ヘルスケア&介護・看護・リハビリ業界の応援メディア
介護・看護・リハビリ 2020-04-09

介護事務として働くために

介護の現場では、実際に介助を行う介護職員や生活相談員の他にも、介護保険やサービス利用料に精通した介護事務員が働いています。ここでは、そんな介護事務員の仕事内容や、勤務先、介護事務員になるための方法、介護事務の資格や試験、医療事務との違いなど、介護事務員を目指す人にとって必要な情報を細かくご紹介します。

介護事務とは

介護事務は介護に関連する事務作業全般のことを指しますが、一般の事務とは大きく異なります。異なる点で大きいのは「介護報酬請求業務(レセプト作成)」です。介護報酬請求業務は介護事業の運営に必要不可欠であり、介護事務作業の中心になります。

介護報酬とは介護サービス事業者(介護施設)が利用者にサービスを提供した時、事業者に支払われる報酬(利用料金)のことを言います。原則として報酬の1割は利用者の負担で、9割は介護保険から支払われます。

また例外として利用者の負担が2割になる場合もありますので、詳しくは「2015年8月から介護保険自己負担額の引き上げが実施される!」の記事をご覧ください。

介護事務員は男女比で見ると、女性が圧倒的に多い職業ですが、少ないながらも男性の介護事務もいます。男性は介護事務員としては働き辛いと思われがちですが、実際は力仕事など、男性ゆえに重宝されることもあります。

介護事務の仕事内容

仕事内容の多くは前述した「介護報酬請求業務(レセプト作成)」です。

介護サービスが行われた際に、国と自治体の負担額、利用者の支払額を介護保険制度に基づいて計算をします。作業としてはパソコンの専用ソフトを使って、サービスの単位数や利用者の保険番号、生年月日などを正しく入力していきます。その上で、介護報酬の請求書(レセプト)を作成して国や自治体に負担額を請求します。利用者への費用の請求書や領収書の作成も行います。

介護サービスの実績は月末締め、翌月の10日までに自治体に請求することが決められているので、この期間が業務の繁忙期になります。介護報酬額は介護サービスの内容や回数、地域によっても異なるので、介護保険制度をしっかりと理解して、正確な請求業務を遂行することが求められます。

その他の業務としては、新規施設利用者の受付・電話応対、利用者から利用料金の受領、施設の売上の管理、予算編成などの業務を行う場合もあります。

介護事務と医療事務の違い

女性に人気の高い事務職としてよく比較されますが、いろいろと違いがあります。まず、介護事務は介護保険制度や介護報酬請求業務、医療事務は医療保険制度や診療報酬請求業務についてと、「介護」「医療」のそれぞれ異なる知識が必要です。請求業務についてもそれぞれ算定方法が違うので、どちらかができたら、もう一方もできる、というものではありません。

就業先については、介護事務は介護施設や訪問介護事業所など、介護サービス事業所です。一方、医療事務は病院、クリニック、診療所などの医療施設になります。また、医療事務は受付も行うので、来院される患者さんの応対など接客業としての面も多くなります。介護事務も、来所者への応対業務はありますが、病院の窓口のようにずっと人の前に出ているということはありません。どちらかと言うと、会社の一般事務に近いイメージです。

求人としては、医療事務の方が多くあります。資格をとる際は、自分の興味のある方向や、希望する働き方を考えて選ぶことが大切です。

勤務先・就職先

介護事務員の就職先の多くは介護サービス施設で、求人は全国に多数あります。例えば、訪問介護事業所、介護老人保健施設、在宅介護支援施設、特別養護老人ホーム、有料老人ホーム、グループホーム、ショートステイ、デイサービス、病院などで介護事務員を必要としています。

介護事務員になるには

介護事務職に就くための最も早いルートとしては、介護事務員の募集求人に応募して採用されることです。

しかし、介護事務専任の職員として募集をしている場合は少なく、求人の多くは介護事務兼任の介護スタッフを募集しています。介護事務兼任で採用された場合、いつ専任になれるかは不確定であり、もしかするとずっと兼務として勤務することになってしまう恐れがあります。

採用され介護事務専任になるために、もしくは専任の介護事務員として入社されるためには、介護事務の資格取得は必須でしょう。

介護事務の資格・試験の種類

介護事務には多くの関連資格があり、それぞれに特徴があります。介護業界内では知名度が高く、就職に有利な資格から、あまり知られておらず、取得してもあまり意味のないものまで様々あります。ここでは、その中でも知名度が高く全国的に就職に有利に働く3つの資格をご紹介します。

介護事務管理士

試験名:「介護事務管理士技能認定試験」
実施団体:技能認定振興協会(一部「ソラスト(旧:日本医療事務センター)」に委託)
資格の概要:2000年4月に介護保険制度がスタートし、介護サービスを提供する事業所や施設では、介護報酬を請求するという新しい事務が発生しました。
介護保険制度の仕組みを理解し、正確に介護報酬を算定し、請求できる事務スタッフ は介護サービス提供機関にとって経営のサポート役ともなる、欠かせない存在です。
介護事務管理士の資格は、介護報酬の算定に関する知識とスキルの証になります。
仕事内容:介護事務。介護施設などで介護費用の請求をしたり、ケアプランを立てるケアマネジャーのサポート。
難易度:B
試験日:奇数月の第4土曜日(年6回)
合格率:48~60%
受験料:5,700円

試験問題例
【問題1】次の各項に該当するサービスを□の中から1つ選びなさい。

1 指定訪問看護ステーションに勤務する作業療法士が利用者宅を訪問して行うサービス。
2 30日以内の期間を定めて介護老人保健施設に入所するサービス。
3 1つの事務所で、通い、泊まり、訪問(介護及び看護)を組み合わせて行うサービス。
4 認知症の利用者のみを対象とするデイサービス。

A.訪問看護 B.認知症対応型通所介護 C.短期入所療養介護
D.複合型サービス E.小規模多機能型居宅介護 F.訪問リハビリテーション
G.短期入所生活介護 H.通所介護
第81回 介護事務管理士 技能認定試験学科問題(平成26年5月度)問5より

ケアクラーク

試験名:「ケアクラーク(R)技能認定試験」
実施団体:日本医療教育財団
資格の概要:介護事務業務に従事する者の有する知識および技能の程度を評価・認定し、職業能力の向上とその社会的経済的地位の向上に資することを目的とします。
仕事内容:介護事務
難易度:C
試験日:偶数月(年6回)
合格率:65~70%
受験料:6,700円

試験問題例
【問題2】次の各問を読み、正しいものの組合せを1つ選びなさい。

1 介護報酬の請求権の時効は、3年間と定められている。
2 給付管理票は、居宅サービス費の支給限度額管理を行うため、支援サービス事業所のみ提出が義務づけられている。
3 介護給付費明細書は、サービス事業所等の所在する各都道府県の国保連合会に提出する。
4 施設サービスにおける出来高部分の医療サービスの請求に誤りがあった場合は、査定となる。

A.(1)(2) B.(2)(4) C.(2)(3) D.(1)(3)(4)
E.(3)(4) F.(2)(3)(4) G.(1)(4) H.(1)~(4)

介護事務実務士(R)

試験名:「介護情報実務能力認定試験」
実施団体:医療福祉情報実務能力協会
資格の概要:介護保険制度の導入により、介護保険請求事務が新しく福祉施設では新しく重要業務として、介護保険請求事務の一定の実務能力を認定します。
仕事内容:介護事務
難易度:C
試験日:7月、12月(年2回)
合格率:53~67%
受験料:7,700円

試験問題例
【問題3】介護保険に関する記述のうち、正しいものを選びなさい。

1 介護保険法が制定されたのは2000年4月1日である。
2 介護サービスを利用するには被保険者が介護を要するという公的認定として、要介護認定を受ける必要がある。
3 要介護認定には要支援1〜5、要介護1〜5の10段階が存在する。
4 40歳以上の者が第1号被保険者、65歳以上の者が第2号被保険者となる。

【解答1】1-A 2-C 3-D 4-B 【解答2】F 【解答3】2

資格を取得するメリット

資格取得のメリットとしては大きく「就職活動時」と「就職後」の2つがあります。
就職活動では、履歴書に取得資格を記載できるので、優先的に採用される可能性が高くなります。また、応募条件に必要所持資格が記載されている場合もあるので、有資格者は無資格者に比べて就職先を見つけやすい傾向にあります。資格は就職後にも役に立ちます。未経験であったとしても既に必要な知識やスキルをある程度身につけているので、スムーズに仕事に入ることができます。

介護事務の資格の違いは?

介護事務の資格はどれも民間の団体が主催しているため、それぞれ名称が異なりますが、介護保険制度や介護報酬の請求についての知識を習得するというところでは基本的に同じです。介護事務に関するしっかりとした知識が身についていれば、どの資格が就職に有利、ということもありません。

特徴としては、ケアクラーク(R)の試験では社会福祉やコミュニケーションなど幅広い知識が問われます。介護事務実務士(R)は在宅受験ができるので、忙しい方にもとりやすい資格です。どれも受験資格はありません。また、試験の際には資料を参考にしての答案作成が認められています。

介護事務資格の勉強方法

独学で勉強する

一般に売られている介護保険制度や介護報酬制度に関するテキストを買って自分で勉強する方法があります。費用があまりかからずできるところは魅力ですが、どのように勉強を進めてよいか悩む場合も多いようです。主催する団体で過去問題集を販売しているところもあるので、試験対策として併せて活用するのがオススメです。

通信講座を受ける

通信講座ではさまざまな介護事務の資格講座を展開しています。試験の内容に合わせてポイントを絞って勉強ができるところは大きなメリットで、働く方の多くが通信講座を利用しています。概ね4か月以下、4万円以下で受講できます。

通学して勉強する

短期間で勉強できるのと、直接講師に質問できるところがメリットです。学校によっては夜間や土日に開講しているので、仕事をしながらでも通学できます。最短で3日、5万円以下で取得できる講座もあるので、集中して勉強したい人にオススメです。

おすすめの参考書・テキスト

介護事務の勉強をしようとテキストを探しても、介護事務用のテキストはほとんどありません。介護事務の勉強をするには、「介護報酬制度」や「介護保険制度」のテキストで勉強しましょう。

介護報酬制度/介護報酬請求事務
(介護福祉経営士テキスト【基礎編II】第2巻 第2版)
著者 小濱道博 判型 B5
出版社 日本医療企画 ページ数 182ページ
発行日 2015年8月18日 価格 2,700円
介護福祉事業の経営という幅広い概念を捉えるためには、多様な視点をもつことが必要です。
分野の第一人者や現場の最前線で活躍する、第一級の執筆陣によって書かれた本テキストは、介護福祉経営に必要な項目を体系的・包括的に学べるよう構成されています。
介護福祉事業の経営者・介護職員はもちろん関連企業に勤める方、さらにこれから介護福祉の世界に足を踏み入れようと考えている方には必読・必修のシリーズです。

 

これならわかるスッキリ図解 介護保険
第2版 (2015年版)
著者 高野龍昭 判型 A5
出版社 翔泳社 ページ数 264ページ
発行日 2015年3月18日 価格 1,512円
“わかりやすい”と大好評の「スッキリ図解」シリーズでは、難解な介護保険制度と、2015年の改正について、できるだけわかりやすく解説します。
◆冒頭のカラーページで、改正の全体像がわかる!
◆1つの項目を2ページ見開きで解説。図解も沢山。なのでわかりやすい!
◆平易な表現で解説しているので、スラスラ読める!
◆2015年2月公表の介護報酬情報にも対応! さらにこれから介護福祉の世界に足を踏み入れようと考えている方には必読・必修のシリーズです。

 

介護報酬パーフェクトガイド
2015-17年版
著者 阿部 崇 判型 A4
出版社 医学通信社 ページ数 320ページ
発行日 2015年6月30日 価格 3,024円
2015年4月に介護報酬が全面的に改定されました。本書は,介護報酬の算定・請求に関する全知識を,基礎から実務上の具体的なHow Toに至るまで,実務者の視点からわかりやすく解説しています。
(1)介護報酬の仕組みと内容
(2)具体的な算定方法
(3)請求の方法と請求事務の実際
(4)請求書・明細書の書き方
(5)ケアプラン作成の要点――などで構成。
実際の『ケアプラン12事例』に沿って,様々なパターンのそれぞれの算定・請求ポイントを具体的かつ詳細に解説。
必要不可欠な実務知識がラクラク理解できます。

 

ここが変わった! 改正介護保険サービス・しくみ・利用料がわかる本
(2015~2017年度版)
著者 川村匡由 判型 A5
出版社 自由国民社 ページ数 184ページ
発行日 2015年3月27日 価格 1,515円
2015年度の介護報酬改定は、全体で2.27%のマイナス改定となりました。各サービスの基本報酬の見直しのほか、「認知症ケア加算」「介護職員処遇改善加算」「同一建物居住者に対する減算」など各種加算・減算の新設や見直しが行われました。
本書では、これら介護保険制度改正のポイントと介護報酬改定後のサービスの利用料としくみについて、わかりやすくコンパクトにまとめています。

給料

介護事務の給料は、介護業界の中においても決して高いものではありません。そのため、高収入を求めて介護事務の仕事をするのはおすすめできません。

雇用形態は正社員、パート、アルバイトと施設によりさまざまです。ちなみに介護事務専任で募集している求人では、正社員でスタート時は月給16~19万円程度、アルバイトやパートでは時給900~1,200円程度が一般的なようです。

求人を探すときのポイント

前述したように、介護事務の求人では、介護スタッフとの兼任の募集が多くあります(食事・入浴の介助や送迎など)。慢性的な人手不足の施設では、事務だけより介護の仕事もやってくれる人が歓迎されるのは言うまでもありません。より採用率を高めるには、少し目線を変えて仕事を探すことも必要です。

介護業界では経験者歓迎の求人が多く、介護職を経験しておくことが今後の転職の際にも有利に働きます。また、将来的にケアマネジャー(介護支援専門員)やサービス提供責任者を目指している人にとっては、実務経験や介護産業の知識を持っていることが必ず役に立ちます。実際に兼任で仕事をスタートし、介護福祉士やホームヘルパーの資格を取ってキャリアアップしている人もいます。

求人募集は、介護専門の求人サイトで探すのがおすすめです。求人を探すと東京や大阪などの勤務地に関係なく、全国的に求人があるのを目にすると思います。また、各事業所のホームページでも直接募集しているところもあります。サイトの「当社施設の紹介」や「先輩インタビュー」のページを読むと、そこで働くイメージがしやすいでしょう。

ハローワークも強い味方です。求人サイトにはない小さな事業所が掲載されていたり、相談員に正社員募集や応募資格不問、最寄の駅や路線など自分の希望を伝えて一緒に検討してもらうことができるからです。ハローワークで紹介を受けたら、紹介状を持って面接に行きます。インターネットでも新着の求人を検索することができます。

応募条件として普通自動車免許を求められる場合もあります。普通自動車運転免許(AT限定可)などと書かれている求人では、デイサービスなどで送迎の仕事も含まれているケースが多いのです。介護事務の資格については意外と無資格OKというところも多くあります。資格取得支援有の施設を選べば、働きながら資格をとることもできます。

介護職から事務に転職したい方、事務専任を目指す方は、大きな施設や新規開業の施設が狙い目です。

介護事務のキャリアアップ

介護事務の仕事をしていく中で、もっと利用者の役に立ちたいとケアマネジャー(介護支援専門員)になる人もいます。同じデスクワークであるのと、介護報酬の算定方法はケアマネジャーの仕事でも必要となるため、目指しやすい職種と言えます。また、専門職ですので、給与アップも見込めます。

しかし、残念ながら介護事務の実務経験はケアマネジャーの受験資格にはなりません。介護福祉士など規程の法廷資格を取るか、生活相談員や支援相談員として5年以上の実務経験を積む必要があります。時間はかかりますが、介護業界にずっと携わりたいと考えている方は、職種を広げながらキャリアアップする道もあります。

介護事務の魅力

デスクワークが中心なので、体力的な負担が少なく、長く安定して働きたい方に人気です。残業はあまりなく、土日は休みであることも多いようです。また、正社員・派遣社員・アルバイトなど、働き方を選べることもあり、子育て中の方や主婦の方は家庭と両立しやすい仕事です。

また、老人福祉や介護に携わりたいけれど、直接介護を行う現場での仕事は難しいという方にも人気のようです。丁寧な接客や電話応対が利用者の安心感につながることも多く、施設に関わる皆様の介護生活をそのような面からサポートすることもできます。

介護事務の求人について

介護事務の需要

これからも続く超高齢社会により、介護事務員の需要の増加は期待されるところです。しかし多くの介護施設では介護事務員は事務作業だけでなく、現場の介護業務も行うため、介護事務員専門とする求人は少ないのです。そのため、介護事務の資格を取得するだけで採用されるのは難しく、現場で介護ができる介護福祉士資格や、事務の知識に加えて簿記資格を併せることで更なる価値が生まれるでしょう。

介護事務の志望動機

なぜ介護事務の仕事をしたいと思ったのか、なぜその会社で働きたいと思ったのか、更に介護職未経験の場合は、これまでしてきた仕事を今後にどう生かせるかを志望動機の中に入れ込むと良いでしょう。

[例文]
これまで10年間、一般企業の事務職として、実務処理能力や精神力が鍛えられる経験をして参りました。
以前から高齢者の役に立つ介護の仕事がしたいという思いがありました。そして、その介護の仕事の中に自分の事務能力が生かせる介護事務という仕事があることを知り、介護事務管理士の資格を取得しました。御社では未経験者の介護事務員も募集していらっしゃることを知り、私にとって大きなチャンスであると感じ応募させていただきました。

介護事務として働くメリット

介護事務は直接介護業務をするのが役割ではなく夜勤もないので、身体的に辛いと感じることはなく、腰痛などで身体を壊すことはありません。
また、意外と思うかもしれませんが、介護事務には「独立」という道もあります。小規模経営の介護事業所ではコスト削減のため、介護事務員を外注したいと考えているところもたくさんあります。そこで独立した介護事務員は複数の事業所から介護事務の仕事を請け負い、事業として成り立たせるのです。

介護事務として働くデメリット

介護事務のデメリットとして一番言われるのは給料が低いことです。同じ役職で同じ勤務年数の介護職員よりも少し低いと考えておいた方が良いでしょう。
また、基本的に請求業務、勤怠管理業務、給与計算など、毎月行う仕事が決まっており、それらのルーティンワークになってしまいます。ルーティンワークが苦手な人には向かない仕事と言えます。

この記事をシェアする

編集部のおすすめ

関連記事