管理者&サ責&ヘルパー!訪問介護でオールマイティに働く/介護リレーインタビュー Vol.22【サービス提供責任者/田中智恵子さん】#1
介護業界に携わる皆様のインタビューを通して、介護業界の魅力、多様な働き方を紹介する本連載。今回は、東京都北区にある正光寺運営の訪問介護事業所「月の光」にて管理者/サービス提供責任者を務める田中智恵子さんにお話をお聞きします。
前編では、田中さんが介護業界に進まれた経緯と、お仕事内容について詳しく教えていただきます。
介護福祉士を志した理由
ベースにあるのは祖父母に可愛がってもらった記憶
──まずは田中さんが介護業界に進まれたきっかけを教えてください
介護の仕事をしたいというのは、高校生のころから考えていました。そう思ったのは、純粋におじいちゃん子おばあちゃん子だったというところが大きいです。それと、昔から人のために何かをするのが好きでした。妹がいるので、下の子の面倒を見る機会が多かったというのもあると思います。
短大進学にあたって介護と幼児教育で悩み、まずは保育士と幼稚園の先生の資格を取ろうと幼児教育学科に進みました。でも1年生の終わりごろ、やっぱり介護の仕事をしたいという思いが強くなって…。資格取得を保育士に絞って、空いた時間に障がい者のデイケア施設にアルバイトに行くようになりました。卒業後はそのまま社員として、その施設で4年ほど働きました。
──最初は障がい者介護を経験されたんですね。でも、もともとは高齢者の介護に興味をもたれていた?
はい。高齢者の介護にも携わりたいなという気持ちはずっと持っていました。
それで祖母が体調を崩したこともあり、時間を作って祖母の手伝いをしたいと思って訪問介護に転職しました。訪問介護をやっていく中で、デイケア施設の楽しさが忘れられず同法人のデイサービスでボランティアを経験。やはりデイサービスが楽しくて、お誘いもあり異動することにしました。その後、同法人で訪問介護へ異動し、初めてサービス提供責任者として働きました。
──その後、「月の光」に入られたんですね。
はい。正光寺が訪問介護事業を立ち上げるにあたり、ヘッドハンティングしていただき、管理者兼サービス提供責任者として勤め始めました。
正光寺の介護課として最初の事業はデイサービスでしたが、「地域の方に恩返しをしたい」という気持ちから訪問介護が立ち上がったと聞いています。デイサービスでは担えない、ご自宅に帰ってからの生活に寄り添った介護を提供しています。
管理者、サ責、ヘルパーとしてオールマイティに活動
──ではお仕事内容についてお聞きします。管理者兼サービス提供責任者のお仕事とは?
細かく言うとそれぞれすることはいろいろあるんですが、おおまかに言うと「みんなに気持ちよく働いてもらうために手助けする」というのが一番の仕事です。登録ヘルパーさんからの相談やシフト調整、利用者さんとの連絡調整や書類作り、ケアマネさんやご家族への連絡や報告など、業務内ようは本当に多岐に渡ります。
──ヘルパーとして現場に出ることもありますか?
1日2、3件は担当しています。個人的にやりたいというのもありますね。同じように働くからこそ、その人の気持ちがわかると思うんです。自分ができていないことを人にしてもらうのではなく、自分もある程度できないといけないなという気持ちは大きいです。
「月の光」は現在、登録ヘルパーさんが4名ほど。少数精鋭で利用者さんに寄り添った介護を提供しています。利用者さんは介護保険を利用されている高齢者の方30名前後。週1回の方から週4回の方まで、幅広くご利用いただいていますね。利用者さんの生活を手助けし、当たり前の生活を送れるように、みんなで支援しています。
みんなが気持ちよく働けて、利用者さんに必要とされる事業所を目指す
──サービス提供責任者として、ヘルパーさんたちに指導することはありますか?
折を見て同行し、サービス内容の基本を確認することはあります。最初の研修で話していても、やっぱり忘れてしまうことはありますから。基本がわからないと応用もできないと思うので、そういう意味で改めてサービス内容についてはよく話をしています。
──ヘルパーさんをまとめる立場として大変なことはありますか?
私がシフトを組んでいるので時間の調整やお休みの申請などを聞くんですが、みなさん責任感が強いのですごく申し訳なさそうに言ってくださるんです。
でも私は、プライベートがあるからこそ仕事がきちんとできると思うので。ご家族やプライベートのことで仕事に調整が必要になっても、そこは気持ちよく承諾して「もちろんどうぞ」とお話をするようにしています。
訪問介護は「24時間365日」というイメージもまだまだ強いし、実際のところ残業が多い職種ではあります。でもそういう固定観念を、いろんな人が打破していかなきゃいけないと思うんです。
──サービス提供責任者のお仕事のやりがいは?
サ責の仕事では、訪問介護をより良くすることを考え、ヘルパーさんに伝えていきます。それを実践して、ヘルパーさんが褒められたり「来てくれて助かっている」と言われることがすごく嬉しいし、やっていてよかったなと思えます。
この仕事は「正解」というものがすごく難しいと思います。それぞれの利用者さんがどうしたら安全安心に暮らせるかを、自分なりの引き出しを使って利用者さんと一緒に考えるのが訪問介護の仕事。だからご本人に「月の光にお願いしてよかった」と言われるのが「正解」なので、そう言ってもらえることにすごくやりがいを感じますし、ありがたいなと思います。
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訪問介護事業でオールマイティに活躍している田中さん。インタビューを通して、利用者さんはもちろん、利用者のご家族、ヘルパーさんと、携わる全方位に気持ちよく生活して欲しいという気持ちを感じました。次回後編では、田中さんがお仕事に感じるやりがいや大変さ、今後の目標についてお聞きします。
取材・文/山本二季
撮影/米玉利朋子