患者さんの生活の質を上げるために日々学びを継続し続けたい 介護リレーインタビュー Vol.20【理学療法士 酒井健吾さん】#1
介護業界に携わる皆様のインタビューを通して、介護業界の魅力、多様な働き方を紹介する本連載。今回お話を伺ったのは、多摩市にある地域密着型の天本病院で理学療法士として働いている酒井健吾さん。
医療関係のお仕事を志した理由
祖父の病気がきっかけで理学療法士の道へ
―はじめに、酒井さんが理学療法士の道に進まれたきっかけを教えてください。
祖父が病気で訪問リハビリを利用していたのがきっかけです。僕が高校生の頃、一緒に住んでいた祖父が病気になって、訪問リハビリを受けることになり、自宅に理学療法士さんに来ていただいた時がありました。その時に初めて「理学療法士」という職種を知り、興味を持つようになりました。
あとは、家族に医療関係者が多かったのもこの道を目指した理由のひとつですね。
―天本病院に入社された経緯を教えてください。
僕自身が、自分の住み慣れた地域にある病院で働きたいと思っていたので、勤め先は、地元である多摩市周辺を視野に入れていました。その中でも天本病院天翁会(現河北医療財団多摩事業部)は、祖父がお世話になったということで興味があり、見学に行かせてもらうことに。実際に訪れてみると、リハビリ室がすごく広くて開放感があり、「こういったところでリハビリをしたい」と思い、入社を希望しました。
あとは、病棟の見学をさせてもらった時にスタッフ同士の距離が近く、他職種で連携がとりやすそうな環境だと感じた点も魅力の一つでした。
―実際に理学療法士として働いてみて感じたことはありますか?
『考える幅』が広がりました。専門学生の頃は、「リハビリの時間だけに集中すればいいだろう」と思っていましたが、いざ現場で働いてみると、自分次第で人間ひとりの人生がこの先変わってしまうことに対する責任感が芽生え、患者さんひとりひとりに沿った目標を決めなければいけないことの大切さを痛感しました。僕たちが実際に相手をするのは『人』なので、フォーマットに当てはめることができない難しさや奥深さを強く感じ、もっと自分の人生経験を積まなければいけないと改めて感じました。
病院で働く理学療法士の仕事内容
毎朝の自主練は欠かせません
―天本病院での主な業務内容について教えてください。
僕は、いくつか病棟があるうちの「回復期リハビリテーション病棟」で副主任を務めています。そこでの主な業務内容は、患者さんのリハビリをそばでサポートすることです。また、「回復期リハビリテーション病棟」では、2つの班に分けて仕事をしています。僕は、そのうちの1班の班長を任されているので、班長としてミーティングへ参加したり後輩の指導もします。
リハビリテーション以外にも、役職者として上司と一緒にミーティングに参加したりしてますね。
―一日のタイムスケジュールを教えてください。
―昨今のコロナ対策について天本病院で取り組んでいることはありますか?
回復期リハビリテーション病棟は職員の人数がすごく多いので、休憩時間をずらして対応するなど、できるだけ密にならない環境をつくるように努めています。
病院理念に則った独自の取り組み
大切なのは、患者さんの生活の質を上げること
―天本病院では「質の高いリハビリ」の提供に努めているそうですが、具体的にはどのような取り組みをしているのですか?
なるべくFIM(生活動作・認知機能を点数化するもの)で高い点数を出すことを意識しています。ただ、点数にこだわっているだけでは患者さんの生活の質の向上には繋がらないので、患者さんの生活の質と点数の両方を上げることに注力するようにしています。そうすることにより、結果として実績指数に反映され、「質の高いリハビリテーション」へつながっているのだと思います。
―では、そのために酒井さんが日頃から意識していることは?
僕は、天本病院で働き始めて今年で6年目になります。回復期リハビリテーション病棟の中では、ちょっと中間から上くらいの年数なんです。だからといって、これまでと変わらず日頃の知識・技術の向上に費やす時間は、疎かにしたくないと思っています。今は、家のことなどもあり、勤務時間以外に時間をとることは難しくなりましたが、自主練を継続することで、理学療法士として学んでいく姿を日頃から後輩に見せて示したいと思っています。
あとは、ミーティングや指導の時間が業務内に取り入れられているので、より後輩への指導に力を入れています。
―天本病院で独自に取り組んでいることを教えてください。
要支援・要介護になりえる可能性が高い、フレイル(虚弱高齢者)の方の予防に力を入れていることです。主には、多摩市が地域ごとに連携し、近所で気軽にトレーニングができる場を設け、そこへ僕たち職員が派遣されて指導する、といったような取り組みですね。
具体的な内容としては、地域住民へ指導している高齢者のリーダーが正しく体操指導ができているかの確認をしたり、フレイルってどんな意味なのかなどを住民の方たちに広める軽い講義などをします。
………………………………………………………………………………………………………………
「練習と実践は、学びにギャップがあり、学びが絶えない」と話す酒井さんから、日々学びを継続することの大切さが感じられました。後編は、副主任となって葛藤した場面や後輩への向き合い方をお聞きします。
取材・文/東 菜々(レ・キャトル)
Information
天本病院
住所:〒206-0036
東京都多摩市中沢2-5-1
TEL:042-310-0333