自然治癒力を高めるための姿勢改善。ブランディングのキーワードは「猫背矯正」【もっと知りたいヘルスケアのお仕事Vol.156 姿勢治療院tetote院長 山嵜智明さん】#1
ヘルスケア業界のさまざまな職業にフォーカスして、その道で働くプロにお仕事の魅力や経験談を語っていただく連載「もっと知りたいヘルスケアのお仕事」。今回は、姿勢治療院tetote院長 山嵜智明さんにお話を伺います。
山嵜さんは、高校時代のアメフトでのケガをきっかけに「治す仕事」を目指すことになります。お世話になった接骨院で修行をしながら柔道整復師の資格を取得。さらに整形外科で医療分野の経験を積んだ後、患部だけでなく体全体を診ることが必要なのではという思いから「猫背矯正」を強みにした姿勢治療院tetoteを開業します。
お話を伺ったのは…
姿勢治療院tetote
院長 山嵜智明さん
20才のときに鼻の骨折で入院した際、手厚く看護してくれた医療スタッフに憧れ、治療業界を目指す。その後、ケガでお世話になった接骨院に弟子入りし、仕事と3年間の専門学生を両立。国家資格に一発合格。次なるステージを目指し六本木の整形外科に転職。接骨院とは違った幅広い症例を経験した後、2016年六本木に姿勢治療院tetote開院。治療家歴20年以上。猫背矯正マイスター® 肩こりや腰痛だけでなく骨の変形や内臓の不調も引き起こす猫背矯正を使命としている。
学生時代のケガをきっかけに「治す仕事」を目指す
――まずは整体師を志した理由を教えてください。
幼少期から根底にある、親に認められたいという気持ちが強かったんだと思います。
父は教員、母は公務員という固い家庭に生まれ、勉強ができる兄を横目に、わたしはやんちゃな日々を送っていました。高校時代アメフトをやっていたのですが、練習で指を脱臼したことがあり、その場で監督に治してもらった経験があるんです。監督が柔道の有段者で、柔道整復師というのはそういったケガを治せるんだということを後から知り、治す仕事っていいなと思うようになりました。
――その思いがさらに募る出来事があったのですか。
はい。イベント関連の専門学校を卒業したものの将来を決めかねていた時期に、お風呂で音楽を聴きながらヘッドバンギングしていたら、浴槽のヘリに鼻を強打して骨折。手術のために入院した病院で、手厚く看護してくれた医療スタッフに憧れ、改めて体を治す仕事っていいなと思いました。
――その後の進路は?
まわりから手に職をつけたほうがいい、国家資格をとるといいとアドバイスを受け、柔道整復師の資格をとろうと決めました。それまでお世話になっていた地元荒川区の接骨院の先生の下で修行しながら3年間、柔道整復師の専門学校に通いました。勉強はあまり得意ではありませんでしたが、その3年間は猛勉強して一発合格。
――資格取得後はどんな道へ?
資格取得後も修行していた接骨院に勤務していました。9年経ったころ、医療機関で経験を積みたいと思うようになり、知り合いの紹介で六本木の整形外科に転職しました。整形外科の患者さんは、接骨院よりも少し重度の方たちが多いんですね。
そこで力をつけたいと思ったのと、それまでは荒川区の下町の接骨院だったので、都心部の人たちにどれだけ僕の力というか技術だけではなく接客面が通用するのか試したいという気持ちもありました。
――その結果はいかがでしたか。
自分で言うのもなんですが、通用するんだと思いました。六本木は一本入ると住宅街で昔から住んでいる方々やお勤めしている比較的若い層、それに富裕層が混在しているエリア。高齢層は以前の職場にも多かったので、それまでの接客方法で大丈夫でしたが、富裕層の方と話を合わせるのは難しかったです。当時の僕は、ただただ持ち前の明るさでごまかしてましたよね(笑)。
保険診療での治療に限界を感じ、自由診療での治療スタイルを選択
――開業のきっかけは?
六本木の整形外科にくる20~30代の若い患者さんが気になっていたんです。デスクワークからくる頚肩腕症候群などの不調を訴える方が多かったのですが、接骨院や整形外科の保険診療では、腕が痛かったら腕だけ。不調のある患部だけを治療することがほとんど。
でも根本から治すためにはもっと体全体を診ないとダメなのでは。そんな思いで独立を考えるようになりました。柔道整復師の資格があれば、接骨院や整骨院として開業できるのですが、それまでの経験から保険診療での治療に限界を感じ、整体院という自由診療での治療スタイルを選択しました。
――独立はスムーズに運んだのですか。
整形外科の院長はじめ周囲が応援してくれたんですよね。
2キロ圏内には開業しないという暗黙のルールがあるので、勤務先の近くは考えていなかったのですが、物件探しをしているときにたまたまこの場所が見つかって、冗談混じりに院長に「近くにいい物件があるんですよね」と話してみたら「やっていいよ」と。「やるならいま診ている患者さんにも声をかけなさい」と言ってくれて。独立直後はそういった患者さんにとても支えられました。いまも続けて来てくれている方もいて本当にありがたいと思っています。
ブランディングを考え「姿勢」よりも「猫背矯正」を打ち出す
――tetoteは猫背矯正を打ち出していますが、施術のコンセプトを教えてください。
いちばんの目的は、自然治癒力を働かせることです。
自然治癒力を働かせるためには、理想的な姿勢を保つことが重要です。カイロプラクティックの分野と重なりますが、背骨の間には脊髄や重要な神経が通っていて、姿勢が崩れるとその流れが悪くなります。神経系の伝達が悪くなると、体の回復力が落ちやすくなる。それを理想的な状態に近づけることで自然治癒力が働きやすい状態になります。そのために重要なのは姿勢なんですが、ブランディングを考えたときに「姿勢」だとちょっと漠然としているので「猫背矯正」を打ち出しているんです。
――確かに「猫背矯正」のほうがピンときますね。猫背矯正マイスターとはどういったものなのですか。
猫背矯正の治療スタイルを確立した柔道整復師・鍼灸師の小林篤史先生が運営する一般社団法人 日本施術マイスター養成協会の最上級資格になります。ベーシックマイスター、アドバンスマイスターの上に猫背矯正マイスターがあります。
――猫背矯正は具体的にどんな施術を行うのでしょうか。
頸椎、猫背、巻き肩、骨盤矯正の施術が含まれます。骨盤やももの筋肉、肩や背中まわり、腕、股関節、腰など体全体を押圧調整し、最後に仰向けになって矯正します。患者さんには日中行っていただきたいエクササイズや普段気をつけていただきたいポイントをアドバイスしています。
――コース設定があるのですか。
コース設定はしていませんが、初回カウンセリングの状態を診た上で、通う頻度をお伝えしています。
猫背は長年の習慣がクセになっていることも多いので、3ヶ月、半年と継続的に治療することでフォルムが変わり、元に戻りにくい状態になります。さらに1年かけてじっくり変えていくと本当に元に戻らない状態を目指すことができます。
後編では、集客面での工夫や整体師という仕事の魅力、整体師に向いているタイプもお伺いします。
撮影/大崎聡
取材・文/永瀬紀子