【子育て応援メソッド】お客様とスタッフ、両サイドのママにやさしいサロンづくり PaL at Lanai 矢田知也さん #1
美容業界で働くワーママ・ワーパパに仕事と育児の両立法をお伺いする「子育て応援メソッド」。今回は、表参道の人気美容室「PaL at Lanai」を経営する矢田知也さんにインタビューさせていただきました。
無料託児サービスのある美容室としてママたちに大人気の「PaL at Lanai」。矢田さんがこのサービスを始めた理由は? 10年以上サロンに通い続けてくれるアシスタントの頃からのお客様への感謝の気持ちを形にしたものでした。
矢田さんは、サロンスタッフにもママ・パパさんが多いことから、育児しながらでも時間の融通がつけやすい自由出勤のほか、「自然失客」による売り上げ減をサポートする対策なども行っています。
お話をお伺いしたのは…
PaL at Lanai代表
矢田知也さん
三重県の美容学校を卒業。都内3店舗とフリーランスを経験し、25才で「PaL at Lanai」代表となる。カウンセリングから仕上げまでマンツーマン接客。表参道の託児付きサロン、白髪染めを使わない「白髪ぼかし」などでママ世代に大人気のサロン。「髪の毛を通してお客様の生活の一部になれたらうれしいです」
僕が未熟だったときから指名してくれたお客様を大事にしたい
――お店を持たれたのはパパになってからですか?
いや、もっと前です。25才のときにPaL at Lanaiをスタートさせ、店が軌道に乗ってきた28才で結婚。30才のときに長男が生まれて、下の娘はもうすぐ1才になります。僕は今年35才で、独立してちょうど10年目ですね。
――最初から独立を視野に入れていたのですか?
そういうわけではなかったですね。美容学校を卒業後に就職したのが大きなサロンだったのですが、そこはシャンプー、カット、カラー、ブローとそれぞれが担当する「チーム制」でした。
僕は、ありがたいことにデビューして早めにアシスタントをつけてもらえることになったんですね。でも、せっかく自分を指名してくれたお客様とわずか15分しか関われない。恥ずかしい話ですが、自分のお客様がどこに座っているのか分からなくなってしまって、他のスタイリストのお客様に声をかけてしまうようなことが何度かありました。「あー、これはダメだ。自分が望む美容師のスタイルとは違うな」と疑問を感じ、独立することになりました。自分を指名してくださるお客様ともっと深く関わりたいと思ったんですよね。
――早めにアシスタントをつけてもらえたのはなぜですか?
それは、最初から僕を指名してくださるお客様がいたからなんです。僕はアシスタント時代、夜9時の閉店後から深夜12時までの3時間、カットモデルの方を呼んで毎日ひとり営業みたいなことをやっていました。日曜は6時閉店で6時間あるので、3人のカットモデルの方に来ていただいて練習しました。デビュー月にそのアシスタントの頃からのお客様が来てくれたおかげで順調なスタートを切ることができたんです。
お客様に順位をつけるわけではないのですが、僕が未熟だったときから来てくれている方への感謝の気持ちが大きくて、その方たちを大事にしたいという気持ちが独立を後押ししてくれたのは確かですね。
お客様のライフスタイルの変化で無料託児サービスを開始
――サロンのお客様は託児所が利用できるんですよね?
サロンをオープンして1年後に託児の無料サービスを始めました。これも、当時20才くらいだったアシスタントの頃からのお客様が結婚してママになり、託児サービスができたらよいなと思ったのがきっかけです。
提携する託児所の空き状況がサロンで把握できるようになっているので、空いている日時にサロンの予約を入れていただく形になります。コロナ禍でお受けできなかった時期もありましたが、最近やっと再開できました。「保育士さんがみてくれるから子どもを安心して預けられる」、「子どもを気にせずサロンでゆっくりできる」とママたちにも喜んでいただいています。託児所とサロン間の送迎サービス(片道500円)も行っています。
――ママにやさしい美容室というイメージがありますよね。
そうですね。ママさんは意識しています。というか、前述のアシスタントの頃からのお客様もそうですが、自分と同世代の方をメインターゲットにしているので、その中にママたちがいるという感じでしょうか。アシスタントの頃からのお客様がいまもずっと来てくださっているのですが、長く担当させてもらうと、出産で髪質が変わったり、ライフスタイルの変化があったりしますよね。その都度、変化に対応するためにはどうしたらいいかとアイディアを練るんです。僕は、お客様に育ててもらっているという感じが強いですね。
自然失客による売り上げ減をサポート
――サロンには、パパ・ママ美容師さんがたくさんいらっしゃるそうですが、その方たちが働きやすいように工夫されていることはありますか?
まず時間の融通が利くことは、パパ・ママにとって働きやすいと思います。パパ・ママスタッフにはフリーランスの方が多いので、出勤時間も休みも自由に決められます。
僕も半年だけフリーランスを経験したので、フリーランスのメリットとデメリットは分かっているつもりなのですが、フリーランスのいちばんの不安要素は収入減ですよね。どれだけ良いサービスを提供していても、結婚や転勤などライフスタイルの変化で、年間10%くらいは「自然失客」が起きます。そこでお店としては、フリーランスの方の売り上げが減らないようなサポートをさせてもらっています。具体的には、託児サービスを利用される方や僕がインスタで力を入れている「白髪ぼかし」の新規のお客様を担当する機会を提供しています。
最近は完全面貸しのシェアサロンも多いと思いますが、そういった組織・チーム的な要素を併せ持つことで、フリーランスの方が働きやすい環境を作れればいいなと思っています。よく、お客様に「フリーランスのお店っぽく見えないね」と言われるのですが、それぞれのスタッフがお店としてお客様を迎え入れるという姿勢ができているからだと思っています。
マンツーマンでお客様を大事にしたいという思いで独立して、それに賛同してくれるメンバーが集まってくれているので、みんなが長く働ける環境を作っていきたいです。
「PaL at Lanai」がママにやさしい美容室の理由は?
ママにやさしい美容室として認知度の高い「PaL at Lanai」。お客様にも働くママスタッフにもよい環境を作る要素は以下の3つでした。
1. メインターゲットが自分と同じ子育て世代
2. 託児サービスなどママ向けの付加価値をつける
3. ママ・パパスタッフが働きやすい環境を作る
後編では、ママたちの声から力を入れるようになった「白髪ぼかし」についてと、矢田さん自身のパパぶりをお伺いします。
▽後編はこちら▽
【子育て応援メソッド】僕は仕事の人、奥さんは家庭の人。でも休みの日は100%家族のために PaL at Lanai 矢田知也さん #2>>
取材・文/永瀬紀子