目指すのは、入所者にもスタッフにも居心地のいい施設【介護リレーインタビューvol.57/生活相談員 新坂俊一さん】#2
介護業界に携わる皆様のインタビューを通して、業界の魅力、多様な働き方をご紹介する本連載。
お話を伺ったのは…
介護老人福祉施設 ラペ相模原
生活相談員 新坂俊一さん
介護技術などを学ぶ専門学校を平成20年に卒業し、介護の現場職員として13年間勤める。令和3年より社会福祉法人 緑樹会の介護老人福祉施設 ラペ相模原に生活相談員として勤務している。
地元の横浜市で介護の仕事に就いた後、岡山県での単身赴任を経て、現在は再び横浜に戻って生活相談員としてキャリアを積み重ねている新坂さん。
後編では生活相談員になってから体験した最大のピンチのこと、地域に密接した介護施設づくりのために取り組んでいること、生活相談員を目指している人へのアドバイスについて伺います。
入所している人も働く人も、みんなが幸せになればいい!

入所している方と施設の間に立つ立場だからこそ、いろいろな問題が見えてくるとか。
――生活相談員として働くには、どんなことが必要ですか?
入所者さんとご家族の想いをどう引き出すか、でしょうか。その方の想いをくみ取って整理する能力が必要だと思います。問題にフォーカスしすぎず、包括的に捉える力も必要です。少し距離を置いて全体的に見ないといけない。これって技術的なことではなく、心理的な要素もあるかもしれません。
――相手に寄り添い過ぎず、全体を見渡す力でしょうか。
実際の現場のことも分かっていないといけないし、ご家族のことも考えなければいけない。この施設の実情についても把握しておかないといけない。福祉全体のことを頭に入れておく必要もありますよね。
――実際に相談員になられて、イメージと違いましたか?
思っていたより仕事量がありましたね(笑)。現場で働いていたときは、「相談員さん、現場にあまり顔を出してくれないな」と思っていました。実際になってみたら、現場に行く時間がない(笑)。やってみて初めて分かりました。でも、そこを工面して現場に行かないと関係が疎かになってしまうんですよね。
――新坂さんは介護士から相談員になられたので、現場の気持ちも分かるんですね。
介護の現場を知っている強みはありますね。運営とか経営面も考えなければいけませんが、そこを優先してしまうと、いろいろな想いはくみ取れません。
今までいろいろなセミナーや勉強会に参加したり、岡山の介護施設で働いたりしましたが、どの経験も今につながっています。端から見ると回り道しているようですが、僕からすれば無駄ではなかったと思っています。
――新坂さんの理想はどんな施設ですか?
まずは入所者さんが「ここに入って良かった」「ここにずーっと居たい」と思っていただける施設であること。それから働くスタッフが「働くなら、この職場以外ないよね」とか「ここでならどんな方でも対応できるよね」って思ってもらえることです。入所者さんの幸せも働いている人の幸せも大事。両方がWin-Winなのが理想です。
――相談員になってから最大のピンチはどんなことですか?
何かトラブルがあったとき、入所なさっている方とご家族には、僕が施設の代表として立ち会います。「うわっ!」と思ったのはご家族とご親族が総勢8名でいらしたときですね。みなさんのご意見を伺いつつ、きちんと事情を説明してご納得いただかなくてはなりません。8対1だったので圧倒されてしまいました(笑)。みなさんのお気持ちに寄り添いながら、何とか分かっていただけました。
地域と施設が密接につながることが次の課題

新坂さんが勤務するラペ相模原と近隣施設が合同で参加した「RUN伴」のメンバーたち。
――新坂さんがやりがいを感じるときは、どんなときですか?
いろいろとお話を伺って、「ここで相談できて良かった」とおっしゃってくださったときですね。「お力になれた!」と思えるとすごく嬉しいです。そのためにも、気軽に相談にいらっしゃる環境を作らないといけないと思っています。
――それはどういうことですか?
地域とのつながりを作ることです。「近所にこんな施設があって、いろいろな相談にのってもらえる」ということを知っていただきたい。そうは言っても、地域の方がここにいらっしゃるタイミングって少ないんですよね。緑樹会の理念でもある「地域に開かれた信頼され愛される施設をつくる」という部分を、今年度はしっかりやりたいです。
――今までに何かそういった企画はあったんですか?
認知症の方と一緒に走ってリレーをする「RUN伴(とも)」をやりました。近隣施設と合同で参加して、認知症への理解を深めるためのイベントを盛り上げました。
――すごい! 大がかりなイベントですね。
ほかにも、入所なさっている方と地域の方と関われるような仕組みを考えています。例えば、入所者さんがカフェの店員になって、地域の方をおもてなしするとか。
包括支援センターと地域のコミュニティーを作ろうとしているんですが、その中にクラブ活動があります。コーラスだったり手芸だったり、地域にはいろいろなクラブ活動があるんですが場所がない。それならうちの施設を利用していただくとか。月の半分以上は地域の方がいらっしゃる仕組みを作っていきたいですね。
――いろいろなアイデアをお持ちなんですね!
半年、1年、3年とずっと同じ事をしていたら、何も変わらないんですよね。だから何か思いついたら行動に移すようにしています。例えば過去を振り返って「あのときやっておけば良かった」って後悔するなら、「今、やっとけよ!」と。
――最後に、生活相談員を目指す方にアドバイスをお願いします。
人と関わることが好きな方は、生活相談員が向いています。施設の利用者さまだけでなく、地域ともつながって多くの方と関わることで地域全体を盛り上げていける仕事です。ハードルが高いと感じるかもしれませんが、その一歩を踏み出すことで世界が広がります。やりがいしかないですよ。
新坂さん流! 生活相談員の心得三か条
1.セミナーや勉強会に参加して積極的に情報を得る。
2.同じ事を繰り返さず新しいことにチャレンジする。
3.入所者と働くスタッフの双方に利益になることを考える。
撮影/森 浩司