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介護・看護・リハビリ 2020-05-09

介護療養型医療施設とは

介護療養型医療施設(療養病棟)とは特別養護老人ホーム(特養)や介護老人保健施設(老健)と並ぶ、介護保険施設のひとつです。

※「医療法」と「介護保険法」の両法律に基づく。
病気の症状が急激に現れる急性期を過ぎて病状が安定し、引き続き治療や介護が必要な心身状態の方が利用できます。
一般病棟と一緒になっている医療機関が主な施設となっており、介護保険を適用できる医療施設です。医療施設であることから、利用している対象高齢者は「入院患者」であり、「利用者」ではありません。

療養病棟と一般病棟の違い

平成13(2001)年の医療法改正に伴い定義された一般病棟と療養病棟ですが、この違いは病状の安定具合によってわけられています。

<一般病棟>
主に急性期の身体疾患を扱う病棟で、精神病棟、感染症病棟、結核病棟及び療養病棟以外の病棟

<療養病棟>
主に慢性期の身体疾患を扱う病棟で、精神病棟、感染症病棟、結核病棟以外の病棟で、長期に渡る療養を必要とする患者が入院するための病棟

介護療養型医療施設の入所条件

細かい入所条件は施設によって異なる部分がありますが、一般的には以下の通りです。

年齢 要介護度 認知症 その他
65歳以上 要介護1~5 対応 医療措置を必要とする人
長期的な入院を要しない人
伝染病などの疾患がない人

入所するには市町村が行う要介護認定を受け、施設に申し込んだ後、面談や本人の状態、診断書などから審査を通過する必要がありますが、一般病棟に入院していた患者が慢性期に入ることで医師の指示により入所する場合もあります。

介護療養型医療施設の費用

施設の利用料は施設によって異なります。また、要介護度や部屋の種類(相部屋・個室など)によっても異なります。以下の表はあくまでも目安ではありますが参考にしてください。

初期費用 利用料/月額(目安)
ユニット型個室 従来型個室 多床室(相部屋)
不要 12~25万円 10~20万円 7~17万円

この費用には利用料、食費、光熱費などが含まれていますが、洗濯代やおむつ代などの費用は含まれないのが標準ですので、目的の施設での詳細が不明な場合は直接施設に確認するか、病院が作成している文書「重要事項説明書」を確認しましょう。

介護療養型医療施設の構造設備基準・人員基準

介護療養型医療施設の設備基準・人員基準は、厚生労働省による「指定介護療養型医療施設の人員、設備及び運営に関する基準(平成十一年三月三十一日厚生省令第四十一号)」に定められています。(施行期日:平成十二年四月一日[附則第一条])

<構造設備基準>
介護療養型医療施設は病院や診療所に併設されていることが多いので、一般病棟と比較してみましょう。

療養病棟 一般病棟(既設)
1人あたりの病床面積 6.4平方メートル以上
※1室4人以下
4.3平方メートル以上
廊下幅 1.8メートル以上
※両側に病室がある時は2.7メートル以上(内法による測定)
1.2メートル以上
※両側に病室がある時は1.8メートル以上(内法による測定)
その他の必要施設 機能訓練室(40平方メートル以上)・食堂(1人あたり1平方メートル以上)・談話室・浴室・共同生活室など 手術室・診察室・臨床検査施設・処置室・エックス線装置・調剤所など

一般病棟では1人あたりの居室面積は4.3平方メートル以上であり、6.4平方メートル以上である療養病棟はかなり広いことがわかります。廊下に関しても同様で、療養病棟の方が広いことがわかります。こうして見ると広いように感じますが、同じ介護保険施設である介護老人保健施設は一人あたり8.0平方メートル以上、特別養護老人ホームは10.65平方メートル以上ですので、介護療養型医療施設の病室が狭いことがわかります。
ちなみに、介護療養型医療施設の病床は重介護患者が入る“介護療養病床”と、重度の認知症患者が入る“老人性認知症患者療養病床”にわかれており、必要なサービスによって入る病床が異なります。

<人員基準(従業者の員数)>
介護療養型医療施設の人員基準についても前項の設備基準と同様、一般病棟と比較してみます。

療養病床 一般病床
基準 100床あたりの配置人数 基準 100床あたりの配置人数
医師 48:1 3人以上 16:1 7人以上
看護職員 6:1 17人以上 3:1 34人以上
介護職員 6:1 17人以上
薬剤師 150:1 1人以上 70:1 2人以上
理学療法士及び作業療法士 適当数 適当数
介護支援専門員 100:1 1人以上

※基準の見方の例「医師 基準48:1」……常勤換算方法で、入院患者数の数を48で割って得た数以上(端数は切り上げ)

広さでは療養病床の方が一般病床に比べて利があったのですが、人員配置では逆になっています。療養病床よりも一般病床の方が医師や看護師が手厚く配置してあります。一般病床には急性期の患者が入院しているわけですから、その分患者の症状に対応することが多いからでしょう。
しかし、介護療養型医療施設は他の介護保険施設である老人保健施設や特別養護老人ホームとは違い、「病院」としての位置付けです。医師や薬剤師は“医療法に規定する必要数以上”と定められており、他の2つの介護保険施設に比べて医師や看護師を多く配置してあります。介護や機能訓練以外にも医師による診療や療養上の医療ケアを受けられるところは患者にとって安心できる体制といえます。

介護療養型医療施設で受けられるサービス

介護療養型医療施設では他の介護保険施設同様、食事介助や排泄介助、入浴介助などの介護業務サービスの他、医師による診療、医療ケアや看護師による看護、機能訓練指導員によるリハビリなどのサービスを受けられます。
他の介護保険施設に比べて医療ケアは充実していますが、その一方で掃除や洗濯などの日常生活を援助するサービスはほとんどなく、レクリエーションなどのサービスも同様、ほとんど提供されていません。

介護療養型医療施設のメリット・デメリット

これまでの紹介でわかっていただけたように、介護療養型医療施設は他の介護保険施設と異なる点がたくさんあります。ここでは、介護療養型医療施設のメリットとデメリットをわかりやすく次表にまとめてみました。

メリット デメリット
・初期費用(入居一時金)が不要である ・入居難度が高い
・医療ケアが充実している ・ずっと居られる施設ではない
・機能訓練が充実している ・医療処置によっては支払い金額が高くなる
・容態が悪化しても一般病棟への変更が容易である ・多床室が多いため、プライベートのスペースが少ない
・要介護度が高くても入居可能である ・レクリエーションなどのイベントは少ない

<メリット>
介護療養型医療施設における一番のメリットは医療ケアが充実しているところでしょう。患者100人に対して医師は3人配置されている上、うち一人は常勤であることや、看護師や介護士の配置人数が多いことにより、医学的管理の下で介護や看護、リハビリを受けることができるので利用者やその家族にとって安心できる状況です。
また、一般病棟に併設している施設が多く、容態が悪化して療養病棟では対応できない状態になった場合でも、一般病棟への変更が簡単にできるところも魅力です。他の介護保険施設ではそうはいきません。

<デメリット>
介護療養型医療施設は急性期を過ぎて病状が安定した患者が入院する施設です。そのため、症状が改善されると退院しなくてはならない可能性もあり、終身利用できないかもしれません。また、受ける医療処置によっては医療費が高くなってしまいます(厚生労働大臣が定める基準に基づく)。
他には、多床室(定員4名)が多く他の介護保険施設に比べてひとりあたりの面積が狭いため、プライベートのスペースが少ない、レクリエーションなどのイベント内容が少ないなどのデメリットがあります。

減少する介護療養型医療施設

介護療養型医療施設は「医療処置を必要としない方の利用が多い」という理由から、すでに廃止が決定しており、2012年からは新設が認められていません。そのため介護療養型医療施設の数は減少し続けています。

元々現存する介護療養病床は、2011年までに介護老人保険施設等へ転換する方針でした。しかし、転換が予定通り進まず入居者の受け入れ先が見つからないことや、介護療養型医療施設では他の介護施設ではあまり行われない、痰の吸引や経鼻栄養、酸素吸入などが行われるなど、地域に必要とされている施設であることから、現在は廃止期限が2020年まで延長されています。

まとめ

介護療養型医療施設において医師の持つ役割は非常に大きいものです。「介護保険を適用できる病院」としての扱いですので、事故がおきた場合の記録方法や対応などが、自治体によって細かく定められています。
このように、要介護者から重宝されている施設ではありますが、2012年以降は新設が認められておらず、施設数は年々少なくなっています。そのような状況にも関わらず、施設はほとんどが定員いっぱいで、入居するのはかなり困難であると言えます。
既に廃止が決定している施設ですが、現在は廃止期限が2020年に延期されています。今後、どのようになるか不明点が多い介護療養型医療施設ではありますが、必要としている人が現在もたくさんいらっしゃることは確かな施設なのです。

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