ヘルスケア&介護・看護・リハビリ業界の応援メディア
ヘルスケア 2024-08-07

「~ねばならぬ」を手放したら、人にもっと寄り添えるヨガに到達!【もっと知りたい!「ヘルスケア」のお仕事Vol.152/ヨガセラピスト高橋千賀子さん】#2

ヘルス業界のさまざまな職業にフォーカスし、その道で働くプロにお仕事の魅力や経験談を語っていただく連載企画「もっと知りたい! ヘルスケアのお仕事」。

ヘルスケア業界のさまざまな働き方をご紹介する本企画。前編に続いて、ヨガセラピストの高橋千賀子さんにお話しを伺います。

前編では、仕事や私生活のストレスから体調もメンタルもダウンしてしまった高橋さんを救ったヨガセラピーのことなどをご紹介しました。後編では、ヨガセラピストになってから変わったこと、ご自身の教室を開くためにどんなことをしたのか、これから力を入れていきたいことについて語っていただきます。

お話しを伺ったのは…
一般社団法人 日本ヨガメディカル協会会員
ヨガセラピスト 高橋千賀子さん

呼吸瞑想を主とするヨガの認定トレーナーとして活動後、一般社団法人 日本ヨガメディカル協会に出合い、2023年にヨガセラピストの認定を受ける。現在はご自身の教室「ヨガセラピー そらのいろ」を立ち上げ、シニア層を対象にしたゆるり椅子ヨガ教室、女性を対象にしたヨガセラピー教室を主宰している。

ずっと肩に力を入れて生きていたから、力を抜く大切さが分かる!

高橋さんが主宰するヨガセラピー教室。ポーズを教えるのではなく、力を抜いてリラックスするのが目的だとか。

――心と身体のバランスが乱れていた時期は、どうやって回復なさったんですか?

メンタルクリニックに通ったり、漢方薬を飲んだりして、半年ほどでバランスを整えることができました。めまいがひどいときは身体を動かせなくて、ずっと横になっていましたが、寝てばかりいると思考が悪い方にしか回らないんですね。私は身体を動かしている方が性に合っているんだと思います。

子育て支援の仕事はフルタイムからパートタイムに変更してもらって、今でも続けています。

――ご自身のヨガ教室はなかったんですか?

脳活ヨガをやっているときから、サークルを持っていました。ただ、私が体調不良になって「もう無理」という状態だったので、サークルも止めようと思っていたんです。ありがたいことに生徒さんたちが「無理のない範囲で続けて欲しい」と言ってくださって。「こんな私と一緒に身体を動かしてくれる?」というスタンスで、今も続けています。

――生徒さんたちも、高橋さんの体調が気がかりだったのでは?

そうだと思います。ただ純粋にヨガを続けたいという気持ちと、私のことを心配してくれる気持ちの両方でしょう。もう感謝しかありません。

あるとき「高橋さんの柔らかい口調は癒やしだよね~」って言う人がいたんですよ。自分の中に癒やしの部分があるなんて、思ってみたことがなかったので新たな気づきももらえました。

――呼吸瞑想が中心の認定トレーナーから、ヨガメディカル協会のヨガセラピストになって、何が変わりましたか?

100%の力を出し切るのが脳活ヨガで、辛いとかキツいとか感じたら、無理してやらなくていいよ~というスタンスなのがヨガセラピー。体調がおかしくなる前は「真面目だよね」、「頑張り屋さんだよね」って言われてきました。それが私だと思っていたんです。ダウンしてから自分の思い通りにならなくても、「今のままでいい」と認めてもらったのが大きな変化ですね。

――具体的にどんなことですか?

それまでは「きちんとしていなければならぬ」、「いいトレーニングをしなければならぬ」、「ネガティブであってはならぬ」。私の中には常に「~ねばならぬ」があったんです。今、考えてみれば苦しいはずですよね。自分で自分の首を絞めるように、真面目な自分を作り上げていたんです。逆にこの経験が今、役立っていると思います。

――どんな風に役立っていますか?

私は物理的にも精神的にも力の抜き方が分からなかったんです。「高橋さん、もっと力を抜いてください」って言われるたび、「いやいや、抜いてますから!」と思っていたんですよ(笑)。本当の脱力を知らなかったんですね。

ヨガを指導するときも、いきなり「みなさん、力を抜いてください」って言っても、緊張感もあるのでそう簡単に抜けません。なので最初に「全身にギュっと力を入れてください」と呼びかけてから、「力を抜いてリラ~ックス」と言えば、みなさん脱力できるんです。力が入っていたからこそ、抜けるようになるんですね。

――高橋さんの教室にもいろいろな生徒さんがいらっしゃると思います。力が抜けない方にはどんなアドバイスを?

一生懸命、頑張るのもOK。まずは「今は頑張りたいんだよね」って認めます。その人自身にも、頑張っている自分を認めてあげるように促します。絶対に否定しません。頑張るときには頑張る。「リラックスする時間を確保しましょう」「大切なのは自分ですよ」「内面を観ていきましょう」と伝えます

今までの学びを丸っと活かしたヨガ教室をスタート

シニア層を対象にした「ゆるり椅子ヨガ教室」。誰にでもできる簡単な体操で、病後や術後のリハビリにも最適なのだそう。

――ご自身の教室を立ち上げたのは、何かきっかけがあったんですか?

私が今まで学んだことを実践するには、自分の教室があった方がいいと思ったからです。一人でも多くの人が、かけがえのない自分に気づいて、自分自身を大切にできるようになってほしい…と。それを伝えるのが私の使命だと思っています。

それに自分の教室があると、すべての責任は自分。心が決まるので楽なんです。

――教室を立ち上げるのに際して、何か準備したことはありますか?

まず対象を50代以上にしました。更年期症状のある人、シニア世代、運動が苦手な人でもできるヨガです。

まずチラシを作って、ご近所はもちろん会場近くのお宅にポスティングしました。ほかには名刺を作ったり、ブログなどSNSで情報を発信したり、ホームページを作ったり。教室に通う生徒さんたちが、いろいろアドバイスをくださるんですよ。「どんな先生が教えるのか不安だから、チラシには顔写真を載せた方がいい」とか「どんな内容のヨガなのかを知ってもらうにはホームページがあった方がいい」とか。すべて参考にしました(笑)。

――シニアを対象にした教室とヨガセラピーの2つあります。内容は違うんですか?

シニアの教室は誰でもできる簡単な体操が中心ですね。高齢者は足腰に問題があったり、何らかの手術を受けている方もいらっしゃいます。そんな方たちでも楽しく運動ができるようなプログラムにしてます。

――ヨガセラピーは?

身体と相談しながら関節と筋肉をゆっくり、くまなく動かしていきます。呼吸に意識を集中させながら、簡単な動作を淡々と繰り返します。マインドフルネスヨガですね。呼吸瞑想は脳活ヨガで学んだことを活かしています。

簡単な動作を淡々と繰り返すと忙しい頭の中が空っぽになって、「今ここ」に集中できるようになります。

――同じ動作というのは、例えばどんなことですか?

仰向けに寝て、膝を立てます。その膝を右にぱた~ん、左にぱた~んと交互にゆっくり倒すのを5分ほど繰り返すんです。そのうちに頭の中がほわ~んとして、寝てしまう方もいるんですよ。眠ってしまったら、そのまま眠っていてもOK。

――気持ちよさそうですね。ヨガセラピーは1レッスンどのくらいの時間ですか?

全部で80分です。体を動かす時間を60分、横になって呼吸するなどリラックスする時間を20分とっています。

――高橋さんのヨガレッスンを受けて、みなさんの感想は?

「身体を動かすのが楽しい」とか、「運動をしていない私でも続けられる」という感想をよくいただきます。他にも「身体が緩んで気持ちいい」とか「睡眠の質が上がった」という方もいました。

――今後はどんな活動を考えていますか?

先日、日本ヨガメディカル協会のシニアセラピストの資格を取得したんです。シニア層の教室をもっと増やしたいですね。以前もデイサービスでヨガを教えていましたが、今回の学びで高齢者の身体のことをより深く理解できるようになりました。これからの高齢化社会、ご高齢の方にはもっと元気になってほしいですね。

高橋さん流! ヨガセラピストとして長く続けるためのポイント

1.やらない後悔をするより、まずはチャレンジする。

2.「~ねばならぬ」という考えを手放し、ありのままの自分を認める。

3.完璧を求めず、生徒と一緒に自分も成長する。

体調やメンタルの不調から立ち直り、今は不調に悩んでいる人たちのサポートをしている高橋さん。これまでのすべての経験をこれからの活動に活かす前向きさが、高橋さんのパワーの源になっているようです。

撮影/森 浩司
撮影協力/ハーモナイズ ポケット

この記事をシェアする

編集部のおすすめ

関連記事