介護事務のお給料はどれくらい?手取りの金額や平均年収、お給料UPのためにできることも紹介
介護報酬請求業務など、介護に関する手続き全般を担当する介護事務。勤務先によっては、受付業務などの事務作業に加えて、介護業務の一部を担当することもあるようです。そんな介護事務のお給料や平均年収は、一体どれくらいなのでしょうか。
今回は、介護事務のお給料・平均年収について、実際の求人情報をもとに解説します。お給料UPのための3つの方法もあわせて解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。
介護事務とは?
特別養護老人ホームやデイサービスなど介護施設の事務仕事を担うのが、介護事務のおもな仕事です。窓口や受付業務、事務文書の作成、レセプトの作成、発行、利用料の請求業務、介護職員の出退勤管理など業務内容は多岐に渡ります。
夜勤はなく日勤のみ、事務作業がメインなので、家庭や子育てと両立しやすく働きやすい仕事といえるでしょう。
介護事務の仕事の内容
介護施設の求人で、介護事務の募集を見かけることもあるでしょう。介護事務は事業所や施設のレセプト業務をメインに、受付や窓口業務、職員の労務関係の仕事を担います。ここでは、介護事務の仕事内容をくわしくご紹介します。
受付や窓口の業務
介護事務の仕事に、受付や窓口業務があります。施設や事業所を訪れる利用者や家族への対応や電話応対、見学者の対応や案内、ケアマネジャーやほかの介護職員、看護師への報告、連絡なども該当。また、付随して発生する書類作成や会計処理なども業務に含まれます。
レセプトの作成
介護事務のメインの仕事ともいえるのが、レセプト(介護給付費明細書)の作成です。介護サービスでは利用者が1割を負担し、残りの9割は市町村負担で、介護報酬として介護事業所が受け取れます。
介護報酬を受け取るためには、国民健康保険団体連合会へ毎月レセプトを提出しなければなりません。このレセプト作成を介護事務が担います。
事業所の規模が大きければ、レセプトが数百枚単位になることもあり、締めとなる月末から月初にかけては業務が慌ただしくなることがあるようです。
総務
介護事務の仕事は、総務としての仕事も含まれます。職員の勤怠管理や給与計算、社会保険関係の手続きのほか、備品の在庫管理、発注業務、設備の修繕など。
施設や事業所によっては、人手不足から介護事務が総務の仕事を担う場面も見受けられます。
ケアマネジャーのサポート
ケアマネジャーは、利用者が適した介護サービスを受けられるようにケアプランの作成をおこないますが、介護事務はこの仕事の一部をサポートする場合があるようです。
たとえば、介護事務が利用者や家族からの相談を代わりに受け、その内容をケアマネジャーに報告するなどサポートやフォローをおこないます。
介護事務の平均的な給料
介護事務として実際に働く場合、気になるのはお給料のことでしょう。実は介護事務のお給料は、求人や国のデータをみると、事業所や施設、年齢や経験、資格の有無によって差があるようです。
ここでは、介護事務の平均的な給料についてご紹介します。
初任給
介護事務の初任給は、約15~18万円ほどが相場です。なかには、12万円ほどと紹介しているところも見受けられます。初任給は就職後にはじめてもらえる給料なので、経験などは反映されない金額が提示されるようです。働く施設や事業所、地域によっても多少差は出るでしょう。
また、福利厚生費になにが含まれるかによっても金額は変わります。一般的な事務職の初任給の相場が約18~20万円なので、両者で顕著な差はないようです。さらに、高卒か大卒かなど学歴が初任給の違いに影響するところもあります。
手取り
介護事務の手取りの月収は、約26~30万円前後です。手取りは、月収から社会保険料や各種税金を差し引いて手元に残る額をいいます。
2021年の賃金構造基本統計調査によると介護事務の年収は約440万円なので、月収は440万円を12カ月で割り、約37万円。さらに手取りは月収の7~8割が一般的なので計算すると、約26~30万円前後という結果です。
社会保険料や税金が上がれば手取りの額は減ってしまいますが、役職手当や年齢給が加われば手取りアップも期待できます。
ボーナス
上記の調査によると、介護事務のボーナスの平均額は約79万円となっていました。夏季と冬季の2回に分けてボーナスが支給されると考えると、1回につき約40万円前後です。
ボーナスの相場は基本給の1~1.5倍なので、各施設や事業所の基本給によってボーナスの額に変動が生じます。
また、賞与やボーナスではなく、「特別手当」として支給される場合があるようです。このほか、ボーナスの有無や支給回数についても就職や転職前に確認しておくとよいでしょう。
介護事務の平均年収
ところで、介護事務の平均年収はどれくらいなのでしょうか。平均年収は、施設の規模や地域、年齢によって異なります。
ここでは、介護事務の平均年収を確認しておきましょう。
規模別の平均年収
2021年度の賃金構造基本統計調査によると、事業所の規模の違いで平均年収に差があることがわかります。10~99人規模では約384万円、100~999人規模で約475万円、1,000万人以上で約573万円です。
施設や事業所の規模が大きく、経営が安定し、体力のあるところは平均年収も高い傾向にあります。また、規模の大きいところは福利厚生費なども充実の傾向にあることから、平均年収の高さにも影響しているのでしょう。
地域別の平均年収
介護事務の地域別の平均年収をみてみると、関東地域がもっとも高く、約329万円です。続いて関西が約312万円、九州・沖縄は約270万円となっており、高い地域と低い地域で約59万円の差があります。
人口の多い地域は年収が高くなる傾向にあり、人口の少ない地域にいくほど、年収は低い傾向にあるようです。大都市圏で年収が高いのは、物価や地価が高いことも影響していると考えられます。
年齢別の平均年収
介護事務の年齢別の平均年収は、20~24歳がもっとも低く約315万円、55~59歳の約589万円が平均年収のピークです。その後60~64歳では減少し、約439万円という結果が出ていました。
介護事務の平均年収は、年齢とともに上昇し、背景には年齢給が加わることや経験年数などに応じて給与が上昇すること、子育て世代では家族手当を含む福利厚生費が上がることなどが考えられます。
介護事務の雇用条件別の給料
介護事務は正社員、パートやアルバイト、派遣など雇用形態の違いによって給料が異なるのが特徴です。
ここでは、介護事務の雇用条件別の給料についてご紹介します。
パート・アルバイト
介護事務を含む、事務職員の平均時給は950円です。全国の介護事務の求人をみると、時給1,000円前後の求人が多く見受けられ、高いところで1,500円を時給として設定しているところもあります。
経験の有無や能力給、資格手当などが加味され、時給に反映される場合もあり、求人をみると金額に幅を持たせている施設や事業所もあるようです。
派遣社員
介護事務の派遣では、時給は1,244円が相場で、パートやアルバイトよりも高い設定です。派遣では、ボーナスや昇給がないぶん、時給に反映され、高い傾向にあります。介護事務のパートやアルバイトの時給の相場が約950円ですから、1時間あたり294円の差があることがわかるでしょう。
派遣の場合は雇用主が派遣会社となり、長く働く場合には定められた年数で契約更新をする必要があります。アルバイトやパートほどではないものの、介護事務の派遣での求人も散見しており、時給だけでなく契約条件なども確認しておくと安心です。
正社員
介護事務の正社員の年収は、2020年度の民間給与実態調査統計によると約324万円です。2021年度の賃金構造統計調査では、約440万円となっていました。そのため、介護事務の正社員の年収の相場として約300~400万円前後を目安にするとよいでしょう。
年収は社会保険料や各種税金などが引かれない「総支給額」で、実際の手取りは安くなるのが特徴です。また、月収は年収を12カ月で割って算出するため、約27~約37万円となりました。
介護職員の年収は、2021年度の賃金構造統計調査によると約353万円となっているので、介護職員の平均と比べて介護事務の年収は高い傾向にあることがわかります。
お給料UPのためにできる3つのこと
飛びぬけて高額というわけではないものの、介護業界の中でも平均的な収入が期待できるのが介護事務です。
では、さらなるお給料UPを目指すためには、どうすればよいのでしょうか。ここからは、介護事務がお給料UPのためにできることを3つ解説します。
1. 資格を取得する・受験する|合格を目指せる通信講座を紹介
介護事務として働くために、特別必要な資格はありません。しかしながら、関連する資格の取得は、スキルアップだけでなく転職や昇給にも有効です。中には、資格を取得すると資格手当が支給される職場もあります。
ここからは、介護事務におすすめの資格について、試験内容や通信講座などを解説しましょう。
日本医療教育財団|ケアクラーク
日本医療教育財団が主催・認定する資格であるのがケアクラークです。介護報酬請求業務はもちろんのこと、高齢者とのコミュニケーションの取り方や社会福祉・介護技術についても、知識や技術を持っていると証明できる資格といえます。
ケアクラークの認定を受けるためには、定められた試験に合格しなければなりません。試験は年6回おこなわれており、学科と実技の2種類があります。双方70%以上の得点で合格とみなされ、結果は試験日から1カ月後を目安に郵送されます。試験の申し込みは2カ月前から3週間前まで受け付けており、受験料は税込み6,700円です。
受験条件などは特に設けられていませんが、対策なしでの合格は難しいでしょう。効率的にケアクラークの資格取得を目指すなら、専用の講座などを受講することがおすすめです。たとえば、ニチイの介護事務講座であれば、通学のほか通信でも受講できます。通信講座の費用は約4万円、受講期間の目安は4カ月です。
技能認定振興協会|介護事務管理士
技能認定振興協会が主催・認定する資格であるのが介護事務管理士です。介護保険制度や介護報酬請求業務について、技能や知識があることを証明できる資格です。
介護事務管理士として認定されるためには、定められた試験に合格しなければなりません。試験は奇数月の第4土曜日に年6回おこなわれており、学科と実技の2種類があります。合格基準は、学科で70%以上、実技の各問題で50%以上かつ合計70%以上です。
ケアクラークと同じく、介護事務管理士についても、特に受験条件は設けられていません。しかしながら、効率的に合格を目指すためには、やはり専用の講座などを受講するのがよいでしょう。たとえば、ユーキャンの介護事務講座であれば、通信で必要な知識・技能を身に着けることができます。かかる費用は約4万円、受講期間の目安は4カ月です。
全国医療福祉教育協会|介護事務士
全国医療福祉教育協会が資格・修了認定をおこなっているのが介護事務士です。介護保険制度や介護報酬請求業務のみならず、実務では必須のパソコンスキルについても、技能や知識を持っていることを証明できる資格となっています。
介護事務士の資格を取得するためには、ヒューマンアカデミーの介護保険請求事務講座を受講・修了しなければなりません。受講にかかる費用は35,000円、終了までの目安期間は4カ月です。試験はありませんが、全5回の添削課題を提出し、一定以上のレベルをクリアする必要があります。
2. 職場でのキャリアアップを目指す|兼務で仕事の幅を広げる
介護事務としてお給料UPを目指すなら、事務作業だけでなく、職場の他の仕事に手を広げてみるのもひとつの手段です。
管理職やマネージャーとの兼務、現場で介護業務を担当するなど、さまざまな方法が考えられるでしょう。実際に、介護業務としてのお給料は、兼務をおこなっている方のほうが高い傾向にあるといいます。
現場資格を手に入れる|介護初任者研修・介護福祉士実務者研修
実際に介護の現場にはいるなら、「身体介護」ができる資格を取得しておきましょう。身体介護とは、利用者さんの身体に触れて介助をおこなうことです。「身体介護」は生活補助の色合いが強い「生活介護」とは違い、介護系の資格なしでおこなうことはできません。
取得しやすい介護系の資格としては、介護職員初任者研修または介護福祉士実務者研修がおすすめです。介護職員初任者研修では介護の基礎的な内容を、介護福祉士実務者研修ではさらに一歩進んだ専門的な内容を、それぞれ身に着けることができます。
介護福祉士実務者研修のほうがより長時間の学習が必要です。修了すれば実務経験がなくともサービス提供責任者として働けるほか、介護福祉士の受験条件の一部としても活用できます。
介護系資格を活かす|ケアマネジャー
介護福祉士などの専門資格を既にお持ちなら、それに加えてケアマネジャーの資格を取得するのもおすすめです。
ケアマネジャーのおもな仕事は、ケアプランの作成や介護給付費の管理です。それに加えて、介護利用者とサービス提供者の間に入り、橋渡しをする役割も担っています。5年以上の実務経験や難関試験の突破を必要とするため、資格の取得は簡単なものではありません。
しかしそのぶん、一般の介護福祉士・介護事務よりも、高い収入が期待できます。介護事務同様、体力を温存できる仕事としてもおすすめです。
3. 条件の合う職場へ転職する|デイサービス・訪問介護など
同じ職場でお給料UPを狙うのが難しい場合は、より勤務条件のよい職場への転職を検討してみましょう。デイサービスや訪問介護など、一般的な施設以外にも、介護事務が活躍する場はたくさんあります。
ただし、施設の規模によっては、現場の職員が介護事務を兼務していることも珍しくありません。必ずしも介護事務専任の求人ばかりでないということは、あらかじめ心得ておきましょう。
自分に合う資格や方法はどれ? 内容を比較してお給料UPの方法を選ぼう!
介護事務の仕事は、飛びぬけて高額というわけではないものの、介護業界の中でも平均的な収入が期待できます。
さらなるお給料UPを狙うなら、資格の取得や兼務を検討してみましょう。同じ職場でのお給料UPが難しい場合は、より勤務条件のよい職場を探すのもおすすめです。
それぞれの資格や方法について内容を比較し、自分にあった手段を選んでみてください。
引用元サイト
厚生労働省 令和3年賃金構造基本統計調査