訪問介護員(ホームヘルパー)の仕事の大変さとは?やりがいや対処法などについても詳しく解説!
訪問介護員(ホームヘルパー)はやりがいがあるけど大変という声も少なくありません。実際どのようなことが大変なのか気になっている人も多いでしょう。
そこでここでは、訪問介護員の大変さについて紹介しながら、やりがいや大変だと思った時の対処法についても解説します。
訪問介護員(ホームヘルパー)の仕事内容
ホームヘルパーとは介護保険法にもとづき、在宅の場で介護を提供する人のことを指しており、正しくは訪問介護員といいます。
そんな訪問介護員(ホームヘルパー)は、あらかじめ決められた時間に高齢者や心身に障害のある利用者の家庭を訪問し、利用者の自立支援、食事や入浴などの生活をサポートするサービスを提供するのが仕事です。
身体介護|食事や入浴の介助など
身体介護とは、身体に関わるケアのことです。なんらかの障害により自力で食事が取れない人の食事介助や入浴の見守り、一部介助、そのほか排泄ケアとしてオムツ交換や尿の破棄などがこの身体介護にあたります。
生活援助|洗濯や掃除・薬の受け取りなど
生活援助とは、居住空間の掃除や利用者の衣類や生活用品の洗濯をおこなうのがおもな仕事です。買い物の代行や買い物の付き添いなども、ここに該当します。また、まれにですがなんらかの事情で薬局に行けない利用者の代わりに薬を取りに行くこともあるのが特徴です。
通院時の乗降介助|通院時の送迎など
通院介助は、通院の際の車やタクシーの乗り降りの介助や送迎の付き添いなどをすることです。ただし、病院での待ち時間はサービスには含まれておらず、事業所によっては有償である場合や時間制限など対応が異なります。
訪問介護員(ホームヘルパー)の仕事の大変さ|心身へのストレスと給料の低さ
訪問介護員の仕事は大変だと感じている人も多いでしょう。ここでは、仕事が大変な理由について詳しく解説します。
精神的ストレスが多い理由
訪問介護員(ホームヘルパー)は精神的ストレスも多い職業です。令和3年に行われた調査では、労働条件等の悩みについて「精神的にきつい」と回答した人の割合が約5人に1人(21.4%)いることが明らかにされました。
特に、職場での人間関係に悩まされている人も多く、「自分と合わない上司や同僚がいる(15.6%)」、「部下への指導が難しい(16.8%)」「ケアの方法等について意見交換が不十分である(15.8%)」といった悩みがあるようです。
その他にも、施設・事業所の運営方針と合わないことや、利用者との良好な関係が築けないことなども精神的ストレスになっていることも。
身体的ストレスが多い理由
訪問介護員(ホームヘルパー)は身体的ストレスも多い職業です。令和3年に行われた調査の中では、「身体的負担が大きい(腰痛や体力に不安がある)」と回答した人は28.6%、「健康面(新型コロナウイルス等の感染症、怪我)の不安がある」と回答した人は29.1%と、およそ3人に1人の割合で身体的な不安を感じている結果が明らかにされました。
55.6~89%の介護職員が腰痛を抱えているというデータも明らかにされているので、介護職全般的に身体的ストレスが多いといえます。
武田・高木(2016)が行った研究では、身体的ストレスは、心理的ストレスとも関係があることが明らかにされているので、心身へのストレスが腰痛になって現れているということもいえるでしょう。
給料が低い
訪問介護員(ホームヘルパー)の仕事は大変ですが、給料が低いという特徴があります。令和3年に行われた調査では、平均時給は1,226円で平均日給は9,058円、平均月給は150千円以上200千円未満と給料はあまり高いとはいえません。
実際、訪問介護員の半分以上(無期雇用職員61.5%、有期雇用職員55.9%)が基本給の引き上げを希望していて、現在の給料に満足している人が少ないことがわかります。
訪問介護員(ホームヘルパー)の仕事におけるやりがい
訪問介護員(ホームヘルパー)の大変さについて解説しましたが、やりがいとしてはどのようなことがあるのでしょうか。ここでは訪問介護員(ホームヘルパー)のやりがいについて紹介します。
困った人を助けられる・感謝してもらえる
訪問介護員(ホームヘルパー)を利用する方の多くは、生活支援や自立支援を目的に利用しています。思うように身体を動かせずに困っている人を助けてあげたり、力になれたり、人の役に立つことができる仕事です。
日々の仕事のなかで、利用者にありがとうなどの感謝の言葉を伝えてもらえることがあります。利用者から、直接感謝の気持ちを伝えてもらえることで、やりがいを感じるでしょう。
きめこまやかな対応ができる
訪問介護は病院や施設とは違い、1対1で対応することができるので、よりこまやかな対応が可能です。病院や施設では、多くの患者がおり、ケアで提供できる時間には限りがあります。
一方、訪問介護の場合、まとまった時間でひとりの利用者につきっきりでケアを提供することが可能です。また、在宅だからこそ、利用者の困っていることにすぐに気づくことができ、ケアに結びつけることができます。
利用者のできることが増える・生活の質の向上
訪問介護を利用していると、月日が経つにつれ、苦手だったことができるようになることもあります。それは、利用者の自立にもつながるでしょう。
ひとりではできなかったことができるようになることで、利用者の生活の質が上がり、その成長に立ち会えることがやりがいだと感じることが多いようです。
利用者と心の交流を図れる
訪問介護を利用する方は、独居の方や家族が遠方にいる方など、さまざまな事情をお持ちです。
そのため、家族よりも会う時間が増え、利用者はその時間を楽しみに待っていてくれることもあります。話を聞いてもらいたい、週末のできごとを共有したいといった、要望にこたえる気持ちは特に喜んでいただけます。
そうして利用者の要望に寄り添いながらコミュニケーションを図ることで、信頼関係を築き頼ってもらえることは、訪問介護員(ホームヘルパー)のやりがいの1つです。
訪問介護員(ホームヘルパー)で大変だと感じた時の対処法
訪問介護員(ホームヘルパー)として大変だと感じた時には、どのような対処をしたらよいのでしょうか。ここでは、大変さを感じた時の対処法について紹介します。
資格を取ってキャリアアップする
訪問介護員(ホームヘルパー)として大変だと感じた時におすすめなのは、キャリアアップを目指すことです。ここでは、訪問介護員(ホームヘルパー)の大変さから脱却するためにどんなキャリアアップをすればよいか解説します。
おすすめの資格①介護福祉士
訪問介護員(ホームヘルパー)がキャリアアップを図るためにまず取るべき資格は、介護福祉士です。介護福祉士の資格をとることでケアマネージャーや生活相談員など、さらに先のキャリアを歩むことにもつながります。
介護福祉士の資格を取得するには、主に下記3つのルートがあります。
1.養成施設ルート
2.実務経験ルート
3.福祉系高校ルート
養成施設ルートや福祉系高校ルートでは、指定された養成施設や福祉系高校で所定カリキュラムを修了し国家試験を受験し合格することで、資格を取得できます。
実務経験ルートでは、実務経験3年以上に加えて、実務者研修もしくは介護職員基礎研修と喀痰吸引等研修両方のカリキュラムを修了していることが、国家試験の受験条件です。
介護福祉士の資格を取得することで訪問介護以外の仕事にも携われるようになるため、訪問介護員(ホームヘルパー)の仕事が大変だなと思った時に資格取得を目指すとよいでしょう。
おすすめの資格②ケアマネージャー
ケアマネージャーの仕事は、主に介護サービスを提供する事業者と協力して利用者のニーズに合った介護サービスのプランニングを行います。
ケアマネージャーになるためには、看護師・社会福祉士・介護福祉士・理学療法士などの資格を持っている人が5年以上の実務経験を積み、介護支援専門員実務研修受講試験を合格し、介護支援専門員実務研修を修了することでケアマネージャーの資格を取得できます。
訪問介護員(ホームヘルパー)からケアマネージャーを目指すためには、上記で紹介した介護福祉士の資格を持っていることが前提条件となります。
おすすめの資格③生活相談員
生活相談員は、介護施設などで相談窓口となって利用者や家族からの相談業務などを担当します。また、自治体や医療機関などとも連絡を取ることが多く、主にデスクワークなどが中心となります。
そのため、訪問介護員(ホームヘルパー)よりも身体的負担が少ないことが特徴ですが、精神保健福祉士・社会福祉士・社会福祉主事などの資格を持っている必要があります。
ただし、社会福祉士の資格は福祉系の大学・短期大学か養成施設に通い、所定のカリキュラムを修めることが受験条件です。
別の業界や職種へ転職する
訪問介護員(ホームヘルパー)の仕事を辞めたいと思ったら、別の業界や職種へ転職するのも1つです。
介護業界で培ったスキルを活かした転職先には、看護助手や心理カウンセラー・リハビリ職(言語聴覚士、理学療法士、作業療法士)・保育補助などがあります。
介護職では人をサポートすることが最も必要なスキルなので、その他にも人のサポートを行う仕事を探してみるのもよいでしょう。
訪問介護員(ホームヘルパー)として大変だと感じたら自分を第一に
訪問介護員(ホームヘルパー)はやりがいを感じやすい仕事ですが、大変さを感じている人も多くいます。特に、身体的・精神的ストレスや給料の低さなどは多くの訪問介護員(ホームヘルパー)にとって課題となっています。
大変だと感じた時には、キャリアアップを目指したり経験を活かしながら新たなことに挑戦できる職場に転職したりと、自分を大切にしながら、さまざまな選択肢を考えてみてくださいね。
引用元
公益財団法人介護労働安定センター「令和3年度介護労働実態調査 介護労働者の就業実態と就業意識調査結果報告書」
村田伸・大山美智江・坂田栄二(2021)「介護職員の腰痛発生率と移乗介助用福祉用具の導入割合との関連」
武田啓子・高木直美(2016)「介護福祉士の腰痛に関する研究」
公益財団法人社会福祉振興・試験センター「介護福祉士国家試験」