機能訓練指導員の研修や講習会ではどんなことを学ぶの? 2019年の講習会実例を紹介
機能訓練指導員になるためには、理学療法士、作業療法士、あん摩マッサージ指圧師、柔道整復師など、特定の国家資格を取得している必要があります。しかし、単に資格を持っているだけでは十分とはいえません。それぞれの専門分野に精通しているだけでは、機能訓練指導員としての働くための知識や技術は不十分であると考えられているからです。
各国家資格を持っている人が会員登録している公益社団法人などでは、機能訓練指導員としての資質の向上を目的とした講習会・研修会が開催されています。講習会・研修会では具体的などのようなことを学ぶのか、また、受講するための条件にはどのようなものがあるのかをご紹介します。
機能訓練指導員の研修や講習会ではどんなことを学ぶの?
理学療法士、あん摩マッサージ指圧師、はり師・きゅう師、柔道整復師などが会員登録している各公益社団法人では、機能訓練指導員の資質向上のための講習会や研修会が開催されています。講習の内容や講習を受けるための条件は、どのようなものなのでしょうか。
全日本鍼灸マッサージ師会ほか|「認定訪問マッサージ師」講習会「認定機能訓練指導員」講習会
ここからは、「公益社団法人 全日本鍼灸マッサージ師会」や「日本あん摩マッサージ指圧師会」では、認定訪問マッサージ師、および認定機能訓練指導員の講習会が開催されています。講習会の概要について詳しくご紹介しましょう。
受講資格
認定訪問マッサージ師」講習会や、「認定機能訓練指導員」講習会に参加するには条件があります。下記の受講資格を持っていれば、講習会に参加可能です。
(1)認定訪問マッサージ師講習会の受講資格:あん摩マッサージ指圧師免許取得者
(2)認定機能訓練指導員講習会:はり師・きゅう師・柔道整復師・看護師・あん摩マッサージ指圧師などの国家資格取得者
受講料
講習会を受けるには受講料が必要です。ただし、受講料は条件によって異なります。
(1)認定訪問マッサージ師、認定機能訓練指導員のいずれかのみを受講する場合
関連団体における会員の方 / 4万円(テキスト代・認定書・携帯型認定証など)
関連団体に所属していない方 / 8万円(テキスト代・認定書など)
※関連団体は、日本東洋医学系物理療法学会、全日本鍼灸マッサージ師会、全国病院理学療法協会、日本盲人会連合、日本あん摩マッサージ指圧師会、東洋療法学校協会、日本理療科教員連盟のいずれかになります。受講料には、宿泊費や昼食代は含まれません。
(2)認定訪問マッサージ師・認定機能訓練指導員の両方を受講する場合
(1)の料金にプラス1万円で受講可能。
講習会内容|基礎講義
ここからは、講義内容をご紹介しましょう。基礎講義は以下の7つに分かれています。
(1)高齢者の医療と倫理 / 2単位
(2)高齢者の心理 / 2単位
(3)介護予防・体力測定法 / 1単位
(4)高齢者の合併症とリスク管理 / 2単位
(5)療養費の扱いと同意書 / 2単位
(6)初期評価・報告書・施術録の書き方 / 2単位
(7)介護保険制度における機能訓練指導員の役割~アセスメントと実施計画書の書き方~ / 3単位
基礎講義の定員は100名となっており、応募者多数の場合は抽選によって受講者が決まります。なお、受講予定者が60人を下回る場合は受講そのものが中止になることがあるようです。中止が決定した場合、基礎講習だけでなく実技講習会も中止となります。
講習会内容|実技講義
基礎講義を終えると、実技講習を受けられます。実技講習は以下の4つに分かれています。
(1)関節可動域検査 / 2単位
(2)筋力検査 / 2単位
(3)日常生活動作検査 / 2単位
(4)機能回復訓練・高齢者の体力測定 / 10単位
全国病院理学法協会|運動療法機能訓練技能講習会
全国病院理学法協会では、運動療法や機能訓練指導といったリハビリ業務に従事している職員に対し、知識と技術の向上を目的とした「運動療法機能訓練技能講習会」が開催されています。この講習会は理学療法士以外の介護従事者が対象です。
運動療法機能訓練技能講習会の概要について、詳しくご紹介しましょう。
受講資格
運動療法機能訓練技能講習会に参加するには、以下の条件のいずれかを満たしていなければなりません。受講を検討している方は、ご自身の資格や現在の就業状況を確認しておきましょう。
(1)柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師、はり師・きゅう師、看護師、准看護師などの資格を取得している人
(2)以下の施設・事業所にてリハビリ業務に従事している人
・病院、各診療所などにおいて、医師の指示・指導のもと機能回復訓練・運動療法のリハビリ業務に従事している人
・有料老人ホーム、老人ケアハウス、デイサービス、介護保険施設など、介護に関わる施設および事業所にて機能回復訓練・運動療法のリハビリ業務に従事している人
・上記の施設および事業所に従事予定の人
受講料
運動療法機能訓練技能講習会も、参加するには受講料がかかります。受講料は会員と非会員で大きく変わるので注意が必要です。
・運動療法機能訓練技能講習会受講料
会員/10万円
非会員/18万円
・技能試験受講料
会員/無料
非会員/2万円
・技能認定登録料
会員/5,000円
非会員/1万円
講習科目・カリキュラム概要
講習科目は「基礎科目」と「専門科目」の2つに分かれています。いずれの科目でも、症例報告としてレポート提出が必要です。
・基礎科目
1. リハビリテーション概論
2. 神経内科・脳神経外科
3. 整形外科
4. 老年医学
5. 臨床心理学
6. 社会福祉概論
・専門科目
1. 運動学
2. 理学療法評価
3. 理学療法(運動療法)
4. 日常生活動作(ADL)
5. 介護
認定試験
全国病院理学法協会では技能認定登録制度を取り入れており、講習修了者を対象とした実技認定試験を実施しています。認定試験の合格者は、登録料を支払って登録し、その後、全国病院理学法協会が主催する講習会に3年ごとに参加して単位を取得することで、診療報酬および介護報酬の算定が可能となります。
診療報酬・介護報酬制度における算定の詳細は以下のようになります。
・診療報酬
(1)脳血管疾患等リハビリテーション料(Ⅱ)(Ⅲ)の施設で、(Ⅲ)が算定可能
(2)廃用症候群リハビリテーション料(Ⅱ)(Ⅲ)の施設で、(Ⅲ)が算定可能
(3)運動器リハビリテーション料(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)の施設で、(Ⅲ)が算定可能
・介護報酬
指定通所リハビリテーションの勤務において、所要時間「1時間以上2時間未満」で算定可能
愛知県柔道整復師会|機能訓練指導員実務研修会及び介護予防・機能訓練指導員フォローアップ講習会
愛知県柔道整復師会では、機能訓練指導員の技術および資質向上のための講習会・研修会を実施しています。
(1)機能訓練指導員実務研修会及び介護予防・機能訓練指導員フォローアップ講習会
介護分野に精通した有識者を講師として招き、機能訓練・介護保険の基礎知識、地域包括ケアシステム、老年医学、認知症予防機能訓練など、多種多様な講習をおこないます。講習は年に1~2回の頻度で開催されています。
過去5年の講習のテーマは以下のとおりです。
第26回(平成26年)/地域包括ケアシステムとその先にあるもの―参入のために柔道整復師がすべきこと―
第27回(平成27年)/介護・医療現場における認知症への適切な対応について
第28回(平成28年)/認知症の理解とその予防法―運動療法を中心に―
第29回(平成29年)/柔道整復師が行う認知症予防機能訓練
第30回(平成30年)/ストレッチングの科学
(2)介護予防・機能訓練指導員認定柔道整復師講習会
二次予防事業や地域支援事業の実施において必要となる知識・技術を習得するための講習で、日本柔道整復師会が全国各地で開催しています。講習は2日間で10時間のカリキュラムとなっており、講習を修了した人には認定証が発行されます。二次予防事業および地域支援事業の参入にあたっては、この講習会の修了を条件としている自治体が多いです。
研修や講習会は機能訓練指導員が知識と技術を深めるためのもの
機能訓練指導員の講習や研修への参加は、義務ではありません。しかし、それぞれの国家資格を持っている人は、自身の専門分野には精通していても、機能訓練指導員としての知識や技術は不足しているケースが少なくありません。機能訓練指導員としての経験不足や技術を補うためにも、講習や研修に参加することは大切なことです。
施設によっては、「現場で働きながら機能訓練指導員としての技術を習得していく」という形もありますが、それだけでは十分とはいえないでしょう。より多くの利用者のニーズに応えるためにも、講習や研修に参加して、幅広い知識と技術を習得し続けることが求められているのです。
出典元:
公益財団法人 全日本鍼灸マッサージ師会
「【令和元年度】「認定訪問マッサージ師」講習会「認定機能訓練指導員」講習会のご案内」
公益財団法人 日本あん摩マッサージ指圧師会
「「認定訪問マッサージ師」・「認定機能訓練指導員」講習会 開催のお知らせ」
公益財団法人 全国病院理学療法協会
「令和元年度 運動療法機能訓練技能講習会 実施要項」
厚生労働省
「平成30年度介護報酬改定における各サービス毎の改定事項について」
公益財団法人 愛知県柔道整復師会
「介護予防事業(地域支援事業)」
公益財団法人 愛知県柔道整復師会
「【保健部介護課】機能訓練指導員認定柔道整復師講習会」