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介護・看護・リハビリ 2020-03-28

サ責の仕事とは現場に立ち続けること 介護リレーインタビューVol1 【サービス提供責任者 佐藤祥子さん&菊地博美さん】#1

介護業界にはどのような職種や働き方があるのか、そして、より具体的な仕事内容をお伝えするべく、現場で働く介護従事者の生の声をお届けする連載企画。第一回目となる今回は訪問介護現場で働く「サービス提供責任者」の仕事をご紹介します。

「サ責」=サービス提供責任者とは、訪問介護員をまとめたり介護内容を作成したりする、いわば訪問介護職のリーダー的存在。今回取材したのは、『地域密着型』スタイルの訪問介護サービスを提供する「ケアサポートあすなろ三鷹(有限会社あすなろ会)」に在籍し、サービス提供責任者でありながら現場のこともよく知る佐藤祥子さんと菊地博美さん。サービス提供責任者にとって現場に立つことが何よりも重要だとお二人は語ります。

そこで、前編ではお二人が訪問介護に就くまでの軌跡や現職の魅力について、後編ではサービス提供責任者の立場から考える訪問介護の大変さや課題などをご紹介していきます。

《プロフィール》

佐藤祥子さん(39歳)…介護福祉士。病院勤務を経て、有限会社あすなろ会に入社し訪問介護をスタート。訪問介護歴13年のベテラン。

菊地博美さん(30歳)…介護福祉士。福祉系の短大を卒業後、20歳で有限会社あすなろ会に入社。訪問介護は学生時代のアルバイトからはじめて12~13年目。

介護業界に入ったきっかけ

利用者さんと密に関われることが魅力だった

菊地博美さん

――介護業界を目指したきっかけを教えてください。

菊地さん通っていた高校が、普通科と英文科と福祉科に分かれているところで、母に「資格が取れるところがいいんじゃない?」と言われたのがそもそものきっかけですね。高校卒業後も福祉系の短大に進みました。だから、就職する時も自分の中で選択肢があまり広がらなくて…(笑) 介護の仕事がしたい!という強い希望があったわけではなく、資格が取れるからという理由で介護業界に入ったんですよ。

佐藤さん私は、もともと看護師として病院の外来で働いていたんです。しかし、子どもがいたので、夜勤などがあると大変で。二人目を出産したことを機に結局病院は辞めてしまったんです。ある程度働けるようになった時に、また病院に戻ろうかとも考えたのですが、たまたま有限会社あすなろ会(以下あすなろ)の求人を見つけて、方向を変えて介護の仕事をやってみようかなと思ったんです。

――佐藤さんがそこで介護業界に興味を持った理由は何だったのですか?

佐藤さん基本的には人と関わるのが好きだったんです。でも、将来の選択肢として看護師や保育士などは思い浮かんだのですが、正直、介護士までは思い至らなかったんです。でも、試しに訪問介護の仕事をしてみたら、病院とは違って、利用者さんと密に関わることにやりがいを感じるようになり、今に至ります。

――佐藤さんにとって介護業界の入り口が訪問介護だったのですね。菊地さんは、どうして訪問介護を選ばれたのですか?

菊地さん就職活動の一環で、施設に実習に行っていました。施設は施設で楽しいと思うことはたくさんあったのですが、私は毎日、一日中同じところにいるのがダメだったみたいで…(笑)。あと、当時は施設に入ってくる利用者さんは終末期を迎える方が多かったので、気持ち的に辛いところもありました。一方、「あすなろ」で訪問介護のアルバイトをしていたのですが、一人ひとりの利用者さんとお話ししながら介助するのは楽しいなと感じていたんです。

――そのまま「あすなろ」さんに入社されたのですね。訪問介護の仕事をはじめられて何年になるのですか?

菊地さんアルバイト時代を含めると12~13年くらいですね。

佐藤さん私も13年くらい。

――サービス提供責任者(以下サ責)のポジションにはどのような流れで就かれたのですか?

佐藤さん:「あすなろ」に入社した当時は、スタッフ数が少なかったので、その分色々なデスク業務も任されていたんです。だから、サ責になることを意識していたというわけではなく、たくさんの業務をこなしている中でサ責の仕事も覚えたという感じですね。

菊地さんほかの事業所さんと違って、うちはあらゆる業務をスタッフ総出でこなしています。役職はあるけれど、それに関わらずスタッフみんなが色々なスキルを身につけられるようにする、というのが「あすなろ」のスタンスなんです。

サービス提供責任者の仕事とは?

スタッフ管理と現場の仕事を両立

佐藤祥子さん

《ある一日の仕事の流れ》

・佐藤さんの場合

※日によって9:00前訪問、18:00以降訪問も有

――1日の仕事内容を教えていただけますか?

佐藤さんサ責の仕事としては、シフトの管理や訪問介護計画書、訪問介護手順書、モニタリングシートの作成、新規の利用者さんの手配、シフト管理などがあります。ただ、「あすなろ」の場合は、サ責とはいえ訪問の仕事をすることも多いです。やはり我々も利用者さんときちんと関わっていなければ、身体状況や介助内容などをきちんと把握することができないからです。デスク業務は訪問介護の合間にこなしていますね。

――現場を進行形で知っているからこそ、より綿密な介護内容をつくることができるのですね。

菊地さんデスク業務ばかりをこなしていると、利用者さんへの介護がおろそかになってしまうし、結果的によくないことがたくさんあるんです。

――今のポジションに就いて、意識が変わったことはありますか?

佐藤さん利用者さんの生活をきちん整えてあげたいと考えるようになったのはもちろんですが、うちで働いてくれている現場スタッフが不安なく仕事ができるようにしたいと考えるようにもなりました。

――現場スタッフへのフォローも大事なんですね。

佐藤さん:「あすなろ」は特定事業所加算を通っていることもあり、現場スタッフからの報告を毎日受けていますし、現場スタッフにちょっとした変化があればすぐに対応し、パートさんの不安を解消するという姿勢を取っています。特に、訪問介護は1対1という、利用者さんと密接した仕事なので、色々な想いを抱える人が多いんです。基本的には一人で仕事をこなさなければならないので、そういったストレスや不安を解消するためにこまめに連絡を取り合っていますね。

――訪問介護の大変さとはどんなところですか?

菊地さんどのお仕事も大変だと思いますが、強いて言うなら「感情が入り混じること」ですね。利用者さんの生活の中に入っていくわけなので、必然的に利用者さんとは深い関係になりますよね。パーソナルスペースに踏み込まれることに抵抗を感じる方もいますし、いきなり他人にお世話されなければいけなくなったという現実に戸惑ってしまう方もいます。訪問介護とはそういう利用者さんの気持ちを受け止める仕事なんです。

――利用者さんに心を開いてもらうにはやはり時間はかかりますか?

菊地さん時間はかかりますね。信頼関係を築いていくのはとても大変なことなんです。信頼を得られずダメになってしまうことだってあります。

――相手に受け入れてもらうために努力していることはありますか?

佐藤さん一方的に話を聞きだそうとしても人って心を開かないと思うので、こちらから心を開くように心がけています。そして、利用者さんに笑顔が見られた時に、ちょっとずつ会話を増やしてきます。

――今までで忘れられない思い出はありますか?

菊地さん忘れられない思い出はたくさんあります(笑)。ちなみに、高齢者の方、先天性の障害を抱えている方、中途障害を抱えている方など色々な利用者さんがいる中で、楽しかったのはやっぱり高齢者の方です!

――それはどうしてですか?

菊地さん訪問先に認知症の方がいらっしゃったのですが、持っているものをその辺にポイして、また他のものを持ちはじめる、というのを繰り返すんですよ。私は掃除をするのが仕事なので、ポイされたものを拾いながら追いかけるんですが、全然片付かないという…(笑)。あと、毎回私のことを忘れてしまう方だったのですが、お邪魔するたびに受け入れてくれたのは嬉しかったですね。その方とは2~3年お付き合いが続いていましたが、お別れが来た時はやっぱり寂しかったですね。

――佐藤さんはいかがですか?

佐藤さんご夫婦で住んでいるお宅に通っていた時のことなのですが、奥さんに焼きもちを焼かれたことがありますよ。介護が必要なのはご主人の方で、女性スタッフが訪問するとあまりいい顔をせず、下着で叩かれたこともあります(笑)。

――その方とは最後は良好な関係になれましたか?

佐藤さんご主人が亡くなって、奥さんがすごく弱ってしまったんですね。はじめの頃は、魔女みたいな顔で睨んできていたのに、最後は何というか…すごく可愛く思えたんです。奥さんがご主人をどれだけ大切に想っていたかが伝わってきて、「この仕事をやってよかったな」と思いましたね。

――仕事をする上での心構えはありますか?

佐藤さん最初から素を出しすぎないということです。利用者さんに合わせてちょっと演技することだってときには必要!

――利用者さん一人ひとりの人柄にあわせて慎重にということですね。

菊地さんそれが一番大事かなと。あとは、利用者さんの基本情報や、今までどんな生活をしてきたかを自分なりに理解して介護に入るようにしています。それから、失礼のないように言葉に気を付けることですね。

サービス提供責任者とは、「ただデスクワークをこなすだけの仕事であってはいけない」というのがお二人のお考えでした。利用者さんの生の声を自分の耳で聞くことがサービス提供責任者にとってとても大切なことなのですね。次回、訪問介護という仕事の課題点と、お二人の今後の目標を教えていただきます。訪問介護の仕事が好きという想いが伝わってきた一方で、やはり訪問介護ならではの難しい問題も感じているようです。

取材・文/佐藤咲稀(レ・キャトル)
撮影/岩田慶(fort)

▽#2はこちら▽
訪問介護員としてずっと利用者さんのそばで働きたい! 介護リレーインタビューVol1【サービス提供責任者 佐藤祥子さん&菊地博美さん】#2>>

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ケアサポートあすなろ三鷹

住所:東京都三鷹市上連雀8-18-11
電話:0422-40-0196
サービス提供時間:365日 24時間
URL:https://www.care-asunaro.com/mitaka.html

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