薬剤師の転職は厳しい? プロが解説する転職市場の現場と年代別のポイント
近年の調剤報酬改定などの影響もあり、薬剤師の転職について「以前より厳しくなっているのでは?」と感じている人も多いのではないでしょうか。実際、転職市場はどのように変化しているのか、そして年代によって転職の難易度は変わるのか、気になることも多いはずです。
今回は、薬剤師の転職支援を行う「エニーキャリア」のキャリアアドバイザー、原瑞希さんにインタビュー。日々、多くの転職相談に向き合うプロの立場から、薬剤師転職の市場と難易度について年代別にお話を伺いました。
今回、お話を伺ったのは…
「エニーキャリア」キャリアアドバイザー
原 瑞希さん

都内のドラッグストアチェーン店にて薬剤師として3年間従事。2024年に「エニーキャリア」へ入社し、キャリアアドバイザー業務をスタート。現在3年目でこれまで約101名の就職・転職活動に伴走。薬剤師経験を活かしたサポートで、2024年に社内表彰にて新人賞銀賞を受賞した実績を持つ。
薬剤師の転職は本当に厳しい? 市場の変化と背景

――現在、薬剤師の転職市場はいかがでしょうか。
「薬剤師の転職は厳しい」と感じている方は、以前より増えている印象があります。というのも、薬剤師以外の職種も含みますが、この業界の有効求人倍率は以前が約7倍、現在は2〜2.5倍へと変化しているんです。売り手市場ということに変わりはありませんが、少しずつ変化が生まれており、将来的には売り手市場が終わる可能性もあると考えています。
――厳しさの背景にはどのような理由が?
まず、薬剤師の人数が今後さらに増えていくと予想されているからです。
転職市場は会社と求職者、いわば「需要」と「供給」で成り立っています。2030年ごろまでは薬剤師の需給はバランスよく推移すると言われていますが、それ以降は供給が需要を上回ることが予想されていて。薬剤師が過剰になる可能性があるという厚生労働省の推計もあります。なので、年を追うごとに薬剤師の転職の厳しさは増していくと考えています。
また、調剤報酬改定の影響によって、調剤薬局の経営が年々厳しくなってきていることも理由のひとつです。去年倒産した調剤薬局の数は、2年連続で過去最多を記録。働く場所自体が年々減ってきているので、売り手市場の現状も少しずつ変化していくのではないかと考えます。
――企業転職となると、さらに難易度は変わるのでしょうか。
企業への転職は、調剤薬局などの現場と比べると難易度は高い傾向があります。求人数自体が限られているうえ、専門知識や経験を求められることが多いためです。ただし、これは最近の市場の変化によるものではなく、以前から難易度が高い分野になります。
――いまの転職活動において、調剤経験のみでは不利でしょうか?
そうですね。2035年ごろには団塊世代の多くが85歳以上となることで、在宅業務や地域医療のニーズも大きく高まると予想されます。そのため、薬の提供に加え、服薬管理や健康相談、他職種との連携などを通じて、地域住民を継続的に支える役割を担うことも今後大切になっていくはずです。
20代薬剤師の転職。有利といわれる理由とキャリアの考え方

――20代の転職について教えてください。
20代の転職は比較的有利に進めやすい傾向にあります。会社としては長期的に育成できることや、採用コストが抑えられるといったメリットがあるため、ほかの年代に比べて間口は広い印象です。
加えて、特別なスキルを備えていなくとも転職できる可能性も高いです。薬剤師は資格職なので、店舗によって求められる知識が大きく変わるわけではありません。逆に専門的な知識や資格を得ていると、転職活動をかなり有利に進められると思います。
――早期の転職はアリなのでしょうか?
アリだと思います。短期離職はその後の転職活動で不利になる部分もありますが、20代であれば比較的大きな影響はありません。きちんと理由があって、それを解消・実現できる環境があれば転職してもいいと思います。
転職活動で内定をいただいても必ず転職しなければいけないわけではありません。ほかの会社を見たり面接を受けたりするなかで、「実はいまの環境が合っていた」など新たな発見が生まれる可能性もあります。いまの職場に少しでも疑問を感じたら、一度動いてみるのもいいかもしれません。
――転職活動に向けて、どんな準備をしておいたほうがいいのでしょうか。
将来のキャリアの方向性を決めるための行動をしておくことが大切だと思います。具体的にいうと、臨床や調剤、監査といった基礎スキルを固めたり、理想のキャリアプランを立てておいたりするだけでも十分だと思います。
管理職経験が求められるように。40代薬剤師の転職事情
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――40代の転職についてはいかがですか。
若い世代のほうが転職しやすく、重宝される職場が多いのは事実です。ただ、薬剤師は資格専門職なので、調剤薬局やドラッグストアであれば、十分に転職する余地はあると思います。
ただ、40代は即戦力として期待される年代でもあるため、これまでの経験量によって評価は大きく変わる印象です。
――具体的にどんな経験を積んでおくとよいのでしょうか?
管理薬剤師の経験やマネジメント経験、在宅医療への対応などは評価されやすいポイントです。また、実習生やスタッフの教育に携わった経験なども、職場をまとめる力として評価されることがあります。
ただ、これらの経験が必ずしも必要というわけではありません。調剤経験が中心でも転職自体は可能ですが、こうした経験があると選択肢は広がりやすいと思います。
――40代でも転職による年収アップは目指せますか。
現実的に可能です。実際に弊社の転職サービスに登録いただき、転職によって年収が上がった40代の方も多くいらっしゃいます。
IT業務への対応力。50代薬剤師に求められるスキルや経験

――50代の転職についてもお聞かせください。
50代になると求人数はどうしても限られてくるため、40代と比べても転職のハードルは高くなる傾向があります。企業としては、採用後に働く期間が10年ほどになるケースも多く、採用コストや定年、退職金などを考えると、どうしても若い人材を採用したいと考えるのが自然です。
そのため、50代で採用される場合は、単なる即戦力というだけでなく、マネジメントや店舗運営など、これまでの経験を活かして組織を支える役割を期待されることが多いです。
――企業側の考えもよく分かります。
また、どれだけ経験があっても、転職先では新しいやり方を覚える必要があります。最初は教えてもらう立場になるため、50代の新人となると、受け入れる側の薬剤師も接し方に気を遣うケースがあるでしょう。
さらに、一般薬剤師として入社した場合、上司が年下になることも珍しくありません。そうした人間関係に戸惑いを感じる方もいるため、結果として50代の転職はハードルが高くなりやすいのだと思います。
――50代では働き方も変化してくるのでしょうか?
そうですね。50代以降は、勤務時間や働き方を見直すタイミングでもあるため、パートとして働く方も増えてきます。フルタイムの求人に比べると選択肢が広がるケースもあるため、働き方の幅を広げて検討することもひとつの方法です。
――50代の転職で失敗しやすいケースはありますか。
時代の変化に対応できていない場合は、うまくいかないことが比較的多い印象です。薬剤師の働き方は以前と比べて大きく変化しており、現在は患者中心の医療が重視され、服薬指導などに時間をかける場面も増えています。さらに、業務の電子化が進んでいるためITの扱いに慣れていることも大切です。こうした変化に対応できていないと、転職活動で苦戦する可能性があります。
――時代の変化への対応ですか。
はい。加えて、組織風土や年齢構成のミスマッチもあると感じています。実際に、若いスタッフが中心の活気ある店舗に配属され、ジェネレーションギャップに悩むケースもありました。これまでのキャリアを前面に出し過ぎてしまうと、職場にとって扱いづらい存在になってしまう可能性も。新しい職場では周囲のやり方を尊重しながら、謙虚な姿勢で関係性を築いていくことが大切だと思います。
――どのような経験があると有利になりますか?
管理薬剤師やマネジメント、複数の店舗を担当するラウンダー薬剤師の経験は評価されやすいポイントです。また、在宅医療の対応や地域医療への関わりなど、現場で培った実務経験も強みになります。これまでどのような役割を担ってきたのかを具体的に説明できることが重要です。
薬剤師を取り巻く環境は変化を続けており、転職市場でも求められるスキルや役割は広がっています。年齢を重ねるほど転職の難易度は上がる傾向にありますが、これまでの経験やマネジメント力、在宅医療への対応などが強みになるケースも少なくありません。キャリアの棚卸しを行い、自分の経験を活かせる環境を選ぶことが、どの年代でも納得のいく転職につながるといえるでしょう。
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原瑞希
薬剤師専任キャリアアドバイザー
薬剤師免許保有
【経歴・実績】
・ドラッグストアチェーンにて薬剤師として3年間従事
・2024年度 新人賞(銀賞)受賞
【プロフィール】
元薬剤師として現場の空気感やストレスを肌感覚で理解しているため、悩みへの深い共感が可能です。
求人紹介だけでなく、入社後の教育体制まで徹底確認して提案。生活の変化を具体的にシミュレーションし、不安のない転職を支えます。
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