暗闇サイクリング・インストラクターのいいところは自分の世界観が表現できること【もっと知りたいヘルスケアのお仕事Vol.165 フィットネスインストラクター 佐藤麻未さん】#1
ヘルスケア業界のさまざまな職業にフォーカスして、その道で働くプロにお仕事の魅力や経験談を語っていただく連載「もっと知りたいヘルスケアのお仕事」。今回は、暗闇サイクリングのパイオニア・株式会社トキノカンパニーが運営する女性専用フィットネスジム「Freedom」統括ディレクターの佐藤麻未さんにお話を伺います。
高校生のとき、体を動かすことを仕事にしたくてインストラクターを目指した佐藤さん。最短でインストラクターになるために専門学校で学び、望み通り大手フィットネスジムに入社。エアロビクスをメインにスタジオ、トレーニング系のインストラクターとして活躍されます。そこで上司だった方がトキノカンパニーを開業することになりメンバーとして参加。トキノの代名詞でもある暗闇サイクリングの最大の魅力は、インストラクターとして自分の世界観が表現できることと語ってくれました。
お話を伺ったのは
Freedom統括ディレクター
佐藤麻未さん
大手フィットネスクラブ社員、フリーランスインストラクター、パーソナルトレーナーを経て暗闇サイクリングのパイオニアであるトキノカンパニー入社。営業部部長兼トキノカンパニーが運営する女性専用フィットネスジム「Freedom」統括ディレクター。女性同士だから共有できる喜びや悩みを分かちあいながらきめ細かなレッスンを提供している。インストラクター歴26年
インストラクターという仕事があるのなら私の中ではそれ一択!
――まずインストラクターを目指した理由を教えてください。
小中高とバスケをやっていて、体を動かすことを仕事にしたいなと思っていました。でも当時はそんな仕事があるのかどうかも分からなくて…。
高校の進路選択でいろいろ調べているときに5才上の従姉妹がインストラクターになったと聞き、そのときにはじめてそういう仕事があることを知りました。インストラクターという仕事があるのなら、もう私の中ではそれ一択! そのために学ぶなら大学? それとも専門学校? とにかく最短でインストラクターになりたかったので社会体育専門学校を選択しました。
――専門学校を卒業するとインストラクターの資格が取得できるのですか。
専門学校では健康運動実践指導者という資格を取得しました。でも、フィットネス分野には国家資格があるわけではないので、資格はそれほど重要ではないんです。プロとしての土台となる知識は絶対的に必要だと思いますが、むしろ重要なのはコミュニケーション能力。学んだことをアウトプットする力を養わないと、お客様に届けることはできないんじゃないかなと思います。
スタジオレッスンと教育チームの仕事を兼任した大手フィットネス時代
――専門学校卒業後はどんな道に?
新卒でセントラルスポーツに入社しました。そこでエアロビクスをメインにスタジオ系やトレーニング系のレッスンを担当しながら、教育チームの仕事も兼任。教育チームでは、所属している大勢のインストラクターのスキルチェックをしたり、ソフトプログラム開発に携わらせていただいたり幅広い業務を経験させていただきました。そこに5年間在籍した後に、フリーのインストラクターに転向しました。
――フリーになったきっかけを教えてください。
もう少し外が見たくなったんです。私が就いた職種は専任職だったので、店舗間の移動はほぼなかったんですね。でもセントラルスポーツ内にも店舗がたくさんあったので、ほかの店舗を見ていろいろと経験したくて社員からフリーに転向しました。
――フリーになっても前職の仕事を継続されたということは円満退社だったのですね。
そうですね。フリーになってからも教育チームの仕事を継続させてもらい、またグループレッスンをしながらパーソナルトレーナーの資格も取得していたので、小さいながらもプライベートルームを借りてパーソナルのお客様も担当させていただきました。
フリーになって2年目のときに、上司だった現トキノカンパニー代表の時野谷が起業することになり、一緒にやらないかと声をかけていただいてトキノカンパニーに入社することになりました。
自分の世界観が表現できるのが暗闇サイクリングの楽しみ
――トキノカンパニー入社後の活動内容を教えてください。
トキノ サイクリング フィットネスは基本的にバイク専門店なので、インドアサイクリングをメインに筋トレを組みこんでいくレッスンが多いです。荻窪駅近くの本社4階にあるナルシスコではパーソナルトレーニングを、そして女性専用ジムのFreedomでは、インドアサイクリングやピラティス、ダンス系のレッスンを行っています。
――トキノカンパニーといえば暗闇サイクリングのパイオニアですが、佐藤さんが暗闇サイクリングと出会ったのはどのタイミングだったのですか。
20代の頃です。暗闇サイクリングは、セントラルスポーツの社員だった時野谷がアメリカ研修に行った際に、たまたま参加したプログラムに大きな感銘を受けて日本に持ちこんだものなんです。当時はスピニングと呼ばれていて、その研修担当が時野谷でした。
――時野谷氏は暗闇サイクリングのどんなところに魅力を感じたのでしょうか。
すごくシンプルで且つエネルギッシュなスポーツだと常日頃話しています。「基本はペダルを回すだけ!」と、バイクを漕ぐとにかくシンプルなエクササイズであること。
1人1台バイクがあるので、それぞれがマイペースにバイクを漕ぐことができる点。わたしたちは「パーソナルレッスンの複合化」と呼んでいるのですが、バイクの台数が集まればグループレッスンも可能であることも大きな魅力ですよね。彼は帝京高校の野球部出身なので、チーム一丸となって突き進むパワーをフィットネスを通じて伝えていきたかったんだと思います。
――暗闇サイクリングのインストラクターは、その他のレッスンと比べるとちょっと特殊なイメージがあります。
暗闇サイクリングは、暗闇でヘッドホンを使ってレッスンする没入感と非日常感が味わえるトレーニングです。レッスンを展開する上で、プロファイル(レッスンの流れを記号化したもの)というものがあるのですが、例えば「標高何千メートルの山の頂上を目指して登っていく」。それにどんな音と指導で参加者をゴールまで導くかはインストラクター次第。インストラクターとしては、自分の世界観が表現できるところがすごく楽しいと思います。
――インストラクターの個性が発揮できるのですね。
そうですね。あとはレジスタンスといって足元のペダルに負荷をかけて追いこみ、がんばってもらうシーンを意図的に作っていくんですが、きついところを乗り越えてゴールできたときのお客様との一体感はたまらないですね。
――ヘッドホンも重要なアイテム?
音楽とインストラクターの声で没入感に導く重要なアイテムです。トキノの暗闇サイクリングは、バイク×ヘッドホンセットでスタートしたとばかり思っていたのですが、実は騒音クレームがきっかけでヘッドホンが開発されたというエピソードを最近になって知り驚きました。
コロナ禍で室内に集まることが敬遠されたときには、ビーチヨガなどアウトドアでのレッスンにも重宝され、いまではたくさんの企業で使用していただいています。
後編では、ピンクのライトを浴びながらレッスンする女性専用フィットネススタジオ「Freedom」の特徴、またお客様もスタッフも全員女性という場をまとめるための工夫などをお伺いします。
撮影/スティーブ林
取材・文/永瀬紀子