通所介護の個別機能訓練加算はどう変わった? 機能訓練指導員と看護師兼務でも算定は可能?
通所介護の個別機能訓練加算についてよく知らない人もいるでしょう。これは、各介護施設の定められた算定要件を満たし、かつ利用者の状態に合わせた個別の機能訓練計画を作成・実施して算定される介護サービス加算です。
これは、適切な機能訓練を実施し、利用者の日常生活への復帰や自立を目指すことを目的としています。
通所介護の個別機能訓練加算はどう変わった? |厚生労働省「令和3年度介護報酬改定」
令和3年度介護報酬改定により、通所介護の個別機能訓練加算が一部改訂されました。今までの加算とは、区分や内容が異なる部分や新設されないようも多くあります。まずは、個別機能訓練加算の2つの改定内容について見ていきましょう。
1. 個別機能訓練加算(Ⅰ)(Ⅱ)が統一
改訂前の個別機能訓練加算(Ⅰ)と(Ⅱ)が統一され、個別機能訓練加算(Ⅰ)となり、そのなかに(イ)(ロ)が加えられた点です。
従来の加算では、人員配置や実施される訓練内容の違いから(Ⅰ)と(Ⅱ)にわけられていましたが、今回の改訂により編成されました。
2. 個別機能訓練加算(Ⅱ)が新しく
改訂前とはまったく異なる、個別機能訓練加算(Ⅱ)が新設された点です。これは、個別機能訓練加算(Ⅰ)の実施に加えて、訓練実施計画の作成に関連する情報を厚生労働省に提出し、計画や実施内容、評価、結果などに対してのフィードバックを受けます。
そのフィードバックをもとに、計画内容の見直しや改善をおこない、サービスの質の向上を図ることで加算されるものです。
新しくなった個別機能訓練加算(Ⅰ)を解説!
今回の改訂で編成された個別機能訓練加算(Ⅰ)では、加算(Ⅱ)と統合されたのみではなく、新たに加えられた規定もあります。
ここからは、改訂前と改定後の個別機能訓練加算(Ⅰ)の変更点や追加点について見ていきましょう。
単位数
改訂前の個別機能訓練加算では、(Ⅰ)と(Ⅱ)にそれぞれ下記の規定の単位数がありました。
・個別機能訓練加算(Ⅰ):46単位/日
・個別機能訓練加算(Ⅱ):56単位/日
改訂後の(Ⅰ)は(イ)と(ロ)の小項目に分類されており、それぞれに下記の単位数が定められています。
・個別機能訓練加算(Ⅰ)(イ):56単位/日
・個別機能訓練加算(Ⅰ)(ロ):85単位/日
機能訓練員の配置
改訂前の加算では、下記のように規定されていました。
・個別機能訓練加算(Ⅰ):常勤の専従訓練員を、時間帯を通じて1名以上配置
・個別機能訓練加算(Ⅱ):専従訓練員を1名以上配置(配置時間規定なし)
改訂後の人員配置は、それぞれ下記のように定められています。一方で、人員欠如減算や定員超過減算を算定していると、算定できませんので注意しましょう。
イ|専従1名以上配置(配置時間の定めなし)
(イ)では、専従指導員を1名以上配置することとしています。この場合、指導員の配置時間の規定はありません。時短業務やパートタイムの職員であったとしても、指導員として配置することが認められているのが特徴です。
また、この配置人数の規定は、運営基準上配置を求めている機能訓練指導員により満たされていればよいとされています。
ロ|専従1名以上配置(サービス提供時間帯を通じて)
(ロ)では、機能訓練指導員を2名以上配置することとしています。さらに、そのうち1名が介護サービス提供時間帯を通して、配置されなくてはいけません。
つまり、加算(イ)とは異なり、少なくとも1名はサービス運営中の時間帯は事業所内で業務をしている必要があるということです。
また、この場合には他業務との兼務は認められていません。そのため、その事業所の指導員として専従でなければなりません。
イとロは併算定不可
ここで注意しなくてはいけないことは、改訂後の加算(イ)と(ロ)では、この2つの加算を併算することはできないということです。改訂前の個別機能訓練加算では、(Ⅰ)と(Ⅱ)のそれぞれ別の計画書を作成すれば併算は可能でした。
しかし、上記の配置を両方満たしていても、(イ)と(ロ)のいずれかのみの算定になります。
ロを算定する場合|イに加えて専従で1名以上配置する
加算(ロ)を算定する場合には、(イ)の指導員配置規定に加えて、専従で1名以上配置することが必要となります。
通常時には(ロ)の人員配置を満たしていても、勤務の管理上、1名しか確保できない日がある場合には、その該当する日のみ(ロ)に加えて(イ)を算定できます。
しかし、この場合には実施単位数に違いが出てくるため、指導員配置について、利用者に説明しておくことが大切です。
計画作成|居宅訪問でニーズを把握
改訂後の加算では、個別機能訓練実施計画書の作成方法に関する内容が追加になりました。つまり、計画書を作成する際に利用者の居宅に訪問します。そして、そこで利用者のニーズと居宅での生活状況を把握。そのうえで、多職種と共同してアセスメントと、計画書の作成をおこなうということです。
利用者の生活状況の把握には、訪問した職員によって差が生じないように、チェックシートを用いることとしています。
機能訓練項目|身体機能・生活機能の向上
改訂前の加算では、加算(Ⅰ)と(Ⅱ)で訓練項目が定められていました。(Ⅰ)はおもに身体機能の向上を目指すための訓練、(Ⅱ)では心身機能の改善や社会活動への参加など、生活機能に関わる訓練が中心でした。
一方で、改訂後の加算ではこの2つの内容が統合され、身体機能と生活機能の両機能の向上のための訓練が、利用者の心身の状況に合わせて実施されることに。つまり改訂後の加算では、より柔軟な訓練が実施可能となっています。
訓練の対象者と実施者|小集団を直接実施
改訂前の加算(Ⅰ)では訓練対象者の人数制限は設けられておらず、加算(Ⅱ)では「5人以下の小集団または個別」と規定されていました。
改訂後では、(イ)(ロ)ともに「5人以下の小集団または個別」という規定に統一されており、訓練実施者は機能訓練指導員が直接おこなうことが要件です。この場合、介護職員などの訓練補助はおこなうことが認められています。
進捗状況の評価|3カ月に1回以上実施
機能訓練実施進歩状況の評価は新たに設けられた事項です。改訂後の加算では下記の内容を要件としています。
・訓練実施評価は3カ月に1度以上実施されること
・利用者の居宅を訪問して、生活状況の確認をすること
・利用者やその家族に個別機能訓練計画の進歩状況などを説明すること
・必要に応じて計画書の見直しや修正をおこなうこと
機能訓練指導員と看護師兼務でも算定は可能?
前項では、それぞれの区分によって定められている人員配置の要件について説明しました。それでは、機能訓練指導員が看護師兼務をすることは可能なのでしょうか。
ここでは、別業務をおこなう職員が兼務した場合の算定について解説していきます。
個別機能訓練加算(Ⅰ)イの場合
加算(イ)の場合では、必要専従配置人数の規定はありますが、機能訓練指導員の常勤・非常勤は問われません。つまり、業務に支障がなければ、パートタイムの看護師が看護業務と兼務することは認められているということです。
指導員との兼務できるそのほかの有資格者は、以下の8つ資格があります。
・理学療法士
・作業療法士
・言語聴覚士
・あん摩マッサージ指圧師
・鍼灸師
・柔道整復師
個別機能訓練加算(Ⅰ)ロの場合
加算(ロ)の場合、2名以上の配置が必要です。さらに、そのうち少なくとも1名に関しては、介護サービス提供時間を通して専従で配置されなければなりません。
その専従職員が確保されていれば、そのほかの指導員は短時間勤務や看護師や理学療法士などの他業務との兼務も可能ということです。
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改正で機能訓練と生活機能向上が柔軟に対応できるようになった
改訂後の個別機能訓練加算では、利用者の自立を目指した機能訓練に柔軟に対応できるようになったことに加えて、機能訓練指導員の兼務や時短業務なども認められています。これは、利用者と事業所の双方にとって大きなメリットといえるでしょう。
引用元サイト
厚生労働省 令和3年度介護報酬改定について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00034.html
厚生労働省 令和3年度介護報酬改定における改定事項について
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000768899.pdf