「できない」悔しさと「喜ばれる」やりがいが、新人時代の心の支え「Memories」大上海人さん

東京の銀座、表参道、水天宮と3店舗を構える「Memories」。ショートカットのスタイルで大人女性の悩みを解決すると評判の渡来俊彦さんがオーナーを務め、勢いを増しているサロンです。

その銀座店でスタイリストとして活躍しているのが、美容師歴10年目となる大上海人さん。

美容専門学校時代は、練習を重ねてできることが増えていくことが楽しかったという大上さん。しかしサロンに入社した当初は、先輩から教えられたことを理解するのに時間がかかり、苦労をすることも多かったといいます。

それでも悔しさをバネに、ひたむきに技術を磨いてきました。ほかのことではすぐに諦めてしまうことが多かったという大上さんにとって、コツコツと取り組むことができたのは美容師の仕事が初めてだったそうです。

今回、お話を伺ったのは…

「Memories」スタイリスト

大上海人さん

美容専門学校卒業後、都内のサロン4社で勤務を経験。対応できる技術の幅をもっと広げたいと2022年「Memories」に入社。お客様の悩みや要望を丁寧にくみ取り、理想のスタイルを実現していくことに定評があり、30代~60代の大人女性から人気を集める。

大上海人さんのインスタグラム

愚直に練習を重ねていた美容学生時代

取材に応じる大上さん

――美容師になろうと思ったきっかけから教えてください。

美容師の方が身近にいる環境で育ち、その存在に憧れていたからです。僕は3歳ごろから母と一緒にある美容室に通っていたのですが、当時僕が暮らしていたアパートがそのサロンの社宅でもあったのか、美容師の方たちが同じアパートに2、3人暮らしていたんです。

僕は両親が共働きだったため、そのお兄さんたちに駄菓子屋に連れて行ってもらったり、遊んでもらったりすることがよくありました。みなさんかっこよくて、優しくて、憧れの存在だったため、いつからか自分も美容師になりたいと考えるようになったんです。

――美容学生時代は、どんなことに力を入れていましたか。

学校生活ではワインディングなど、技術練習に夢中になっていました。コンテストに出場することもありましたが、そこで結果を出すことよりも練習を積み重ね、できることが増えていく感覚にやりがいを覚えていたのかもしれません。そして純粋に美容に携われることを楽しいと感じていました。

ショートカットの技術が高いサロンへ。まずは「質より量」で理屈を理解

1社目に入ったのはショートカットの技術が高いサロンだったという

――専門学校卒業後は、どのようなサロンに入社されたのですか?

年齢層が高めのマダムが通う、ショートヘア推しの青山にあるサロンでした。実は第1希望のサロンがほかにあったのですが、そこは落ちてしまって。学校の先生の紹介で入社が決まったのが、青山のサロンだったんです。

――入社したとき、どんなことを感じましたか?

最初に衝撃を受けたのが、そのサロンのスタイリストが作るショートヘアがとてもきれいだったことです。入社した当時のほとんど素人と変わらない僕から見ても、明らかにこれまで見てきたショートカットとは違う技術の高さを感じました。そういった技術の高いサロンに入れたことがとてもうれしかったですし、ここから自分もがんばろうと決意を新たにしました。

――最初のサロンでの新人時代に苦労した点は?

僕の理解力がなくて、先輩方が指導してくださっている内容を理解するまでに時間がかかったことです。たとえば入社してからしばらく経ったころ、グラデーションというカット技術の練習が始まりました。この技術は頭の自然な丸みを作るのに大事な要素なのですが、これを習得するのにとても時間がかかりました。

きれいなグラデーションを作るのに、なぜこの部分を切らなければいけないのかという理屈がまったく理解できませんでしたし、さらに指摘を受けても自分が何をできていないのかさえもわからない状態でした。暗闇のなかを手探りで歩いているような感覚で、不安になりながら練習を重ねていましたね。

――それはどのようにして乗り越えたのですか。

途中から理屈を理解しようとするのは諦めて、質よりも量を意識してひたすら練習に取り組んでいました。理屈がわからなくても練習を重ねていると、練習以外の時間も頭の片隅でずっと「あのカットには、どういった意味があるんだろう」と考えている状態になるんです。そして家に帰るために電車に乗っているときなどにふと、「あれは、こういう意味だったんだ!」と理解できる瞬間がありました。

そして次の日に練習をしてみて、答え合わせをするというような流れで、徐々にカットの理屈を理解できるようになっていったと思います。

幅広いスタイルに対応できずに悩んだ、スタイリストデビュー後

スタイリストとしてデビューしたあと、なかなかお客様を満足させることができなかったという大上さん

――スタイリストデビューは、いつごろされたのですか。

1社目のサロンで働きだしてから3年半ほどでデビューをすることができました。デビュー自体はとてもスムーズだったのですが、それには理由があって。1社目のサロンではカリキュラムの終了後、カットモデルさんの施術をするというテストがあり、合格すればスタイリストデビューできるという流れでした。

当時の僕は「前髪が少し長めのショート」という自分の好きなスタイルばかりを練習していたので、テストもそのスタイルで挑み、スムーズに合格することができました。

しかしデビューをすると当然、お客様のオーダーは僕の好きなスタイルだけではありません。お客様の要望に対応ができず、満足していただけるようになるには時間がかかりました。アシスタント時代にこそ、苦手なスタイルも練習をしておけばよかったと後悔をしましたね。

――なるほど、そうだったのですね。お話しを伺っていると苦労をされたことも多かったようですが、心が折れそうになったことはありましたか。

それが、一切なかったんです。心が折れそうになるより、うまくできないことが悔しいという気持ちの方が強かったんだと思います。元々の僕は面倒くさがりの性格で、できないことがあるとすぐに諦めるところがあったのですが、美容に関しては不思議と諦めずに取り組み続けることができました。おそらく美容師の仕事が楽しいと感じるベースがあったのだと思います。

――仕事のやりがいを感じていた部分もあったのでしょうか。

そうですね。入社してすぐのタイミングから、仕事のやりがいは強く感じていました。新人時代ですと、シャンプーの技術を褒めていただいたり、お客様から「あなたのシャンプーはすごく気持ちがいいから、次に来たときにもまたお願いしたい」と言っていただけたり。お客様の反応をダイレクトにいただける点が、この仕事の大きなやりがいだと感じます。

――その後、何度か転職を経験したと伺いました。

はい。2社目のサロンに転職した理由は、1社目のサロンが得意としていたかっこいいショートだけでなく、かわいいスタイルを作れるようになりたいという思いからでした。ただ入社した後にコロナ禍となり、そのサロンは辞めることになってしまったんです。

その後、フリーランス美容師、もう1つの別のサロンを経て、「Memories」に入社することになりました。


後編では「Memories」に入社したあとの大上さんについて伺います。大上さんの大きな転機となったのが、「Memories」に入社する前のサロンで仕上がりに納得できないお客様が怒って帰ってしまう経験をしたこと。

しかしこの経験から逃げずに、なぜそうなってしまったのか考え続けたという大上さん。大人女性を満足させられるように技術の幅を広げようと「Memories」に入社し、接客のスタイルにも大きな変化が。今ではお客様から「初めて美容室で満足できた」と言われることもあるほど、満足度を上げられるようになったといいます。

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Memories
住所:東京都中央区銀座3-3-7サカイリ9ビル3F
TEL:03-3562-1001

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