度重なるアクシデントに挫折しかけるも…一つずつの問題と向き合い、かけがえのない経験に【Door代表取締役 吉澤 剛さん】#2

2009年に、吉澤さんと榎本 潤さんとの共同経営で代官山でオープンさせた「Door(ドゥーア) Daikanyama」。サロンのコンセプトでもある「パーマ」や「カット」の独自性に惹かれ、今や都内に限らず、県外からのお客様も途絶えない人気ぶりです。

一見、順風満帆に進んできたようで、開業当初から現在に至るまで数々のアクシデントに見舞われたと話す吉澤さん。度重なる不測の出来事から見事抜け出し、広く支持され続けるサロンに成長させた秘訣とは?

前編では、吉澤さんが美容師になってから独立し、Doorをオープンさせた経緯を伺いました。後編では、Doorのコンセプトや軌道に乗るまでの道のりについてお聞きします。

お話を伺ったのは…
Door代表取締役 吉澤 剛さん

地元で美容、理容のWライセンスを取得後、都内にあるサロンに就職。28歳のときにRITZに入社し、「フレーミングカット」や新たな機材の導入などを積極的に行う。2009年には、榎本 潤氏との共同経営のもと、サロン「Door Daikanyama」をオープン。その後も、グリップシザーズといったオリジナルのハサミの開発や日本では初めてとなる「無重力パーマ」の導入、セミナー講師として日本国内を700回ほど飛び交るなど、美容師の枠を越えて活躍の場を広めている。

オープン直後から幾度となく重なるアクシデントに真摯に向き合ってきた

店内奥には、過去に掲載された雑誌がずらり。今まで吉澤さんが受けた取材数はなんと、1000件を超えるのだとか…!

――サロン名の「Door」はお二人で決めた?

そうですね。当初は2人で100を超える候補があったんですよ。ああでもない、こうでもないとめんどうくさい話し合いを何度も繰り返して決めました。

――コンセプトをお聞かせください。

フランス語から着想を得ました。「Door」の「Do」は、「un deux trois」から「deux
をとって「2人」、「Door」の「or」は「輝く」。2人で輝ける場所を作っていこうという意味を込めました。あとは、「扉」という意味から。ヘアやメイクなどを駆使してできる限りのサポートを行い、お客様にとって「新しい扉」を開けられるお手伝いしたい想いが詰まってしています。

――オープン当初から「パーマ」を打ち出していた?

今でこそ、「パーマ」を全面に打ち出していますが、当時はそんなことを決められる立場ではなかったんです。リーマンショックを受けて出資の話がたち消え、3000万円の借金を背負っていましたからね。今まで磨いてきた技術があってどんなメニューでも再現できるから、とにかく来ていただけたら嬉しいくらいの姿勢でした。

――どのようにして巻き返しを?

いくら名前が売れても僕と榎本の2人だけではどうしようもない。働くスタッフたちの実力を上げていかなければゲストは増えないと思い、今までのマネジメント経験を元に、教育に力を入れました

――具体的に教育の詳細をお聞かせください。

Door独自の動画教育やカリキュラム教育と並行しながら、先輩スタイリストとアシスタントが一緒に組んで先輩の施術を観察し、実践にうつす。その様子を先輩スタイリストが見て、悪いところと良いところを見つけて改善していくような流れです。実力がついてきたと判断されれば、晴れてスタイリストデビュー。

通常、デビューするまで1年あれば…と決めているサロンが多く見受けられますが、「Door」では個人により異なります。例えば、1年かけずにデビューできる子もいれば、もっとかかってしまう子もいる。全員で足並み揃えて同じ時期にデビューするなんて個人的には無理だと思っていて。一人一人能力が違えば結果も違うように、期間で縛る意味がないと感じて今のような体制をとっています。

――スタッフ全員のレベルに合わせて教育したことで軌道に乗れたと?

ただ、程なくして東日本大震災が起こり、また売上に影響が出てしまって…。どうにかして立て直そうと、ゲストが来店されてから帰宅されるまでのフローを見直すことにしたんです。カウンセリング、施術、お会計までの流れを、14のステップに分類した「エターナル14」というマニュアルを作成し、常に丁寧に接客できる体制をつくれるように全スタッフで徹底しました。

あとはホスピタリティを確立するべく、レセプションを配置したことでしょうか。お荷物を預かる、次の行動の誘導をするなど、案内する人間がいるかいないかでサロンに来店したときの安心感が違うと思うんです。ゲストが入店から帰宅まで安心して任せてもらえる動線づくりを意識しました。

――サロンの立ち上げから紆余曲折だったようですね。

ようやく巻き返せそうだったタイミングでコロナ禍によって大打撃を喰らいました。オープン当初から遠方より来ていただくゲストが多かったのですが、一気に来られない状況になってしまって。今では、ようやくピークよりだんだん落ち着いてきたことで、戻って来られるゲストが増えました。やはり「クオリティが違う」と訪ねて来られるのは、美容師冥利に尽きます

覚悟を決めたら最初の3ヶ月を充実させること。いずれ自分にとってかけがえのない経験になる

――数々の困難な局面を経験してもなお、独立して良かったと思いますか?

「壊れては再生して」の繰り返しでとても簡単な道のりではありませんでしたが、独立して本当に良かったと思っています。

美容業界は教育産業とも言えます。僕は、自分だけ売れるのはおもしろくないと思っていて。僕たちの世代で培った技術を後輩たちに伝承して、それに着いてきてくれる人全員と一緒に売れて行きたい気持ちが強くありました。今、理想として描いていたことが体現できているんじゃないかと思うんです。

――独立する際に意識するべきことは?

まずは、自分がプレイヤーとしての数値を持つこと。月の売上が100万円ももちろんすごいことだけど400万円の人と比べたとき、どちらに着いていきたいと思うか。僕はそう考えていたから、自分の実力をつけることを追求してきました。

――今後、美容師を目指す人へアドバイスをお願いします。

美容師をすると決めたら、最初の3ヶ月間が重要だと考えています。決まったら、覚悟を決めてそのスイッチを押すんです。3ヶ月のうちに、完成までに取り組むことをルーティン化できなければ、そのあとの見込みは低いと思いますね。美容師は仕事柄、頭で考えるだけでは上達はできません。何度も練習を繰り返しては失敗し、それでも挑戦し続けて初めて体に染み込んでくるものです。その期間でしっかり体得できるように、区切りをつけて取り組むと良いのではないでしょうか

――では、吉澤さんにとって、働くということは?

人生の「全て」だとはっきり言えます。今では、趣味とも言えるくらい。美容師を目指し始めた頃は、とにかく自分の実力をつけることに夢中で仕事について考えるまで気が回りませんでした(笑)。

今の時代、投資の話をよく聞きますが、僕は今後も時間もお金も「Door」に投資していくつもりです。それって、同時に僕自身に投資しているのと同じこと。今後は、サロンに在籍しているスタイリストをどんどん育てて店舗展開ができたら良いなと思います。

僕は経営者でもありますが、これからもずっとプレイヤーとして活躍していきたいんです。経営者として、プレイヤーとして、どちらの側面も持ち合わせながら、第一線に立ち続けることが、今後の僕の目標です。

数々の困難に打ち勝ち、成功できた3つのポイント

1.美容業界を牽引牽引するエリアでのキャリアを身につけておく

2.軸をブレさせないための手段を持っておく

3.「壊れては再生して」の精神で、困難な局面で覚悟を貫く


取材・文/東 菜々(レ・キャトル)
撮影/三好宣弘

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Salon Data

Door Daikanyama
住所:東京都渋谷区代官山町20−5 リードシー代官山 3F
電話:03-5456-4031
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