ケアマネジャーの受験資格は?試験や研修の内容、取得する3つのメリットについて紹介
介護サポートを必要とする要介護者からの相談を受け、状況に合わせた適切なケアプランの作成・実行を通して、利用者の生活の質向上を目指すのがケアマネジャーです。
しかし、試験に合格してケアマネジャーとして就職したいと考えている方の中には、そもそもどんな受験要件を満たせばいいのかわからないという方もいるでしょう。
今回は、ケアマネジャーの仕事内容や受験資格、介護支援専門員実務研修の内容、ケアマネジャーを目指すべき3つの理由について紹介します。
受験要件や試験・研修の内容を把握して、ケアマネジャーの試験合格を目指しましょう。
ケアマネジャー(介護支援専門員)ってどんな仕事?
ケアマネジャーは、正式名称を介護支援専門員といい、都道府県管轄の公的資格です。
要介護者や要支援者の相談に乗りながら、利用者の要望に沿ったケアプランを作成し、利用者が訪問介護やデイサービスなどの必要なサービスをスムーズに受けられるようサポートします。また、各市区町村や施設の担当者との連絡調整の役割を担うのも特徴です。
ケアマネジャー(介護支援専門員)の受験資格とは?
介護支援専門員になるためには、介護支援専門員実務研修受講試験に合格し、実務研修を受けなければなりません。ただし、受験するためには特定の受験要件を満たす必要があります。ここでは、受験に必要な資格や業務経験などを見ていきましょう。
基礎資格を取得して実務経験が5年以上ある
受験資格の一つ目は、特定の国家資格に基づく業務に5年以上、かつ900日以上従事していることです。特定の国家資格には、下記のような資格が挙げられます。
・医師
・看護師・准看護師
・薬剤師
・保健師
・助産師
・理学療法士
・作業療法士
・社会福祉士
・介護福祉士
・視能訓練士
・義肢装具士
・歯科衛生士
・言語聴覚士
・あん摩マッサージ指圧師
・はり師・きゅう師
・柔道整復師
・栄養士(管理栄養士も含む)
・精神保健福祉士
引用元
公益財団法人 東京都福祉保健財団:別表1 国家資格等に基づく業務に従事する者
育児休暇などの休職期間は実務経験としてはカウントされないので、あくまでも実働日数で5年以上、かつ900日以上働いている場合に受験資格が認可される点に注意です。
相談援助業務に5年以上携わっている
受験資格の2つ目は、相談援助業務に5年以上、かつ900日以上従事していることです。生活相談員や支援相談員、相談支援専門員、主任相談支援員として、上記した以上の期間にわたって相談支援業務に携わっている方に受験資格が与えられます。
引用元
公益財団法人 東京都福祉保健財団:別表2 相談援助業務に従事する者
2018年の制度改正で国家資格の保有と実務経験が必須になった
受験資格は2018年に大きく改定されました。以前は国家資格に基づいた業務に従事していなくても、介護の実務経験が10年以上あればOKとされていました。
しかし、介護支援専門員の質向上に向けたこの変更によって、受験資格を得るのが難しくなり、受験のハードルが上がった背景があります。
介護支援専門員の試験を受験するためには、該当する国家資格の取得と5年以上、かつ900日以上の実務経験があることがマストになったのです。
引用元
厚生労働省:「介護支援専門員実務研修受講試験の実施について」の一部改正について
介護支援専門員実務研修受講試験の内容
令和5年度の介護支援専門員実務研修受講試験の詳しい内容は、下記のとおりです。
内容 | |
試験日 | 令和5年10月8日(日)午前10時〜 |
申し込み期間 | 令和5年6月1日(木)〜6月30日(金) |
受験料 | 12,400円 |
出題形式 | 五問から複数を選択するマークシート方式 |
出題数 | 60問
(介護支援分野25問、保健医療福祉サービス分野35問) |
また、試験には下記のような問題が出題されます。
・介護保険制度導入の背景
・介護保険と介護支援サービス
・介護保険制度論
・ケアマネジメント機能論
・介護支援サービス方法論
・介護予防支援サービス方法論
・施設介護支援サービス方法論
・問介護方法論
・訪問入浴介護方法論
・訪問看護方法論
・訪問リハビリテーション方法論
・居宅療養管理指導方法論
・通所介護方法論
・通所リハビリテーション方法論
他にも医学や福祉に関する総論や認知症対応型の介護方法論、地域密着型の介護施設における介護方法論などが出題され、幅広い領域から問題が出題されることがわかるでしょう。
引用元
公益財団法人 東京都福祉保健財団:令和5年度 東京都介護支援専門員実務研修受講試験
公益財団法人 東京都福祉保健財団:試験問題の出題範囲
介護支援専門員実務研修受講試験の合格率
介護支援専門員の試験の正式名称は介護支援専門員実務研修受験試験で、例年の合格率は10〜20%となっています。ここ5年間の合格率の推移は下記のとおりです。
受験者数 | 合格者数 | 合格率 | |
第25回試験 | 54,406人 | 10,328人 | 19.0% |
第24回試験 | 54,290人 | 12,662人 | 23.3% |
第23回試験 | 46,415人 | 8,200人 | 17.7% |
第22回試験 | 41,049人 | 8,018人 | 19.5% |
第21回試験 | 49,332人 | 4,990人 | 10.1% |
引用元
厚生労働省:介護支援専門員実務研修受講試験の実施状況等
同じく介護・福祉系の介護福祉士の合格率は60〜70%、社会福祉士の合格率は30%前後という現状を見ると、介護支援専門員の試験は合格が難しい試験だといえます。
試験合格後に受講する介護支援専門員実務研修とは?
介護支援分野と保健医療福祉サービスに関する試験を受けて、無事に試験に合格した後は介護支援専門員実務研修を受講する必要があります。
研修を終え、手続きを経てようやく介護支援専門員としての業務に就くことができるため、研修は必ず受けなければいけません。ここでは、研修ではどのようなことを学ぶのか、どのくらいの期間おこなうのかを解説していきます。
研修では何を学ぶの?|仕事に必要な知識や技能
研修は講義・演習・実習で構成されています。例えば、愛知県の研修でおこなわれた講義の内容はケアマネジメントに係る法令等の理解・介護保険制度の理念・現状およびケアマネジメント・ケアマネジメントに必要な基礎知識および技術などでした。
ほかに脳血管疾患や認知症に関する事例についても学びます。
演習では受付・相談・契約の方法・サービス担当者会議の意義および進め方など、業務に携わったときに使う具体的な手段を身につけていくのです。実習では実際に支援事業所へ行き、施設の見学・観察と模擬ケアプラン作成実習をおこないます。
研修の期間はどれくらい?
研修期間は全国統一で87時間となっています。日数については、都道府県によって異なるので、自分が研修を受ける都道府県で確認しましょう。例えば、東京都では研修が15日間と実習が3日間あり、講義の5日間は自宅でDVD視聴に置き換え可能です。
愛知県の場合は、研修期間は16日間で、実習は別に3日間程度おこなわれます。すべての日程に出席することが求められていて、講義や演習を欠席すると、次の日程に進むことができません。
実務研修を終えたら、各都道府県に対して登録申請をおこないます。登録申請をすると介護支援専門員名簿に登録されるので、証の交付申請をすることが可能です。介護支援専門員証は仕事をする際に必要なので、忘れずに交付申請をおこないましょう。
引用元
公益財団法人 東京都福祉保健財団:東京都介護支援専門員実務研修
第22回 愛知県介護支援専門員実務研修のご案内
ケアマネジャー(介護支援専門員)を目指す3つのメリット
介護支援専門員の仕事は、その他の介護職と比べると肉体的な負担が少なく、シフトの融通が効くことが多いというメリットがあります。介護支援専門員として働くメリットを確認して、自分が求めている働き方の実現を目指しましょう。
1.要介護者とその家族のQOLを高められる
介護支援専門員は要介護者やその家族に寄り添って、適切なケアプランを作成し、身体機能が回復するまでをサポートしたり、各サービス機関や担当者との橋渡しをしたりする仕事です。
生活の質向上に直接的に関わる業務で、うまくサポートできた際には感謝の言葉をもらうことも多く、やりがいを感じやすいでしょう。感謝の言葉をもらって、モチベーションを維持しながら働けるのがメリットです。
2.一般的な介護職員よりも肉体労働が少なめ
介護支援専門員の主な仕事は相談業務とケアプランの作成、関係者との間の連絡調整で、事務仕事に従事することが多く、他の介護職よりも肉体労働をする機会が少なめです。肉体的な負担が少ないので、年齢を重ねても勤務しやすいのがメリットだといえます。
3.私生活を重視したワークライフバランスを実現しやすい
相談勤務やケアプランの作成などの業務は、日中に行われることが多いです。職場にもよりますが、夜勤や残業をすることも少ないため、ワークライフバランスを重視できます。プライベートの時間も大切にしたい方は、介護支援専門員として働くのがおすすめです。
ケアマネジャーの受験資格を確認して、試験の合格と研修の修了を目指そう!
介護支援専門員の受験資格は、特定の国家資格に基づいた業務に5年以上、かつ900日以上従事することで要件を満たすことができます。介護支援専門員の試験の難易度は10〜20%と低めで、他の介護・福祉系の資格と比較しても難しい試験だといえるでしょう。
5つの選択肢から複数の選択肢を選ぶ解答形式で、選択肢を一つでも間違うと点数をもらえないシビアな出題形式が、試験の難易度が高いといわれる一つの要因です。
合格後は各都道府県が定めたカリキュラムに沿って、87時間分の実務研修を受講します。
介護支援専門員として働くメリットは達成感や肉体労働の少なさ、シフトの柔軟性です。受験資格を確認して、難関試験の合格に向けてしっかりと準備を進めていきましょう。