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介護・看護・リハビリ 2023-09-22

作業療法士の仕事内容とは? 資格取得を目指す方法を紹介

作業療法士という仕事について聞いたことがある方もいるでしょう。しかし、「要介護者の日常動作の回復をサポートする仕事」という大まかなイメージのほかには、具体的な仕事内容はよく知らないという方も多いのではないでしょうか?

今回は、作業療法士の概要や仕事内容、作業療法士国家試験の資格を取得するまでのプロセス、作業療法士の将来性、キャリアアップの方法について紹介していきます。

作業療法士(OT)とは?


ここでは、作業療法士とはどんな職種なのか、また期待される役割にはどのようなものがあるかを紹介します。仕事内容や資格取得などを具体的に見る前に、その概要をあらためておさらいしておきましょう。

訓練・指導・援助で心身機能の回復をサポートする医療技術者

作業療法士は医療技術者であり、OTという略称でも知られています。その役割は、身体や精神に障害を抱える利用者がその機能を回復できるように、日常生活における作業や動作などの訓練・指導・援助をおこなうというものです。

理学療法士とはどこが違うの?

作業療法士は、訓練・指導・援助のプロセスで、利用者の「作業」の獲得をサポートします。作業活動には下記のような活動が挙げられます。

・セルフケア(排泄・風呂・着替えなど)
・家事(調理・洗濯・掃除など)
・地域活動(コミュニティへの参加)
・余暇活動
・仕事

作業能力の維持・獲得を目指し、利用者と社会とのつながりを作る仕事です。

引用元:一般社団法人 日本作業療法士協会:作業療法士ってどんな仕事?

どんなところで働くの?

作業療法士の就職先には、病院や介護施設を中心として、福祉施設や教育施設などもあります。具体的には、下記のような場所が就職先の候補として挙げられます。

大学病院・クリニック
リハビリテーションセンター
障害者施設、障害児通所・入園施設
老人保健施設
就労支援施設
保健所
特別支援学校

引用元:職業情報提供サイト jobtag:作業療法士(OT)

このように、就職先は幅広いので、自分が希望する職場を見つけやすいでしょう。

就職先ごとの特徴や選び方については、下記の記事を参考にしてみてください。

参考記事:作業療法士の就職先は?就職先別業務内容や魅力を紹介

給与はどれくらい?

厚生労働省が発表した令和4年 賃金構造統計調査によれば、スタッフの人数が10人以上の事業所で働く作業療法士(理学療法士・言語聴覚士・視能訓練士を含む)の現金給与額は28万7,200円で、年間賞与その他特別給与額は65万3,600円です。

引用元:厚生労働省:令和4年 賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種 第3表

作業療法士の具体的な平均月収・年収、給料をアップさせるための方法について知りたいという方は、下記の記事を参考にしてみてください。

参考記事:作業療法士の給料はどれくらい?将来性や給与をアップさせる4つの方法を紹介

作業療法士の仕事内容を紹介!


ここでは作業療法士が活躍する具体的な場面、その仕事内容を紹介します。病気やケガなどにより発生した障害が今どの段階にあるのかによって、求められるサポート内容も変わってくるのが特徴です。

どの段階でも共通しているのは、機能そのものの回復・維持を最終的な目的とするのではなく、あくまでも生活の質を向上させるために訓練をおこなうという点でしょう。

「作業療法」とは?

作業療法とは、日本作業療法士協会にて以下のように定義づけられています。

「作業療法は、人々の健康と幸福を促進するために、医療、保健、福祉、教育、職業などの領域で行われる、作業に焦点を当てた治療、指導、援助である。作業とは、対象となる人々にとって目的や価値を持つ生活行為を指す。」

引用元:一般社団法人 日本作業療法士協会

日常的な動作が難しくなった人に対し、心と身体の働きの回復を促したり、悪化しないよう現状を維持することを目的とし、その手段として「作業」を用いて治療を行います。その人らしく生活できることを目指しているのが作業療法です。

急性期のお仕事|早期リハビリテーション

病気やケガの初期段階である急性期は、病気や怪我をしてサポートが必要と判断された直後の段階です。早期のリハビリテーションとして、心身の基本的な機能改善を援助したり、機能低下が進むのを食い止めたりします。

具体的なサポートの内容としては、自助具などを利用した食べる練習・トイレでの乗り降りの練習、居住空間における移動練習などが挙げられます。

回復期のお仕事|生活方法の習得

回復期は、病状が安定し、少しずつ身体や精神の機能改善がみられる時期です。その後の生活を具体的にイメージしながら、生活するうえで不足している機能を訓練し、応用的能力の改善を図るのが目的です。人それぞれの必要性に応じた能力の獲得を目指します。

この時期には自宅に戻ってからの生活を想定し、身の回りのことや調理、買い物・散歩で外出する練習など、応用的活動のリハビリテーションをおこないます。

生活期のお仕事|より豊かに生きるために

病気やケガの症状がほぼ治まってからは、住み慣れた自宅や居住空間に移動してQOL(生活の質)を高めるためのサポートに移行します。

利用者さんが豊かな人生を送れるように、社会の中で安心して過ごす場や仲間づくりの場を提供するのが目的です。

また、生活を楽しむという点から、地域のコミュニティへの参加や就労支援を通して、社会復帰の練習や福祉用具を用いてのレジャーや趣味の実現を支援し、一人ひとりの利用者に寄り添いながら、より生活を楽しむための支援をおこないます。

作業療法士の資格を取得するには?


作業療法士として働くためには、まず作業療法士国家試験を取得する必要があります。ここでは、国家試験の受験から資格取得までのプロセスを確認しましょう。

国家試験の受験&合格が必要!

作業療法士の資格は国家資格で、作業療法士国家試験の受験資格を得て、試験に合格する必要があります。ここでは、受験資格の取得ルートや国家試験の特徴を確認しましょう。

国家試験の受験資格とは?

受験資格を得るためには、大学や短大、専門学校などの教育機関で作業療法士に必要な知識やスキルを3年間〜4年間学び、指定のカリキュラムを修了する必要があります。

作業療法士の国家試験とは?

作業療法士国家試験は、筆記試験か口頭及び実技試験によって合否を判断する試験です。試験で出題される内容は、下記のとおりとなっています。

一般問題・・・解剖学、生理学、運動学、病理学概論、臨床心理学、リハビリテーション医学(リハビリテーション概論を含む。)、臨床医学大要(人間発達学を含む。)及び作業療法
実地問題・・・運動学、臨床心理学、リハビリテーション医学、臨床医学大要(人間発達学を含む。)及び作業療法

引用元:厚生労働省:作業療法士国家試験の施行

筆記試験がメインで、重度の視力障害者に対する代替措置として、口述試験及び実技試験の枠組みも用意されています。

合格率はどれくらい?

直近5年間における作業療法士国家試験の合格率は、下記のようになっています。

実施回 合格者数 合格率
第58回 4,793人 83.8%
第57回 4,608人 80.5%
第56回 4,510人 81.3%
第55回 5,548人 87.3%
第54回 4,531人 71.3%

引用元

厚生労働省:第58回作業療法士国家試験の合格発表について
厚生労働省:第57回作業療法士国家試験の合格発表について
厚生労働省:第56回作業療法士国家試験の合格発表について
厚生労働省:第55回作業療法士国家試験の合格発表について
厚生労働省:第54回作業療法士国家試験の合格発表について

作業療法士国家試験の合格率は例年7割〜8割前後となっており、合格率が高い試験です。

作業療法士の将来性について解説!


高齢化が進む日本では、介護福祉のニーズが年々高まっており、作業療法士の将来性は大きいと言われています。将来性やキャリアアップ制度、スキルアップの役立つ資格などを知って、作業療法士としてのキャリアプランを思い描いてみましょう。

作業療法士の将来性は?

作業療法士は将来的に、非常に高い需要が見込まれます。医療技術者という職種ながら、病院だけでなく介護施設をはじめとした介護・福祉分野におけるニーズも高いからです。

近年は、とくに日常生活を送る動作自体の指標である「ADL」の向上から、生活の質を追求する「QOL」を重視した介護が一般的になっています。

また、これまで以上に「不自由のない日常生活」が求められる社会になっており、そのサポートをおこなう作業療法士の仕事は今後ますます重要になるでしょう。

作業療法士がおこなうリハビリテーションは利用者さんの機能を「回復」させるだけでなく、「予防・悪化防止」を目指す目的が広がりつつあります。

このように作業療法士の活躍が期待される場が増えているため、人材不足という声も上がっているということです。人手不足の傾向はこれからさらに拍車がかかるため、作業療法士の資格を取得すればこれからの就職にも有利にはたらくでしょう。

さらなる高齢化に向けて、より需要は高まる

身体障害や精神障害、認知症などの疾患がある高齢者に対して、在宅(訪問リハビリ)や介護施設などで日常生活を送ることができるようにリハビリを行うのも、作業療法士の仕事です。

また、介護の分野では近年、リハビリに特化した、機能訓練特化型デイサービスや小規模リハビリ専門デイサービスが増えており、このような施設では機能訓練指導員として作業療法士を多く募集しています。

年齢を重ねていくことで起こる体の機能低下に対し、リハビリが必要になる場面も多いため、こういった需要はさらに高まっていくでしょう。

子どもたちへのケアも増えていく

脳性まひや知的障害など障害をもつ子どもに対して、社会性や心身の発達を促し、自立した日常生活を送れるようにリハビリを行います。

また、作業療法士は身体だけでなく心のケアもできるため、就学中の子どもに対して、学習面や集団生活、友人関係などの不安に寄り添った支援も可能です。。

病院や特別支援学校、児童発達支援センターなど、子どもたちと関わる場面はさまざまあり、サポートできる場面も増えてきています。

キャリアアップするには? 生涯教育制度を紹介

作業療法士のキャリアアップを支援する国の取り組みとして、生涯教育制度があります。

作業療法士向けの新人教育プログラムで知識を補強でき、上位資格である認定作業療法士・専門作業療法士の取得も目指せる学習制度です。

引用元:一般社団法人 日本作業療法士協会:生涯教育制度改定2023の概要

認定作業療法士

認定作業療法士は、作業療法の実践・教育・研究及び管理運営に関する、一定水準以上の能力を満たしていることを証明された作業療法士のことをさします。

日本作業療法士協会が実施する教育法・研究法・管理・運営に関する3つの共通研修や2つの選択研修を受講し、3件の事例報告を完了していることが資格取得の条件です。

引用元:一般社団法人 日本作業療法士協会:認定作業療法士制度

専門作業療法士

専門作業療法士は、特定の専門分野において、高度かつ専門的な作業療法実践能力を有することを証明している作業療法士のことをさします。

認定作業療法士の資格を取得した上で、研修実践、臨床実践、研究実践、教育と社会貢献の4つの実践に必要な単位数を満たし、専門作業療法士資格認定審査に合格することが資格取得の条件です。

引用元:一般社団法人 日本作業療法士協会:専門作業療法士制度

仕事の幅を広げる介護系資格を紹介

作業療法士の仕事の幅を広げる資格として、介護系の資格取得を目指す方法もあります。ここでは、作業療法士の仕事に活かせる介護系の資格を見ていきましょう。

介護支援専門員|ケアマネジャー

介護支援専門員(ケアマネジャー)は、介護福祉の現場などで要介護者一人ひとりに適したケアプランを作成し、日常生活を営むための支援を行う仕事です。

介護支援専門員実務研修受講試験に合格し、実務研修を修了した後、介護支援専門員資格登録簿に登録して会員証の交付を受けることで、介護支援専門員になれます。

介護支援専門員のより具体的な仕事内容については、下記の記事を参考にしてください。

参考記事:ケアマネジャーの役割や仕事内容とは?一日の業務の流れや就職先なども紹介

福祉用具プランナー|福祉用具専門員

福祉用具プランナー(福祉用具専門員)は、福祉用具を必要とする要介護者に対し、最適な福祉用具の選定や使用計画の策定を行い、使用状況をモニタリングしていく仕事です。

福祉用具プランナー認定講習のカリキュラム(48時間の座学と52.5時間の実技演習および認定試験)を修了することで、福祉用具プランナーの資格が認定されます。

引用元:公益財団法人 テクノエイド協会:福祉用具プランナーとは

福祉用具プランナーのさらに詳しい業務内容や資格取得のルートに関しては、下記の記事を参考にしてください。

参考記事:福祉用具専門相談員とは?業務内容や資格取得ルート、3つのやりがいについて解説

作業療法士は生きがい支援の専門家


今回は、作業療法士の仕事や試験内容、将来性について解説しました。作業療法士は、日常の運動動作から応用動作、社会適応まで総合的にサポートする仕事です。理学療法士と似ていますが、社会適応サポートまで行うのは作業療法士のみの特徴だといえます。

作業療法士になるためには、3年以上のカリキュラムを特定の教育機関で修了し、作業療法士国家試験に合格する必要があります。合格率は8割前後で推移しているのでしっかりと準備や対策を行うことで、挑戦しやすい国家試験だといえます。

また、生涯教育制度を活用してスキルアップしたり、介護系の資格を取得したりするのも、作業療法士としてのキャリアアップを目指すためには有効です。

作業療法士になった後の自分の姿をイメージしながら、どんな人をサポートしたいのかを考え、作業療法士を目指すべきかどうかを考えていきましょう。

引用元

一般社団法人 日本作業療法士協会:作業療法士ってどんな仕事?
職業情報提供サイト jobtag:作業療法士(OT)
厚生労働省:作業療法士国家試験の施行
厚生労働省:令和4年 賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種 第3表
厚生労働省:第58回作業療法士国家試験の合格発表について
厚生労働省:第57回作業療法士国家試験の合格発表について
厚生労働省:第56回作業療法士国家試験の合格発表について
厚生労働省:第55回作業療法士国家試験の合格発表について
厚生労働省:第54回作業療法士国家試験の合格発表について
一般社団法人 日本作業療法士協会:生涯教育制度改定2023の概要
一般社団法人 日本作業療法士協会:認定作業療法士制度
一般社団法人 日本作業療法士協会:専門作業療法士制度
公益財団法人 テクノエイド協会:福祉用具プランナーとは

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