはいつ頃ですか?

今から30年ほど前、主人のアメリカ転勤でカリフォルニアに住んでいたときです。身体に不調があったワケでもなく、ただ興味があったんです。地域のコミュニティにあったヨガ教室で、初心者クラスでした。

――そこからヨガにハマっていったんですか?

いえいえ。当時はテニスにハマっていて、激しい運動の前に身体を整えたくてヨガをやっていたんです。ビデオやDVDを観ながら、パワーヨガやストレッチ系のヨガで身体を動かしていました。

――それからずっとヨガを続けていたんですか?

帰国してからしばらく忘れていました(笑)。15年ほど前、子育て支援と英語を教える仕事をしていたときに「どうも身体がしんどい」と感じるようになったんです。仕事一辺倒の毎日を過ごすうち、自分を整える時間を作りたいと思いました。その時に「そういえばアメリカでやっていたヨガは気持ちよかったな」と思い出したんです。

――ヨガにはいろいろな種類があるので、自分に合ったものを探すのも大変ですよね。

いろいろ探すうち、自分の内面を見つめる脳活ヨガというのを見つけて、体験しに行ったんです。初回はピンとこなかったんですが、「今なら入会金は無料だから」と言われて、「じゃあ1か月だけやってみるか」と(笑)。

その後、何回か続けるうちに面白くなってきたんです。トレーニング方法がユニークで、東洋医学の考えを取り入れていて、腸と脳の関係を教わったり、呼吸瞑想を体験したり。自分の深いところにまで入り込むヨガでした。

スタッフの方たちから「一緒にやりませんか?」って誘われたときは、私がヨガを教えるなんて考えたこともなかったので即、お断りしました。それでも「そんなこと言わないで~!」って何度も誘ってくださるので、「じゃあやってみるか!」と、決心したんです。

――思い切りましたね。

私がここで、もし「やらない」選択をしたら後悔すると思ったんです。「あのとき、やっておけばよかった」って振り返るときがあるかもしれない。それなら挑戦しながら考えればいいと思ったんです。私は何かを決めるとき、いつもこの考え方が基本にあります。

――これを機に脳活ヨガを学び始めたんですね。

そうです。体験した日に会員になってから1年半ほど学び続けて、指導ができる認定トレーナーの資格を取りました。

――深く学んでみて、いかがでしたか?

このヨガは全力を出し切るポジティブヨガなんです。「元気いっぱいにやってみよう!」というイメージでしょうか。やるなら100%の力を出し切ろうという雰囲気は、すごく楽しかったし、充実していました。それと同時に呼吸瞑想で自分の内面と向き合って、本当の自分を知ることができたのには感動しました。

100%の力を出せない人もいる。そんな人たちのヨガは…と模索

体調や身体の具合に合わせられるのがメディカルヨガのメリット。

――今、高橋さんはメディカルヨガのセラピストですが、こちらに変わったきっかけは?

脳活ヨガをデイサービスの利用者さんにも指導することがありました。ご高齢の方に「元気出してやってみよう!」とか「100%の力を出し切ろう!」と言うのはどうなんだろう…と感じるようになったんです。関節の動きがスムーズではない方もいれば、気分が落ち込んでいる方もいます。できないことが多い方たちに、「さあ頑張って!」と言い続けることに、気が引けることもありました。

――ご高齢の方の中には辛いと感じる方もいそうですね。

あるとき、うつ病を抱えている方が「薬だけに頼らず、自分の力で少しでもプラスになることをしたい」と言って、ヨガ教室に参加なさったんです。帰り際にポロッと「ここの教室は、すごく元気なんですね」っておっしゃっていました。

――その方にとって、居心地が悪かったんですね。

その当時、私はメンタルの疾患については不勉強で、その方がどんな想いを抱えていたのか想像できませんでした。

結局、その方は主治医に相談して辞める決意をしました。スタッフにその旨を伝えたら「自分で自分の身体を何とかしようと思って、ここに来たんじゃないんですか? 結局、医者の言うことを聞くんですね」って、厳しい口調で言ったんです。そのやり取りを横で見ていて、すごく胸が痛くなってしまって。もうちょっと別の言いようがあるだろうし、その方のために何かできることがあったのでは…と思ったんですね。

――バッサリ切り捨てた感じですね。

私自身はすごく楽しかったし元気をもらえる教室だったのですが、この出来事をきっかけに、元気じゃない人のために何かできることがあるんじゃないかな…と考えるようになりました。

――高橋さんはいつまで、このヨガ教室に?

コロナでデイサービスなどで開催していた出張教室がすべてキャンセルになったのを機に退会しました。

ちょうどこのあたりから更年期障害がひどくなったところに、家庭内でいざこざが起こり、心も身体も調子が悪くなっていったんです。子育て支援のサポートはそのときも続けていたんですが、責任者を任されてしまっていて。このときも「やってみなくちゃ分からない」精神で引き受けちゃったんですよね(笑)。やり始めたもののテンパってしまって、次から次へとやらなくてはいけないことが山積みになり、限界を超えてしまったんです。

――大変なことって、重なるものなんですね。

私は「このくらい大丈夫」と思っていたんですが、周囲には私の異変が分かっていたようで、「休んだ方がいい」とか「メンタルクリニックを受診したほうがいい」とか、言ってくれたんです。

――よほど、いつもの高橋さんとは様子が違ったんですね。

運動するのが大好きだったのに、ちょっとでも身体を動かすとめまいがしてフラフラしていました。記憶力も低下していて、やらなくてはいけないことを忘れることもありました。「休んだ方がいい」と言われて、緊張の糸がプツッと切れたんでしょうね。1か月間、休職しましたが、何もできず、ただただ何もしないで横なっていました。

――どうやって復活したんですか?

こんな状態でもできるヨガはないか、検索しました。「やさしい」、「体調が弱っていてもできる」という言葉で検索したんだと思います。このワードで引っかかったのがヨガセラピーです。

――ヨガセラピーは他のヨガと違う点は何ですか?

相手に寄り添うことですね。無理をさせないし、その人に合わせます。具合の悪い人がいたら、その状態をありのまま受け入れます。私もありのままの自分をやさしく受け入れてもらいました。「これでいいんだ」と思わせてくれたので、私もありのままの自分を認めることができましたね。

今まで100%の力を出さなくてはいけなかったのとは真逆です。以前のヨガでも、よく「高橋さん、もっと身体の力を抜いて」って言われていたんですよ。何にでも一生懸命になりすぎてしまって、肩にグッと力が入っちゃう。常に緊張状態だったんでしょうね。今は、「いい感じに力が抜けていますね」と、よく言われます。ヨガセラピーに出合って、力の抜き方を教わった気がします。

ヨガセラピーに出合って、心と身体の不調から抜け出せた高橋さん。

後編では、ヨガを通じて変わったこと、ご自身の教室を開くためにどんなことをしたのか、これから力を入れていきたいことについてご紹介します。

撮影/森 浩司
撮影協力/ハーモナイズ ポケット

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