訪問介護は利用者さんと1対1で向き合える仕事! 介護業界リレーインタビューVol.2【訪問介護員 佐々田淳さん】#1
介護業界にはどのような職種や働き方があるのか、そして、より具体的な仕事内容をお伝えするべく、現場で働く介護従事者の生の声をお届けする連載企画。第二回目となる今回も、訪問介護員の仕事をご紹介します。
今回お話を伺ったのは、地域密着型の訪問介護事業所「ケアサポートあすなろ三鷹(有限会社あすなろ会)」の訪問介護員、佐々田淳さん。前回ご紹介した、サービス提供責任者の佐藤祥子さんと菊地博美さんのもとで現場スタッフとして働いています。「今の介護スタイルが気に入っている」と話す佐々田さん。お二人の「お喋りが大好き」な性格を受け継ぎつつも、男性スタッフの視点から考える訪問介護員像について語っていただきました。
前編では介護業界を目指したきっかけや訪問介護の魅力について、後編では佐々田さんご自身の今後の働き方についてご紹介していきます。訪問介護だからこそできることや、「素のままの自分でいられる」介護スタイルを教えてくださいました。
《プロフィール》
佐々田淳さん(31歳)…建材メーカーの営業を退職したのち、重度訪問介護従事者の資格を取得。他社でデイサービスと訪問介護を経験し、有限会社あすなろ会に入社。
介護業界を目指したきっかけ
自分の周りで、手助けを必要としている人のために
――介護業界を目指したきっかけは何ですか?
些細なことなんですが、ある時、岩手で暮らしていた祖父母が二人とも体調を崩したんです。遠いので中々会いに行けていなかったんですが、先に祖父がもう長くないという状況になって、そこで会いに行きました。でも、自分は何にもできなかったんですよ、身の周りのこととか。祖母もそのあとすぐに亡くなってしまったんです。それで、結局自分は祖父母に何にもしてあげられなかったなぁという無力感が残って…。だから、祖父母の代わりに、今自分が住んでいる東京で、助けを必要としている人たちに何かできるようになりたいと思ったのがきっかけですかね。
――そこから学校に通われたのですか?
学校ではなく、資格を取るため講座に通ったんです。重度訪問介護従事者の資格ってわりと気軽にというか、数日通うだけで取れちゃうんですよ。僕の場合はそこからスタートしたんです。
――資格を取得する前は別のお仕事をされていたんですよね?
建材メーカーの営業をやっていました。5~6年くらいですかね。でも、そこで色々あって辞めちゃったんですけど、ちょっとゆっくりしようと思って日本一周旅行とかしていたんです。そのあとに祖父母のことがあって、介護業界に飛び込んだという流れですね。
――はじめからこちらで働いていらしたのですか?
最初は違う会社で働いていました。当時、そこで知り合った有限会社あすなろ会(以下あすなろ)の現代表の息子から、「うちでどうですか?」と誘いを受けて、今に至るという感じですね。ちなみに、学校に通い出したのは「あすなろ」に入ってからですよ。それまでは講座で取得した資格だけでやっていたので。でも、介護の仕事って、実はそんなに敷居が高くない職業だと思っているんです。
――前職からガラリと業種が変わって戸惑うことなどはありませんでしたか?
介護は人と話すことが多い仕事なのですが、その点においてはあまり戸惑いは感じませんでした。もともと人見知りする方ではなかったですし。ただ、初対面の人に対して、顔色を気にしながら、「この人にこういう話を振ったらどんな反応をするだろう」と慎重になったり、相手の人となりを観察できるようになったのは、おそらく営業を経験したからだと思います。あと、介護業界は利用者さんがほとんど目上の方なのですが、シニアの方と話すきっかけや、若い人にはなじみのないような話題への慣れなどは前職の営業で身についていたので、話のネタとして困るということもあまりなかったですかね。
――介護業界の中にもさまざまな職種がありますが、その中でも訪問介護を選ばれた理由をお聞きしたいです。
最初に勤めていた事業所がデイサービスと訪問介護の両方を行っているところだったんです。でも、デイサービスにいた頃は一人ひとりの利用者さんと接する時間がすごく短いと感じていて…。「これをやってあげたいけど時間がないからごめんなさい…!」という場面が多かったんですよね。ほかに待っている利用者さんがたくさんいるので、かなり早いペースで回らないといけなくて。もっと時間をかけて手助けしたい!という自分の気持ちと施設のスタイルとの間にズレを感じていたんです。そのあと訪問介護に入ってみたら、1対1だから時間がある程度あって、痒いところに手が届くというか…そのような介助ができる余裕があったんですよ。結局、訪問介護の方が自分に合っているなと、そこで分かったんです。
現職の仕事内容&魅力
私はずっと利用者さんとお喋りしています(笑)
《ある一日の仕事の流れ》
――訪問介護というと、利用者さんのお宅に伺って、食事や着替え、排せつの介助など、一人でこなさなければいけない業務が多いと思うのですが、長い方だと一日に何時間くらいサービスを受けられるんですか?
長い方だと12時間くらいですね。日曜日なんかは結構サービス時間が長いですね。
――12時間使ってどのようにお仕事されているのでしょうか?
そういった場合は24時間の介助を必要としている方のケースが大半ですが、その方々はやはりそれなりに介護レベルが重度なんですね。話すことができないので、まずは文字盤を使って何を伝えたいのかを聞いたり、あとは吸引とか機械浴をやったり。手が空いたときなどは、ストレッチをしたりしていますね。利用者さんはずっと寝たきりなので、同じ体制で寝ているって結構きついと思うんです。だから、体の向きを変えることもそうですが、ちょっとしたことで利用者さんが苦しいとか何か気持ち悪いなと感じることがないように、何かしらご本人の身体に触れていますね。
――佐々田さんは重度の方を担当されているんですか?
そういうわけではないですよ。前に働いていた事業所では重度の方ばかりだったんですけど、「あすなろ」に来てからは色々なことをやっていますね。例えば、一人でお買い物に行けないという方と一緒にお買い物に行ったり、一人でご飯を作るのが不安だという方と一緒にご飯を作ったり。以前は、自閉症の小学生の子の学校の送り迎えをやっていたこともありました。ただ手をつないでお喋りしていたくらいなのですが、本当に多種多様な介助方法があるんだなぁと感じましたね。
――毎日違うお宅に通うとなると、色々なご家庭の情報が混ざったり、忘れてしまったりしないのですか?
最初の頃はありましたね(笑)。でも基本は1週間のスケジュールが決まっているので、月曜日はこのご家庭、火曜日はこのご家庭という風に繰り返していくうちに、それなりに体に染みついていきますよ。最初の頃は、携帯に全部メモしたり写真や動画を撮ったりして、いつでも見られるようにしていました。あと、曜日によって生活サイクルや介助の流れなどが全く異なる利用者さんも中にはいるので、今でもメモを取ることはありますよ。
――それで何人もの利用者さんに対応していくのは大変そうですね。
むしろ、そこが新鮮かなと思いますね。いつも同じ業務ばかりこなしていたら飽きてしまうけど、その日その時で利用者さんの機嫌も体調も違うので、なんとなく仕事をこなしているというような、マンネリにはならないですよ!
――こなさなければならない業務が多い中で、利用者さんとの会話も多いですか?
目の前の仕事に集中はしなければいけませんが、集中しすぎて無言になるのは利用者さんにとってはあまり心地いいものではありません。利用者さんは、以前までは自然にお話ししながら食事を取ったりしていたんです。だから、介助している時は世間話をはさんだり、テレビを見ていれば映っている内容などについてお喋りしたりと、不自然な無言の時間というのをなくすようにしています。私なんて常にお喋りしていますね(笑)。
介護の可能性
私たちがいる間は、ご家族に羽を伸ばしてきてほしい
――訪問介護をしていて、思い出深かったエピソードはありますか?
私は、わりと利用者さんの隣にいて、話しかけているタイプなので、ご家族の方から「ずっと見ていてくれるし、話しかけてくれるから安心して外出できる」と言われたことがありました。自分のお喋りが「ただうるさい」と言われるのではなく、「安心していられる」と感じていただけていたというのはすごく嬉しかったですね!
――ご本人だけでなく、やはりご家族の方への配慮も大事なのでしょうか?
そうですね、それも心がけています。会社を代表して伺っているので、自分の印象が悪ければ会社のイメージも悪くなりますしね。自分だけでなく、「あすなろ」のスタッフ一同が、利用者さんやご家族に「来てくれてありがとう」と迎え入れてもらいたいという想いが根底にありますね。
――時にはご家族の方たちを気遣うこともありますか?
介護をメインで行っているのはやっぱりご家族で、そのご家族の大変さはすごくわかるんです。だから、ご家族の様子が変だったら声をかけるとか、自分たちがいる間はゆっくり休んでもらうとか、そういうところにも気を配るようにしています。
――ご家族から相談をされたりすることもあるんですか?
介護に疲れていた奥さんから「もう離婚したい」と相談されたことがありましたが、「ここまで頑張ってきたんだから離婚なんて!」と安易なことはとても言えず…。きっと、ずっと介護ばかりでストレスを発散できていないのだと思ったので、「私たちがいる間は外で羽を伸ばしてもいいんじゃないですか」と伝えることが、私にできる精一杯でした。
――そのひと言があるだけでも、ご家族はだいぶ楽になると思います。
結局、訪問介護サービスを利用してもご家族が目が離せないのなら、私たちがいる意味がないですからね。「私たちがいる時くらいは遊びに行って来てください」というスタンスでいますよ。
――長い利用者さんだと、何年くらいのお付き合いをされているのですか?
私はまだ「あすなろ」に入社して若いので、一番長いお宅だと3年くらいですかね。ベテランにもなると10年以上のお付き合いをしているというスタッフもいますよ。
利用者さんとの1対1の向き合い方こそが自分らしい介護スタイルだと気づいた佐々田さん。「利用者さんの体に常に触れている」「自然なお喋りを大切にしたい」という言葉から、佐々田さんが普段どのように利用者さんに接しているのか想像できるようでした。また、訪問介護は毎日違う利用者さんやご家族と向き合うからこそ決してマンネリしない仕事だという捉え方は新鮮でした。次回は、訪問介護の大変な側面や、佐々田さんご自身の介護の仕事に対するこれからの向き合い方について語っていただきます。
取材・文/佐藤咲稀(レ・キャトル)
撮影/岩田慶(fort)
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ケアサポートあすなろ三鷹
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