本業・訪問看護師/副業・出張型アロマセラピスト。大好きなこと2つを仕事に【petit bonheur 森本早紀さん】#2
1つのフィールドにとらわれずに活躍する方へのインタビューを通して、ヘルスケア事業者の多様な働き方を模索する本企画。前編に続き、大阪府で訪問看護師として勤務する傍ら、出張型アロマトリートメントサロンを運営している森本早紀さんにお話をお聞きします。
後編では、本業である訪問看護師と併行して行っている出張型アロマトリートメントサロンについてお聞きします。
お話を伺ったのは…
petit bonheur 森本早紀さん
大阪府在住。訪問看護師として勤務しながら、メディカルアロマセラピスト、アロマテラピーインストラクター、アロマ空間アドバイザーの資格を取得。出張型アロマトリートメントサロン「petit bonheur」を開き、訪問看護の仕事と両立している。
森本早紀さんのInstagram:@petit_bonheur_09
本業を大切にしながら、少しでも多くの人を癒やすためサロンを開業
――サロンを始められたきっかけは?
訪問看護の現場のなかでリラクゼーションを取り入れるようになり、利用者さんから嬉しいお言葉をいただくことが多くなりました。そこで、そういったリラクゼーションがもたらす小さな幸せは、病気の有無に関わらず誰にとっても大切なことだと感じたんです。
でも、訪問看護の仕事は大好きで辞めたくないので、空いた時間にできることがあればと、出張型のアロマトリートメントサロンをスタートしました。
――サロンのコンセプトなどがあれば教えてください。
サロンの名前である「petit bonheur」は、フランス語で「小さな幸せ」という意味です。人って生きていく中で、誰かと自分を比べてしまって、自分は幸せじゃないと思うことがあります。でも、例えば家族とおいしいごはんを食べるとか、そういう小さな幸せがすごく大切だと、私は思っているんです。
だから、このサロンで私がお客さまと出会って、短い時間でも好きな香りに囲まれて癒やされて「ちょっと幸せだったな」と思ってもらいたい。そのための空間や時間を提供したいというのが、サロンをするうえで大切にしていることです。
――本業である訪問看護師のお仕事との両立は大変そうです。
あくまで本業がメインなので、サロンの活動は休日や終業後。でも本業のシフトが出るのが1か月前なので、なかなか日程が組めない面はありますね。ご希望の日時が決まっていれば休日の申請は出せますが限りもありますし、訪問看護師という仕事上、オンコールという24時間電話待機が必要な日もあったりして。
だから完全予約制で、月に数日というのが現状です。もう少し本業が落ち着いて、いい感じでバランスが取れるようになったら、したい活動はいろいろあるんですけどね。今は忙しくて、なかなか難しいところです。
より多くの人を癒やすサロン形態を模索中
――サロンの形態を出張型にしたのは何故ですか?
日々忙しかったり、育児や介護で家から出られなかったりして、サロンに行けない方々にアプローチができたらと思って、出張型にしました。本業が訪問看護師なので、私自身は人の家に伺うことに抵抗がないんですよね。また、本業がメインなこともあり、店舗を持つのは難しいというのもありました。
でも最近は、小さくても店舗があったほうがいいのかなと感じています。訪問看護の場合は必要があって仕方ない状況なので、看護師が訪問する分には家の中がハチャメチャだろうがあまり気にならないと思うんです。でも健康な方が自宅にセラピストを呼ぶとなると、ちょっと片付けないと…ってなるじゃないですか。実際にお仕事をしてみて、そこは感じるところがあったので、絶対的に出張型が良いということはないなと思います。
だから理想は、どちらの形態でも対応できることですよね。今はシェアサロンもあるので、そういったものを定期的にやりつつ、出張と併用できたらいいのかなと。
――サロンの運営に当たって、売上や集客面を考えることは?
今は正直なところ、考えていません。そこを考え始めると、それ1本に集中しなきゃいけなくなっちゃうので。売上や集客のことを考えてストレスになるのは、私がイヤなんですよね。本業も好きなだけに、そちらを疎かにしたくないというところがあるので、ゆるりゆるりとやっているところです。
ただ本業が落ち着いたら、働く方や子育てしているお母さんが集まるところなどで活動したいとは思っています。例えば小児科などに何かアプローチできたら、もっと活動の幅が広がるだろうなと。
人に寄り添い信頼関係を作る、訪問看護とセラピストは天職
――訪問看護のお仕事とセラピストのお仕事、共通点を感じることは?
やっぱり「人を大事にする」ということは共通していますね。相手の立場に立って関わるというところは、本当に一緒だと思います。
その人の今困っていることが、話す内容、見える仕草の背景に隠れていたり、言葉にしなくても何か考えてらっしゃることがあったりするんです。それを訪問看護師もセラピストも読み解く必要がある。そういう面では、人としての関わりの持ち方、信頼関係作りというのが、どちらもすごく大事です。
また、やりがいのある仕事だというのも共通点ですよね。利用者さんやお客さんからの「ありがとう」「来てくれてよかった」「また来てね」という感謝の言葉が、どちらのお仕事でもやりがいになっています。
――最後に看護に携わりながらアロマセラピストを目指している方にアドバイスをお願いします。
アロマセラピーの知識は看護の現場でもとても活用できるものなので、悩んでいるのであれば是非学んでみて欲しいですね。知識というのは、自分の中に染みついて誰にも取られないものなので。
あと看護師って、病院勤務であろうが訪問看護であろうが、本当にすぐストレスが溜まるんですよね。何十人と病気の人と関わるので、その分、自分の精神状態や体が健康でないと、安心した看護は提供できないと思います。
そういった面でも、自分のセルフコントロール、セルフケアのためにアロマはすごく役立つと、勉強して感じました。まずは相手に何かをするのではなく、自分が心穏やかに、ちょっとでも「今日も頑張ろう」と思えるきっかけとしてアロマを学び始めてもいいと思います。自分で自分の機嫌をとるためのツールとして、是非活用して欲しいです。
現在セラピストのお仕事は、日数も限られるため近しい方のみに行っているそう。しかしお話を伺うなかで、サロンを通してより多くの方にアロマセラピーを届けたいという気持ちと、そのための方法を模索されていることが伝わりました。2つのお仕事を両立するには、そんな気持ちが一番大切なのかもしれません。
取材・文/山本二季