ヘルスケア&介護・看護・リハビリ業界の応援メディア
特集・コラム 2020-07-20

【わかりやすく解説】介護保険制度の認定手続きと注意すべきこと

初めての介護では分からないことが多いもの。「介護保険制度って何?」「手続きの方法が分からない」「どんな介護サービスが受けられるの?」など、さまざまな疑問があると思います。この記事では「介護保険制度」について、ご紹介します。事前に知っておくと、いざというときにスムーズに介護サービスを受けられます。

介護サービスを受けるために必要な「介護保険制度」

介護を始めるには、多くのお金がかかります。介護に使用するベッドや機器、車いすの購入、デイサービスや訪問介護などを利用するための料金など、一般的な家庭の予定外の出費としては、かなり大きな額でしょう。

公益財団法人生命保険文化センターが行った「生命保険に関する全国実態調査(平成30年度)」(参考:https://www.jili.or.jp/press/2018/pdf/h30_zenkoku.pdf)によると、介護の一時的な費用として平均69万円、月額として平均7.8万円かかっています。

このように多額のお金がかかる介護の負担を、少しでも軽くしてくれるのが「介護保険制度」です。

介護保険制度とは?

厚生労働省の「介護保険事業状況報告(年報)」をもとにした内閣府の発表(参考:https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2018/html/zenbun/s1_2_2.html)によると、平成27年の要介護認定者は606.8万人。平成15年度の370.4万人から、およそ200万人以上も増加しています。

「介護保険制度」は、年々増加する被介護者とその家族を支援するシステムです。制度を利用すると、さまざまな介護サービスが利用できます。また家族の負担となる介護費用の一部を給付してもらえます。

介護保険制度で利用できる主なサービスは以下の通りです。

・ケアプランの作成
・介護に関わる相談
・ホームヘルプなどの自宅での介護・看護サービス
・デイサービスなどの通所での介護サービス
・ショートステイなどの短期宿泊を伴う介護サービス
・老人ホームなどの生活施設への入居
・介護に必要な道具のレンタルや購入にかかる助成
・介護に必要な住宅リフォームに関わる助成

なお、給付限度額は要介護認定の介護度によって変わります。

・介護保険制度の対象者
介護保険制度の対象者は、大きく分けて2つに分類されます。

まず1つ目は、65歳以上で市区町村(保険者)が要介護認定をした方。もう1つは、40~64歳で介護保険の対象となる16種類の特定疾病により介護が必要と判断された方です。特定疾病は、主に老化が原因とされる病気で、これ以外のけがや病気で介護状態になっても介護保険制度の利用はできないため注意が必要です。

・介護保険制度では1割負担が基本
介護保険制度を使ってサービスを受ける場合は、実際の金額の1割を自己負担します。ただし年収が多い方の場合は、2~3割の自己負担額となることがあります。

介護保険制度について相談したい場合、どこに行けば良い?

もし介護保険制度について詳しく知りたいのなら、地域包括支援センターや役所、また医療機関などで相談してみましょう。

・地域包括支援センター

地域包括支援センターは、高齢者が地域で快適に過ごせるようサポートする機関です。保健師やケアマネジャーなどがいるため、介護に関する専門的なアドバイスを受けられます。

突然行くと先約があり、待ち時間が長くなる場合もあります。事前に電話で相談したい内容を伝え、訪問の日時を決めるとスムーズに対応してもらえるでしょう。

・市区町村の役所

市区町村で介護を担当する部署の窓口に足を運ぶと、介護関係の相談に乗ってもらえます。市区町村によって担当部署の名称は違いますが、主に「高齢者福祉課」や「介護福祉課」などです。

・医療機関

介護に関しては、医療機関にいる医療ソーシャルワーカーにも相談できます。基本的に入院や通院をしている患者のための機関のため、もし家族が入院・通院をしているなら、こちらに相談してみましょう。

・国民健康保険団体連合会

国民健康保険に関連する業務を行う機関で、各都道府県に設置されています。介護保険に関する業務も行っており、介護保険の請求方法や介護サービスの相談、苦情処理などを行っています。

ただし、主に事業所からの介護保険の請求業務をメインとしており、相談内容によっては役所や包括支援センターを紹介されることもあるようです。

「要介護認定」の申請方法

介護保険制度を利用する場合は、市区町村から「要介護状態である」と認定されなければなりません。「要支援1~2」「要介護1~5」のいずれかに認定されれば、介護保険制度を利用できます。

 介護保険制度の手続きの流れ

ここからは介護保険制度を申請して認定されるまでの流れをご紹介します。

1.窓口に電話で相談する
まずは、窓口に電話をして介護保険制度について相談しましょう。窓口は地域包括支援センターや市区町村の介護福祉課などです。

2.要介護認定の申請
市区町村の窓口に行き、要介護認定の申請をします。申請には、

・申請書
・介護保険被保険者証

上記2点が必要です。

申請を行うのが40~64歳の人の場合は、医療保険証も準備しましょう。

基本的に申請は本人が行いますが、もし止むを得ない事情で本人が手続きできない場合には、家族や地域包括支援センターなどが代理で申請することも可能です。

3.認定調査
市区町村の調査員が自宅や施設などを訪問し、対象者がどのような状態なのかを確認します。基本的には

・身体機能はどうか
・意思の疎通ができるか
・日常的な生活はできるか
・精神・行動障害はないか
・社会に適応できる能力が残っているか
・過去14日間に特別な治療を受けたか

などを調査します。その後、かかりつけの医師が主治医意見書を作ります。

4.審査と認定
調査結果をもとに、介護認定審査会が要介護と認定すべきか審査を行います。認定は「要支援1~2」と「要介護1~5」までの7段階に分かれます。場合によっては要介護認定されないこともあります。

5.介護サービス利用の開始
要支援、要介護と認定されたらケアプランが作成され、それに沿った形で介護サービスを受けられるようになります。

「1次判定」と「2次判定」の違いとは?

要介護認定の判定は、1次と2次の2つのステップがあり、それぞれ性質が異なります。

・1次判定
客観的な診断のために、コンピューターによって判定されます。判定には訪問調査の回答と主治医意見書が必要です。

判定に使用するのは、厚生労働省が作成した要介護認定ソフトです。高齢者約3,500人を対象にしたデータから、申請者の介護にどのくらいの介助が必要なのかを計算します。

・2次判定
1次判定のコンピューターによる結果をもとに、介護認定審査会が2次判定を行います。介護認定審査会は、介護や医療などの有識者5名ほどで構成された組織で、各市区町村に設置されています。各専門家が専門性をもとに、介護が必要な状態なのか、どの程度のレベルなのかを話し合います。審査会では、主治医意見書と訪問調査で聞き取った特別事項も含めて審査を行います。

また、コンピューターによる1次判定結果が適切かも判定されます。

・介護認定結果の通知にはどのくらいの期間がかかる?
2次判定で、要介護認定されるか、認定した場合の介護度などが決定すると、本人のもとに「介護認定結果」が通知されます。原則として、介護認定結果は申請書を提出してから、30日以内に通知すると定められています。

認定通知が遅れる場合は、遅延の理由といつ頃通知される見込みなのか、連絡があります。

要介護認定後にするべきこと

要介護認定を受けただけでは、介護サービスを受けることはできません。要介護認定はあくまでスタート地点です。介護認定を受けてからやるべきこと、注意すべきことがいくつかあるので確認していきましょう。

ケアプランの作成

介護保険制度のサービスを利用するには「ケアプラン」が必要です。ケアプランとは、どのような目的でどのようなサービスを利用するのかを記載した計画書のこと。ケアマネジャーに依頼することで作成できます。

なお、自宅で介護を行う場合には居宅介護支援事業者のケアマネジャー、介護施設で介護サービスを受ける場合には、施設のケアマネジャーに相談します。また要支援1~2の場合は、地域包括支援センターで予防ケアプランを作ってもらえます。

介護に適した環境をつくる

自宅で介護を行う場合、介護に適した環境が必要です。段差や廊下の幅、手すりの有無などを調べ、必要があればリフォームを行いましょう。

特に下記は、自宅介護で重要な部分です。

・玄関、廊下は車いすが移動できる幅になっているか
・自宅内の段差はどのくらいか
・アパートやマンションの場合、エレベーターがあるか
・トイレの場所は部屋に近いか
・トイレは用を足しやすくなっているか
・浴室の段差はどのくらいか
・別室にいる家族を呼べるようになっているか

自宅で介護を行う場合は、上記の点を特に意識しながら環境を整えましょう。

更新をする

介護保険制度は、有効期間満了までに更新手続きが必要です。更新をしないまま有効期間が過ぎると、介護サービスを利用できなくなるため、注意しましょう。有効期間は新規が6ヵ月、更新認定が12ヵ月です。

また被介護者の状態に変化があった場合は、いつでも要介護認定の変更をすることが可能です。

結果が「非該当」でも不服申立てができる

要介護認定の結果が「非該当」で介護保険制度を利用できない、予想より介護度が低く評価されるなど、認定結果に納得がいかない場合には不服を申立てることもできます。

この場合は、結果通知を受け取った日の翌日から数えて、60日以内に申立てを行う必要があります。申立てはまず市区町村で行い、それでも納得ができない場合は介護保険審査会に相談します。

おわりに

介護保険制度は初めての利用者にとっては難しく感じますが、利用するととても助かる制度です。事前に申請窓口や申請方法を知っておくことで、いざというときに役立ちます。また、地域によって利用できるサービス内容も異なりますので、詳細は市区町村に確認しましょう。

参考元:
介護保険とは|厚生労働省
介護保険制度とは?仕組みがよくわかる完全ガイド!|みんなの介護
介護保険制度とは?しくみをわかりやすく解説します|LIFULL 介護
生命保険文化センター 保険研究室「平成30年度 生命保険に関する 全国実態調査」
第1章 高齢化の状況(第2節 2)|内閣府
公表されている介護サービスについて)|厚生労働省
よくわかる介護保険と利用料金|ニチイの介護サイト
介護保険は本当に必要??~民間の介護保険の必要性について~|保険相談ナビ
地域包括支援センターとは? その活用法|LIFULL 介護
介護に関わる皆様を応援! 介護・高齢者福祉の相談をしたいときは?|ゆたか倶楽部
サービス利用までの流れ|厚生労働省
介護保険の申請方法(要介護認定・手続きの流れ・必要なもの)|みんなの介護
公表されている介護サービスについて|厚生労働省
厚生労働省老人保健課「要介護認定の仕組みと手順」
いまさら聞けない!? 介護保険制度のキソのキモ2:介護認定されるにはどんな手続きが要るの?|株式会社かんでんジョイライフ
要介護認定の申請方法 介護保険サービスを受けるには?|LIFULL 介護
在宅療養をはじめる方へのアドバイスブック
国民健康保険中央会「国民健康保険団体連合会の取り組み」
東京都国民健康保険団体連合会
公益社団法人 国民健康保険中央会
介護保険とは?|神奈川県国民健康保険団体連合会

この記事をシェアする

編集部のおすすめ

関連記事

近くのケアマネジャー求人をリジョブケアで探す

株式会社リジョブでは、介護・看護・リハビリ業界に特化した「リジョブケア」も運営しております。
転職をご検討中の場合は、以下の地域からぜひ求人をお探しください。

関東
関西
東海
北海道
東北
甲信越・北陸
中国・四国
九州・沖縄