福祉に携わりたい気持ちを抱えながら美容師の道へ!【介護リレーインタビューvol.66/訪問美容師 齋藤博美さん】#1
介護業界に携わる皆さまのインタビューを通して業界の魅力、多様な働き方をご紹介する本連載。
お話を伺ったのは…
美慈 代表 齋藤博美さん
高校卒業後、物流会社に就職したものの半年後、子どもの頃から通っていた美容室に転職。通信教育で美容師免許を取得する。13年勤務した後、カット専門店に転職。その間にヘルパー2級を取得し、平行して訪問美容をスタートする。現在は介護施設や障がい者施設、病院をはじめ個人宅で理美容を行う「訪問理美容りくみぃ」をはじめ、特別養護老人ホーム 和みの園内にある「母と子の美容室みちか」で発達障がいの子どもの施術を行っている。
訪問理美容だけでなく、「みちか美容室」を拠点に発達障がいの子どもたちの髪をカットしている齋藤博美さん。前編では齋藤さんが美容師免許を取得するまでのいきさつ、出産と離婚を経て転職を決意した理由、ずっと携わりたかった福祉の世界に足を踏み入れたきっかけをご紹介します。
「人の髪を切るなんて無理!」が、気づけば美容師に

学生時代は美容にまったく興味がなかったとか。
――高校を卒業してから理美容専門学校へ進学したんですか?
いいえ。卒業後は物流会社に就職したんですが、ちょっと物足りなくて半年で辞めてしまいました(笑)。その当時お付き合いしていた方が理容師だった影響もあって、「美容師の資格を取ろう!」と思い立ってしまったんです(笑)。それで子どもの頃から通っていた美容室の先生にお願いして、通いながら通信教育で資格を取りました。
――美容には興味があったんですか?
美容ではなく、福祉に興味がありました。障がい福祉や社会福祉に携わりたかったんですが思うようにならなくて。ボランティアでもいいから、「いつか福祉に携わりたい」とずっと思い続けていました。
――働きながら勉強するのは大変だったでしょう?
そんな苦ではなかったですね。お世話になった美容室の先生は私の家庭の事情も分かっていたので、母親のように親身になってくれました。料理の仕方やマナーなどいろんなことを教えてくれたんですよ。
――家庭の事情とは?
父が早くに亡くなって、母が兄と姉、私の3人を育てながら働いてくれました。ところが私が高校生の時、突然母がいなくなってしまったんです。すでに姉は独立していたので、兄と二人きりの生活になってしまいました。
――10代の多感なときに衝撃的な出来事を体験したんですね。
その当時はいろいろ思うところがありましたが、私が出産したときは子育てのサポートをしてくれたんですよ。母がいなければ、仕事も子育ても行き詰まっていたと思います。
――ご結婚はどのタイミングで?
ずっとお世話になっていた美容室に勤めていたときです。ここで結婚、出産、離婚を経験しました。
――シングルマザーになってしまったんですね。
勤めていた美容室の先生は仕事には厳しい方だったので、仕事に穴を空けられませんでした。保育園の送り迎えとか急に熱が出たときとか、母のサポートがなければ乗り越えられなかったと思います。
美容師だから実現した福祉との繋がり!

特別養護老人ホーム内にもともとあった理美容室をそのまま活用。
――ずっと在籍していた美容室をお辞めになったきっかけは?
子どもの行事に参加したかったんです。土日や祝日はお客さまが多いので休むわけにいきません。学校の行事も店の定休日と合わなければ参加できません。それで子どもが小学校に上がるタイミングで、カット専門店に転職しました。
――出勤日や時間を自由に調整できるようにしたんですね。
おかげで子どもとの時間も作れましたし、ヘルパー2級を取得する時間も取れました。母の介護や中途障がい者になってしまった兄のサポートをするための時間調整ができました。
――ヘルパー2級の取得はどうして?
カット専門店の経営者がトラックを改造して、シャンプーやヘアカットができる移動美容室を作ったんです。その車で老人ホームや障がい者施設を巡る事業を始めました。「誰かやりたい人はいるか?」と聞かれて、「やりたいです!」と手を挙げたんです。お年寄りや障がい者の髪を切ったのは、この時が初めてでした。何も知識がない状態は不安だったので、安全配慮に必要なことを学びたくてヘルパー2級を取りました。おかげでコミュニケーション能力を磨くこともできました。
――お年寄りや障がいを持つ方と初めて接して、悩ましいことがあったんですか?
「どうしていいか分からない」ということはありませんでした。目の不自由な方のボランティア活動をしたり、子どもが通う学校を通して障がいのある子どもと接する機会があったり、家の近所に聴覚障がいの方がいたりしたので、特別な感覚はありませんでした。
ただ障がいによってどこに気をつけるべきなのか、どんなサポートすればいいのかを知りたかったので勉強しました。
――すごい勉強熱心ですね。
資格をとってから、実践的にもっと知りたくて老人保健施設でもパートタイマーで働いたんですよ。そのおかげで「この状態だったら、ここを多少動かしても大丈夫」というのが何となく分かるようになりました。
――車いすの方もいれば寝たきりの方もいらっしゃいますものね。
障がいをお持ちの方も、気をつけるべきポイントは千差万別。お一人お一人「こうやって大丈夫ですか?」って確認を取りながらカットしています。
――どの施設もカットするときは改造したトラックの中で?
施設によっては、館内にシャンプー台やカット台の設備があるところがありました。この特別養護老人ホーム 和みの園もその1つです。設備がない施設はトラックでカットしていました。
――今もトラックで移動美容室をやっているんですか?
残念ながら短期間で終わってしまったんです。トラックなので冷房が効かない、施術するには狭いなど環境もよくなかったので。
それまで利用してくださった施設から「引き続きお願いしたい」という相談がありました。
――そうですよね。
トラックでは訪問していませんが、それ以降は私が個人的に訪問美容師として施設で髪を切るようになりました。この和みの園でも、「地域のみなさんが利用できる場として使ってください」とおっしゃってくださって。それで、ここを拠点に活動をするようになりました。
福祉に携わりたいという夢を、遠回りしながら叶えた齋藤さん。
後編では念願の訪問理美容を始めたこと、発達障がいの子どもたちとどう向き合っているのか、今までの美容人生の中で最大のピンチだったことなどを伺います。
撮影/森 浩司













