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介護・看護・リハビリ 2020-05-13

介護施設を知る!『グループホーム』

グループホームは「認知症対応型老人共同生活援助事業」と言われ、認知症高齢者のための入居施設を探す時に、まず名前が挙がってくる施設です。ここでは、そのグループホームはどんなところか、どういった人が入れるのか、グループホームで働くには、設立するにはどうすれば良いか、働くメリット・デメリットなど、求職者に役立つ情報をお知らせします。

グループホームとは? どんな施設?

グループホームは軽度の認知症患者を対象とした介護施設です。正しくは「認知症対応型共同生活介護」と言い、5~9人程度の小規模なユニットで介護スタッフのサポートを受けながら、入居者同士で助け合いながら自立した共同生活を行うことで、認知症の症状を改善することを目的としています。

グループホームは介護保険で定められた「地域密着型サービス」に位置づけられる介護施設なので、利用者は住み慣れた土地からそれほど離れることがありません。少人数制のアットホームな環境で、ゆったりと機能回復などに励むことができます。

<グループハウスとの違い>
グループホームによく似た言葉の施設にグループハウスというものがあります。言葉自体はよく似ていますが、下表のように施設の目的や入居条件などは異なります。

グループホーム グループハウス
入居資格 要支援2以上の要介護認定を受け、認知症を患っている高齢者。共同生活に支障がない人。 自立した生活ができる高齢者。
目的 利用者の家族など、介護者を介護から解放する。 高齢者同士が励まし合って共同生活をする。孤独や不安の解消。
制度 介護保険制度の利用。 介護保険の対象者は介護保険を利用して介護サービスを受けることができる。
施設 5~9人で介護を受けながら生活。
団らんなどを目的とした共有スペースがある。
特に決まりはない。
プライバシーを尊重した部屋がある。
生活 症状に合わせて、食事介助・入浴介助・排泄介助などの介護を受けて生活をする。 料理や共有箇所の掃除など、協力し合って作業を行う。
利用料金 高い 比較的安価

 

グループホームは認知症の高齢者を受け入れる介護施設ですが、グループハウスは無届けの老人ホームで、入居費用は低料金です。要介護認定を受け、認知症患者であるグループホームの入居者に対し、グループハウスの入居者は比較的元気な高齢者であり、仲間とともに共同で暮らす施設です。グループハウスの入居者は自立した生活ができるため、必ずしも介護が伴うわけではありません。

<有料老人ホームとの違い>
有料老人ホームは大きく「住宅型有料老人ホーム」「健康型有料老人ホーム」「介護付有料老人ホーム」の3つに分けられます。
グループホームは、最低限の身の周りのことができる軽度の認知症高齢者が利用でき、共同生活や集団行動を通して地域との交流を目的としています。それに対して、有料老人ホームは重度の要介護者でも入居できます。ケアスタッフが要介護者一人一人の症状に合わせて、生活スタイルやケアプランを立ててくれるので、要介護度が重くなったら利用できなくなるというようなことはありません。

<どういう障害を持った人がグループホームに入居できるのか>
グループホームには高齢者を対象にしたものだけではなく、障害のある方が介護サービスを受けながら共同生活をする施設もあります。
この障害者用のグループホームを利用できるのは、障害のある方(身体障害のある方にあっては、65歳未満の方または65歳に達する日の前日までに障害福祉サービスもしくはこれに準ずるものを利用したことがある方に限る)と決められています。
現在の障害者自立支援法では、知的障害者と精神障害者が利用できることになっていますが、障害特性を踏まえて「知的障害のみ」もしくは「精神障害のみ」利用可の施設もあるので、事前に確認したほうが良いでしょう。

<生活保護受給者の入居>
月に10万~20万円もかかってしまうグループホームの利用は、決して安価なものではありません。ましてや、生活保護を受給している高齢者にとって、グループホームの利用は経済的に困難です。
そういった方に対して、家賃助成制度が設けられており、負担を軽くして入居することも可能なのです。家賃助成を受けるには、住民票のある市区町村役場の福祉課に申し込みが必要です。家賃助成の対象となっている人は是非相談しましょう。
家賃助成以外にもグループホーム利用の負担を軽くする方法はあります。施設によっては生活保護受給者の経済事情に合わせて、家賃が低い部屋を提供してくれるところもあるので、各々のグループホームに相談してみましょう。

グループホームの特徴は

・グループホームで受けられるサービス
グループホームは認知症患者の自立支援が目的となる施設です。基本的には、認知症の知識を持った介護スタッフ(患者3人に対しスタッフ1人いることが絶対条件)が、入居者では対応できないような家事や生活のサポート、機能訓練、見守りを24時間体制で行います。自立できる人を対象とした施設なので、医師・看護師などの医療スタッフの常駐は施設によって異なりますし、医療面のケアは最低限のものです。

・グループホームのメリット
認知症の進行に影響があると考えられている要因の一つに、一人暮らしなどで自宅に引きこもりがちになり、他人と交流する機会が減ることが挙げられます。グループホームで共同生活を行うことで、この「一人きり」という状態を回避することが出来ます。また、グループホームで提供されるさまざまなレクリエーションや機能訓練に打ち込むことで、認知症の進行を阻止することができます。
さらに、昼夜を問わない認知症患者のケアに疲弊してしまいがちな家族にとっても、大変心強い存在です。

・グループホームのデメリット
グループホームは小人数制の共同生活施設ということもあり、スタッフや入居者との相性があまり良くない場合は、逆に利用者のストレスになってしまう危険性が大いにあります。さらに、認知症の症状やその他の症状が悪化した際には退所を求められることもありますが、その際はまた別の施設を探さなければならないということを覚えておきましょう。

・グループホームの入所基準
グループホームの入所対象者は要支援2以上、要介護1以上の認定を受けた65歳以上の認知症患者です。認知症の進行度合いによっては65歳以下の患者を受け入れてくれる施設もあります。
共同生活を送ることができる人、家庭での介護が困難であること、入所を希望する施設と住民票の市町村が同じであることなども入所条件となります。

・グループホームの入所手続き方法
グループホームへの入所手続きは、各施設の窓口で行います。いくつかの書類を提出したあと、施設のスタッフからの面接を受け、入所の是非が決定されることとなります。

・グループホームの設備
グループホームの居室はユニット型が基本です。共有の浴室、トイレ、食堂、リビングが付設されています。施設によってはベッドでなく和室+布団の生活ができるようなところもありますし、自宅の使い慣れた家具を持ちこめるようなところもあります。家族はできる限り、利用者が気持ちよく生活できるような施設を探してあげたいですね。

<グループホームの食事内容>
一般的に、グループホーム内での献立は管理栄養士が管理しているので、高齢者向けのバランスの良い食事が提供されます。
調理については施設利用者と介護スタッフが一緒になって作ります。利用者が食事を作る行為は、社会参加を促す意味を込め、リハビリの一環として行っています。
食事をとるのも、食堂に集まって入居者とスタッフが一緒に食べるので、寂しさを感じずに食欲が落ちないという効果があります。
また、施設によっては刻み食や流動食に対応しているところもあれば、対応が限られているところもあります。対応が必要な方は入居前に食事メニューなどを調べておく必要があります。

グループホームの設立・経営

グループホームを設立・経営するためには、様々な手続きや知識、構想が必要です。ここではグループホームの設立と経営について考えていきます。

<グループホーム設立の流れ>
1 会社設立
・設立目的や経営方針を決める
・法人格を所有する

2 事業所の準備
・入居定員や収支見込などの事業計画を立てる
・緊急時におけるバックアップ施設の確認
・医療機関との提携
・事業所の設置基準の確認

3 人員確保
・人員基準に必要な職員を確保
・職員の研修、検診

4 備品準備
・必要な設備、備品の準備

5 申請書類の提出
・提出書類の準備
・生活用品や帳簿、個人記録の準備

6 事業開始
・入居者の募集
・市区町村への連絡

<グループホームの人員基準>

管理者 サービス提供に必要な知識及び経験を有する者・常勤1名
サービス提供責任者 利用者数を30で割った商以上
・利用者が30人以下の場合 1名
・利用者が31人以上60人以下の場合 2名
世話人
(ケアスタッフ)
利用者数を6で割った商以上
生活支援員 障害程度区分3の利用者数を9で割った商
障害程度区分4の利用者数を6で割った商
障害程度区分5の利用者数を4で割った商
障害程度区分6の利用者数を2.5で割った商
上記項目の合計数以上

 

<グループホームの設備基準>

設置場所 利用者の家族や地域住民との交流の機会が確保される地域にあること
最低定員 ・事業所全体で4人以上
・共同生活住居1か所あたりの定員は2人以上10人以下
(既存の建物を利用する場合は2人以上20人以下)
居室 ・居室の定員は1人(サービス提供上必要と認められる場合は2人とすることができる)
・居室面積は、収納設備等を除き、7.43㎡以上
設備 ・交流のために、居室に近接する設備(居室、食堂など)
・10名を上限とする生活単位ごとに区分して配置(台所、トイレ、洗面設備、浴室など)

 

<管理者研修について>
ここではグループホームの管理者になるために必要な、管理者研修についてご紹介します。

[認知症介護実践者研修]
グループホームの管理者になるにはまず、都道府県やグループホーム連絡協議会が主催する「認知症介護実践者研修」を受講、修了する必要があります。
認知症介護実践者研修は介護保険施設・事業所において、質の高い認知症支援を普及させることを狙いとする実践的な研修です。
東京都での受講要件は以下の全てを満たしていることです。

(1) 認知症介護に関して、介護福祉士と同等の知識を習得していること
(2) 原則として、認知症高齢者の介護に関する経験が2年程度以上あること
(3) 各施設・事業所において介護・看護のチームリーダー(主任・副主任・ユニットリーダーなど)の立場にあるか、近い将来そうなることが具体的に予定されていること

研修期間は、講義・演習が6日間、自施設実習が2週間で、受講料は無料です。

[認知症対応型サービス事業管理者研修]
認知症対応型サービス事業管理者研修は認知症対応型サービス事業の管理者に、事業運営に必要な知識技術を習得させることを目的とする研修です。
受講要件は認知症介護実践者研修、または旧痴呆介護実務者研修(基礎課程)を修了していることです。
研修期間は、講義・演習が2日間、他施設実習が1日間で、受講料は2,600円です。

グループホームで働く人の仕事内容

グループホームでの仕事内容は職種や資格、働く時間帯によって様々です。ここではそれぞれのグループホームにおける仕事内容を見ていきましょう。

<看護師>
・仕事内容
グループホームにおける看護師の役割は以下の通りです。

●利用者の診察補助、服薬管理などの健康管理
●利用者の異常(病気・怪我)の早期発見、搬送要請
●介護スタッフのサポート

グループホームでの看護師の目的は、病院のような治療ではありません。利用者の生活を医学的な見地から補助していくことです。具体的には、バイタルチェック・薬剤管理・入浴可否の判断、軟膏塗布、褥創処置などです。その他、食事介助や入浴介助など、介護スタッフと同じ業務も行うので、幅広い範囲の業務にかかわることになります。

・給料
グループホームで働く看護師の給料は、病院で働く看護師に比べて低い傾向にあるようです。もちろん、事業所がある地域や運営母体によっても給料は変動しますが、求人広告から判断すると年収350万円~400万円程度が平均額と判断できます。
また、グループホームで働く看護師の給料は、他の介護系施設の給料よりも少し低いことが多いようですので、就職先に高給与を求める方には向いていないかもしれません。

・やりがい・メリット
グループホームにはいろんな症状、いろんな個性の利用者がいるので、それぞれの個性に合った介護ができる点がやりがいと言えるでしょう。但し、利用者に重度の認知症患者はいなく、死に直面するような業務も少ないため、病院や特養に比べて精神的には落ち着いた仕事ができるでしょう。
また、利用者間やスタッフとの関係性が家族のようなグループホームが多いのでアットホームで利用者に寄り添った業務を行えます。

<ケアマネージャー>
・仕事内容
グループホームにおけるケアマネジャーの基本的な仕事内容は、管理者として入居者の介護計画・ケアプランを作成し、入居者の家族に説明して同意をもらいます。また、ご家族の相談に対してアドバイスをすることもケアマネジャーの仕事です。
但し、仕事の半分は入居者に対しての日常的な介護業務です。ケアマネジャーが介護業務をすることはとても重要であり、その業務の中で入居者の観察をし、スタッフに的確な指示を与えるのです。その他にも地域の集会や研修にも積極的に参加、緊急の対応など、ケアマネジャーは責任が大きい職種と言えます。

・給料
平成25年度における賃金構造基本統計調査書によると、10人程度規模の事業所に勤めるケアマネジャーの平均年収は367万円であり、グループホームで働くケアマネジャーの平均年収も近い値です。ケアマネジャーの給料は事業規模による大きな差はないため、勤務先を選ぶにあたって施設の規模を気にする必要はありません。

・やりがい・メリット
グループホームにおけるケアマネジャーの仕事で一番のやりがいは、自分のケアプランによって入居者やその家族の生活が以前より改善したと実感できたときにあります。また、ケアマネジャーは「介護の世界の最前線で働いている」という自信もやりがいに繋がります。
入居者やその家族の生活に深く関わり、最適なケアは何かを考え、常に寄り添う存在だからこその喜びがあります。

<グループホームの夜勤って何するの?>
グループホームは基本24時間運営しているため、当然夜勤も発生します。そして、夜勤では以下のような業務を行います。
・入浴補助
・就寝準備、介助
・夜間の排泄の補助
・夜間の巡回、監視
・朝食の準備
業務内容だけを見ると難しそうには感じないように思いますが、深夜には徘徊や予測できない行動を起こす高齢者の方もいます。そういった行為を見逃してしまうと大きな事故につながるケースもあるので、夜勤では巡回や監視に力を入れる必要があります。
また、勤務体制として、夜勤では深夜手当が発生するため、夜勤の人数が多いと事業所としては莫大な人件費に苦労してしまいます。また、人手不足の事業所も多く、1人で夜勤をこなさなければならない場合もあり、夜勤がハードワークになる要因となっているのです。

グループホームの求人について

ここでは、グループホームで働く上でのメリットとデメリットについて説明します。

<グループホームで働くメリット>
・身体介護が少ない
グループホームでは要介護度の低い方のための施設ですので、食事介助や入浴介助を必要としない人もいます。また、他の介護施設に比べて利用者数に対するスタッフ数の割合が高く、身体介護に関わることが多くありません。

・利用者に寄り添った介護
グループホームは利用者数が少ない状態で運営することが多く、利用者数が多い特養や有料老人ホームに比べて、スタッフと利用者間の距離が近く、利用者に寄り添った介護をすることが可能です。

<グループホームで働くデメリット>
・身に付くスキルが限定的
常に限られた利用者との交流しかなく、重度の要介護者は利用していないため、重度の要介護者に対する身体介護の経験をすることができません。そのため、重度の要介護者の対処方法を身に付けることができず、他の介護サービス事業所に転職する際、実際の実務経験年数ほどの強みはないと言えるでしょう。

・認知症患者の対応が大変
グループホームの入居者の多くは、要介護度が低い上に認知症患者です。つまり、「元気な認知症患者」なのです。寝たきりの高齢者とは違い、夜中に徘徊することも、奇声を上げて暴れ出すことも多く、スタッフの依頼を簡単には聞いてくれません。
そういった利用者の行動によって、スタッフが怪我をすることもあります。身体介護における体力は不要でも、元気な利用者に対処するための体力は必要なのです。

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