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ヘルスケア 2023-10-02

「ごぼう先生」のコンテンツを通して介護チームの一員に【もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事Vol.116/ごぼう先生 やなせひろしさん】#2

ヘルスケア業界のさまざまな職業にフォーカスし、その道で働くプロにお仕事の魅力や経験談を語っていただく連載企画「もっと知りたい! ヘルスケアのお仕事」。

前回に続き、「ごぼう先生」やなせひろしさんにインタビュー。
全国各地の介護施設や地域を中心に「ごぼう先生」として、座ったままできる健康体操を普及しているやなせさん。前編では、やなせさんが「ごぼう先生」になった経緯と、現在の働き方、お仕事をするうえで大切にしていることをお聞きしました。

後編では、やなせさんがヘルスケアのお仕事に感じるやりがい、これからヘルスケアのお仕事を目指す方へのアドバイスをお聞きします。

テレビ画面の中から約3万件の事業所へ広がる!
高齢者だけでなく介護職員にも喜ばれる存在へ

――お仕事に感じるやりがいは何ですか?

「おじいちゃんおばあちゃんのために」と、高齢者の専門家になろうと決めて活動し始めたんですが、最近は自然と介護職員さんたちからも肯定的な反応をいただけるようになって、それがすごく嬉しいんですよね。

「おじいちゃんおばあちゃんのために」という僕の原点は、やっぱり介護職員さんたちも共通で持っている想いだと思うんです。その共感があるからか、施設や講演会で介護職員さんと会ったときの喜ばれ方というのが、いい意味でご利用者さん以上の反応になってきているのを感じます。それが、僕もチームの一員になれているという雰囲気があって、すごく嬉しいです。

――コンテンツを通して事業所全体のアイドル的な存在になっているんですね。

カラオケやDVDを通して僕の体操を導入いただいている事業所は3万件近くあります。そういった事業所に、いつもテレビのなかで体操指導をしている「ごぼう先生」が行けば、やっぱり喜ばれ方は違いますよね。そういう機会があると、体操指導をするというよりも「思い出作りに貢献できている」と感じます。

その反応というのは「ごぼう先生」じゃないと生まれないと思うので、そこまで持ち上げていただいている環境にすごく感謝していますし、日常的な体操指導とはまた違う関わり方ができる機会だと思うので、とてもありがたいです。

高齢者の笑顔を作る仕事がしたいと思って今までやってきていますが、本当にそれ以上の「人と人とのコミュニケーション」ができるのは、すごく嬉しいし、やりがいにもなっています。

高齢者と子どもをつなぐ活動を通して
「老い」に寄り添える社会を目指す

――現在力を入れている活動や、今後取り組まれる予定の活動はありますか?

今がんばっているのは、介護現場と子どもたちとの交流です。高齢者と子どもが共通でできる体操を通して接点作りをしていきたいと思っています。

そのスタートとして、卒園ソングで有名な『にじ』や『さよならぼくたちのようちえん』を作曲した新沢としひこさんに楽曲を提供していただきました。また曲を聞いたときに、「これは僕じゃなくて子どもたちだ」と思い、僕の子どもたち3人にも一緒に活動してもらうことにしました。

先日も子どもたちを主役に、介護施設で体操をしてきたんですが、「ごぼう先生」とはまた違う反応があったんですよね。見たことのないくらい朗らかな表情をされていて、すごくいい交流につながっていると感じました。

コロナ禍になって、そういう接点がまだまだ警戒されている世の中だと思います。でもやっぱり子どもにとっても、おじいちゃんおばあちゃんにとっても、その交流というのはすごく喜んでもらえる要素だと思うんです。そこに体操や音楽制作から「ごぼう先生」として関われたら最高だなと思っています。

――子ども世代と高齢者とつなげようと思ったきっかけは?

そもそもの原点というか、僕はとてもおばあちゃん子だったので、この活動ができていると思うんです。老いていくなかで少し頑固になったり我儘になったり…そういう変化をひっくるめて、僕は近くで見てきたから、こういう活動ができている。

でも今後の世の中を考えると、子どもがいない方々も増えるだろうし、現状でも高齢者と一緒に暮らしていない子どもの方が多いなかで、「老い」の場面をリアルで見ていく家庭はどんどん減っていくと思います。さらにコロナ禍という現状もあり、福祉と子どもたちとの間に溝が生まれているのかなと感じました。その溝を、自分と子どもたちで埋められたらいいなと思ったんです。

――地域の子どもと高齢者がつながるきっかけにもなりそうですね。

交流って、一緒に歌うだけでもいいんです。そのきっかけというか、新しい共通点として、作った曲と体操が広まったら嬉しいです。

僕の子どもたちとの活動を今後も続けていくかは、子どもたちがやりたいかどうかという部分は大きいです。やっぱり仕事ですから、いつものお父さんではなく集中しなければいけないし、家族で活動するというのはスタミナも根性も必要になってくるので。子どもたちの意思を尊重しながら、できるだけ柔軟に、なるべくなら他でも再現性のある取り組みとして表現していけたらと思っています。

自分なりの「一流」を模索しながら
視野を広く新しいことを見つけ続ける

――これからヘルスケアのお仕事を目指す方へのアドバイスをお願いします。

仕事を続けていくうえでも、自分の知識を広げていくうえでも、「一流ってなんだろう」と
考えることはすごく大事
だと思います。そう思うきっかけになったのが、尊敬する作業療法士の後輩から言われた「人を触っている療法士は二流」という言葉でした。

もちろん段階として絶対に直接関わったほうがいいと思うし、僕自身も人に触れて施術するのは好きなんです。人と接することを極めるというのも1つだと思います。でも僕が思う一流の先生というのは、「視野が広い」ことに気づいたんです。

今のヘルスケア業界は、国家資格をとればある程度の給料ももらえて、雇用も守られている。すごく守られた業種だと思うからこそ、その壁を広げたり、情報をくみ取りながら成長できる方って、僕はすごくかっこいいと思ったんですよね。

「一流とはこれだ」と言いたいわけではないんです。「一流ってなんだろう」と探りながら、さまざまなスペシャリスト、極めた方たちと交流すること。それは人生までも楽しくなる経験になると思います。だから自分にとっての「一流」を考えるキーワードとして、「人を触っている療法士は二流」という言葉がプレゼントになれば嬉しいです。

――最後に、やなせさんにとっての「ヘルスケアの心得3か条」を教えてください。

1,当事者意識を忘れない
自分が老いたときに、「この人を見て実際に体操をするか」という目線はとても大切にしています。自分は多分めんどくさいおじいちゃんになると思うんですけど(笑)、そんなおじいちゃんでも「こいつならやってやるか」と思えるか。当事者をリアルに考えることで、「この言葉1つでイラッとするんじゃないか」とか、言葉かけ1つも変わってきますから。

2,その場の最適解を見つけながらアドリブでアクションを選ぶ
準備や知識は大事かもしれませんが、ヘルスケアの世界においては想像通りにいかないことがほとんど。だから台本通りという意識はせず、その場に立った自分の実力を出すことが大事なんです。その場にいるみなさんが一番納得のいくアクションを選ぶことを心がけると、自分自身も機械的にならないし、キャラクターとして人間らしさも出てくると思っています。

3,自分を大切にする
僕の場合、自分が気持ちよくパフォーマンスしないと、相手には絶対に伝わらない職業です。だから嫌なことはなるべく避けて、自分が気持ちよくパフォーマンスできるようにすること。それができるのは自分が経営者だからというのもありますが、長く続けていくためには大切なことだと思います。

逆に、みなさんの満足は得られなくても、自分がしてみたいことはする。やっぱり一度切りの人生なので、「やるかやらないかは自分が選ぶ」というところは大事にしたいです。

取材・文/山本二季

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