思い通りにならない「もどかしさ」から、ようやく自分のペースを掴むまで broocH ヘア&メイク 杉山由夏さん#2
仕事と子育ての両方をがんばっているワーキングママ、broocHのスタイリスト杉山由夏さんのインタビューをご紹介しています。前編ではお子さんを授かるまでのご苦労、育児がほぼワンオペになってしまったいきさつなどを伺いました。後編は復職してからお子さんの体調によって休まざるを得ない状況で苦しんだこと、コロナによってご夫婦やお子さんとの関係が変わったことなどについてお話いただきます。
お話を伺ったのは…
broocH ヘア&メイク
杉山由夏さん
東京美容専門学校を卒業後、都内1店舗を経て‘06年にbroocHの立ち上げより参加する。5年間のお付き合いを経て27歳の時に結婚。34歳で男児を出産する。ライフスタイルや悩みに寄り添ったメイクとヘアの提案に、大人女性たちから熱い支持を獲得している。
杉山由夏さんのInstagram:@u_ka072
日曜は家族3人、月曜は親子2人の濃密な時間を過ごす
――パートナーと話をするのはどのタイミングですか?
平日であれば朝ですね。私は日曜と月曜がお休みなので、日曜はできるだけ家族3人で過ごす時間にしています。公園など、外に遊びに出かけることが多いですね。
――お子さんと過ごす時間でいちばん大切にしているのは?
夜ですね。食事をしながら子どもの話をたくさん聞くようにしています。平日は夕食後にすごろくやカードゲームをして遊んでいます。私の公休日の月曜日には、2人で電車に乗って遠出をしたり、ディズニーランドへ遊びに行ったり。
――ご自身の時間はどのタイミングで取っていますか?
子どもが寝た後ですね。たまに旦那が月曜の午前中に半休を取った日は、子どもを旦那に預けてピラティスを習いに行ってます。来年には子どもは小学校に上がるので、保育園の送り迎えがなくなってだいぶラクになります。自分のために使える時間が増えそうで、今からちょっと楽しみなんですよ。
保育園から連絡がたびたび入り、いろいろな人に謝る日々が
――生後8か月から保育園に預けていますが、お子さんはすぐに慣れましたか?
実はとても身体が弱くて、毎日のように保育園から呼び出されていました。体温が39度になる日が4日間も続いたり、お腹の調子がすぐ悪くなったり。手足口病にもかかったし、あらゆる菌に感染したんじゃないかしら。ウイルスや菌に感染すると「〇日間は園を休んでください」と言われてしまうので、その間はサロンを休まなくてはなりませんでした。
――体調の悪いお子さんも可哀想ですが、杉山さんも大変でしたね。
保育園から電話がかかってきても、接客中だと電話がかかってきたことに気づけません。やっと時間ができて折り返し電話すると、「早く迎えに来てください」って叱られる。保育園にも、サロンのスタッフにも、お客さまにも、謝ってばかりいました。
保育園の先生から「お母さんしか子どもを守れないんですよ!」と言われてしまうのが辛かったですね。
――復職したときは時短勤務だったんですか?
いえ。フルタイムで朝9から夕方18時の勤務です。早退や遅刻、お休みするときは有休を使っていました。それでも足りない分は給料から差し引いてもらっています。
――予約が立て込んでいると、突然のキャンセルも大変ですよね。
どうしても仕事に穴を空けられないときは、実家の母に頼りました。お迎えに来てくれたり、子どもの看病をしてくれたり、本当に助かりました。母はもう退職しているんですが、非常勤教師として再任用されているんです。なので、そうそうお願いすることはできませんが、働きながら子育てをした母なので、私の気持ちを理解してくれているのが何より心強かったですね。
お店のスタッフも、いろいろな面でフォローしてくれました。「やらなくちゃ」という焦りの気持ちと「やりたくてもできない」という現実が、空回りしてたんですね。私がどんなにがんばっても「できないんだ」ということを理解してくれています。早退したいときやお休みしなければならないときも、先輩スタッフが「しょうがないよね」と言ってくれてすごく気持ちが軽くなりました。
――働き方などを見直すことはありましたか?
私には「アシスタントを育てる」という仕事もありました。でも、私が早退するとその子はやることがなくなってしまうんです。先輩と相談をして、「育てる」仕事をちょっとお休みさせてもらうことにしました。私にはアシスタントが付かない分、カットは1時間ごと、カットとカラーは2時間ごとに予約を入れて、自分のペースで予約を組み立てることにしました。最初のシャンプーからお見送りまで、すべて私1人で担当します。フリーランスの美容師の方と働き方が似ているかもしれませんね。broocHで長く働いている分、融通を利かせてもらっています(笑)。
――コロナで「おうち時間」が増えて、ご家族の様子は変わりましたか?
旦那の帰宅時間がちょっと早くなって、家のことや育児も少しずつやってくれるようになりました。例えば、子どもを保育園に送り届けられない日があると都合をつけて連れて行ってくれたり、掃除をしていると手伝ってくれたり。
旦那からは『「何で気づいてくれないの」ではなくて、具体的に何をして欲しいのかを教えて』と言われました。言われないと気づかないみたいですね。
子どもが生まれたばかりのころは、家事や育児、仕事のことをあれこれ真面目に考えすぎて、ストレスを溜め込んでいた気がします。自分ではどうにもならない「しょうがないこと」もあるんだと、割り切って考えられるようになりました。
――これからどんなご家族でありたいですか?
いつまでも仲のいい家族、夫婦でありたいですね。落ち着いたら3人で旅行へ行きたい。いろいろな経験をたくさんしたいです。
杉山さんが仕事と育児を両立するために取り入れていること
1.自分ペースで仕事ができるように時間を組み立てる
2.「しょうがない」こともあると割り切る
3.パートナーには手伝って欲しいことを具体的に伝える
責任感の強さから、育児も仕事もすべて1人で抱え込んでいた杉山さん。先輩スタッフからの「しょうがない」という言葉で、割り切ることができたそうです。broocHの女性スタッフのなかで、杉山さんが初めて産休と育休を取ったのだとか。先輩ママがいなかったのは心細かったと思われます。ワーキングママが働きやすい環境が整い、杉山さんに続く第2、第3のワーキングママが登場することを心待ちにしているそうです。
撮影/古谷利幸(F-REXon)