薬剤師の手取りとは?業種による違いや手取りを増やす2つの方法

薬剤師として働くうえで、手取りは日々の生活や将来設計に直結する重要なポイントです。給与の額面だけでなく、税金や社会保険料の控除によって実際に受け取れる金額が変わるため、手取りの仕組みを理解しておくことは欠かせません。

本記事では、手取りの基本や業種ごとの違い、さらに手取りを増やす具体的な方法まで紹介します。

手取りとは

手取りとは、給与として会社から支給される総支給額(額面)から、税金や社会保険料などの各種控除を差し引いた後に、実際に自分の口座へ振り込まれる金額のことを指します。給与明細では「総支給額」と「差引支給額」が記載されており、この差引支給額がいわゆる手取りです。

控除には、所得税や住民税、健康保険料、厚生年金保険料などが含まれており、年収や扶養状況、加入している保険制度などによって金額は異なります。一般的には、手取りは額面の約7〜8割程度になるケースが多いとされています。

額面との違い

額面とは、会社から支給される給与の総支給額のことを指し、基本給に加えて残業代や各種手当(資格手当・通勤手当・役職手当など)を含めた金額です。求人票や雇用契約書に記載されている給与は、基本的にこの額面を示しています。

一方で手取りは、この額面から所得税や住民税、社会保険料などの各種控除を差し引いた後に、実際に受け取れる金額です。たとえば月給30万円と記載されている場合でも、そのまま30万円が振り込まれるわけではありません。実際には控除が発生するため、手取りはそれよりも少ない金額になります。

2年目以降は手取りが減る?

新卒や転職直後の1年目と比べて、2年目以降に「手取りが減った」と感じるケースは少なくありません。その主な理由は、住民税の課税が始まるためです。

住民税は前年の所得に対して課税される仕組みとなっており、社会人1年目は前年の所得がない、または少ないことから、住民税が課税されないか、課税額が低く抑えられる場合が一般的です。

この住民税は毎月の給与から天引きされることが多く、結果として手取り額が減少したように感じる要因となります。

額面から引かれるもの

給与の額面からは、さまざまな税金や保険料が差し引かれます。これらは法律に基づいて徴収されるものが多く、会社員として働く場合には原則として給与から天引きされる仕組みです。

主に差し引かれる項目としては、所得税や住民税といった税金のほか、健康保険料や厚生年金保険料などの社会保険料が挙げられます。さらに、勤務先によっては財形貯蓄や労働組合費などが控除される場合もあります。

所得税

所得税は、個人の所得に対して国が課税する税金です。給与所得者の場合は、年間の所得をもとに算出。毎月の給与から源泉徴収という形であらかじめ差し引かれます。

課税対象となる所得は、給与の総支給額そのものではなく、給与所得控除や各種所得控除(基礎控除や扶養控除など)を差し引いた後の金額です。そのため、同じ額面であっても、扶養家族の有無や控除の内容によって実際に差し引かれる所得税額は異なります。

引用元
国税庁|所得税のしくみ

住民税

住民税は、都道府県や市区町村に納める地方税で、地域の行政サービスを支える財源として活用されています。

住民税は前年の所得をもとに課税される仕組みです。所得に応じて税額が決まる「所得割」と、一定額が課される「均等割」で構成されています。このため、収入が増えると翌年の住民税負担も大きくなる傾向があります。

引用元
総務省|地方税制度|個人住民税

社会保険料

社会保険料は、病気やけが、老後、失業などのリスクに備えるための公的な保険制度にかかる費用です。主な内訳には健康保険料や厚生年金保険料、雇用保険料などがあり、一定の条件を満たす場合には介護保険料も含まれます。

これらの保険料は、給与額に応じて決定され、事業主と労働者で分担して負担する仕組みとなっています。社会保険料は複数の制度から成り立っており、手取り額に大きく影響する重要な控除項目です。

引用元
経済団体健康保険組合|健康保険とは | 健保のしくみ
公益社団法人 国民健康保険中央会|介護保険制度
公益財団法人 全国生活衛生営業指導センター |社会保険の基礎知識/厚生年金保険の基礎知識
厚生労働省|雇用保険制度の概要(体系)
厚生労働省 鳥取労働局|労災保険制度について

そのほか

給与の額面から差し引かれる項目には、税金や社会保険料以外にも、勤務先の制度に応じた控除が含まれる場合があります。代表的なものとしては、財形貯蓄や労働組合費などが挙げられます。そのほかにも、社宅費や食事代、共済会費など、企業ごとの制度によって控除項目は異なります。

これらは必ずしも全員に発生するものではありませんが、手取り額に影響するため、事前に確認しておくことが大切です。

薬剤師の給与について

薬剤師の給与は、働く環境や年齢、経験、勤務先の業種によって幅があります。令

「令和6年賃金構造基本統計調査」によると、薬剤師の平均年収は約600万円と報告されています。ただし、あくまで全国平均の目安であり、地域差や勤務先の条件によって実際の給与は異なることに注意しましょう。

月収に12カ月分を掛け、さらに賞与を加えることで年間収入を算出できますが、給与明細に記載されている月給は額面であり、手取りとは異なる点に注意しましょう。また、基本給に加えて資格手当や役職手当、残業手当などが加算される場合もあります。

引用元
政府統計の総合窓口(e-Stat)|賃金構造基本統計調査 令和6年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種 | ファイル | 統計データを探す

政府統計の総合窓口(e-Stat)|賃金構造基本統計調査 令和6年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種 1 職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計) | ファイル | 統計データを探す

職業情報提供サイト(job tag)|薬剤師 - 職業詳細

男女別の給与データ

薬剤師の給与は男女によって差が見られる場合があります。「令和6年賃金構造基本統計調査」によると、男性薬剤師の平均年収は約651万円とされています。一方、女性薬剤師の平均年収は約556万円です。

ただし、近年は男女平等の給与水準が進んでおり、大きな格差は縮小傾向にあります。それでも、転職やキャリアプランを考える際には、男女別の平均給与を把握しておくことで、給与交渉や将来設計に役立てることができるでしょう。

年齢別の給与データ

薬剤師の給与は、年齢や経験によっても変動します。

令和6年の統計データによると、20代前半の薬剤師の平均年収は約400万円となっています。20代後半になると年収は500万円程度に上がる傾向があります。30代に入るとさらに昇給が進み、30代前半では年収約564万円、30代後半では年収約614万円です。

このように、年齢が上がるにつれて給与も増加する傾向がありますが、昇給幅は勤務先や業種、資格手当や役職の有無によって異なります。

引用元
政府統計の総合窓口(e-Stat)||賃金構造基本統計調査 令和6年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種 5 職種(小分類)、年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計) | ファイル | 統計データを探す

薬剤師の手取りとは

薬剤師の手取りは、前章で紹介した額面給与から所得税や住民税、社会保険料などを差し引いた、実際に手元に残る金額を指します。年齢や勤務先によって手取り額は異なりますが、概ね額面の7〜8割程度が目安となる場合が多いとされています。

たとえば、月収40万円の薬剤師の場合、各種控除を差し引くと手取りは28~32万円前後となることがあります。手取り額は、税金や保険料の負担額、扶養家族の有無、勤務先の制度によって変動するため、同じ年収であっても個人差が生じます。

薬剤師の業種による手取りの違い

薬剤師の手取りは、勤務先の業種によって大きく異なります。病院、調剤薬局、ドラッグストア、製薬会社など、それぞれの業種で給与体系や手当の内容が異なるため、額面と手取りの差も変わってきます。ここでは、各業種の年収とおおよその手取りを見ていきましょう。

なお、数字は全国平均の目安であり、勤務先や地域によって差があります。

関連記事
薬剤師の年収ランキングを都道府県別や業種別に紹介|収入をアップさせる3つの方法とは

病院

病院に勤務する薬剤師は、安定した勤務時間や福利厚生が整っていることが特徴ですが、手取りは他の業種に比べてやや控えめになる傾向があります。病院薬剤師の平均年収はおおよそ450〜480万円前後とされています。

病院勤務の場合、残業や夜勤手当の有無によって手取りは変動しますが、給与の伸び幅は比較的小さいことが多く、生活費や貯蓄計画を立てる際には安定性がメリットとなります。

調剤薬局

調剤薬局に勤務する薬剤師は、病院よりやや給与水準が高い傾向があります。平均年収は600〜800万円前後です。

勤務先によっては残業や資格手当がつく場合があり、手取りに差が出ることもあります。病院と比べると、給与の伸び幅がやや大きく、昇給やキャリアアップに伴って手取りも増える傾向があります。

ドラッグストア

ドラッグストアに勤務する薬剤師は、残業手当や夜勤手当がつく場合があり、手取りが比較的高めになる傾向があります。年収は600〜1,000万円前後が目安です。

勤務先やシフトの状況によって手取りは変わりますが、昇給や役職手当が加わることで、将来的にはさらに手取りが増える可能性があります。

製薬会社

製薬会社に勤務する薬剤師は、他の業種と比べて給与水準が高めになる傾向があります。国内の上場製薬企業の公開している2023年のデータによると、平均年収はおおよそ1,100万円〜2,000万円程度で、業界全体でも高い水準となっています。

ただし、給与水準は企業規模や職種によって変動するため、薬剤師として製薬会社に勤務する場合でも役職やキャリアに応じて手取り額に差が出る点に注意しましょう。

引用元
金融庁|金融商品取引法に基づく有価証券報告書等の開示書類に関する電子開示システム
金融庁|サンバイオ株式会社 有価証券報告書
金融庁|ネクセラファーマ株式会社 有価証券報告書
金融庁|シンバイオ製薬株式会社 有価証券報告書
金融庁|ソレイジア・ファーマ株式会社 有価証券報告書
金融庁|第一三共株式会社 有価証券報告書

薬剤師が手取りを増やす方法

薬剤師の手取りは、税金や社会保険料の控除、勤務先の給与体系によって変動します。そのため、同じ業種や職種でも手取り額に差が出ることがあります。ここでは、薬剤師が手取りを増やすために実践できる方法を見ていきましょう。

所得控除を利用する

所得控除を活用することで、課税所得を減らし手取りを増やすことが可能です。薬剤師の場合、医療費控除やふるさと納税が代表的な手段として挙げられます。

医療費控除は、年間で一定額以上の医療費を支払った場合に所得税の一部が還付される制度です。また、ふるさと納税を利用すると、寄附金の一部が控除されるため、実質的に手取りが増える効果があります。

引用元
国税庁|医療費控除を受ける方へ|令和7年分 確定申告特集
総務省|よくわかる!ふるさと納税

転職する

薬剤師の手取りを増やすもう一つの方法は、より条件の良い職場へ転職することです。勤務先によって給与体系や手当の内容、賞与の額などが大きく異なるため、同じ資格でも手取りに差が出ることがあります。

転職を検討する際は、給与だけでなく、残業の有無や福利厚生、勤務地や勤務時間も含めて総合的に判断することが重要です。

薬剤師の手取りを増やすには転職もおすすめ

薬剤師の手取りを増やす方法として、所得控除の活用や勤務先の見直しが効果的であることを紹介しました。

そのなかでも、より条件の良い職場に転職することは、手取りを大きく改善する手段として非常に有効です。業種や企業によって給与水準や手当の構成は異なるため、自身のキャリアや生活スタイルに合った職場を選ぶことで、将来的な収入の安定性も高まるでしょう。

転職をするなら、薬剤師専門の転職エージェントであるファーマキャリアがおすすめです。希望条件に合った求人を効率的に探すことができ、安心してキャリアアップを目指せます。


監修者

原瑞希
薬剤師専任キャリアアドバイザー
薬剤師免許保有

【経歴・実績】
・ドラッグストアチェーンにて薬剤師として3年間従事
・2024年度 新人賞(銀賞)受賞

【プロフィール】
元薬剤師として現場の空気感やストレスを肌感覚で理解しているため、悩みへの深い共感が可能です。
求人紹介だけでなく、入社後の教育体制まで徹底確認して提案。生活の変化を具体的にシミュレーションし、不安のない転職を支えます。

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