運動、学習、栄養と、多方面からの支援で子どもたちの人生を豊かにしたい/介護リレーインタビュー Vol.37【保育士・支援現場リーダー 大石真希さん】#1
業界に携わる皆様のインタビューを通して、業界の魅力、多様な働き方をご紹介する本連載。今回お話を伺ったのは、「児童発達支援・放課後等デイサービス キッズプレイスたかなわだい」の保育士であり、支援現場リーダーとしても活躍する大石真希さん。
前編では、大石さんがこの業界に進んだきっかけや、事業所の特徴、一日の働き方について伺います。
子どもたちが社会に出た時に価値のある学びを提供したい
――大石さんが、この業界に進もうと思ったきっかけを教えてください。
私は3歳からピアノ、小学生からはサッカーも習っていて。もともと音楽も運動も大好きなんです。高校生になって進路を考え始めた頃、この特技を活かせる職業ってなんだろうって考えた時、「幼稚園の先生になりたい!」と思ったのがきっかけですね。卒業後、保育科のある短大に進学しました。
――そうだったんですね。そこから児童発達支援に興味を持ったのは何かきっかけがあったんですか?
短大でもサッカーを続けたくて、サッカーチームに所属したんです。そこでは地域貢献プログラムに参加するのが必須だったので、私たちは特別支援学校の子どもたちに向けたサッカー教室を開きました。そこで、子どもたちが一生懸命ボールを追いかけている姿を見て、すごく感動したんです! ハンデを持っている子たちに教えることの大変さや難しさももちろん感じたのですが、何よりできるようになった時の達成感や、喜びがひとしおで。この道に進もうと思って、卒業後、社会福祉や発達障害について学ぶため、大学へ編入しました。
大学卒業後は、障害があったり不登校だったりする子に学習支援を行う会社に入社しました。そこでは8年勤めたのですが、ある時ふと「学習支援だけでいいのかな?」って思ったんです。もちろん勉強も大切なんですが、この子たちが社会に出た時に、ちゃんと価値のある学びってなんだろうって。勉強を教えるだけで、彼らの人生を豊かにできるだろうかって考えていると、「ああそうだ、私はもともと子どもたちと一緒に音楽を楽しんだり、運動したりしたかったんだ。そこからたくさんの成功体験を与えたかったんだ」って思って、この事業所に転職しました。
栄養を考えた食育で身体を整えてから、いい療育を!
――この事業所を選んだ理由はありますか?
ここでは脳・心・体の発達を総合的にサポートするために、運動と学習と栄養と、多方面からアプローチしていたので、興味を持ちました。また、子どもたちの自立や社会参加を目指して、例えばバスの乗り方とか、公共施設でのマナーとか、そういうスキルアップのフォローも行なっていて、いいなって。自分たちで学べる子はいいのですが、それが難しい子たちは、家族だけでサポートするのはなかなか大変ですからね。
――それは親御さんにとっても心強いですね。ちなみに、「栄養」というのは?
ここは隣に栄養療法クリニックが併設されています。実は発達障害の一因に、本来自然に排泄されるはずの重金属などの有害物質が排泄されずに体に溜まってしまったり、腸内が炎症を起こして「腸もれ症候群(リーキーガット症候群)」になっていたり、腸内環境が悪いために栄養を上手に吸収できなかったり、というのがあるんですね。もちろん、みんながみんなそうとは限らないのですが、そういう子も多いので、サプリメントを使用した栄養療法や食事療法を取り入れています。
いい療育をしっかり修得するには、まずは身体の状態をベストに整えてあげることが大切。そうすることで、より効果的な療育になると思うんです。もちろん、クリニックも受診しないとここの事業所を利用できないわけではないので、クリニックだけを受診しているお子さんもいますし、この事業所だけを利用しているお子さんもいるんですが、両方を併用している子が多いですね。
――こちらの事業所では、具体的にどんなことをしていますか?
脳と体の発達を考えた、手作りのおやつを提供しています。基本的には、オーガニック食材を使って、7大アレルゲンフリー。ここに通う子たちは、アレルギーを持っていたり、偏食だったり、食べられないものが多い子がたくさんいるので、なるべくみんなが安心安全に食べられるものを考えています。
――すごい! 豪華ですね。
どちらかというと、おやつというより補食という位置付けで考えているので、甘くないものも出ます。おやつ=甘いものって思っている子も多いので、「おかず⁉︎」って驚く子もいますね。また、袋菓子を見慣れている子は、手作りのおやつに戸惑うこともあるんですが、回を追うごとに楽しみになって、「おやつの時間を楽しみに通っています」っていう子も多いんです(笑)。最近YouTubeを初めて、そこでレシピも公開しているので、ぜひ見てみてください。
一致団結したスタッフの支援こそ、子どもたちにとって最善のサポート
――大石さんの一日のタイムスケジュールを教えてください。
9時45分ぐらいに出社して、10時から朝礼が始まります。朝礼の後は、スタッフみんなでストレッチタイム。ここは子どもたちの健康を扱う場所なので、私たちスタッフもちゃんと健康と向き合おうよ、ってことでストレッチの時間を取り入れています。その後みんなで事業所内の掃除。曜日によっては、10時半〜12時半に未就学のお子さんを受け入れます。受け入れがない日は、子どもたちの個別課題の準備や、個別ファイルの整理など、各々作業をしていますね。
――午後はどんな感じですか?
13時から各自休憩に入って、14時から未就学のお子さんの受け入れをし、16時まで支援します。そのあたりで学校から帰ってきたお子さんを受け入れて、その子たちが帰るのが18時。その後事業所内の掃除をし、18時半からスタッフミーティングを行い、19時ごろ退社します。
――スタッフ同士のコミュニケーションの時間をしっかりとっているんですね。大石さんは支援現場リーダーとして、後輩育成にも力を入れていると伺ったのですが。
はい。ここは子どもたちの支援をする場ですが、その支援の質を上げるには、スタッフ同士が気持ちよく働ける環境じゃないとダメだと思うんです。なので、できるだけスタッフ同士の会話を増やして、いい関係を築けるように心がけています。
――今、全部で何人ぐらいのスタッフさんがいらっしゃるんですか?
ここは事業所が2つあるのですが、2店舗合わせて約10名。女性の数が少し多いですね。仕事の話だけじゃなくプライベートな話もするぐらい、みんな仲良しです。歓迎会や誕生日会もやっていますよ!
――楽しそうです!
距離が一気にグッと近づきますよね。スタッフの育成においては、各々「チームの一員」という意識を持ってもらうことが、すごく重要だと思っています。子どものサポートをするのも、みんなそれぞれやり方が違うと支援に一貫性がなく、子どもは戸惑ってしまうと思うんです。そのためにも密にコミュニケーションをとって、みんなで同じ方向を向いて一致団結すること。「誰のために支援をしているか」っていうことを忘れずに、協力し合える関係でいたいと思っています。
「誰のための支援か」「何のための支援か」ということに真摯に向き合い、常に子どもたちのことを第一に考えたサポートされている大石さん。プライベートでも栄養の勉強をなさっているそうです。本当にこの仕事が好きで、誇りを持って働かれていることがうかがえました。
後編では、仕事で大切にしている思いややりがい、今後の目標について伺います。
取材・文/児玉知子
撮影/喜多 二三雄