毎日書き続けたブログが、いまの自分を支えている。美容師・イワタコウジさん
サロンワークをはじめ、ITやSNSの知識を活かしてオンラインサロンの運営など、多彩に活躍しているイワタコウジさん。前編ではITを導入するようになった経緯について伺いました。
後編では、現在の働き方について詳しく伺います。年々仕事の幅が広がり、自身でも「明日の自分が予測できない」のだとか。一体どのようにして人脈や仕事を拡大していったのでしょうか。
お話を伺ったのは…
イワタコウジさん
「Hair トレンザ INTERNATIONAL 今里店」店長。高校卒業後、大学へ進学し、経営情報学を学ぶ傍ら、通信コースを経て美容師免許を取得。大学時代からITに興味を持ち、独学で学ぶ。現在はサロンワークに加え、SNSプロモーション型オンラインサロン「ROUTINE」の運営、美容専門学校での非常勤講師、サロン等のコンサルティング、メーカーと共同で商品開発など、自身の経験と知識を活かし、さまざまな分野で活躍中。
Instagram:@coji79
コツコツブログを書き続けたことで、ご縁や仕事の幅が拡大
――改めて、現在の働き方について教えていただけますか。
両親が運営する美容室「Hair トレンザ INTERNATIONAL 今里店」でのサロンワークのほか、オンラインサロン運営、他の美容院のコンサルタントや、メーカーの相談役、美容ディーラーのコンサルタント、美容専門学校の特別講師…自分でもちょっと把握しきれていなくて。コロナ禍になる前は、東京のシェアサロンでもサロンワークをしていました。
あとは最近だと、あるメーカーのシャンプーのキャンペーンイベントで、1日15人の方にシャンプーをしたり、韓国の美容師さんを対象にしたセミナーを開催したりもしました。
――寝る暇もないくらい、忙しそうな印象を受けます。
いえいえ、過去の自分から見たら、サボっている方だと思います。サロンワークをしながら1日6~7本ブログを書いていた頃は本当に寝る時間もありませんでした。
基本的には自分が好きなこと、興味があることはなんでも仕事にする、自分で調べて発信するというスタンスでやっています。ブログを続けた結果、物販による売り上げだけでなく、SNSの発信方法に関するオンラインセミナーを開くきっかけや、メーカーの方から売り方のコンサルティングやマーケティングのご相談だったり、商品開発等のお話をいただくようになりました。
――ブログからご縁が広がったんですね。イワタさんが初めてITに触れた2000年代と比べるとさまざまなSNSが登場していますが、現在もメインはブログですか?
そうですね。いまのトレンドでいうとInstagramやTikTokが主流で、若い美容師の方たちに向けたセミナーでは最近のSNSとの付き合い方について教えることもありますが、僕自身はブログの発信が中心です。
というのも、InstagramやTikTokはその場限り。過去の投稿を見られることはほとんどありません。一方でブログは、投稿してから時間が経っても、キーワード検索でたどり着いて読んでもらったり、商品の売り上げにつなげることができる。だからいまは、過去の自分に働いてもらっているイメージですね。
売り上げを伸ばすために必要なのは、あえて「ど真ん中」は狙わない勇気
――ブログを書く際に意識されていることはありますか?
オンラインサロンやセミナーでSNSの発信方法について伝えているので、第一にマニュアル化できる内容であることが重要です。先ほども言ったように、現在の売り上げの60~80%を物販が占めているので、ブログも商品の紹介が中心になっています。
僕の目標は、大手ファストフード店や夢の国のようなしっかりとしたマニュアルがあり、いつ行っても同じサービスが受けられる、お客様の満足度も高いお店にすることです。おもしろいことに、美容師は「オンリー1」であることを目指しますが、世の中ではオンリー1ではない、マニュアルがあるサービスの方が求められているんです。
――確かにそうかもしれません。イワタさんが運営するオンラインサロンにはどんなお悩みを抱えている方が多いのでしょうか?
参加者の中には、個人でサロンを運営されている方やオーナーになりたての方、フリーランスの美容師さんなどいろんな方がいらっしゃいます。
お悩みもさまざまで、集客や売り上げが安定しないことや、スタッフが続かないこと、僕のようにサロン以外で収入を得たいとか、物販で売り上げを上げるにはどうしたらいいかというご相談もよくあります。
――先ほども、長く美容師として働くため、サロンの売り上げを維持するために物販が重要だというお話がありましたが、物販で成功するコツはなんでしょうか?
何事も「ど真ん中」ではなく、周囲のぎりぎり「フチ」の部分を狙うことです。
僕はセミナーでよく、美容師の人生を電車に例えます。同じ線路を走るにしても、新幹線で一気に走り抜ける人もいれば、普通列車のように進む人もいるでしょう。一方で僕は高速道路で車を運転していながら電車と同じゴールに向かっている感覚なんです。大学に進学し、一般的な視点を持つことができた分、ほかの美容師がまだやっていないこと、業界の隙を見つけやすい。
シャンプーやスタイリング剤など「ど真ん中」は誰もがやっていることだから、いまから初めてトップを狙うのは難しいけれど、ぎりぎり髪の毛と関連していそうな「フチ」の部分はライバルが少ない上に、いいものが結構あるんです。
僕がいま扱っている酵素ドリンクもそうですし、ショートカットの方に向けてピアスを売っていたこともありました。体の中から健康になることは髪の毛にもいい影響を与えますし、切りたての髪に「このピアス、似合うよ」と言われたら、つい欲しくなってしまいませんか?(笑)
美容師としての初心を忘れないために、サロンワークも継続
――ど真ん中ではなくフチを狙う、おもしろい考え方ですね。ところで、いろいろな案件を抱え、多忙な中でもサロンワークを続けているのはなぜでしょう?
確かに忙しくなりすぎて、息ができないと感じたこともありました。ただ、美容師としてお客様と関わる時間を持つことでいまの流行も把握できますし、何より僕自身がすごく楽しいんですね。なりたいと願った美容師になることができて、初めてお客様の髪の毛に触れたときの感動を思い出します。
現在はスタッフも雇わず、1日4~5人までと決めてサロンワークをしています。自由に働くことができるので、僕にとっては、ストレス発散の時間でもあります。
――最後に、今後の目標について教えてください。
やってみたいことも、すでに進行中のプロジェクトもたくさんあって…正直なところ、来年の今頃、自分が何をしているのか想像すらできません。ただ、1つのプロジェクトが形になれば、また次のステップに繋がる。そう考えると、常にワクワクしています。
僕はいつも自分自身に「このままで大丈夫か」「本当にできるのか」と問いかけていますが、現状を俯瞰しつつ、楽しみながら長く美容師として働いていけたらと思っています。
イワタコウジさんがサロンワーク以外に仕事を拡大している3つのポイント
1.自分の強みであるITをフル活用。インターネットを通じて時代の流れを敏感にとらえ、コツコツと発信し続けた
2.かつての自分と同じ悩みを持つ美容師に向け、構築したマニュアルを惜しみなく発信
3. 企業やメーカーからの依頼にも柔軟に対応。あえて「フチ」を狙った戦略で他に差をつけた
常に物事を俯瞰し、アクシデントでさえもポジティブに仕事へつなげるというイワタさん。その冷静さ、柔軟性こそが人脈を増やし、仕事を拡大する上で重要なカギかもしれません。美容師として活動の幅を広げたいと考えている方は、参考にしてみてください。