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特集・コラム 2021-11-14

訪問介護の入浴介助と訪問入浴介護はどこが違うの?|入浴介助のポイントを紹介

介護保険法にもとづくサービスにはさまざまな種類があり、利用者の状況により選択できます。そのサービスのなかでよく混同される、訪問看護の入浴介助と訪問入浴介護。

いずれのサービスも利用者の家族の介護の負担が減り、利用者が安全に入浴することができるというメリットがあります。その一方で、それぞれ対象者や配属されるスタッフの人数、施行方法など違いがあります。
ここでは、訪問介護の入浴介助と訪問入浴介護の違いについて見ていきましょう。

訪問介護の入浴介助と訪問入浴介護の違いとは?


訪問介護の入浴介助と訪問入浴介護は、いずれも介護保険法にもとづく在宅サービスのなかの訪問型サービスです。入浴介助の目的は、利用者の身体を清潔に保つことや、利用者の動作を補助し、安全に入浴してもらうことです。

ここでは、入浴介助と訪問入浴介護の違いについて解説します。

訪問介護の入浴介助とは?

要介護1~5の認定を受けている方で、主治医から入浴が許可されているという条件を満たした人が利用できます。自宅に浴槽がない、感染症を持っているなどの条件つきではありますが、要支援1・2でもこのサービスを受けることは可能です。

訪問看護の入浴介助では利用者宅の浴槽を使い、スタッフひとりで介助をおこないます。

1. 利用者さんの自宅の浴槽で介助をおこなうNG

スタッフが利用者宅へ出向き、利用者宅の浴槽を使って入浴介助をおこないます。利用者宅によって浴槽の大きさや浴室の広さ、作りはさまざまです。手すりの設置の有無など、バリアフリーの設備も家により異なります。

そのため、スタッフはそれぞれ介助する環境に合わせ、事故防止に細心の注意を払いながら対応しなければなりません。

2. 訪問介護員1名でおこなう

訪問したスタッフが1名で対応します。そのため、準備から実施、片づけまでをすべて1名で対応しなければなりません。
とくに事前の準備は重要で、利用者の状態をアセスメントし状態の変化がないように施行するだけではなく、スムーズに実施できるように物品を把握しておく必要もあります。

要介護度が低めな利用者さんにおすすめ

上述したとおり、訪問介護の入浴介助はスタッフ1名で対応し、自宅の浴槽を使って入浴することになります。そのため、自分自身で浴槽をまたげるなど、比較的介護度が低い利用者が使いやすい介護サービスです。

また、浴室に介助できるスペース、介助者が入ることができるスペースがある利用者にもおすすめです。反対に、寝たきりの利用者はこのサービスを利用することは難しいでしょう。

訪問入浴介護とは?

訪問入浴介護とは、看護師1名を含めた3名または2名のスタッフが自宅に訪問し、専用の浴槽を使い入浴をするサービスのことです。ここでは、訪問入浴介護について解説します。

1. 専用の浴槽を使用して介助をおこなう

訪問介護による入浴介護では、利用者の自宅の浴槽を使用します。その一方、訪問入浴介護では、訪問入浴専用の浴槽を乗せた訪問入浴車で利用者宅を訪れ、運び入れた専用の浴槽を使用して介助をおこなうのが特徴です。利用者宅の浴室の有無や、バリアフリーなどの構造に左右されません。

2. 看護師1名・介護スタッフ2名の3名でおこなう

入浴介助はスタッフ1名でおこないますが、訪問入浴介護では、看護師1名を含めた2名または3名のスタッフでおこなわなければなりません。

人数はもちろん、看護師の介入が必須ある点が訪問入浴介護の特徴です。これは、訪問入浴介護のほうが、より介護度が高い人が利用するため、入浴する前後で利用者の健康状態についてチェックする必要があるからです。

要介護度が高い利用者さんにおすすめ

訪問入浴介護では看護師の介入が必須条件であり、寝たきりの利用者でも入浴できる専用の浴槽を使用することから、要介護度が高い利用者におすすめです。また、自宅の浴室が狭くて、家族だけでのサポートでは入浴できない人も、入浴することが可能となります。

また、看護師がいて健康状態を把握することができることも、要介護度が高い利用者におすすめできる理由のひとつです。

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上手に介助したい! 入浴介助の流れを紹介


訪問介護による入浴介護と訪問入浴介護には看護師の有無、スタッフの人数、使用する浴槽など違いがありますが、入浴介助のポイントとしては共通しているところが多いです。ここでは入浴の流れと、うまく介助ができるようになるポイントについて紹介します。

1. 入浴介助前

まず大切なのは、利用者の健康状態について確認することです。主治医から入浴の許可が出ているのか、その日の体調が悪くはないか、などを確認します。

また、入浴に必要な物品の準備も実施。このとき、準備が不充分であると、スムーズに介助することができません。もしも足りない物品を取りに行かなければならない状況となったときには、利用者を浴室にひとり残すことになります。転倒の危険にさらすことになるため、注意しなければなりません。

必要なものを準備|バスタオルや着替えなど

準備する物品としては具体的に、バスタオルや着替え、オムツ、尿取りパッド、ボディソープやシャンプー、ボディタオルなどです。このとき保湿剤や皮膚科で処方されている軟膏などないか確認することも大切です。入浴介助後に慌てないように、不足なく準備しておきましょう。

浴室の準備|浴室を温める・お湯をためる

必要な物品を準備したあとは、浴室の準備が必要です。とくに冬の入浴介助のときには気をつけなければなりません。

利用者が入浴する前に、浴室を温め、お湯を適温にしておきます。また利用者の状況により、転倒防止のマットやシャワーチェアなどを準備することも考えなければなりません。

バイタルチェック|体温や血圧・表情の変化を見逃さない

主治医から入浴の許可があるかどうか必ず確認しなければなりませんが、利用者のその日の体調を正確に判断することも必要です。体温や血圧、表情、発言などを観察しましょう。

入浴は要介護者にとっては体への負担が大きいものであるため、注意深く観察する必要があります。入浴前に体調がすぐれないと判断したときは無理はせず、清拭に切り替えたり、足浴などを実施したりしましょう。

2. 入浴介助中

もっとも大切なのは、体調の変化を見逃さないこと、転倒などに注意することです。そのほかにも入浴介助中には注意しなければならないポイントがいくつかあるため、ここで詳しく紹介します。

温度確認は必須|椅子にもお湯をかけて温かく

温度確認は必須です。お湯の温度を確認するだけではなく、利用者が座る前に椅子にお湯をかけて温めておくことも大切になります。
体にお湯をかける際には足元からゆっくりかけ、温度を見ながら徐々にお湯に慣れてもらいましょう。

体や髪を洗う|お湯をかけるときは声を掛けて

体や髪を洗うとき、利用者は皮膚が弱いことが多く、力を入れてこするとキズがつきやすいため注意が必要です。汗をかきやすい関節のところや排泄物で汚れやすい陰部はしっかりと流し、洗い残しがないよう気をつけましょう。
また、お湯をかけるときには利用者に声を掛けながらおこなうことが大切です。

浴槽への出入り|転倒しないようにサポート

浴槽への出入りの際には、とくに転倒に気をつけなければいけません。手すりがある場合には手すりにつかまってもらい、利用者の身体を支えながらゆっくり浴槽に入ってもらいましょう。

上述したとおり、入浴は体への負担が大きく不調をきたしやすい行為です。入浴して疲れたり、床が濡れていて転倒しやすかったりという状況となるため、転倒しないようにサポートしましょう。

3. 入浴介助後

入浴介助が終わったあとも、利用者に可能な限り負担がかからないようにしていく必要があります。ここでは、入浴介助後の注意点について見ていきましょう。

服を着る|椅子に座ってもらう

入浴後には転倒予防のため、足の裏をしっかりと拭いた後で、体全体を拭くようにしましょう。また、血圧の変化や疲労などからふらつくこともあるため、椅子に座ってもらいながら入浴後のケアをおこないます。このときに使用する椅子は、脚が安定しているものを使用しましょう。

状況に合わせたケア|爪切り・保湿剤など

利用者の状況に合わせたケアをおこなうことも大切です。入浴中に皮膚の状態を観察し、乾燥している場合は保湿剤を塗布し、爪が伸びていたら爪切りをおこないましょう。入浴後は皮膚や爪が柔らかくなっているタイミングのため効果的です。

バイタルチェック|入浴後の体調変化に気を配る

入浴中もですが、入浴後も利用者は体調の変化をきたしやすいため、バイタルサインの測定をおこない、入浴後の体調変化に気を配らなければなりません。充分な水分補給をおこない、しばらく休憩をとることが大切です。入浴の準備から入浴中、入浴後までを通してケアを続けることで、利用者にとってよりよい入浴となります。

利用者さんに合わせた入浴介助を提案しよう


訪問介護による入浴介護と訪問入浴介護について紹介しました。それぞれ利用しやすい要介護度や入浴の方法、スタッフの人数などに違いがあります。
今回紹介したことをもとに、利用者の状況に合わせた入浴介助を提案し、迅速に入浴介助を提供できるようになりましょう。

引用元サイト
厚生労働省 訪問介護及び訪問入浴介護(参考資料)
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000170289.pdf

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