“逆算”して動く力と結果を出すための努力で、進みたい道を切り開く【美容師 雲林院優さん】#1
アシスタント時代もスタイリストになってからも、「自分のやりたいことを叶えるために今何をすればよいか」を逆算して考え、言葉や行動で示して来た雲林院優さん。サロンの先輩や同僚、そしてお客様の信頼を得て美容師として波に乗り始めたときに、結婚・妊娠・出産という大きなライフイベントを経験。
前編では、「GARDEN一択」の強い意志で入社したエピソードや、スタイリストデビュー前から始めた集客のための工夫、専門学生の頃から憧れていた雑誌の撮影に参加するために努力したことなどをお聞きしました。
お話を伺ったのは…
GARDEN omotesando
トップスタイリスト 雲林院優(うじい ゆう)さん
2017年に美容専門学校を卒業、同年4月にGARDEN入社。2020年に24歳でスタイリストデビューし、2ヶ月後トップスタイリストに昇格。瞬く間に人気美容師となり、これからのGARDENを担っていく存在のひとりに。婚約中に妊娠がわかり、2023年3月から産休を取得して女の子を出産後、10月に職場復帰を果たす。現在は時短勤務でサロンワーク中。
多彩なロールモデルがいるから、なりたい自分を探せる
――GARDENを選んだ理由は何ですか。
私は鹿児島の専門学校出身なのですが、卒業したら絶対に上京して、有名店で働きたいと思っていたんです。GARDENを知ったのは、学校の先生に勧められたのがきっかけです。ほかにも、ヘアカタログや雑誌を見て自分の好きなスタイルをつくっているサロンを探しました。
たくさん調べて4店舗くらいに絞り、実際にお客さんとしてサロンに足を運びました。学生でお金の余裕もないので、1日にまとめてダーッと回ったんです。ここではシャンプー&ブロー、こっちではカラー&トリートメント…のように分けて。GARDENでは確かカットとパーマをしてもらったと思います。そのときにビビッときたんですよね。雰囲気や接客が一番自分に合うなって。
――直感が働いたんですね。
それだけでなく、偶然というか奇跡的にというか、インターンとして働かせてもらえたんです。そのときに先輩美容師が後輩をきちんと叱っているところを目にして、そういう環境の方が人として成長できると感じました。私がもともと体育会系で育ったからなのか、それが決め手でしたね。
――採用試験を受けたのはGARDENだけだったとか。
はい。でも私たちの年は新卒採用がないかもしれないと言われていて。いつもは6月か7月に面接が始まるのですが、そのときは12月だったんですよ。でもとにかく募集が出るのを待って、年を越しても募集がなかったらとりあえずどこかのサロンで働いて、中途でGARDENに入ろうと決めていました。
――採用試験の倍率がずいぶん高かったそうですが。
面接を受けた人の中で採用は1割くらいでした。「ほかの店はどこも受けずに本当に待っていました!」という気持ちと、「もし落ちたとて、中途で入りますから!」という強気があったせいか、面接は緊張したけど質問にはスラスラ答えられました。一緒に受かった同期もみんな、GARDENが好きという気持ちの強い子ばかりだったと思います。
私は部活で12年間、卓球を続けていたのですが、何かひとつのことを集中して続けられるという部分で根性があると思われたのかもしれませんね。美容師は離職率が高い職業でもあるので…。
――GARDENで働き始めてから、あらためて魅力に感じたことはありますか。
店舗数もスタッフ数も多いからかもしれませんが、それぞれ得意とするところが異なる多彩な美容師がいることに魅力を感じました。例えばサロンワークに特化している先輩だったり、撮影やセミナーなど外部の仕事で活躍している先輩だったり。技術やセンスもいろいろ。ロールモデルになる人がたくさんいるから、なりたい自分を見つけやすいかなと思いました。
SNSに力を入れて、デビュー前にフォロワーが急増
――最初から表参道店に所属したのですか。
はじめは銀座の本店でした。外部の仕事をしている先輩が多く、撮影などについて行かせてもらってたくさんのことを学べました。ただ、ちょうどコロナ禍が始まったのもきっかけなのですが、ふと自分がスタイリストになったときのことをイメージしたんです。もともと逆算をして計画を立てたり動いたりするのが好きなので、スタイリストとしてしっかり集客するには今どうしたらいいのかと考えました。
当時は表参道店が特に集客が強かったので、そこで私も集客を学びたいと会社に異動を願い出たんです。希望を叶えてもらって本当にありがたかったです。その分、自分にもプレッシャーをかけるというか、結果を出さなければと必死になりましたね。
――異動して、集客に関して具体的にどのようなことを頑張ったのですか。
ちょうどその頃、SNSでの集客がすごく盛んになっていたので、私もそこに注力しました。SNSといってもまずは投稿以前の、作品撮りなどで素材をつくるところから頑張ったという感じです。
――コロナ禍では、モデルさんを呼んで作品撮りをするのもなかなか難しかったのでは。
大変でしたね…。でも、いつもいい刺激を与えてくれる同期の太田(GARDEN W.)をはじめ、何人かで頻繁にオンラインミーティングをして、勉強や情報共有をしました。今何がインスタグラムで注目されているのかとか、作品撮りがしづらい時期だからこそ何ができるかをみんなで考えたんです。
そんな中で、自分がお客さんだったらどんなことが知りたいかなと思ったときに、私なら「丸顔に似合う髪型」の参考があれば、美容室に行くときに悩まなくてすむかもしれないというところに行き着いて。そこで、いろいろな顔をつくれる「ZEPETO(ゼペット)」というアバター作成アプリを活用してみることにしたんです。丸顔にいろいろな前髪やヘアスタイルを組み合わせて画像をつくり、インスタグラムにアップしました。
――作品撮りができない分、新しい試みが生まれたんですね!
その頃はまだインスタグラムのフォロワーも少なかったので、まずはいろんな人に知ってもらうために、役に立つ情報をたくさん発信することをメインにしていました。スタートしたのが2020年の1月くらいでフォロワーが900人程度。3000人まで増えるのに半年くらいかかったのですが、そこからは伸び率が一気に上がり、その年の11月にスタイリストデビューしたときには1万人まで増えていました。
コロナ禍で来店客数に波があった分、空いた時間を編集作業などにあてられたので、ある意味有効活用できたのかも。そういえば生活も規則正しくなっていた気がします。あの頃は彼氏もいなかったんですけど、「いつでもお嫁に行けるように」と自炊を始めましたし(笑)。
専門学生時代からの夢を順調に叶えられたわけとは
――スタイリストデビュー後すぐに外部の撮影でも活躍されていましたが、ご自身ではなぜそれが実現できたと思いますか。
ひとつには、アシスタント時代の頑張りがあると思います。いいモデルさんを見つけられたら、撮影やヘアショーなどに連れて行ってもらえるというルールのようなものがあったので、みんなで競うようにモデルハントをして。私も負けじと先輩の撮影モデルを見つけて、数えきれないくらいたくさん外部の仕事に同行し、現場で学ばせてもらいました。
あとは、社内で毎月行なっている作品撮りのランキングがあり、そこで上位に入ると優先的に撮影に参加させてもらえます。だから毎月必ず作品を出して、できる限り上位を狙っていました。
――もともと、雑誌の撮影の仕事がしたかったのでしょうか。
専門学校時代から、雑誌に掲載されている美容師さんを見て「自分もいつかは」と夢を描いていました。
――GARDENに入れたこと、アシスタント時代に頑張ったことでその夢を叶えたんですね。初めての撮影のときはどう感じましたか。
めちゃくちゃ嬉しかったです!嬉しかったのと同時に、アシスタントのときに見ていた先輩の姿と、実際に自分がやるのとでは壁を感じて、新たな目標につながりました。
――壁というのは?
撮影しているときはもちろんベストをつくしているし、自分でも可愛いと思ってスタイルをつくっていますが、雑誌に掲載されたものをあらためて見ると先輩との違いがやっぱり大きくて。この毛束が…とか、もう少し空気感を出せばよかったとか、メイクや衣装ももっとこうすればとか。細かく言えば切りがないのですが、本当に勉強になります。
「自分に合う」と感じたGARDENに見事受かり、多彩な先輩方のもとで経験を積んできた雲林院さん。目標ややりたいことを実現するために持ち前の行動力でステップアップする中、本人いわく「ジェットコースターのような」展開で結婚・妊娠・出産をすることに…。
後編では、パートナーとの出会いや子育てのお話、ママ美容師として復帰した現在の心境などをお聞きします。
撮影/高嶋佳代
取材・文/井上菜々子