お客さまの悩みをしっかり聞くコミュニケーションで、売上アップ!「hair Prego」渡辺敦さん
ママ美容師サロン「hair Prego」の代表を務め、人気店へと成長させた渡辺敦さん。前編ではそのポイントを伺いました。1号店で成功をして余裕があるからこそできた経営戦略かと思いきや、そのスタートは2号店のスタッフ全員が辞めるという大ピンチからだったという渡辺さん。経営のセオリーとは逆をいく思い切った方向転換の後、大人女性の悩みを解決するサロンとしてお客さまからの支持を集めます。またスタッフ個人の能力に依存しない価値を提供することでスタッフ採用のハードルも下がり、人手不足に悩むこともなくなったそうです。
後編では、2号店に続き1号店でも営業時間を短くし、18時閉店、平日2連休にした渡辺さんにその成功の秘訣を伺います。一時的に売上がさがったこともあったそうですが、昨年行った大幅なメニューの値上げにより、売上の大幅アップに成功。スタッフの給料をあげることも実現できたそうです。値上げを可能にした「hair Prego」の武器は意外にも、お客さまとのコミュニケーションにあるといいます。
今回、お話を伺ったのは…
渡辺敦さん
美容師/「hair Prego」代表/株式会社ビノス代表取締役
高校卒業後に、東京理容専修学校に入学し理容師免許を取得。卒業後は美容室で働きながら、山野美容専門学校通信科に通い美容師免許を取得。その後28歳で独立し、清澄白河に「hair Prego」をオープンする。32歳で2店舗目となる東陽町店をオープンするも、スタッフが全員辞めてしまう事態を経験。人が輝きながら働き、さらに利益をあげられる店作りに真剣に取り組むようになり、ママ美容師サロンに方向転換。17時閉店、日曜、祝日が定休日という美容室経営の常識にとらわれない方法で人気サロンへ成長させる。
サロンの価値を打ち出し、大幅な売上アップに成功
――現在は、1号店の清澄白河店も18時閉店、平日に2連休という営業形態になっているそうですね。
2号店で成果が出始めたくらいから、1号店も営業時間を短くしていけないかと考えていました。僕自身、家族の時間を大切にしたいという思いがあり、あまり仕事仕事という感じで生きていきたくないと思っていて、短い時間で利益をあげていく方法を模索していたんです。そこで1号店も平日で2連休という形にし、そして営業時間も2015年くらいから段階的に短くしていき、今は18時に落ち着いています。
――売上が下がることはありませんでしたか?
定休日を2連休にしたときは、スタッフが抜けたタイミングでもあったので、一時的に売上は少し下がってしまったんですが、徐々に持ち直していきました。お客さまが少なくなるということはなかったですね。サロンに価値を感じてくれていれば、開いている時間に入ってくれるのではないかと思っていたんですが、その通りでした。そして昨年大幅な値上げをしたため、圧倒的に今の方が売上は上がっています。1,2号店同じタイミングで料金改定をしてカット料金を+1500円値上げし、カラー料金も+3000円以上値上げしました。
コミュニケーションの質を重視するお客さまが多いことに気付いて
――大幅な値上げですが、お客さまが離れてしまうことはありませんでしたか。
残念ながら離れてしまったお客さまもいらっしゃいますが、提供する価値をきちんと示すことで新規のお客さまもいらっしゃいます。それまで提示していた大人女性の髪の悩みを解決できるという価値に加えて、親身になって話を聞くサロンだということをホームページや集客サイトに打ち出しました。
カットがそこまでうまくなくても、お客さまのリピートが多い美容師がいるのはなぜなのか、昔から疑問に思っていて、観察したことがあるんです。そしてそういう人というのは話をじっくり聞く、心地いい雰囲気があるということに気が付いて。そのときに改めて感じたのは、コミュニケーションに重きを置いているお客さまが実はとても多いということです。美容院はお金払っていく場所なのに、コミュニケーションで嫌な思いをされている方が多いため、それを絶対しませんよと約束するだけで、高い価値になっています。
――親身になってお話を聞くというのは、具体的にはどのようにして実現しているのでしょうか?
え、それだけ?とびっくりされるかもしれませんが、お客さまの話をさえぎらずに、最後までしっかりと聞くことです。スタッフには、お客さまの話の途中で割って入ったり、「あ、それはこういうことですね」とまとめたりすることは絶対にしないように伝えています。僕は美容師に求められているのは楽しく話しをすることではないと思っているんです。トークのうまさ、人見知りかどうかなどは一切関係なく、お客さまのおっしゃることをしっかり聞いてあとは質問を返していけば、お客さまにとってストレスのないコミュニケーションが取れます。
働きたいママ達に、今後も活躍の場を
――最後に今後の目標を教えてください。
これからも東陽町店はママに限らず女性美容師が輝いて働ける場を提供していきたいと思っています。この考え方でもっと成功例が出せれば、ママ、女性と限定しなくても、だれもが営業時間に関係なく、売上をあげることが可能になるはずです。一人ひとりのスタッフが、仕事の内容も待遇面も満足できるように、環境を整えて集客をがんばっていかないとと思っています。それが1店舗成功したら、もう1店舗という形でゆっくり展開していけたらいいなと。
最初は、ただただ人手不足を解消するためにママ美容師の方を募集していたのですが、働きたい気持ちがあるのに働けない美容師さんに、その場所を提供することに今はとてもやりがいを感じています。美容師の仕事と本質は同じなんですよね。困っている人を助けて喜んでもらう。これからもイキイキと働くスタッフをひとりでも増やしていきたいと思っています。
営業時間を短くしながらも、しっかりと利益をあげるための3つのポイント
1.営業時間と売上を切り離し、思い切ったメニューの金額アップを行った
2.お客さまの悩みをしっかり聞くコミュニケーションを約束し、サロンの価値とした
3.出店を急ぐのではなく、スタッフが輝ける場を提供する気持ちでゆっくりと店舗展開を進めた
働く時間が短いのだから、給料が安くなっても当たり前。そんな社会常識に疑問を持ち、試行錯誤しながら道を開いてきた渡辺さん。渡辺さんの築いた形が今後スタンダードとなれば、働くママに対してだけでなく、業界全体に明るい未来が待っているかもしれません。